魔法科高校の攘夷志士   作:カイバーマン。

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お久しぶりです

完結してからしばらく経ちましたが、新年という事でこちらで特別編を書いてみました。

今年もよろしくお願いします。


放課後の談笑編
正月編 完結&未完 


侍の国は今、未だかつてない危機に瀕していた。

 

かつて宇宙から飛来した天人と侍が戦い、侍が敗れ時代が大きく変わってから数十年後。

 

今ここで、新たな脅威の波が押し寄せてきたのだ。

 

その脅威とは……

 

「フ、まさかこの私をここまで追い詰める人間がいたとは……」

 

再び宇宙から襲来して来た天人達によって江戸が火の海と化し、刻々と滅びの一途を辿ってる中で

 

江戸の中心に立つターミナルの近くで、今二人の男が最終決戦をおっ始めていた。

 

「いや人間、と呼ぶよりも時の流れから突然生まれた変異種と呼ぶべきか……どちらかというと君はこちら側に近いように見える」

 

静かに退治する相手に向かって語りかけているその正体は「虚」と呼ばれていた。

 

星の生命を糧とし不死身の体である彼は、正に地球、否、宇宙最強の化け物と言っても過言では無い。

 

しかしそんな最強である筈の彼だが、今はどこか苦戦しているようにも見えた。

 

不死身である筈の体には所々に傷を付けられ、片膝をついたままなんとか右手に握る刀で体を支えている様な状態。

 

そしてそんな追い詰められている状況の中でもなお、虚は口元に笑みを浮かべたまま相手に語り掛ける。

 

「聞かせてくれませんか、この化け物をたった一人で追い詰めるほどの強さを持ったあなたの正体を」

 

ゆっくりとした口調で彼が囁くようにそう呟くと、虚と対峙する一人の人物は静かに口を開いた。

 

「生憎だが、俺はアンタと同族でもなんでもない、この世界ではただただごく普通の一般人に過ぎない……」

 

 

 

 

 

「司波達也という一人の人間だ」

「……そうですか、司波達也……」

 

どこにでもいそうな見た目をした若者の口から放たれたその名に

 

虚はフッと笑い目を瞑る

 

「全く聞き覚えないし、ぶっちゃけあなたとは全く因縁の欠片も無いと思いますが、どうやら私とあなたはここで決着をつけるしかないみたいですね」

 

「いや決着ならもうついてるぞ」

 

「え?」

 

今ここで星そのもの力を司る虚と、全く聞き覚えの無い謎の少年の戦いが始まる、かと思っていたのだが

 

虚が一人喋っている間に、いつの間にか達也は右手に持った銃の形をした魔法デバイスを向けていた。

 

「ついさっきお前の体に宿るアルタナを暴走させる魔法術式を撃ち放った、お前の命はあと数秒で尽きる」

 

「え……いや何言ってんですかあなた? ラスボスである私をそんなあっけなく殺すなんて事出来る訳……」

 

まるでどこぞの殺人拳法の伝承者みたいな事を言い出す達也に虚が初めて困惑の色を浮かべた表情をすると

 

ふと自分の身に何か違和感を覚え始めた。

 

「おや、これは……」

 

いつの間にかぽっかり空洞が空いた左胸から、眩い光がカッと強く光ったその瞬間

 

 

 

 

ドォォォォォォン!!と耳をつんざくほどの強い衝撃と共に発生した爆発音と共に

 

虚がなんか爆発して消えてしまった。

 

「よし、一件落着だな」

「さすがアル! お兄様!」

「さすがですね! 達也さん!」

 

あまりにも呆気なく倒してしまった事に対してなんの罪悪感も覚えてない様子で一仕事終えた感を出す達也の下へ

 

彼に戦いを任せて高みの見物をしていた神楽と新八が急いで駆け寄って来た。

 

「お兄様のおかげでこれで地球も護られたネ、でもあの長髪のニヤニヤしてる野郎は一体なんだったんアルか?」

 

