なんだか、今年は全然暑くなりませんね。
あぁ、それはそうとミューツーの逆襲見てきました!!
懐かしくて涙が出そうでした。
てなわけで、どうぞ!!
「紅茶、お代わりちょーだい!」
「はい、ただいま!!」
「看板に描いてあるシフォンケーキまだある?」
「あ、あります。注文なさいますか?」
「うん、じゃあ、それとクッキーお願い」
「わ、分かりました」
「転校生!!お客さんの子どもが紅茶ひっくり返した。布巾と雑巾どこにある?」
「そこの机の上に布巾、足にかかってるのが雑巾」
「オ、オーダー入ります、シフォンケーキとクッキー」
「いくつ?」
「あ、えっと、それぞれ一つず────」
「すいませーん、お会計お願いします!」
「リッパー、会計対応お願い。注文受けた品ものは、私が持ってく」
「注文お願いしまーす」
「はい、少々お待ちください!」
ルイーズの喫茶店は大盛況だ。
ルイーズが見事に切り裂きジャックとの戦闘を寸劇として演出し、更に宣伝間でしたので、客足もパンフレットに乗っていなかったとは思えないほどの大盛況だ。
ただ想像以上に客が多い。正直、三人で回すには限界がある。
とはいえ、誰も手伝ってくれないのだから、この三人でどうにかするしかない。
三人とも目まぐるしく手を動かし、次から次へとくる注文をさばいていく。
「ママー、くまさんは?」
小さな女の子が、辺りをキョロキョロと見回しながら自身の母親に尋ねる。
会計を終えた母親は、少し迷った後、近くにいたリッパーに小声で尋ねる。
「あの、廊下で寸劇をやっていたクマの着ぐるみは、いませんか?」
「ク、クマ……………の着ぐるみ?」
「何?どうしたんだい?」
固まっているリッパーの後ろに注文を取り終えたルイーズが現れる。
「あのね、くまさん、すごかったんだよ!とんだりはねたりしてね、あともうすこしってとこまできたんだよ」
「それはすごいねぇ」
「あのー出来れば、写真ぐらいとりたいのですけど………」
「(き、着ぐるみってクマだったの?)」
「(まあね。というか、突っ込むのそこなのかい)」
「(し、知らないかもしれないけど、僕、クマが動物の中じゃ一番好き、かっこいいから)」
「(はいはい、そこまで教えといてあげれば良かったね)」
小声の会話をルイーズがおざなりに打ち切ると屈んで女の子に視線を合わせる。
「お姉さん、くまさんとお友達だから呼んできてあげるよ」
「ほんとぉ!!」
「もっちろん」
そう答えるとルイーズは、スカーレットにアイコンタクトをした。
◇◇◇◇◇◇
「はい、撮れましたよ~」
「ありがとうございました」
「ありがとう、くまさん、お姉さん」
《どういたしまして》
クマの着ぐるみと親子の写真をルイーズが、撮り終えると二人は頭を下げた。
クマからはあの寸劇の時と同じぐらい低い声が聞こえた。
昼時が近付き、客がいなくなったところで、ルイーズがクマの着ぐるみと親子の写真を撮ったのだ。
「待たせちゃってごめんね」
「ううん!」
ルイーズが、謝ると女の子は、首を横に振ってそう答えると母親に連れられて、喫茶店を出て行った。
二人が完全に出て行くのを見届けると、ルイーズは、着ぐるみに笑いかける。
「お疲れ、スカーレット」
スカーレットは、クマの首をとる。
そこに現れたのは、不機嫌そうな顔つきのスカーレットだ。
ルイーズは、パシャリと写真に撮る。
「君もなかなか声音変えるの上手いね」
「ありがとう────じゃねーよ!!なんで、私がやってんだよ!!つーか、何で私が声音変えてまで対応しなきゃいけねーんだ!!お前やれよ!!後、今撮った写真消せ!!」
「イヤだよ、面倒くさい」
ルイーズは、肩をすくめてそう言うとGHSを閉じる。
「ふ、二人とも元気だね…………」
リッパーは、ぐったりとした様子で椅子に座っている。
スカーレットは、ため息を吐きながら着ぐるみを脱ぐ。
「君、制服のまま着たのかい?普通、ジャージとか着るだろ」
「これ以上面倒くせーこと出来るか!!」
「女の子にここで待ってて貰うのもなかなか面倒くさかったけどね」
