再び現れたのは銀時と深雪の融合体、坂波銀雪。
彼女の再臨により、困難に思われた新型カイエーンの操作にいよいよ希望の光がもたらされた。
「フン、こうなっちまえばこっちのモンだ、さっきまで操れなかった右腕が自由自在に動かせるぜ」
『やりましたね銀さんと深雪さん! いや銀雪さん! まさかこの土壇場でまた融合するなんて!』
「見ろ新八、これが俺達の融合の成果だ」
モニター画面には二人から一人となり、別の姿となった銀雪を見て驚いている新八の姿が
彼に向かって銀雪が得意げに笑うと、自分の右腕とリンクしたカイエーンの右腕を巧みにそうしながら、グッと右手を掲げると、振り落ちてくる蓮蓬の星に向かって
「この細かに動くテクニシャンな指使いで! 星の一個なんざものの数秒で絶頂よ!!」
『ってロボットの右手で何卑猥な動きしてんだぁぁぁぁぁ!!! 右手完全にモザイクになってんじゃねぇか!!」
ウネウネと高速に指を動かしていきながらモザイクまみれのやらしい右手となったカイエーン。
誰も望んでいないそんな破廉恥なテクニックに新八が叫ぶと、銀雪はフッと笑みを浮かべ
「大丈夫だ、本製品を買えばモザイクも薄くなる仕様だ、更に今買えば20%オフというキャンペーン付きさ」
『まずオメェの頭が大丈夫じゃねぇよ!! 本製品なんかねぇしAVの販促みたいな事してねぇでさっさと星を受け止めろや!!』
「はいはい、偉そうだな吹き出物のクセに」
「好きで吹き出物になったわけじゃねぇよ!!」
新八の怒鳴り声にやかましそうに片耳に指を突っ込んでしかめっ面を浮かべると
銀雪は改めて左手を大きく広げて落下してくる星を受け止める態勢に入った。
やはり融合してるだけあってシンクロ率はケタ違いだ、一瞬の誤差も無く正確にカイエーンの右腕を操っている。
しかしそんな様子を面白くなさそうに左腕側から見ている者が二人。
「何故だ!あの二人がもう一度融合出来たというのにどうして俺達は一回も出来ないのだ!! 一体全体どういう事だ!!」
「銀さんと深雪さん、あの二人の中の悪さは一目瞭然だったのに……水魚の交わりである私と桂さんが合体出来ないなんて絶対におかしいわ!!」
「そうだ! 融合の条件は入れ替わった者同士による精神の同調であった筈であろう! 俺達はこれ以上ない強い結束力なのに出来ないとは納得できん!!」
『二人共落ち着いて下さい! 今はとにかくあの星が地球に衝突するのを防ぐのが先なんですから!!』
左腕操縦担当の桂小太郎と七草真由美が抗議する様に声を荒げている。
一度だけでなく二度も融合に成功した銀時と深雪に対し、自分達が未だ一度も出来ていない事に納得がいかないみたいだ。
確かに何故この二人が融合が出来ないのかは不思議に思う所もあるが、今はそんな事を考えてる暇はない。
新八はモニターでキレている二人に向かって即座に指示を飛ばす。
『合体なんか使わなくてもお二人は十分シンクロしてるんですから!! 入れ替わり組の中では断トツでトップのベストコンビなのはこっちもわかってるんで!! そのまま銀雪さんと一緒にあの星を受け止める態勢に入って下さい!!』
「く! 納得いかんが確かにあの星を止める事が先決か……! 真由美殿ここはひとまずこの件については置いておこう。いずれ銀時と深雪殿に直接どうやって融合出来たのか問いたださねば」
「きっと何かコツがあるのよ、もしかしたらアレ? フィージョン的なポーズを取るとか? それともポタラ的なアイテムが必要とか……」
融合さえ出来れば入れ替わり組の中でこれ以上ないベストコンビだと証明出来るというのに……
二人は渋々銀雪と同じくカイエーンの左腕を操作して受け止める態勢に入ると、徐々に迫って来る蓮蓬の星がいよいよ目前と来ていた。
すると蓮蓬の星から不快な機械音と共に声が
『何が何でも我の邪魔立てをするつもりか! だがこれもまた好都合! 地球もろ共貴様等を道連れにしてくれる!!』
