ホワイトデー
バレンタインデーに女性から贈り物を受け取った男性が、三倍返しにして返す日本のイベントの一つ
そんな日に万事屋にはある人物達が来訪。
いつもなら顔を合わせただけでも大ごとな筈の二人組が、大人しく同じソファに座っているというなんとも奇妙な光景が居間で展開されていた。
「なんとか知恵貸してくれぬか、俺達は世界を救う為に共に戦ったいわば同志ではないか、ここは是非とも若者の意見をお聞かせ願いたいのだ」
「相手があの万事屋ならこっちからこんな事頼むなんざ死んでもごめんだが、今じゃすっかり将軍の右腕と称される程に出世したテメェになら俺も素直に頼むことが出来る」
一人は攘夷志士・桂小太郎、もう一人は真撰組副長・土方十四郎
いかなる時でも互いの命を奪わんと争い続けている両者が、神妙な面持ちでただ向かいに座る人物に教えを乞いにやって来たのだ。
そう、彼等がここに来た理由、それは……
「「あのヤバい娘をどうにかして下さい」」
「帰ってくれ」
軽く頭を下げてすがり付いて来た桂と土方に
彼等の向かいのソファに足を組んで静かに座る司波達也は素っ気なく拒否するのであった。
「いくら俺にでも出来ない事はある、アンタ等に今取り憑いている存在はもはや人間の手に負えるモノではない、地獄先生に頼むか水木し〇るにでも聞いてもらうんだな」
「水木先生はそんな力持ってねぇから! 鬼太郎の方だから!」
「というかそもそも真由美殿は悪霊の類ではないぞ! その程度のレベルであればまだマシだ! 真に恐ろしいのは幽霊ではなく生きた人間! そんなホラーでよくある表現を見事に待遇しているのが彼女なのだ!」
「どうでもいいなそんな事、いいから早く帰ってくれ、こっちは忙しいんだ」
上手くかわして逃げようとする彼にツッコミを入れながら叫ぶ土方と桂であったが
やはり達也は全く乗り気ではない様子で無下に手をシッシッと振って、彼等をここから追い払おうとする始末。
「俺は今、バレンタインデーに頂き物をくれたそよ姫に何を贈ればいいのか頭を悩ませてる所なんだ、余所の男女の関係なんかに首を突っ込むほど暇じゃないんでな」
「それだ! 異国の悪習をこの国が真似してしまった事により生まれたバレンタインデーとかいうモノ! そしてそこから派生してこの国に誕生したホワイトデーなどというはた迷惑な存在! 俺達が悩んでいるのは正にそれなのだ!」
達也の言い分に対して自分達もまた同じ悩みを持っていると、テーブルをバンと叩いて桂は彼の方へ身を乗り上げる。
「そこで質問だ達也殿! バレンタインデーというのは本来おなごが好いた男にチョコレートを己の気持ちと称して渡すイベントではないのか!? そちらの世界では違うのか!?」
「アンタ、異国の悪習呼ばわりしてる割にはちゃんとバレンタインデーの事理解してるんだな、俺達の世界もバレンタインデーは同じだ、俺も去年は深雪から手作りチョコを貰っていた、叔母からは毒入りチョコだった」
「ではここで貴殿に問おう! 1カ月前! 真由美殿が俺に差し出したコレはなんだ!」
相も変わらず顔色一つ変えずにさっさと帰ってくれないかと心の中で考えている達也に向かって
桂はやや怯えた表情で懐から一枚の紙を取り出す、それは……
「どうしてバレンタインデーにチョコではなく婚姻届が俺の枕下に置かれていたのだァァァァァァ!!!!」
先程から桂が恐怖に身を震わせている原因は正にこの一枚の紙きれであった。
それは正式に役所に提出する為に必要な二人の男女が婚姻を結ぶ為の書類であり、よく見るとキチンと”妻側”の方が記載されている。
「こんな重いチョコレートなんぞ食えんぞ俺は! 胃がただれるわ! しかも数日前から真由美殿に執拗に「ホワイトデーのお返し、待ってますからね」とネチネチ言われ続けてるんだぞこっちは!」