「仕方ねーだろ!!つーか、バレねぇようにするのが大変だったんだぞ!!一人用の更衣室がねーから、クラスメイトの奴らが入ってきて、あの女の子にベラベラ喋るかもって、不安で不安でたまらなかったんだぞ!!」
ルイーズにそう捲したてるスカーレット。
しかし、そんなスカーレットの言葉を聞き流しながらニヤーッとイヤな笑みを浮かべる。
「面倒くさがると、制服、汗で透けるよ」
ルイーズの言葉にスカーレットは、リッパーの方を見る。
リッパーは、首をブンブンと横に振る。
「あっはっはっは!あんな短時間で透けるほど汗かくわけないじゃあないか。君ってば乙女だねぇ~」
「離せリッパー!!この女今、ここで締めてやる」
「お、落ち着いて!!スカーレット!!いや、分かるけども!気持ち凄く分かるけども!!後、ルイーズ!そう言う男子が反応に困る話本当にやめて!!そういうの女子だけでやってよ!!」
「はいはい」
ルイーズは、適当に答えると椅子に座る。
先程まで客が座っていた椅子。
そんなことを思うと今日一日の出来事が一気に押し寄せてくる。
「ま、パンフレットに書かれてなかったにしては、大盛況だったねぇ」
ルイーズは、手元にあるパンフレットをビリビリに破いてゴミ箱に放り込んだ。
「ま、まあね。突然一気に来たからビックリしちゃった」
リッパーがそう答えるとスカーレットは、不満そうな目でルイーズを見る。
「ところでよう、お前、クマの着ぐるみ着て何やったんだよ」
「んー、あー………」
ルイーズは、ちらりとリッパーを見る。
「ちょっとした、寸劇だよ」
「寸劇、ねぇ」
スカーレットは、ルイーズの視線の先にリッパーがいることを確認し、それ以上の追及をやめた。
そんな会話をしているとルイーズたちの教室の扉が開かれた。
入ってきたのは、ひと組の男子生徒と女子生徒だ。
「ん?よう!リッパー!来たぜ!」
男の方が気さくにリッパーにそう声をかける。
リッパーは、その二人を見て目を丸くする。
「え!?本当に来てくれたの?」
「そりゃあ、来るだろ」
「うんうん」
隣で女の子も、頷いている。
リッパーは、油の切れた機械のように固まる。
「誰?」
ルイーズが尋ねるとリッパーは、ハッとした顔をして二人を手で示す。
「え、えっと、二人とも僕と同じ美術部なんだ」
「へぇ…………」
同じ部活、男女、ルイーズは、腕を組む。
「あ。もしかして、二人付き合ってるのかい?」
ルイーズの質問に入ってきたばかりの二人は、少し顔を赤くしてはにかみ、頷いた。
「おぉ~甘酸っぱいねぇ……………」
ルイーズの脳裏には、クイーンの報告が復唱される。
(えーっと、確か、リッパーの悩みって友達の彼女の事を好きになっちゃったんだっけ?)
リッパーの方をちらりと見ると、やっぱりというか、案の定というか、もの凄く微妙な表情をしている。
(マジか………彼女がリッパーの想い人で、彼が唯一の親友かい………)
「ご注文は?」
「クッキーと紅茶を二つと………それとシフォンケーキってまだある?」
「えっと………ス、スカーレット、シフォンケーキある?」
シフォンケーキの入った保冷バッグに一番近いスカーレットにリッパーが尋ねると、スカーレットは、蓋を開ける。
「んー…………お、ちょうど二つあるぜ」
「だって。どう?」
「じゃあ、それで」
「分か…………かしこまりました」
「お、店員っぽい」
「うるさいなぁ!!」
リッパーは、照れたように言うと温度計で測りながらお湯の温度を調整している。
ルイーズは、こっそりと近付きリッパーに小声で尋ねる。
「代わりに対応しようか?」
「………な、なんで?」
「あ、いや、えっと」
まさか、思い人の対応は、辛そうだからなどとは言えない。
ルイーズがどう答えようか迷っていると、お湯が最適な温度になった。
リッパーは、ルイーズに教えてもらった通りに紅茶を淹れる。
出来上がった紅茶とクッキーとシフォンケーキを二人の元に持って行く。
「お待たせしました」
リッパーは、二人の前に注文の品を並べる。
「ごゆっくりどうぞ」
女子生徒の方が、紅茶を口に運び目を丸くする。
「凄く美味しいよ、リッパー!」
「紅茶の味が分からない俺でも美味しいって分かるぜ」
