教官   作:takoyaki

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外伝96です!


後、四話で百話?
マジ?てなわけで、どうぞ


「…………………しませんよ」

 「さて、いよいよ明日ですね!」

 日課となった訓練も終わった後、クイーンは、腰に手を当てながらそう言う。

 流石に翌日が作戦決行日ということもあり、今回の訓練は、軽めに終わらせた。

 「結局、写真取り返せなかったんだけど………」

 ベイカーは、ため息をつきながらそう言う。

 「あの………クイーン隊長、本当に送るんスか?」

 「当然です。だって、口だけのバツになってしまえば、今後もこんな事があったとしても大丈夫と思ってしまうでしょう?」

 スカーレットの懇願するような様子など気にも止めない、クイーン。

 助けを求めるようにルイーズの方を向くが、当の本人は、ヒラヒラと適当に手を振っている。

 「まあ、任務に支障が出てもアレですし、全部終わってからにするので安心してください」

 「というか、僕の写真はどうするんだ?」

 「へ?普通に私のものですけど?」

 「ざけんな!!今すぐ返せ!!」

 「やーでーすー」

 クイーンから奪い返そうとするエラリィを片足で押さえつける。

 「ほら、じゃれ合うのはいいから明日の作戦は?」

 ルイーズの言葉になおも諦めきれないエラリィを余所にクイーンは、腰掛ける。

 「と言っても、今回、私達に作戦指揮権はないんですよ」

 そう、ドタバタやったせいで分かりづらいが、作戦の命令はクイーンではなく本部からなのだ。

 「なのでしいていうなら、ルイーズの護衛ってのが私たちの作戦ですね。あと、あくまでもルイーズを餌に切り裂きジャックを釣るので私達も一般人のフリをしなさいって感じですね」

 「じゃあ、せいぜい、タイムテーブルぐらい決めて置いたらどうだい?」

 「え?全員で教官見張るんじゃないんですか?」

 「全員で見張ったらご飯とかどうするんだい?交代で休憩取らないといざという時に困るだろう?」

 ベイカーの質問を一蹴するルイーズ。

 「なら、タイムテーブルの作成はルイーズに任せていいですか?」

 クイーンは、そういって当日のプログラムを渡す。

 「スタッフ用の当日のスケジュール表はないのかい?」

 「くれなかったんですよ…………私たちの隊にだけ。『囮役にそんなものいらないだろ』って」

 クイーンは、ため息をつく。

 「本当に作戦を成功させる気あるのかい、上の連中は」

 「さあ?『ルイーズ憎し』と『我こそが手柄を』と思って、何だか目的を見失ってるようですね」

 「目的に不要な利害が絡むとこうなるよねぇ………クイーン書くものあるかい?」

 クイーンは、近くにある筆立てから鉛筆を渡す。

 ルイーズは、ため息を吐きながら鉛筆でプログラムに書き込んでいく。

 「ほら、君ら三人は順番にお風呂に入っておいで。私がその間にタイムテーブル組んどくから」

 「いや、今日、教官が風呂当番でしょう?」

 「なんでやってないことが前提なんだい。やってあるよ」

 その言葉にベイカーとエラリィは、戦慄する。

 思わず色んな事を言いそうになるがエラリィは、慌てて我慢する。

 「そんなバカな!!いつもいつも、いっっっっっつも言われるまで風呂掃除しない教官が今日は自分からやったというんですか!!」

 しかし、そんな我慢などと無縁なベイカーが、全部喋る。

 「あ?」

 ルイーズの目に剣呑さが宿る。

 ここ数ヶ月何度も似たような場面をみたスカーレットは、長くなりそうだと判断し、先に風呂に向かった。

 タイミングを逃したエラリィは、スカーレットの次にすぐ入れるように風呂に入る用意を始める。

 「訓練頑張ってるし、明日は本番だから今日は早めに風呂に入って汗流して貰おうと思って用意したのにどうしてそう言う言い方するんだい!!」

 「じゃあ、他になんて言えば良かったんですか!!」

 「別に一言『ありがとうございます』でいいだろう!なんで真っ先その言葉が出てこないんだい!!」

 「普段から風呂掃除とか皿洗いとか言われるまでしないからそうなるんですよ。これを機会に改めたらどうですか」

 「んだと、このクソ弟子!」

 「というか、勝手に弟子呼ばわりしないでくださいよ!!」

 二人の言い合いついにつかみ合いの喧嘩に発展した。

 

 

 

 「おい、ルイーズ!風呂の栓忘れてたから、しといたぞ」

 

 

 

 

 

 脱衣所から戻ってきたスカーレットの一言により、ルイーズの手が止まる。

 「………「それじゃあ、先にご飯にするです」

 「まあ、作るのあたしですけどね」

 クイーンの提案にスカーレットは、エプロンを着けながらため息を吐いた。

 「おい、そこの馬鹿師弟。何かリクエストあるか?」

 スカーレットの質問に二人は手を収め考え込む。

 「あれ、教官疑似リリアル・オーブ改ってカロリー使うんですか?」

 「まあ、第一号に比べればマシだけどそれなりに使うよ」

 二人は顔を見合わせて頷く。

 「「じゃあ、カロリーが高いもので」」

 「わーったよ」

 (さっきまで喧嘩してたのに直ぐこれだもんなぁ)

 スカーレットは、そう答えながら、冷蔵庫を開ける。

 (ちょうど、今日が賞味期限の鶏肉があったし、それ使えばいいだろ)

 

 

 その数分後、冷蔵庫の中の鶏肉を勝手に夜食として食べていたことが発覚し、食べた犯人であるルイーズと調理したベイカーが買い物に行くはめになった。

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 音楽祭当日。

 

