教官   作:takoyaki

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外伝65です!!


もう、疲れたので今日は1日家にいました。


てなわけで、どうぞ


「責任のなすりつけ合いしてんじゃない」

 「それじゃあ、今日はありがとうございました」

 ルイーズとスカーレットは、リッパーの家の玄関で頭を下げた。

 無事画架も選び終え、いい時間になったところで、今日は解散となった。

 「こちらこそ」

 リッパーの母と父が頭を下げる。

 「文化祭成功するよう祈ってるよ」

 「息子にもよく言っておくわ」 

 リッパーの母は、そう言って何か思い出した顔をする。

 「ところで、あなた達のどちらがお菓子を作っているの?」

 「私ですけど…………」

 ルイーズがキョトンとしながら手を上げる。

 「なら、少し待ちなさい」

 「へ?」

 戸惑うルイーズに構わずリッパーの母は、奥の部屋に姿を消す。

 「何だろう?」

 「さあな」

 ルイーズとスカーレットは、二人で首をかしげる。

 すると、リッパーの母が奥から紙袋を持って現れた。 

 「これを持っていきなさい」

 リッパーの母は、紙袋をルイーズに渡す。

 「これは?」

 ルイーズが首を傾げる。

 「紅茶の茶葉。備品なら目立つでしょうけれど、まあ、この程度の消耗品なら問題ないでしょう」

 紙袋の中には、缶に入った紅茶の茶葉が二つ入っていた。

 ルイーズは、缶に書かれた銘柄を見て言葉を失う。

 そんなルイーズにかかわらず、スカーレットは、大喜びだ。

 「いいんですか!ありがとうございます!」

 「馬鹿!!これ、めちゃくちゃ高い紅茶だよ!こんなの受け取れる訳が………」

 「あら、価値を知っているのね」

 リッパーの母は、嬉しそうに笑うともう一度奥に引っ込み、今度は先ほどより大きな紙袋を二つ持ってきた。

 二つの紙袋には、その銘柄の紅茶は勿論、それ以外の紅茶が大量に詰まっていた。

 「どれもこれも、ヤバイ……………やっぱり、これは………」

 ルイーズの顔から血の気が引く。

 そんなルイーズの顔を面白そうに見ながらリッパーの母は、口を開く。

 「いいのよ。こういうのはね価値が分かっている方が使うべきよ」

 「いや、飲むの何の価値も分かっていない学生ですけど………」

 「飲むのじゃないわ。│使うの《ヽヽヽ》よ」

 にっこりと微笑むリッパーの母。

 「ちゃんと価値の分かっているあなたなら、必ず最善の使い方をするでしょう?」 

 ルイーズは、キョトンとした顔をし、そして、大きくため息を吐く。

 「リッパー。君、紅茶飲むのかい?」 

 「だ、出されれば」

 「君のお父さんは?」

 「僕は、コーヒー派だから」

 ルイーズは、リッパーの母の手をガシっと握り締める。

 「心の底から同情します」

 「いいのよ。私ももう、諦めてるし」

 リッパーの母は、疲れたようにため息を吐く。

 ルイーズは、深々と頭を下げる。

 「ありがとうございます。大切に使わせてもらいます」

 ルイーズは、お礼を言うとイマイチ分かっていない顔をしているリッパーとスカーレットを指差す。

 「いいかい、明日からビシバシ行くから覚悟したまえよ」

 ルイーズは、そう言い放つとリッパーの玄関を出た。

 「え、はぁ?ちょ、待てよ、おい!あ、すいません、今日はありがとうございました!」

 スカーレットも慌ててルイーズを追いかけて外に出た。

 そんな二人を見送ると、リッパーの母はクスリと笑みをもらす。

 リッパーは、そんな母を見ながらポンと手を叩く。

 「もしかして、母さん、紅茶派?」

 「えぇ。この家で誰よりも淹れ方にこだわっていたのよ」

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 「と、言うわけでリッパーを監視するのは、彼女に任せたよ」