「俺もよく知らん、なんかいきなり出て来てドヤ顔でラスボスの風格出して来たから、とりあえず倒しとこうと思って倒した」

 

「なんでいきなり出て来たんでしょうねあの虚って奴、ぽっと出のクセに達也さんに喧嘩売るなんてなに考えてるんでしょうか、達也さんに勝てるわけないのに」

 

達也からすれば、なんか悪そうだったから倒しても良いだろうという安易な考えだったらしい。

 

ほとんどダメージを負わずにあっという間にラスボスを瞬殺してしまった彼に対し、神楽と新八はさほど驚きもせずに自然に彼の無双っぷりを受け入れていた。

 

「いやー、これで何もかも無事に解決ですよ、流石僕等の世界の主人公ですね、達也さん」

 

「なんかモジャモジャ頭のふぬけたツラした奴が前に主人公気取ってたけど、やっぱり真の主人公はお兄様ヨロシ」

 

「そうそう、あんないい年してジャンプ読んでる様なダメなおっさんなんか少年漫画の主人公に相応しくないから、やっぱジャンプの主人公は悟空やルフィみたいなカリスマ溢れるキャラじゃないと」

 

「あんな奴いなくてもお兄様がいればこの世界は安泰アル」

 

モジャモジャ頭の万年死んだ魚のような目をした元主人公を二人してボロクソに叩きながら、それと比例して達也を称賛する神楽と新八。

 

二人の中ではもうこの世界の主人公はこの司波達也以外にいる筈が無いと決めてしまっているみたいだ。

 

「おいおいあまり俺に期待しないでくれ、悪いが俺はこの世界ではよそ者の身、こっちの世界の主人公はあの男一人で十分……ん?」

 

そんな彼等に達也は軽く笑いかけながらこの世界に相応しい主人公は他にいると伝えようとする、だがその時

 

突如上空から先程の虚が爆発した時とは比べ物にならないほどの轟音が迫って来たのだ。

 

「これは……」

 

「うぉぉぉぉい!! ヤバいアルお兄様! 空からデケェ宇宙船がこっちに向かって落ちて来てるネ!」

 

「ギャァァァァァ!! あんなの降って来たらこの国滅びますって絶対! 何とかしてください達也さん!」

 

上空を見上げるとそこには、江戸の街を飲み込みかねないほどの巨大な球体の形をした宇宙船が隕石の様にこちらに向かって落下してきているではないか。

 

これには神楽と新八も大慌てで達也に助けを求めるが、当人はさほど驚いている様子も見せず、静かに腕を組んで宇宙船を見上げる。

 

「心配なら、アレならきっと”アイツ”が止めてくれる」

 

「アイツって誰!? 無理ですよあんな巨大な宇宙船の落下を止めるなんて! 僕等のニュー主人公・達也さん以外に出来るはずがありません!!」

 

「いるさ、本気を出せば俺と五分に戦えるほどの潜在能力を秘めた逸材の男がこの世界にな」

 

「!?」

 

自信をもってそう断言する達也に新八が目を見開いて言葉を失ってると、突然神楽が「あ!」と声を出してターミナルのてっぺんを指さす。

 

「あそこに誰かいるアル! きっとあの宇宙船を止めるつもりネ!」

「えぇぇぇぇぇ!? そんな! 一体誰が!」

 

神楽が指さした方向に新八が遠目を凝らしてよく見てみると確かにポツンと一つの人影が……

 

一体誰が、達也以外の者がそんな無謀な事をやろうとしているのかとジッと目を凝らしてみると……

 

 

 

 

 

「国を護り、民を護り、世を護る、それこそが……」

 

 

 

 

 

「将軍家たるこの徳川茂茂が成すべき事」

「って将軍かよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

なんとターミナルのてっぺんには江戸で最も護らなきゃいけない存在、天下の将軍・徳川茂茂がいるではないか。

 