「その紙切れに自分の名前を書くだけで済む話だろ、3倍返しもしなくて済む簡単なお返しじゃないか」
「そんなお手軽に書けるかぁ! 未だ20も超えてない世間も知らぬ小娘が! そんなあっさりと男と夫婦になって良い筈が無い!」
あっけらかんとした感じでさっさと「お返し」すれば良いと答える達也に桂は憤慨した様子でテーブルを再び叩く。
「日々この国を変えようと血と汗を流して勤しんでいる彼女の人生をなんだと思っているのだ!」
「一時のテンションに身を任せて国を変えようとか抜かして、バカな事ばかりしでかすとことん哀れな人生だと思ってる」
「そこまで言う!? 貴様に人の心は無いのか!? 同じ学び舎の先輩と後輩であったのだろ!?」
「悪いが俺はテロリストに対しては基本的に殺意と悪意、「あ、また来たのか」という面倒な思いしか持たないんだ」
ぶっちゃけ達也としては真由美が彼と結婚しようがどうでもいいのだ、彼にとって彼女という存在は既にテロリストに加担する抹殺対象でしかないし
そんな彼女がテロ活動以外の事で何してようが一向に構わないし関わりたくも無い。
「そもそもどうして会長と籍を作るのを拒む、中身はアレだが見てくれは悪くないだろ、それにアンタとは随分と相性が合うように見えたんだが?」
「確かに真由美殿は気心も知れてる上に凄まじく俺と波長が一致しているのも認める、だがいくらなんでも若過ぎる……せめてあと2、30年、いやいっそ4、50年後、そして未亡人であれば俺も前向きに検討出来るのだが……」
「そこまでしないと前向きになれないのかアンタ、50年後ってもう完全に婆さんだろ、アンタに関しては下手すれば土の中だぞ」
あまりにもマニアック過ぎる桂の性癖に、流石に達也もちょっとドン引きした様子で声に若干変化が見え始めるも、桂はそれに気づかずただひたすら真由美の事について悩み始める。
「それに真由美殿の家はかなりの名家であるからな、そんな所に俺の様な素性の知れぬ男が入るというのもいささか気が引けるというか……」
「確かに、アレでも魔術の血が濃い高名な一族だからな、『七草』の長女がテロリストの首領と結婚するなんて知ったら一族総出で反対するのは目に見えている」
「いや三女の方は味方についてくれるやも知れんぞ? なにせ元の世界で真由美殿の体でいた時に、この俺が一から攘夷の帝王学を叩きこんでおいたからな、次女からは警戒されたが三女はいつでもこっち側に引き込める」
「……アンタ向こうの世界でホント何やってたんだ」
「攘夷活動だ」
「俺の世界で好き勝手な事しないでくれ、ただでさえ今もあの銀髪天然パーマのせいで世紀末と化してる可能性もあるのに」
かつて桂は七草真由美として達也の世界で数カ月ほど行動していた事があった。
その時も当然彼女の家にいる時間もあったという訳で、その中で色々と面倒の種をばら撒いていたようだ。
こうなると深雪の体を使っていた銀時の方も何をやらかしていたかわかったもんじゃないと、頭に手を押さえて達也が項垂れていると
そこへ「けっ」と不機嫌そうに吐き捨てるもう一人の来客、土方が
「テメェはまだマシじゃねぇか桂、あの小娘とはなんだかんだ上手くやっていけてんだろ? テロリストのクセに今更相手の家柄だとか気にしてんじゃねぇよ、どうなろうが最終的に俺の手で夫婦共々晒し首になるんだからな」
「ほう、それは聞き捨てならんぞ鬼の副長」
こちらの話を聞いて全く大したことないと言ってのける土方に、桂は眉をひそめて静かに腕を組む。
「言っておくが真由美殿をただの小娘と思ってもらっては困る、国の行く末を見据える俺でさえ予測できない行動ばかりする、末恐ろしい魔性のおなごなのだぞ、ぶっちゃけ俺以上に将軍の首を狙っているしな……時々俺でさえも彼女が怖いと思った事もある、夢に見るほどに」