 「いや、それより、学園生活超エンジョイしてるじゃないですか」

 ベイカーは、呆れている。

 あんなに嫌がっていたスカートの制服を当たり前のように身につけたまま、今日の事を報告するルイーズ。

 「どうするんですか?これじゃあ、監視なんて出来ないでしょう?」

 ベイカーの言葉にルイーズは、いたずらっぽく笑う。

 「大丈夫。その辺は、考えてあるよ」

 ルイーズは、眼鏡を外し、眉間をもむ。

 普段かけていないものを掛け続けるというのは、なかなか疲れるのだ。 

 「ところで、クイーン、情報は?」

 「んー特には。せいぜい、勤務形態だけですね」

 「というと?」

 「夜の施錠を担当した先生は、翌日、一時限目を休むそうです。それで、勤務時間の帳尻を合わせているようです」

 「凄い!超ホワイトじゃん!」

 「なので、夜の施錠は、翌日一時限目に授業のない先生に限るそうですよ。そして、その場合のホームルームは、副担任が担当するそうです」

 「すげぇ!!そんなことできるの?」

 「まあ、学園長のおかげですね」

 クイーンの言葉にルイーズは、ため息を吐く。

 「流石。たいしたもんだね」

 「因みに文化祭での挨拶も名物らしいですよ」

 「その情報いる?」

 ルイーズは、思わず聞き返し、そして、それか大きくため息を吐く。

 「まあ、なんにしても、まさかこの歳でまた、文化祭に参加することになるとは思いもしなかったよ」

 「え?教官、文化祭に参加してたんですか?」

 「おい、どういう意味だい?」

 真剣に驚いているベイカーに対しルイーズが不機嫌そうに聞き返す。

 「だって、教官、そう言うの嫌いそうじゃあないですか」

 「仕事を好き嫌いで選ぶようなことはしないさ」

 「クラス行事を仕事と言い切りますか……………」

 「教官、そういうところですよ」

 エラリィとベイカーに交互に言われルイーズは、首をかしげる。

 「そう?」

 「ルイーズの社交性は死んでるので」

 「君さあ、私になら何言っても言い訳じゃあないんだよ…………まあ、もういいや、今日はもう寝る」

 ルイーズは、立ち上がり寝室に向かう。

 「ああ、そうだ」

 寝室へ向かう足を止め、くるりと振り返る。

 「多分文化祭前日は学園に泊まることになると思うから」

 「……………作戦決行の前ですよ、本気ですか?」

 「本気本気、マジマジ」

 怪訝そうなベイカーにルイーズは、ひらひらっと手を振ってそのまま寝室に入ってしまった。

 『………………』

 残された言葉のない三人。

 しばらくすると、ルイーズの寝室から寝息が聞こえ始めた。

 

 

 

 

 

 「ベイカーの教官でしょ、何とかしてくださいよ」 

 「隊長の友達でしょ。何とかしてくださいよ」

 「責任のなすりつけ合いしてんじゃない」

 

 

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 「…………よし、二人ともまともに紅茶淹れられるようになったね」