『うおぉ! この野郎最後まで足掻いて見せるってか……! 上等だコノヤロー! 銀雪さんの力はまだこんなモンじゃねぇ!!』
『凄まじい力だ、これぞ地球人に対する執念というべきか……このままでは俺達も危ういぞ』
巨大な星から聞こえる声の主は間違いなく星の核たるSAGI。
自分の身が崩れ行く中でも未だ復讐心だけを燃え滾らせせまってくる巨大な星を、カイエーンは両手でガシッと掴むも徐々に背後にある地球の方へと後退していく。
「哀れじゃのぉ、こげな真似をしてももはや何の意味もないというんに……仕方なか、せめてもう一度わし等の手で奴を完全に消してしまうしかない。そしてロクにシンクロが出来んわし等が上手く結束するにはやる事は一つ」
両腕が使い物になっても、未だ右足部分と左足部分は操作出来ていない。その事で上手く踏ん張れずに徐々に下がりつつあるカイエーンの左足内部で、坂本辰馬は腕を組みながら一つの活路を見出す。
「わし等も融合じゃ! 金時と深雪ちゃんの様にわし等も一つになるんじゃ!! この土壇場で出来るかどうかわからんがわし等と地球が生き残る手段はもうそれしかないわい!! やるぞ娘っ子!!」
腹をくくった様子で隣にいるエリカに向かって振り返る坂本、しかし彼女の方は静かに彼から一歩距離を通った後冷めた表情で
「いや結構です、私もう諦めましたんで。地球と共に死のうがもうどうでもいいんでほっといて下さい」
「えぇぇぇぇぇぇぇ!! こげなクライマックスの時になんで冷めちょるんじゃ!?」
「マジで嫌だからそういうの、アタシまだ嫁入り前だし、オッサンと合体とか死んでもごめんだから」
「いやいや合体っちゅうてもそういう事じゃないわ!! そっちの合体だったらわしだっておまんみたいな小娘じゃなくておりょうちゃんとするわ!!」
プイッと顔を背けて全く協力する気ゼロのエリカに坂本が必死に呼びかけているとすぐ様キレ気味の銀雪からの通信が
『おい坂本テメェ何やってんだ! さっさと操作して踏ん張りやがれ!!』
「ちょ、ちょっと待っちょれ!! 今丁度心を病んで壁を作り出した娘になんとか声を届かせようとしちょる所じゃから!!」
『この状況でなに呑気に引きこもりの娘に説得を試みるお父さんみたいな事やってんだ!! ガキが作った壁なんかとっとと破壊しちまえ! 昔からのテメェの得意技だろうが!!』
「のぉ娘っ子、3万あげるからわしと合体してくんない?」
『誰がそんないかがわしい誘い方で壁を破壊しろつったよ!! 』
ヒョイッと懐の財布から紙幣を取り出してヘラヘラ笑いながらエリカに申し込む坂本に銀雪のツッコミが轟いた。
的外れな懐柔の仕方にエリカは一層不機嫌な表情になりながらカチンときた様子で
「アタシがそんな安い女だと思ってんじゃないわよゴラァ! こちとらただでさえアンタなんかとこんな狭い場所で一緒に死ななきゃいけないってのに!!」
「それを阻止するために協力しろというのがどげんしんてわからんのじゃ!!」
「じゃから諦めろとこっちも何度も言うとるじゃろが! どげな真似しようともう何もかも終わりじゃ! どこぞのバカ艦長とバカ副艦長のせいでみんな仲良くお陀仏するしかないぜよ!!」
『オイなにお前等熱くなってんだ! 二人共土佐訛りになってどっちが喋ってるのかわかんねぇよ!!』
遂には互いの胸倉を掴んで土佐弁を用いて喧嘩する始末。
『早くしろお前等!! このままだとマジで死ぬぞ俺達!!』
「アンタなんかと合体するとか絶対にゴメン……うぷ」
「じゃからしたくないとか今この状況で言ってる場合じゃ……う!」
銀雪が自分を棚に上げてそんな二人の不毛な争いを止めようと叫んでいると
二人は急に青白い表情を浮かべて項垂れると、気持ち悪そうに下を向きながら同時に
「「オロロロロロロロロロロ!!」」
『いい加減にしろやぁぁぁぁぁぁぁ! お前等どんだけ吐くんだよ!! 作品の中でお前等ほぼほぼ吐いてばっかじゃねぇか!』