護衛も付けずにたった一人でこちらに落ちて来る宇宙船を怖れもせずに見つめる茂茂の後ろ姿に、新八は思わず絶叫を上げてしまう。

 

「マズイですよ達也さん! 将軍です将軍! 僕等の国の象徴が今真っ先に滅ぼされようとしてますって! 早く助けに行って下さい!」

 

「フ、甘いな新八、あの天下の14代目将軍・徳川茂茂は、あれしきの事で死ぬ男じゃない」

 

「なに言ってんすかアンタ!? あんな宇宙船が落ちてきたら将軍様100パー死にますって!!」

 

たとえ間に合わずとも、本来ならすぐにでも助けに向かわねば行けないのに達也は以前動こうとはしなかった。

 

そればかりかあの宇宙船の落下を茂茂一人で止めれるだろうとさえ言い切ってしまう。

 

「アイツはここに来るまである大きな試練にぶつかった、将軍暗殺編を覚えているだろ?」

 

「ああ、将軍の命を狙う一橋派が騒ぎに生じて暗殺しようとした事件ですね、達也さんがいたおかげで何事も無く呆気なく終わっちゃいましたが……」

 

「アレを機に茂茂は、誰かに護られる存在ではなく、誰かを護る存在になりたいと腹をくくったらしいんだ」

 

「いや護られて下さい! 腹くくらなくていいんで大人しく護られて下さい!」

 

以前、次期将軍の座を狙って茂茂の命を奪おうとした一橋派と戦った事がある。

 

あの時もまた達也が一方的に相手を殲滅し、一人残った事件の首謀者・一橋喜喜もまたボッコボコにして二度と再起を図らぬよう強いトラウマを植え付けさせて幕を閉じた。

 

しかしどうやらあの事件がキッカケで、茂茂の中で新たな変化が生まれたらしい。

 

「だからちょいと俺が鍛えてやった、すると奴は俺の予想を遥かに凌駕する程の恐ろしい力を秘めていたんだ」

 

「アンタもアンタで将軍を鍛えんなよ! てか恐ろしい力!? なんなんですか一体!?」

 

「それは……」

 

ツッコミながらも将軍が持つその力はなんなのかと新八が問い詰めたその時

 

突如、ターミナルのてっぺんにいる茂茂が力を溜めるかのようにグッと軽く身を丸めると……

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「見るアル新八! 将ちゃん! 突然金色のオーラを纏って光始めたネ! まるでサイヤ人的な感じアル!」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇ!? なにやってんだあの将軍!」

 

なんかいきなりビリビリと身に纏っていた豪華な着物が破れたと思いきや

 

力強い金色色に光り出し、とてつもないパワーを秘めているかのような肉体美を見せ

 

唯一破れる事の無かったブリーフだけを装備した将軍・茂茂がそこに現れたのだ。

 

「ってなんでブリーフ以外全部破いてんだァァァァァァ!!!」

 

「そう、あれこそ将軍の血を持つ者のみが辿り着ける境地、あの伝説の”スーパー将軍”、奴は遂に達したんだ」

 

「いやそんな伝説知らねぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

淡々とした感じで説明する達也だが、そのあまりにもどっかでパクったかのような設定に新八は大きく咆哮を上げる。

 

一方、彼等の会話も全く聞こえていない茂茂はというと

 

「そよが晴れてあの男と祝言を挙げるその日まで……余も、この国も死ぬ訳にはいかぬのだ」

 

戦いの構えを作り、自らの身一つで宇宙船を止める覚悟を決めるのであった。

 

 

 

 

果たして、選ばれし将軍として伝説のスーパー将軍になる事が出来た茂茂は

 

この星に迫る新たな脅威を止める事が出来るのか……?

 

そして新八はいつになったら服を着るようになるのか……?