 文化祭は、ついに翌日となった。 

 満足げなルイーズの声が喫茶店用に様変わりした教室に響く。

 代わりにぐったりしたリッパーとスカーレット。

 「お前、手加減って言葉知ってる?」

 「仕方ないだろう?二人して紅茶まともに淹れられないんだもの」

 元教官というだけあってルイーズの紅茶の指導は並みのもではなかった。

 「な、何でだろうね…………言葉遣いは至って柔らかいのに有無を言わせない迫力があったんだけど………」

 リッパーは、そう言って机に突っ伏したまま動かない。

 「というか、紅茶ばっかやってたけど、コーヒーは!?」

 スカーレットの質問にルイーズは、興味なさそうに首をかしげる。

 「え?適当でいいんじゃあない?」

 「いいわけねーだろ!!コーヒーもメニューにあるんだぞ!!」

 「だって、ドリップパックに注げば普通に出来るじゃん」

 「それ、紅茶にも言ってもいいか?」

 「死にたいの?」

 「お、落ち着いてスカーレット!!言いたいことは凄く分かるんだけど!!気持ちは、痛いほど分かるけど!!」

 今にも掴みかからんばかりの勢いのスカーレットをリッパーが慌てて羽交い締めにする。

 「ふーむ、何だかカリカリしてるなぁ………そんな二人にはこれをあげよう!」

 能天気にルイーズは、箱の蓋をパカッと開けると中からシフォンケーキが出した。

 「切り分けてあげるからね」

 にこにこしながシフォンケーキを切り分ける。

 取りあえず切り分けられたケーキを二人は食べる。

 ケーキを口にした瞬間目を丸くした。

 「紅茶…………!?」

 「ビンゴー!!」

 ルイーズは、紅茶缶を持ってにっこりと笑う。

 「君のお母さんから貰った紅茶の中に抜群に香りの強いのがあったからね、ケーキにすればいけると思ったんだ」

 切り分けたケーキを食べながらルイーズは、ふふんとない胸を張る。

 「どう?喫茶のメニューとかにしない?」

 「いや、今更追加なんて無理だぜ。材料もないのに……」

 「だからさ、限定十切れとかにしてさ、売り出すの。どう?」

 ある意味看板メニューだ。

 「ま、まあそれなら………」

 スカーレットの了承をとるとルイーズは、メニュー表を見る。

 スカーレットとリッパーもつられて見る。

 見やすい大きさと適度な装飾。

 何より目を引くのは……

 「これで大丈夫か?」

 「君達も了承したろう?」

 「したけどよ………」

 「なら、後は明日を待つだけ、ほらリッパーは帰った帰った」

 ルイーズは、メニューを閉じ、リッパーに手でしっしっとする。

 「え、ぼ、僕だけ?二人は?」

 「私たちは学校に泊まり込み」

 ルイーズの言葉にリッパーは、首を傾げる。

 「え?ま、ますます何で?」

 「まだ、作業が終わってないから」

 「………ほ、本当は?」

 「看板が壊されないように見張り」

 ルイーズの言葉にリッパーは、ハッとしたように顔を上げる。

 顔を上げて目に入ったのは、リッパーの書き上げた看板。

 後は、明日画架を持ってきて飾れば完成だ。

 前にスカーレットが作った看板は粉々に砕かれてしまったのだ。

 ルイーズの横でスカーレットは、渋面のまま頷く。

 「生徒会の連中は、泊まるって言ってるしな………」

 「もう一回やるとかもしれないしねぇ」

 「な、なら尚更僕だけ帰るわけには…………」

 「女の子二人と一緒に寝たいの~?リッパー、だいたぁ~ん」

 ルイーズが茶化して言うとリッパーは、顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 「あー………………」

 バツが悪そうに頭をかきながらスカーレットをちらりと見る。

 スカーレットは、はぁとため息を吐く。

 「ここまでやってもらえりゃ、十分だ。後は明日働いてくれよ」

 スカーレットにそう言われ、リッパーは、渋々頷く。

 「い、いいけど、」

 そこまで言ってちらりと二人を見る。

 「お風呂とご飯はどうするの?」

 リッパーの質問に二人は、固まる。

 「だ、だって、誰かは教室にいないとでしょう?なら、お風呂とご飯はどうするの?」 

 流石に客商売するのに風呂に入らない訳にはいかない。

 ご飯だって、ここにあるのはクッキーぐらいだ。

 「ぼ、僕が残るから二人は、そう言った用事を済ましてきなよ」

 ルイーズは、目を丸くした後肩をすくめる。

 「随分、気が利くじゃあないか」

 「そ、そうかな?」

 スカーレットの肩にルイーズは、手を置く。

 「それじゃあ、二人で行ってくるよ。君は、そうだなぁ、余力があったらシフォンケーキのイラストでも描いておいておくれよ」

 「い、いいよ。そ、それぐらいなら………」

 「それじゃあ、任せた」

 「へ!?、あ、おい!!」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 風呂と夕食を終えたスカーレットとルイーズは、学園に戻った。

 「で、出来たよ」

 教室に戻ったルイーズとスカーレットを出迎えたのは、リッパーとシフォンケーキのイラストが追加された看板だ。

 ルイーズの作ったシフォンケーキを既に出来上がった看板に違和感なく溶け込んでいる。

 絶妙な色合いで描き上げてあるそのシフォンケーキは、看板の出来を更に引き上げた。

 「ど、どう?」

 おずおずと尋ねるリッパー。

 ルイーズは、スカーレットの脇を肘で小突く。

 スカーレットは、ハッとしたように現実に戻る。

 「いや、すげぇよ!これ。こんなのが来るなんて思いもしなかったぜ」

 スカーレットは、少し興奮しながらそう賞賛するとリッパーは、照れくさそうに頭をかく。

 「それじゃあ、明日よろしくね」

 ルイーズの言葉にリッパーは、少しだけ眉をひそめる。

 「ほ、本当に僕帰ってもいいの?」

 確かにクラスの出し物なのに自分だけ帰るというのは、些か心苦しい。

 「別にいいさ。明日、君は、画架を持ってくるんだ。今日ぐらいゆっくりしたまえ」

 「わ、分かった…………」

 リッパーは、渋々頷き扉に手をかける。

 「じ、じゃあ、また明日」

 振り返ってぎこちない笑顔で言うリッパーに二人は、笑顔で答える。

 「おう!」

 「うん。またね」

 リッパーは、教室を後にした。

 残ったのは、スカーレットとルイーズだけ。

 「なあ、ルイーズ。明日は………」

 「私は客引きをやりながら、切り裂きジャックの容疑者候補の誰かを尾行するよ」

 ルイーズは、真面目な顔でそう告げる。

 そう言ってルイーズは、スカーレットの肩をポンと叩く。

 「だから、君は、リッパーを見張りつつ喫茶店を盛り上げたまえ」

 ルイーズの言葉にスカーレットは、俯く。

 「なあ、やっぱり、リッパーは切り裂きジャックなのか?」

 「それを確かめるんだよ。そして、生徒会の連中にひと泡吹かせてやろうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 





もう、本当、人を振り回す事にかけては、絶好調のルイーズですね。
さあ、そんなわけで、次回から文化祭です!!


では、また外伝66で( ̄∇ ̄)


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