揺れるロボットの内部で激しく揉み合ったせいか、急に船酔いを起こして吐瀉物を床に撒き散らす坂本とエリカ。
そんな二人に銀雪がモニター越しに怒声を浴びせていると、二人の間で変化が
『って、アレ? お前等なんか光ってね?』
突然、吐瀉物を吐いている二人が金色に光り輝き、何やら見覚えのある現象が起こり始めたのだ。
それはまさに銀時と深雪が融合する時の様な眩い光の中で二つのシルエットが一つとなる……
『えぇぇぇぇぇぇぇ!! 何それどういう事!? まさか同時にゲロ吐いた結果シンクロ率が上昇したっていうの!? ゲロ吐いて融合ってどんだけだよお前等!!』
まさかの出来事に銀雪が坂本とエリカの姿が見えない程眩しいモニターに向かってツッコんでいると
しばらくしてその光はおさまっていき
最終的にその場に立っていたのは一人の人物であった。
艦長の制服に身を包み、ボサボサ頭を無理矢理一つに結った赤髪を後ろに垂らし、腰には一本の刀と銃のホルスターを付け
丸いサングラスを付けた少女が腕を組んだ状態でニヤリと笑う。
「アハハハハハ!! 坂葉辰香≪さかばたつか≫見参!! これにて融合完了じゃわい!!」
『嘘だろオイ! 俺達が苦労して出来た融合をゲロ吐き散らして成功させやがった!!』
「待たせたのおまん等! 合体したわし等の力を見せたるきん! うおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
新たに生まれた融合戦士の登場に銀雪が驚く間にも、彼女は、坂葉辰香は威勢よく大声を上げると
「うおぉぉぉぉぉぉぉぼろしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『って結局吐くんかいぃぃぃぃぃぃぃ!!!』
「す、すまん融合したおかげで酔いの回りも2倍になってしもうたきに……」
『余計役立たずになっただけじゃねぇか!! あれ?』
融合体となっても叫びながら口から吐き散らすという醜態を晒す彼女に銀雪が叫んでいると
ふとさっきまで後退し続けていたカイエーンが、両手で星を支えながら徐々に落下速度を落とし始めた。
「おいちょっと待って、なんかロボットが急に隕石のスピードを抑えていける様になったぞ」
『テメェ等なに遊んでやがる、支えはこっちでやったんだ、後はコイツを投げ飛ばすなり弾き飛ばすなりしてみろ』
「高杉!? いやでも口調はアイツだけどなんか声がどことなく可愛らしくなったような……」
『くだらねぇ余興にこれ以上付き合う義理はねぇ、さっさと終わらせて俺達は元の星に帰らせてもらうぜ』
坂葉辰香があの調子なのに足の部分が思いの外バランス良くなりうまく星の落下に耐え切る事が出来ている。
銀雪が不思議に思っているとまさかの高杉からの通信が入って来た。
すぐに彼女は目の前にあるモニターに目をやるとそこにいたのは
蝶の刺繍が入った着物を官能的に着飾り、左眼に包帯を巻いたショートボブの目つきの鋭い少女が、優雅にキセルを吸いながら立っているではないか。
『俺達はこれ以上この体のままでいるのはゴメンだ、だからとっとと終わらせろ』
「って高杉ぃぃぃぃぃぃぃなにその姿ぁぁぁぁぁぁぁぁ!? まさかあのチビ娘と!? 嘘でしょ高杉君! 俺達が気付かない間に何時の間にまさか融合してたっていうのか!? お前とあのチビでか!? マジでか!?」
『テメェが坂本とやかましく喋ってる時にはとっくに出来てたぜ、様は互いに同じ様な事を強く思っていりゃあ出来る芸当なんだろ? それなら俺達が一番その条件に合ってるに決まってらぁ』
「はぁ? 端から端までまるっきり違うオメェ等が同じ考えに至るなんてあり得る訳……」
新たに現れた、否、既に現れていた三人目の融合体に銀雪が驚き顔をしかめる中、彼女はフンと鼻を鳴らしながら答える。
『一刻も早くコイツ(この人)から離れたいってな』