 

次号に続く。

 

 

 

 

 

 

「え……なにコレ? どうゆう事なのコレ?」

 

そしてここは元々達也がいたもう一人の世界、場所はとある神社。

 

次号に続く、まで読み終えた坂田銀時は、両手にジャンプを持ったまま、背後から鳴り響く除夜の鐘を聞きながら呆然と立ちすくしていた。

 

「俺がいない所でなにやってんのお兄様? 俺がいない所でなにすげぇ俺に深くかかわってそうなボスキャラを瞬殺してるのお兄様?」

 

自分の知ってる人物と物凄く酷似している人物を、あっさりと倒してしまった達也にポツリと銀時が呟いていると、そこへ彼が持っているジャンプを覗き込むかのように

 

「何を今更、お兄様であればこの程度の事など容易いと、先の戦いでまだわかっていなかったんですか?」

 

司波達也の妹である生粋のブラコン、司波深雪がひょっこり横から顔を出して彼の独り言に口を挟んで来た。

 

時刻は現在午前零時、初詣にやって来たという事で、彼女の服装も銀時と同じ着物姿である。

 

「相変わらず元気にやってるようで何よりです」

 

「そうだな、お兄様もあっちの世界で無事にやってるみたいでホントに何より……じゃねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

兄が向こうの世界でもよろしくやっているみたいで安堵する深雪をよそに

 

自分の世界で好き勝手に暴れ放題の達也にブチ切れた様子で銀時は手に持った少年ジャンプを地面に叩きつけた。

 

「なに俺がいない間に勝手にストーリーガンガン進めてんだよあの野郎! なんだよこの虚って奴! 全く知らねぇけどすげぇ見覚えある顔してるんだけど!? コイツ絶対俺と深いかかわりを持ってるキャラだよ!」

 

「そうなんですか? まあでもお兄様がサクッとやっつけたみたいですし、今更あなたがこのキャラと関わる事はもう二度とないんですから気にしなくて良いんじゃないですか?」

 

「いい訳ねぇだろ! なに主人公の過去と深くつながりのある重要なキャラをパパッとお手軽に瞬殺してんだコラ!」

 

「そんな事お兄様には関係のない事じゃないですか、ただのあなたの下らない都合です」

 

自分の代わりどころか自分以上に大活躍してしまっている達也、そして本来自分が対峙すべき大ボスがあっさりと彼に負かされてしまった事に深く嘆く銀時だが、深雪は目を細めて下らないと一蹴する。

 

「そもそもあなた程度ではお兄様の足元にも及ばないんです、向こうの世界はきっとあなたみたいなダメ主人公がいなくても、お兄様さえいればなんとでもなるんですから」

 

「その通りだよ! 見ろよこの神楽と新八のセリフ! もう完全に俺の事なんか蚊帳の外にしてるよ! 完全にお兄様を主人公に担ぎ上げてるよ!」

 

悔しいが深雪の言ってる事はごもっともだった、銀時は自分で叩きつけたジャンプを拾い上げると、パラパラと後ろの方へページを進めていき

 

「極めつけはこの作者の巻末コメントだよ!」

 

『なんか自分でも気づかない内に主人公替わったみたいだけど、あのモジャモジャよりこっちの方が楽に勝てっからもうこっちで最終回まで描きます(空知)』

 

「ふざけんな腐れゴリラァァァァァァァ!!!」

 

書かれていた原作者のあとがきコメントに再び強い憤りを覚えた銀時は、またもやジャンプを地面に叩きつけた。

 

「原作者までお兄様寄りになっちゃったよ! 佐島先生から主人公強奪してそのまま行く気だよこのゴリラ!! もうこれ元の世界に帰れても俺ぜってぇ上手くやっていけねぇよ! セリフもロクにないただのモブ同然の扱いに格下げされちまうよ絶対!」

 

「そうですか、私としてはどうでもいいし、むしろあなたが不幸になるのであればそれはそれで私としては嬉しく思いますので、ざまぁみろとだけ言っておきます」

 

「おい、言っておくが立ち位置がピンチなのは俺だけじゃねぇんだぞ」

 