「フン、奇怪な行動はどうあれ結局はお前に選択をゆだねている時点でまだ可愛げがあるじゃねぇか、ウチの所の小娘なんかに比べりゃ全然大した事ねぇ」
「なんだと! では貴様はあのパツ金娘からバレンタインデーの贈り物に何を貰ったというのだ! 真由美殿の婚姻届に勝てるのか!?」
「良いだろう教えてやるよ、後で聞いて後悔するなよ、俺が当日に早朝いきなりアイツに渡されたのはな……」
挑発的な物言いに負けじとこちらを指さして反論して来る桂に、上等だと土方は懐からスッと一枚の封筒を取り出した。
「俺とアイツの結婚式の日程とその段取りが書かれたしおり、更には式に参加する連中の名前が記載された書類、おまけに式の後に向かう銀河系3年間の旅のチケットだ」
「なんだその超豪華付録セットはァァァァァ! 少女雑誌か!」
「いやその例えは男性の読者わからないから」
やや目が死んでる様子で高々と掲げる土方の封筒を見て桂は驚きながらドン引きする。
細かな手順を一気にすっ飛ばしていきなり結婚式&新婚旅行とは、流石に真由美でもそこまで酷くはない。
「というかもうバレンタインデーとか関係ないではないか! 良いのか鬼の副長! このまま式を挙げたら貴様にもう逃げ道はあの世ぐらいしか残ってないぞ! 自決するのであれば遠慮はいらん! 喜んで介錯してやる!」
「なにどさくさに紛れて俺殺そうとしてんだコラ!」
すかさず腰の刀を抜いてキラリと刃を光らせる桂にツッコミながら、土方は切羽詰まった様子で彼女、リーナが行った用意周到な計略を話始める。
「いいかあの女はな、直接俺を攻める事は止めて、上手い具合に俺の周りにいる連中を懐柔し始めやがったんだ、その結果、本来なら小娘のワガママで済む話が、今ではあの松平のとっつぁんまでもがわざわざウチに祝いに来るほど、自然な流れで着々と事が進み始めてんだよ……」
「なんという横暴かつしたたな手段だ……将を射んとする者はまず馬を射よという奴か……いやはや最近の娘は死線をくぐり抜いた俺達以上に戦を知っているな……」
「このままだと俺は周りに祝福されながら奴と所帯を持つハメになってしまう、かと言ってここで無下に奴の話を断わりでもしたら、祝ってくれた連中は一気に奴の味方となり俺を袋叩きにするだろうよ」
「どう足掻いても絶望という訳か……く、どこまで卑劣なのだあの娘は! まるで国家転覆を裏から暗躍するテロリストではないか!」
「いやテロリストはお前」
既に自分はリーナの手中にあると素直に認め、このままでどちらを選んでも最悪な結末しか迎えられないと嘆く土方に、敵である筈の桂もつい同情してしまう。
「確かに貴様の所の娘に比べれば真由美殿の方がまだ可愛げがあるな、少なくとも彼女は俺に結婚はせがみはするものの、そこまで派手に動き回る真似はせん……」
「……まあ俺からの話は以上だ、コレで俺がここに来た要件は分かっただろ、2代目万事屋」
「やれやれ、そちらで話を済ませてくれると思ったらまた俺の方に回って来たな」
話をまとめ終えてタバコを一服しつつ、土方はスッと達也の方へと振り返る。
ここに彼が来た理由は、どうすれば彼女との結婚式を有耶無耶にし、いつも通りの日常を取り戻せるのか達也に相談する為であったのだ。
「テメェはいつも余裕ぶってて得体の知れねぇ気味の悪いいけすかねぇ優男だが、その実力と手腕は本物だと認めている、なにせ将軍の懐刀とまで言われてるぐらいだからな」
「褒めてるのかけなしてるのかどっちなんだそれは?」
「報酬はテメェが望む額を出してやる。だからどうにかしてあの小娘から逃げる手段を教えて下さいホントお願いします」
「最終的に敬語になる辺り余程必死なんだな」
あの鬼の副長とも呼ばれる人物がこちらに頭を下げながら慣れない丁寧語まで使って来るので、違和感を覚えながら達也は静かに首を横に振った。