「マイナスとマイナスが合わさってプラスになっちゃったよ! 互いに距離を置きたいと必死に思ってたら逆に一つの身体になるぐらい距離近づいちゃったよ! そんなんで融合出来るの!? 俺達の苦労は一体何だったんだ!!」
『高杉と嬢ちゃんの融合体……名前は高条≪たかじょう≫しずさでどうじゃ?』
「名前なんざどうでもいいだろうが! とにかくこれで不安だったロボの操作が出来るってモンだ……行くぞテメェ等!!」
閃いたかのように機嫌良さそうに高杉とあずさの融合体の名前を決めている辰香に銀雪がぶっきらぼうに叫びつつ、全員に向かって声を荒げなら指示を飛ばす。
「まずは全力でコイツを止めんぞ!! 止めちまえば後は煮るなり焼くなりし放題だ!!」
『船酔いは十分堪能した、こっからはわし等の踏ん張り所をとくと見せてやるぜよ』
『星の一つや二つが消えようが構いやしねぇ、だがここでテメェ等と仲良く心中なんざごめんだ。今回だけはテメェ等に手ぇ貸してやる』
「侍四人と魔女っ娘四人の力……そして地球人の底力ってモンがどんだけ恐ろしいモンなのかハッキリと証明して、敵の最後の親玉に今度こそ引導を渡す時が来たぜ」
口元を裾で拭いながら得意げに笑う辰香に、キセルをしまって鋭い眼光らせながら歪な笑みを浮かべるしずさ。
そして掲げた右手をグッと強く握りしめながら銀雪はニヤリと笑いながら眼前に迫る蓮蓬の星に目をやる。
三人の融合体、これさえあればあの星の落下もきっと止められる筈、彼女がそう確信して右腕にグッと力を込めて、リンクしているカイエーンの腕で蓮蓬の星を押し上げようとするのだが……
「ってあれ? 思った以上に押し返せないんだけど?」
カイエーンが足の底からブーストして懸命に両手で星を押し返そうとするのだが、押し返すどころかまだズルズルと後ろに後退していく。
「この展開なら普通このまま星を押し返してみんなの力で地球を救いましたー的な展開になるんじゃ……てか右腕に負担がますますかかってるような気もするんだけど?」
『銀雪さん大変です!』
「おい新八! お前何やってんだ! お前もさっさと服部大佐と融合して吹き出物を操作しろや!」
『出来るわけねぇだろうが!! それよりも桂さん達が!!』
「ヅラ?」
自分の右腕に何やら負荷が増え始めている事に疑問を覚えていると、銀雪の所に新八からの通信が
どうやら桂の方に問題が発生したらしいので、銀雪がモニターに映っているで桂と真由美の方に目をやると
『坂本どころかあの高杉までも融合成功だとぉ!! 何故だぁ! どうしてあんな団結力も一かけらも無かったコンビが出来て! ゴールデンペアの俺達が未だ出来ぬのだぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
『私達の何が間違っているというの!? もうこんな屈辱に耐えられないわ!』
「オイィィィィィィィ!! なにお前等しゃがみ込んで仕事放棄してんだコラァ!! テメェ等が左腕操ってねぇからこっちに負担がかかってんだよ!!」
モニターにはその場にしゃがみ込んで頭を抱える桂と真由美が悲鳴のような声を上げていた。
どうやら他の三組は融合出来たというのに、最も団結力が高い自分達が未だ出来ない事で溜まっていた不満が爆発してしまったらしい。
『テメェ等はそもそも融合する必要ねぇだろうが!! 元々シンクロ率高ぇんだからそのままでちゃんと操れんだろ!!』
「そういう問題ではない! お前達がこぞって融合している中で! 俺と真由美殿が唯一それが出来ないだなんて断じて認めんぞ!! 何か理由がある筈だ! それさえ解決するればきっと俺達も!!」
「という事で私と桂さんはどうすれば融合できるかについて改めて一から考えて行こうと思います! それまではあなた達だけで耐えて下さい!!」