「はい?」

 

完全に傍観者を気取ってこちらの不幸を嘲笑う深雪に対して、銀時は辛い現実を彼女に突きつける。

 

「今週号より大分前の話なんだけどよ、どうやらお兄様と将軍の妹・そよ姫にフラグ的なモノが立っているらしいぞ」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? ど、どういう事ですかそれ!?」

 

「なんでも、将軍はお兄様と更なる深い繋がりを持とうと思って、是非自分の妹と婚姻を結んで欲しいと思ってるんだとさ、政略結婚ではあるがそよ姫も結構その気らしいし、コレ展開が上手く転がれば最終回ではNARUTOみてぇにファイナルファンタジー決め込む可能性もあるぞ」

 

「いやぁぁぁぁぁ!!! お兄様があんな金と地位しか持ってない都合の良い小娘なんかとファイナルファンタジーなんて絶対にいやぁぁぁぁ!!」

 

周りに他の参拝客がいる中で、その場にしゃがみ込んで絶叫を上げる深雪。

 

どうやら達也が向こうの世界でストーリーを進めれば進めるほど、着々と彼の功績が認められ

 

遂には将軍の義理の弟になる所まで上手く運んでしまっているみたいだ。

 

「そうなったらメインヒロインの私の立場はどうなるんですか!? まさかあんな小娘に奪われると!?」

 

「まあこれからはそよ姫の事を義理の姉として認め、妹でしかないお前はただただお兄様とそよ姫の幸せを見守る事に徹するんだな」

 

「絶対にしません! 全力で邪魔をします! そんなふざけた幻想はぶち殺します!!」

 

マズイ事になった……銀時に反論しながら深雪は事の事実に強いショックを受けていた。

 

このままではヒロインとしての自分の地位をぽっと出の姫に奪われてしまう、どうにかして奪い返さねば……

 

「わかりました……お兄様がよその世界でやり過ぎてしまったのは私も認めましょう、ならばここは一旦私達でいがみ合うのは止めて、協力してこちらも一手決めましょう」

 

「いがみ合う原因は主にオメェにあるんだけどな、で? 俺と協力してなにするんだ?」

 

「お兄様が向こうの世界で勝手にストーリーを進めているのであれば、私達もまた同じ事をして追い付けばいいんです」

 

「は?」

 

周りでヒソヒソと小声で囁かれながら怪しまれているのも気にせずに、深雪は銀時に一つの提案を持ち出した。

 

「私達で、お兄様がいない隙にこっちの世界のラスボスを倒しましょう」

 

「なんでそうなるんだよ!」

 

「お兄様が向こうの世界を完結させるのであれば、私達もこちら側を勝手に完結させるんです、ここは対抗して実力は互角なのだと向こうの世界に知らしめるんです」

 

「おいおいなんかわけわかんなくなったぞ……」

 

ヒロインとしての立場を失いかけている事に焦っているのか、思考能力が低下した様子で突拍子も無いことを言い出す深雪。

 

そんな彼女に銀時は呆れながら後頭部を掻くと、口をへの字しながら首を傾げる。

 

「つかお前等の世界のラスボスって誰だよ、俺はもうこの世界に長くいるけど、戦う連中はテロリストばかりで誰がラスボスなのか全く見当つかねぇよ」

 

「アホですかあなたは? この世界のラスボスと言ったら、お兄様がいずれ自分の手で倒してみせると誓っている相手」

 

魔法学校の教師として働いてる銀時は、定期的に何処からともなくやってくるテロリストを倒すぐらいの事しかしていなかったが、どうやら深雪はこの世界にいるラスボスに覚えがあるらしい、その人物とは……

 

「叔母様です、四波真夜を倒せばこの世界も無事にハッピーエンドです」

「いやそいつ前に倒さなかったけ? てか倒すって簡単に言うけどそいつって今……」

 