「何度も言っているがこっちもこっちであんた達と同じようにバレンタインデーのお返しで悩んでいる所なんだ、自分の事でも手一杯なのに他人の事に首突っ込む余裕なんて今の俺には無い」
「全く最近の若者というのはここまで他人に対する思いやりを失ってしまったのか、いやはや情けない、俺達が若い頃は皆青春に満ち溢れ、困っている者など決して見過ごさぬキラキラした好青年だったというのに、なあ鬼の副長」
「その通りだ、人という生き物は本来助け合いを続けた結果、これまでの長い歴史を築くことが出来たんだ、なのに最近の若い連中はそれが全く出来てねぇ、世の中そんなに甘くねぇんだよ、世界ってのはテメー一人だけの世界なんじゃねぇ、みんなの世界なんだ、みんな手を取り合って互いに助け合う事こそ世界が成り立つんだ」
「それならまずアンタ等は隣の人と手を取り合って和解したらどうなんだ、警察とテロリスト」
こちらがまだ酒も飲めぬ若者だというのをいい事に、年上だというのを鼻にかけてあれこれグチグチと言い出す桂と土方。こういう大人は本当にめんどくさい。
「それにしても婚姻届に結婚式の案内状……その程度のレベルでそこまで悩み苦しむなんてみっともないにも程があるぞ、それでも俺達若者の人生の先輩か?」
「なにぃ!? おれたちが受け取ったモノがその程度のレベルだと!? 聞き捨てならんぞ達也殿!」
「だったらテメェはそよ姫になに貰ったんだよ! あの天然な姫の事だから肩たたき券とかそういう的外れなモン貰っただけだろどうせ!」
呆れた様子で呟く達也の言葉にすかさず反応する桂と土方。
そんな彼等の言い分に対し達也は表情変えずに「ああ」と短く返事すると
「的外れと言えば確かに少々的外れだな、俺が彼女から受け取ったモノは……」
「星だ」
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「「……え?」」
達也の放った言葉に我が耳を疑う二人。しばし思考を停止させ固まってしまっていると、彼は再び話を続け
「実は地球の近辺に偶然、地球人に適した環境が残っている星が見つかってな、未だ手付かずの未開の地という事でプレゼントされたんだ」
「いやちょっと待たれよ達也殿!? え、どういう事だそれは!? 星ってあの星!? 宇宙に存在する星!?」
「天人との最終決戦を終わらせた功績というのもあるらしいんだが、とにかく俺はそよ姫にバレンタインデープレゼントとして惑星一個貰ったんだが、流石にスケールがデカ過ぎて良いお返しが思いつかないんだ」
「だからなんでそんな平然と話せるの達也殿!? 星だよ星!? もっと頭抱えて必死に悩んだ方が良いのではないか!? というかいくら一国の姫だからって仮にも一般人に星をチョコ感覚で渡していいモンなのそれ!?」
ここに来て衝撃的な事実が発覚、この司波達也という男がさっきからずっと悩んでいたのは、将軍の妹気味であるそよ姫から惑星一つを頂くというとんでもないプレゼントを頂いてしまったかららしい。
さっきまでどちらが相手の愛が重いのか競い合っていた事がアホらしくなる……桂と土方は口をあんぐりと開けて言葉を失ってしまう。
「マジかよ星一個って……まだの小娘の方が可愛いもんじゃねぇか……まさか地球圏内に収まり切らない程のプレゼントって……ていうかそれはもうプレゼントと呼べるのか? もはや領星献上じゃね?」
「重過ぎる……見た目はおしとやかだし純粋無垢なる性格をしているのかと思っていたのだが……そよ姫の愛はこれ程までに重かったとは……」
そよ姫の真心こめたギガント級のバレンタインデープレゼントに絶句の表情を浮かべる土方と桂。
来れには二人して参ってしまっていると、「仕方ない……」とずっと悩んでいた達也が決心したかのように重い口を開いた。
「やはりここはホワイトデーのルールに従い、三倍返しということで三つの惑星をそよ姫にあげる事にするか」