「良かった。そう言ってもらえると嬉しいな。あそこにいるアイリーンにすごい仕込まれたから」
紹介されたルイーズは、手をひらひらっと振る。
リッパーは、しばらく三人と談笑している。
そんな三人を頬杖を付きながら眺めているといつの間にやら隣にスカーレットが座る。
「いいのかよ。客と談笑してて」
「いいんじゃない?お客さんもあの二人しかいないし」
ルイーズは、どうってことなさそうにそう言うとむんとのびをする。
確かに他に客がいればあの態度は問題がある。
しかし、ピークも過ぎ、今や客と呼べるのはあの二人だけ。
ならば、多少のお喋りも許されるだろう。
「……………」
「なんか、不満そうだねぇ」
「別に」
スカーレットは、ぶっきらぼうに短く答える。
貧乏揺すりをしているスカーレットを見ながらルイーズは、ポツリと呟く。
「彼さ、家族相手にはつっかえないんだよね。つまりさ、それぐらい距離の近い相手なら普通に喋れるんだろうね」
ルイーズは、そう言うとスカーレットの耳に口を寄せる。
「だから、君は気に入らないんだろう?何せさっきから彼、あの子達とつっかえずに喋ってるんだから」
そっと耳打ちをすると、スカーレットは、驚いた顔でルイーズを見る。
ルイーズは、ニコニコと笑っている。
そう、リッパーはルイーズ達と話す時、いちいちつっかえながら喋っている。
ルイーズの言葉にスカーレットの顔が徐々に朱に染まっていく。
ルイーズは、立ち上がるとそんなスカーレットに手を差し出す。
「スカーレット。お腹すいたし、私と昼ご飯の買い出しに行かないかい?」
◇◇◇◇
リッパーに断りを入れ、二人は屋台のフルーツ焼きそばを買おうと列に並んでいた。
「随分と可愛いこと気にするね、君」
「っるせえな!!逆に聞くけどよ、お前は不満じゃねーのかよ」
「どうして?」
ルイーズは、淡々とそんな返答をする。
スカーレットは、拳を握る。
「いいか!あいつは、あたし達と一緒にこの文化祭に挑んだんだ、言わば戦友だろ!!少しぐらい、心開いてくれてもいいじゃねーか!」
淡々と返すルイーズにスカーレットが詰め寄る。
「別に心を開いてないわけじゃあないと思うよ。単純にまだ、少しだけ距離があるだけさ」
「1週間近く一緒に作業したのに?」
「それを長いととるか短いととるかは、彼が決めることだろう?まあ、案外女の子と会話するのに緊張してるだけかもしれないよ」
「あいつ、カップルの女の子と普通に会話してたぞ」
「あ、バレた?」
「お前、誤魔化すなら最後までやれよ」
大きくため息を吐きながらスカーレットは、肩を落とす。
「………やっぱり、寂しいと思わねーか?別に、あいつらと同じような立ち位置にして欲しい訳じゃねーけど、少なくとももう少し距離をなくしたいじゃねーか」
目を伏せてそうスカーレットは、思いを述べる。
ルイーズが口を開こうとすると焼きそばの順番がルイーズ達に回ってきた。
三人分買うと二人は、店を後にする。
出来たてのフルーツ焼きそばのぬくもりを感じながら二人は、教室へと戻る。
「大丈夫だよ。彼の中で私達は他人とかクラスメイトとかじゃあない。だから、今すぐは無理でもいずれは、すんなり会話できるようになるさ」
「根拠は?」
「私達ぐらいだろう、リッパーのうちに行ったのは?」
ルイーズに言われスカーレットは、リッパーの両親の反応を思い出す。
あの慌てよう、思い出すだけで少しだけクスリと笑ってしまう。
「そうだな」
スカーレットは、少しだけ柔らかい笑みを浮かべる。
「そういうこと。さ、早く持って帰ろう───」
ルイーズが、そう言いかけた瞬間、彼女のGHSが震える。
(コール二つ…………クイーンだねぇ)
「ごめん、スカーレット。ちょっと用事思い出した。先に戻ってて」
「え、お、おう!」
ルイーズは、自分の分のフルーツ焼きそばだけ受け取り、女子トイレに消える。
個室に入りGHSを開く。
『別棟の階段下倉庫に集合』
画面に表示されるそのメッセージを見てルイーズは、ふむと頷く。
「さて、何かな」
◇◇◇◇◇◇
「ただいまぁ~」
「あ、お、お帰り」
「……………………ただいま」
スカーレットが教室に戻るとリッパーが出迎えてくれた。