『ふざけんじゃねぇなに自分達で納得できないからってこんな状況で駄々こねんじゃねぇ!! テメェ等がいないとカイエーンはまともに機能しねぇんだよ! 全員揃ってねぇと押し返せねぇんだよ!!』
「よし、それじゃあまずは互いに相手をどう思っているかと腹を割って話してみよう、真由美殿」
「そうですね、聞かなくてもわかっていますがここは根本的な所からゆっくりと時間をかけて整理してみましょう、桂さん」
『おい! 誰でもいいからアイツ等の所へ行ってぶっ殺して来い!!』
周りが出来て自分達が出来ないという事が余程のショックだったらしく、桂と真由美は銀雪達そっちのけで突然その場に正座して顔を合わせながら、どうすれば互いの身体を一に出来るのかと緊急会議を始めてしまうのであった。
「まずは俺から言わせてもらおう、もはや言葉にする必要もないであろうが俺は真由美殿の事を全面的に深く信頼している、別の世界に住み年も離れているにも関わらず、ここまで俺の志に強く共感する者は中々いなかった。今後も付き合うがあるとするならば、ゆくゆくは俺の左腕として立派な攘夷志士になってくれる事を期待している」
腕を組みながら淡々とした口調でキチンと評価を付けてくれた桂に真由美がフッと微笑む。
「嬉しいわ桂さん、そこまで私の事を評価してくれていたなんて」
「フ、この俺にここまで言わせるのは本当に大したものだぞ真由美殿、それで真由美殿の方は俺の事をどう思っているのだ?」
「もちろん私は桂さんの事はこの世を変える改革者だと信じています」
「無論だ、俺でなければこの世を正す事出来はしないであろう、その辺の事をちゃんとわかっているとは流石は真由美殿」
「だから私はそんな桂さんを……」
きっと彼女もまた自分と同じく相手に深い信頼感を持っているのだろうと、桂が薄々わかっている答えを口元に小さく笑みを浮かべながら聞いていると、彼女もまたこちらに微笑みながら
「心の底から”愛しております”」
「フッフッフ、やはりそう言ってくれると思っていたぞ真由美殿……ってあれ?」
「ゆくゆくは夫婦として共に支え合いながら国家転覆と子作りの両方バランスよく勤しもうと思います」
「……あれ?」
澄み切った両目でハッキリと宣言する真由美に対し、桂は突然真顔のまま我が耳を疑う。
「ん? すまん真由美殿、どうやら長く戦い続けたせいで疲れたのか幻聴の様なモノが聞こえてしまった。悪いがもう一回いってくれないか?」
「七草真由美は桂小太郎さんを愛してます」
「……」
「この戦いが終わったら桂さんと結婚してそちらの世界に永住しようと決めています。そして私も攘夷志士として、そして桂さんの妻として恥じない戦いを繰り広げて行こうと思います。そしてその間に将来有望になるであろう私達の子供達も立派な侍になるよう育て上げていこうと思っています」
「……」
ニコニコ笑いながら恥ずかしげもなく堂々と桂に対してぶっちゃける真由美に対し、桂はずっと真顔で黙り込んだまま聞き終えた後……
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?」
『あれま、ヅラの奴にとんでもねぇ事実が発覚しちまったよ』
『これで桂さんが会長と融合出来なかった理由がわかりましたね、桂さんは会長さんにLikeだったけど、会長は桂さんにずっとLoveだったって事ですか』
「ちょ! なに冷静に俺に今起こってる出来事を解説しているのだ!!」
思いきり口を上げて驚愕の表情を浮かべる桂をよそに銀雪と新八はモニター越しで眺めながら冷静に分析。
『そういやバカ会長って、初めて会った時から既にヅラへの好感度高かったっけ?』
『僕等の世界にいて桂さんの身体だった時はまだ憧れだったかもしれないですけど、一緒に戦っている内に徐々に好きになっちゃったのかもしれませんね』
『まあいいんじゃね? 向こうは結構な家柄のお嬢様みたいだし、逆玉だよ逆玉』
『でも桂さんと会長って、年離れ過ぎやしませんか?』