「いやいやいやいやいや!? なに言ってるのお前!? バカなの!?」
「しかしここ等近辺にはもう誰も住み着いていない星を探すのは非常に難しい、やむを得ない、ここは既に文明が産まれた星々を巡って手頃な所を征服する事にするか」
「それもうやってる事が地球を攻めに来た天人達と変わらねぇんだけど!? なんでホワイトデーのお返しの為だけに星三つ征服しようと企んでるのこの子!? それで支配されるその星の奴等の事考えてみたら!?」
顎に手を当て思考を巡らせ、気軽に星を3つ制覇しようと計画を練り始める達也に、土方は彼のバカさ加減に戦慄を覚えた。
ふざけてる様子では無いしどうやらマジでそよ姫にお返しする為だけに宇宙を相手に大暴れするつもりらしい……
面倒な時は力づくで全部ぶっ飛ばすというのが彼のモットーであり、もはや達也は微塵も迷いはなく、その場からスっと立ち上がった。
「候補としては少々遠くなってしまうが……キン肉星、ウルトラの星、ポップスターという所があるみたいだから、まずはそこを攻める事にするか」
「オイィィィィィィその星三つだけは止めろぉぉぉぉぉ! いくらお前が無敵だからといってその三つは無理があるから!! ウサミン星とこりん星で我慢しとけ!!」
早速他の星の侵略を単独でおっ始めようとする達也に、土方が慌てて立ち上がって彼の肩を掴んで引き留めようとする。
このままでは彼のおかげで地球の外交関係が崩壊の一途を辿り、第二次攘夷戦争さえ起こり得るやもしれん。
どうやって彼を思い止める事が出来るのかと土方は頭を悩ませていると……
その時、玄関の方から不意に「ピンポーン」とチャイムの音が鳴り響いた。
「ん?」
依頼人でも来たのかと達也が居間から玄関の方へ顔を出すと
そこには見知った形をした二人のシルエットが、戸の向こう側にハッキリとあった。
一緒に覗いていた土方と桂も、その戸の向こう側にいるであろう”とある彼女達”の影をはっきりと認識する。
「お、おい、アレってウソだよね? ここに来るわけないよね?」
「俺はちゃんと誰にも悟られずにここに来た筈だぞ! 何故バレた!? まさかエリザベスが密告を!」
背筋が凍り付く感覚を覚えながら冷や汗を流し始める土方と桂。一体どうしてここにいる事がバレたのか……
そんな事を考えている間も、一向にチャイムの音と戸を手で叩く音がおさまらない、しかも徐々に音が大きくなっているのだ。
これには数多の敵と戦い生き延びて来た歴戦の強者である土方と桂も表情に恐怖の色を浮かばせ
他人事の様子でシレッとしている達也の方へ振り返り
「「急いでキンニク星に逃げよう!!」」
「いやついて来ないでくれ」
彼女達から逃げる為に星外逃亡を閃く二人であったが、無情にも達也はそれをあっさりと拒否するのであった。
それと同時に
玄関から勢いよく戸が乱暴に破壊される音が鳴り響いた。
「「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」
その後彼等がどうなったのかは想像にお任せする。
一方、達也はというと……
「どうだ、そよ姫、茂茂、自国から離れて一人の観光客として別の星を旅行するのは」
「はい、とても楽しいです、兄上様とニュー兄上様、キンニク星はいい所ですねー」
「うむ、妹が楽しければ余も満足だ、将軍という立場を捨てて、異星の地を見ずらかの足で歩む事はなんと新鮮か」
よくよく考えれば、星を征服するよりも、ただ彼女の望みを叶えてあげた方が喜ばれるだろうと思い直し
達也はそよ姫に、立場上、あまり一緒にいられる時間を作れなかった実兄である茂茂を誘い
三人での宇宙観光旅行をしばらく満喫するのであった。
地球では、彼等の住む国ではちょっとした騒動が二つほど起こっている事に気にも留めずに……