相変わらず、少し、つっかえながら喋る。
意識してしまえばどうしても気になる。
「って、あいつらは?」
「も、もう食べ終わって帰ったよ」
教室にはリッパーとスカーレットしかいない。
「ん、取りあえずフルーツ焼きそば」
「あ、ありがとう」
スカーレットは、不機嫌そうにフルーツ焼きそばの代金を要求する。
「お前、よく、カップルと会話できるな。気まずくねーの?」
スカーレットの質問にリッパーは、困ったように首をかしげる。
「う、うーん。まあ、全然そんなことないって言えば嘘になるけど、でも、二人とも大切な人だから、話せれば嬉しいよ」
スカーレットは、フルーツ焼きそばをすすりながら少しだけからかうような表情をする。
「何だか、その言い方だとお前、あのカップルの女の子の事が好きみたいに聞こえるぞ」
本当にちょっとした揚げ足とりのつもりだった。
ちょっとしたいたずら心でからかったつもりだっただ。
しかし、そんなスカーレットの思いとは裏腹にリッパーの顔が真っ赤に染まっていく。
「…………え、お、お前マジ?」
予想外の反応にスカーレットは、フルーツ焼きそばを食べる手が止まる。
リッパーは、顔を真っ赤にしてスカーレットに詰め寄る。
「だ、だ、誰にも言わないで!!」
「お、おう」
突然距離を詰められたスカーレットは、少しだけ戸惑う。
リッパーは、
「ほ、本当に誰にも言わない?」
「そもそも言う相手がいねーよ」
「な、なら安心だね」
「どこに安心てんだ、テメー」
「そ、そっちが言い出したんじゃないか!!」
困ったように言い返したあとリッパーは、ため息を吐く。
「ず、ずっと、悩んでるんだよね。もう、それこそ文化祭始まる前から」
だが、決してそれを表に出してはいけない。
「……どこが良かったんだ?」
「ど、どこだろ…………色々あるけど、しいて言うなら、僕と会話してくれたところかな?」
「お前、それでいいのかよ……」
悲しい理由にスカーレットが若干引いているとリッパーは、続ける。
「あ、あととても笑顔が素敵なんだよ!!」
「結局顔かよ!それでいいのかよ!!」
思いの外しょうも無い理由が出てきてスカーレットは、がっくりと来た。
「お、同じ部活だったし、話せば話すほど惹かれていったんだ……………」
リッパーは、最後のフルーツ焼きそばを食べる。
「それで、お前は何にもせず女をとられた、と」
「な、何にもしてないなんて、ことはないよ!ちゃんと二人が付き合うようにサポートしたよ!!」
「お前、ばっかじゃねーの!!」
力強く答えるリッパーにスカーレットが腹の底から突っ込む。
「好きな女とるためにあれこれやるなら分かるけど、好きな女譲るためにあれこれやるなんて聞いたことねーぞ!!」
普段以上に響く声にリッパーは、目を白黒させる。
大声を出したスカーレットは、肩で息をしている。
そんなスカーレットを見て少し落ち着いたリッパーは、顔を上げて続きを話す。
「あ、あの子の素敵な笑顔はね、いつだって僕の友人に向けられていた」
リッパーは、教室の窓へ視線を移す。
「ぼ、僕はね、その笑顔に惹かれたんだなぁって、改めて思った。そしたら、やっぱりかなわないなぁって悟っちゃった」
窓の外を見続けるリッパーの表情は、自分の好きなものを自慢するちょっと誇らしげな顔で、そして、ほんの少しだけ淋しそうだった。
怒鳴ったせいで息の上がっていたスカーレットは、そんなリッパーを見て目を伏せる。
それからこの話が始まったときからずっと付きまとっていた違和感を指摘する。
「お前さ、順番が逆だよ。友達の彼女を好きになったんじゃなくて、好きになった女の子が友達の彼女になったんだよ」
「………………そ、そっか、そうだね」
納得したようにリッパーは、ゆっくりと頷く。
「辛くねーの?」
スカーレットは、机に肘をつきながらリッパーに尋ねる。
「つ、辛くないって言えば信じる?」
「…………………いいや」
スカーレットは、ゆっくりとかぶりを振る。
リッパーでは、手に入れることの出来ない宝物を見ていることしか出来ない。
手に入れることの出来ないものをずっと見続けるのは、なんて残酷なことだろう。