 

 

 

 

 「さてと、会場に着いた瞬間から、作戦が始まるの最終確認しとくですよ」

 会場に向かう個室の電車でクイーンが、口を開く。

 対するエラリィとスカーレットは、電車音痴のベイカーを見失わないように気を張り少し疲れていた。

 因みにルイーズは、発表者のため別行動だ。

 「まずは、ルイーズ護衛のタイムテーブル。ルイーズが作ってくれたので各自、目を通しておくように」

 クイーンは、三人に紙を渡す。

 「あの隊長、一ついいですか?」

 「何ですか?」

 「どうしてまた、俺達、学生服なんですか?」

 ベイカーとエラリィは、学ラン。

 そして、スカーレットは、

 「あたしは、セーラー服か………」

 以前通っていた学園のブレザーとは違い黒を基調としたセーラー服に身を包んでいた。

 そんなスカーレットは、襟をヒラヒラとイジりながら首を傾げる。

 「三人は、友達の演奏を聴きに来た学生という設定です」

 因みにクイーンは、チノパンにワイシャツというラフな格好だ。

 ラフではあるが、高い身長、長い手足も相まってピシッと決まっている。

 「いや、だったら、学生服じゃなくてもいいだろ」

 「ろくな私服持ってないからこうなったんですよ。特にエラリィ」

 「サンオイルスターのTシャツの何が不満だ!!」

 「何処に満足しろって言うんですか!!」

 「あの~俺は…………」

 「黒一色しか持ってなかったでしょう。黒子でもやるつもりですか?」

 クイーンにバッサリと切り捨てられたベイカーは、助けを求めるようにスカーレットを見る。

 「別に。あたしは、不満ねーよ。服は制服とジャージぐらいしかないしな」

 「……………初給料出てるはずですよね?なんでそれしかないんですか?」

 スカーレットの家庭事情的には、服を買いそろえづらいのは、分かる。

 だが、それも学生までの話だ。

 給料日もとっくに過ぎているのだ。

 「別に着飾る用事もないんで」

 「決めたです。今度の給料日の後、買い物に行くです」

 クイーンは、ため息を吐いた後咳払いをし、ズレた会話を戻す。

 「さて、三人の服は、近隣の学校の奴です。生徒手帳も偽造してあるので、必要に応じて使ってください」

 「そう言えば、教官は何の服着てるんですか?演奏だから(隊長が駄々をこねて)ドレスですか?」

 括弧の中を早口で言うベイカーに構わずクイーンは、胸を張る。

 「私もドレスにしようと思ったんですけど、今回、ルイーズは軍の代表として演奏するんです。だから、ドレスは、趣旨に合わないんですよ」

 一目見て軍人が演奏しているという格好でなくては意味が無いのだ。

 「でも、誇らしげですね」

 「当然です。ルイーズの衣装合わせで私以上の人間なんていないですよ」

 ルイーズの衣装合わせをしたがるのがクイーンだけなのだが。

 一応、そう言うことを言わない良識を持ち合わせているスカーレットのエラリィは、押し黙る。

 「隊長以外に誰が教官の衣装合わせやるんですか?」

 ((あぁ、こう言う奴だよな))

 そんな良識をいつの間にやら捨て去ったベイカーの言葉にエラリィとスカーレットは、ため息を吐く。

 「ベイカーがやってもいいんですよ?」

 「…………………しませんよ」

 ((今ちょっと迷ったな))

 思わぬカウンターを食らったベイカーにスカーレットとエラリィは、同じ感想を浮かべた。

 「冗談はさておき、会場ではこのマイクとGHSで連絡を取るので、ちゃんと電池等を確認しておいてください」

 四人は、スイッチを入れ、ちゃんと動くことを確認する。

 「というか、隊長。教官は結局、どんな格好なんですか?」

 ベイカーが再び質問する。

 護衛対象の服装は、知っておくにかぎるのだ。

 「えーっと…………これです」

 懐から写真を取り出す。

 そこには、白い軍服に身を包んだルイーズが仏頂面で座っていた。

 「「「白!?」」」

 三人の声がハモる。

 それぐらい目を引く格好だ。

 仏頂面のルイーズだが、そこはそれ。

 クイーンが、腕によりをかけたのだろう。

 文句のない仕上がりとなっていた。

 「音楽隊の昔の演奏服なんですよ。もう使わないし、サイズの合う隊員もいないと言っていたんで貰ってきたんです」

 「ルイーズなんか文句言わなかったんスか?」

 「カレーうどんが食べたいって」

 「おい、それ絶対ダメな奴だろ」

 「隊長、止めましたよね?」

 「当然です」

 クイーンは、写真を取り上げ、人差し指と中指で挟みながらニコニコ笑う。

 「どうですか?ベイカー?」

 「どうって…………」

 「いいでしょう、白軍服?似合ってると思わないですか?」

 ベイカーの頰が引きつる。

 「答えてやったらどうだ?スカートの丈聞かれるよりは、答えやすいだろ?」

 「何の話?」

 「こっちの話」

 エラリィのちょっかいにスカーレットが首を傾げるが、ベイカーが止める。

 ベイカーは、ため息を吐いてそっぽを向く。

 

 

 

 

 「素敵だと思いますよ。格好いいし」

 

 

 

 

 そっぽ向くベイカークイーンにクイーンは、優しく笑みを浮かべるの写真を懐にしまった。

 

 

 

 

 「さあ、目的地までもう直ぐですよ」

 

 

 

 

 

 音楽祭も目前だ。






さあさあ新メンバー加入後の初任務です!頑張ってね!



では、また外伝98で(^o^)

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