四葉家の現当主として君臨する真の黒幕・四葉真夜

 

彼女を倒す事が達也にとって最も叶えたい悲願であるのだが、彼の代わりに自分達がその役目をやってしまおうと深雪は言い出したのだ。

 

しかしそれはちょっと難しいのでは?と銀時が怪訝な様子で口を開こうとした、その時

 

 

 

 

 

突如、先ほどまで鳴り響いていた除夜の鐘がゴーンゴーン!と更に音を大きくして隙間なく鳴り始めた。

 

「あ? どうした急に?」

「どうやら鐘の方でなにかあったみたいですね」

 

何事かと、銀時と深雪が話を中断して鐘がある方へ振り返ると

 

 

 

 

「ちょっとぉぉぉぉぉ!!! なにやってんですかアンタァァァァァァァ!!」

「うるせぇぇぇぇぇぇ!! 俺を誰だと思ってんだ! 四葉家の当主様だぞコノヤロォォォォォォ!!!」

 

見るとそこには沢山のお坊さん達に止められながらも、なおも鐘を鳴らし続けるグラサンを掛けた一人の女性がいた。

 

彼女こそ深雪が先程話していた、四葉家の現当主・四葉真夜である。

 

そして中身はまるでダメなおっさん、略してマダオこと、長谷川泰三である。

 

「俺をこんな体にさせた世界なんて滅んじまえばいんだ! この鐘を鳴らしまくって人間の煩悩を全て消し去り! この世界の人間を全員無気力なまるでダメな男と女! マダオだけの世界にしてやるぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

四葉真夜としての破滅願望と、長谷川泰三としてのダメな部分が見事に合わさった結果、どうやらこの世界の煩悩を消し去り、全人類マダオ計画を起こそうとしている様だ。

 

坊さん達が必死に止めようとするもその度に魔法で撃退して追っ払い、グラサンの下からにじみ出る涙を隠さずに一心不乱に鐘を鳴らし続ける真夜、もはや見ているだけで哀れでこっちまで悲しくなってくる。

 

そしてそこに……

 

「飛んで火にいる夏の虫とはこの事だなオイ」

「またとないチャンスですねこれは」

「ってあれ!? 銀さん達も初詣に来てたのかよ!」

 

ひたすら鐘を鳴らし続ける真夜の下へ、フラリとやって来たのは銀時と深雪。

 

腐れ縁の知り合いと、一応姪っ子である二人の登場に、真夜はふと顔をほころばせた。

 

「丁度いいや! アンタ等も色々あって大変な目に遭ってるだろ! もうこうなったらこっちの世界でとことん暴れてやろうぜ! みんなでこの世界をマダオにし……ぶへぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

「「死ねラスボスゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」」

 

真夜の言葉が言い終わろうとする寸前で、銀時と深雪が突然のドロップキックを彼女にお見舞い。

 

ぶっ飛ばされた彼女は自分の頭でゴーン!と一際大きな鐘の音を鳴らすのであった。

 

魔法科高校の劣等生、これにて完結……

 

 

 

 

「って終わるかァァァァァァァ!!」

「ちッ! まだ息があんのかこのラスボス!」

「こうなったら徹底的にやりましょう!」

 

と思いきや、ラスボスはまだ全然元気な様子だったので、銀時と深雪は再び戦いを彼女に挑み続ける

 

この世界を無事に完結させるその日まで……

 

「「俺(私)達の戦いはこれからだァァァァァァァ!!」」

 

 

 

 

 

 

「新年からなにバカやってんだろあの二人……」

「見てほのか、おみくじで『激凶』ってのが出た、マジヤバい」

「それはマジでヤバいよ雫……もう今すぐお祓い行かなきゃマズいレベルじゃん……」

 

 

 

 

 

 




完結してもみんな好き勝手にやってるみたいです。

今回の話はこれで終わりですが

もしかしたらまた書きたい話があったらまた復活するかもしれません

それでは、よいお年を

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