「あ、あの時の行動を間違っていたとは思わないけど…………でも、今の状況も決していいとは思わないんだ」
「どうすればいいか、わからない、と?」
「う、ううん。分かってはいる」
リッパーは、首を横に振る。
「よ、夜にやる、キ、キャンプファイヤーでケリを付けようと思ってる」
「夜にやるキャンプファイヤー……─?あぁ、後夜祭のか」
「う、うん」
「何で?」
スカーレットの質問にリッパーは、信じられないと言う顔になる。
「し、知らないの!?後夜祭のキャンプファイヤーは、踊るんだよ!?」
「みんなで輪になってぐるぐる回る奴だろ?それがどうして、ケリをつけることになるんだ?」
「ち、違うよ!!いや、それもあるけど、メインはそこじゃなくて、だ、男女二人一組になって踊るんだよ!!」
「え?そう言うのって嫌がらないの?男子も女子も」
「う、うん。嫌なら断れる。だって、強制じゃなくて、
そこまで言われてスカーレットは、ようやくリッパーの言いたいことが分かった。
異性がダンスに誘う。
社交界とかではなく、学生の後夜祭でダンスに誘う。
それは、つまり、そういうことだ。
「カ、カップルが踊るのは、勿論。そして、踏み切れない男子が踊りに誘うんだ」
「………………お前、誘うつもりか?」
スカーレットの質問にリッパーは、静かに頷いた。
「は、花火の時にしようかな、とも思ったけど、やっぱり、分かり易い方がいい」
そう言ってリッパーは、申し訳なさそうにスカーレットを見る。
「ね、ねぇ、スカーレット。お願いしてもいい?」
「モノによる」
「が、頑張れって言ってくれない?」
リッパーのお願いにスカーレットは、首を傾げる。
「何で、あたし?」
「と、友達を応援するのって普通じゃないの?」
「友達?あたしとお前が?」
スカーレットがそう尋ねるとリッパーは、泣きそうな顔になる。
「え?だ、だって、文化祭の準備一週間も一緒にやって、僕のウチに来て、悪巧みも一緒にやったら友達と呼んでもよくない?」
リッパーの言葉を聞いたスカーレットは、目を丸くしたあと、優しく笑う。
相変わらずつっかえながら喋るが、それでもリッパーの中でスカーレットは、友人だった。
不満がないと言えば嘘になる。
だが、それでも、欲しい言葉を貰えた。
そんな状態で笑みを堪えろと言う方が無理な話だ。
「んだよ、わかりづれーんだよ」
「い、いや、こんなに分かり易く言ったことないと思うんだけど」
「そっちじゃねーよ」
スカーレットは、そう言うとリッパーの背中を力いっぱい叩く。
「~~~~~~~~~~~っ!!」
想像以上の衝撃にリッパーは、悶絶している。
「がんばれ、リッパー、根性見せろ、リッパー」
スカーレットは、両手を腰に当てる。
「お前が一生懸命なのは、あたしが誰よりも知ってる。だから、大丈夫だ。お前なら必ずケリを付けられる」
八重歯を見せながらスカーレットは、にぃっと笑った。
「あ、ありがとう」
背中をさすりながらそれでもリッパーは、お礼を言った。
◇◇◇◇◇◇
階段下の倉庫でクイーン一行は、集まっていた。
「──────というのが、今回、ルイーズが戦闘をしていたときの状況です」
「了解」
ルイーズは、伊達眼鏡を直しながら返事をする。
「それで、教官、どうするんですか?全員アリバイがありますけど」
ベイカーがルイーズに尋ねる。
「別にどうもしない」
ベイカーの質問に対し、ルイーズは、どうってことなさそうに答える。
ルイーズの返答にベイカーとエラリィが首をかしげる。
クイーンは、組んでいた腕をほどきルイーズを真っ直ぐに見据える。
「ルイーズ、切り裂きジャックが誰だか分かっているんですか?」
「分かってるよ」
ルイーズは、クイーンの視線を押し返し、尋ねる。
「君も分かってるだろう、クイーン?」
「えぇ、分かってるです」
二人の会話にベイカーとエラリィは、首をかしげる。
ルイーズは、眼鏡の位置を直す。
昼を過ぎ、日も傾きだした。
「駒は揃った、手札も揃った。さあ、幕を引こう」
祭りの終わりは直ぐそこだ。
さあ、文化祭編も大詰めです!!
では、また外伝69で( ̄∇ ̄)