『新八、男女の恋愛に年の差なんてモンを気にすんのは周りの連中だけだけなんだよ、二人にとってはその程度の事なんざ障害にもなりやしねぇ、カトちゃん見てみろよ、若い嫁さん手に入れて毎日ウハウハじゃねぇか』
『いやそこでカトちゃんで例えられるといささか不安感が募るんですけど、本当に幸せなんですかねあの人?』
『幸せに決まってんだろ、よく嫁さんのチャラい友達に囲まれて嬉しそうに笑ってる写真とかあるじゃねぇか、顔は笑ってても目が死んでたけど』
「カトちゃんの結婚話はいいから俺の事を気にしてくれ!!」
二人でモニター越しにすっかり他人後の様子で会話を進めている銀雪と新八に
必死な形相で桂が顔を近づけて来た。
「知らなかった! まさか真由美殿が俺に対してそんな感情を持っていたなんて!! 俺はてっきり素直に尊敬してくれているのかと!!」
『安心しろヅラ、こっちは薄々気づいてたから。多分気付いてなかったのお前だけだ』
「貴様! どうしてこんな大事な事を本人の俺に教えなかったぁ!!」
『泳がせていればその内面白い事になると思って』
「泳がせるなすぐに救助しろ! 人の人生を何だと思っているのだ!」
小指で耳をほじりながらけだるそうにぶっちゃける銀雪に桂がモニターに掴みかかってキレ気味に叫んでいると
そんな彼の背後には真由美が静かに笑みを浮かべながら立っていた。
「どうしたんですか桂さん、そんな血相変えて」
「へ!? い、いや真由美殿……どうやら俺達の間には多少の問題があったらしくてな……」
「多少の問題? もしかして七草家の事情とかですか? 大丈夫ですよ私、家族に会えなくなるのは寂しいですけど桂さんの隣に立てればそれで構いませんから」
「いやそうじゃなくて、その……」
隣に立つってそういう意味だったのか……てっきり自分の相棒としてだと思っていた桂は動揺を隠しきれずに頬を引きつらせながら苦笑を浮かべていると、モニターから再び新八と銀雪の声が
『桂さんマズいですよ! さっきまで400%あった桂さん達のシンクロ率がごっそり減って40%に!! このままだと僕等地球と一緒に星にペシャンコにされます!!』
『おいヅラ! さっさと覚悟決めろや! オメェが蒔いた種だろうが! 責任取って素直に結婚しろや!!』
「変な言い方をするなぁ!! 貴様他人事だと思って勝手な事を言いおって!」
『テメェがそいつと融合出来なかったのは! テメェがそいつの上っ面だけしか見ずにちゃんと中身の方も見てなかったからだろうが!!』
このままだとますます状況が悪くなっていく、桂が真由美の想いに気付いて動揺したおかげで下がるシンクロ率。
もはやこうなっては銀雪達同様に融合を試してみるしかない、それを行う為にははただ一つ……
『この場ではっきりとバカ会長に結婚すると誓え!! そうしねぇと世界が滅ぶ! 結婚するか滅ぶかここで選びやがれ!!!』
「なんだその選択肢は!! どっちみち俺としては納得のいかんエンディングしか無いではないか!!」
「フフ、もしかして桂さん、私に何か言いたい事があるんですか?」
「うえぇ! いや真由美殿、すまんがしばし時間を……」
『時間なんか残ってねぇんだよ!! さっさと言えボケェ!!』
「ぬおぉぉぉ!! 俺は……俺は一体どうすればいいのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
彼女と結婚するか、世界を滅ぼすか
デッドオアデッドの選択肢に頭を抱えながら上に向かって叫ぶ桂。
そんな彼に真由美は笑い、背後のモニターからは銀雪がキレる。
世界の命運は今、桂小太郎にゆだねられたのだ。
思えばこの作品を作るにあたって、一番最初に出来た組み合わせは桂と会長でした。
そしてこの作品最後の戦いの中の大事な局面で二人が関わるのも決まっていました。
最初の二人で最後の戦いに白黒付けさせてもらいます
次回をお楽しみに