教官   作:takoyaki

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外伝63です!!


遂に令和ですね!!新元号の中、頑張って行きましょう!!



もう少し、更新のスピードもあげていきたいと思います………

てなわけで、どうぞ!!


「どうしてそっち行くんだよ」

  「さて、まずは自己紹介といこうじゃあないか。私はアイリーン。よろしく!」

「ぼ、僕は」

「全員同じクラスだろ!!なんで自己紹介しなきゃいけねーんだ!!」

ルイーズの勢いに押されて自己紹介しそうになるリッパーより先にスカーレットが声を上げる。

「ちぇー………物事はノリが大事なのにぃー」

ルイーズは、つまらなさそうに口を尖らせた後、足元にあるモノに目を向ける。

「さて、目下のところの問題は…………」

ルイーズたちの目の前には、粉々になった看板が転がっていた。

「困ったねぇ」

 

──────

 

 

 

時間は少しだけ遡る。

調理室での作業を終えて教室に戻ると、そこには、粉々に砕かれた看板が転がっていた。

頭の中が一瞬真っ白になったスカーレットを座らせルイーズが教壇に立ち高らかに先ほどの宣言をしたのだ。

「まあ、作り直すしかないよねぇ」

ルイーズの言葉にスカーレットは、渋い顔をする。

「各クラスに割り当てられる木材は決まってる」

「去年の余り物なのに?」

「去年の余り物だからだよ。数に限りがあるんだ」

「じ、じゃあ、どこから仕入れるの?」

リッパーの言葉にスカーレットは、ため息を吐く。

「仕入れる手立てはいくらでもあるけどよ、問題は金だ」

スカーレットは、眉間にしわを寄せる。

「誰がその金を負担するんだ?」

リッパーは、答えを詰まらせる。

ルイーズは、首をかしげる。

「別に喫茶店の売り上げから出せばいいだろう?」

ルイーズの言葉にスカーレットは、首を横に振る。

「この学園の文化祭の売り上げは全部、生徒会に計上することになってる」

ルイーズは、眉をひそめる。

「わかったろ?だから、立替え払いも無理なんだよ」

 

 

 

────

 

 

というのが少し前の出来事だ。

ルイーズは、教壇に腰掛け右手の指を二つ立てる。

「二つ、分からない点がある」

ルイーズはそう言って左手の指を一つ立てる。

「一つ、この喫茶店のクッキーとかの材料費はどこから出ているんだい?」

「生徒会にあらかじめ予算を伝えておくんだ。で、決定した金額の中でやりくりをする。だから、もう看板の木材を買う金はない」

スカーレットは、木材を支給品で代用するつもりだったので、その分クッキーなどの食材費で予算を使い切った。

「質問増やすよ。その金は返さなきゃいけないのかい?」

「いや、そんなことはないと言われてる」

「……………質問二つ、計上した売上金はどこに行くんだい?」

「確か、各方面に寄付だって話だぜ」

ルイーズは耳元の髪の毛を弄る。

「売り上げ金を計上するって、つまり、生徒会から貰った金は返すってことじゃあないのかい?」

「……………??」

スカーレットは、首をかしげる。

「ね、値段設定はどうやるの?」

リッパーがおずおずと尋ねると、スカーレットは首をかしげる。

「そりゃあ、かかった経費に利益を上乗……せ………し、て」

スカーレットは、息を飲む。

「そゆこと。売上金の中には利益と経費の両方があるんだよ。利益をよこせと言うならまだしも、売上金をよこせと言うのは実質渡された予算を返せと言っているのと一緒だよ」

ルイーズの言葉にスカーレットは、頭をガシガシとかく。

「やられた…………」

スカーレットは、大きくため息を吐く。

別に金を返すことはいい。

ただ、問題はやり方だ。

それがとても気に入らない。

そして、それに気がつかなった自分に腹がたつ。

ルイーズは、リッパーの方を見る。

「リッパー」

「な、何?」

「君、この予算の仕組みとスカーレットが予算をどう使うつもりだったか知ってるかい?」

「い、いや」

リッパーは、首を横に振る。

「他のクラスメイトは知ってると思うかい?」

「た、多分知らない。去年も今年も文化祭でクラスの出し物に関わっているのはスカーレットだけだもの」

「なら、もう一ついいかい?」

ルイーズは、耳元の髪の毛から手を離す。

「うちのクラスに生徒会役員は、いるかい?」

ルイーズの言葉にスカーレットは、舌打ちをし、リッパーは、こくりと頷く。

「い、いるよ。スミスとジョンは、生徒会役員だ。それにハレとハーブとも仲が良い」

「つーか、両方付き合ってるぜ」

「スミスとジョンが?ハレとハーブが?」

「どうしてそっち行くんだよ」

「冗談だよ」

ルイーズは、細切れになった木片を指で弾く。

「ま、犯人は、ほぼ決まりだよねぇ」

文化祭のルールを知っているからこその嫌がらせ。

そして、クラスメイトぐらいしかやる理由はない。

「奴らを引き摺り下ろしてもいいんだけど、残念ながら私たちにそんな時間がない」

ルイーズは、教壇からひょいと離れる。

「とりあえずは、看板をどうにかしねーとなぁ…………」

がっくりとスカーレットは、うなだれた。

それもそうだろう。

何せ、ここまで彼女が一人で準備したのだ。

その結果がこのゴミクズでは、心労も倍だ。

「ま、看板は任せた」

そんなスカーレットを対して労いもせずルイーズは、さらっとそう返す。

「私は、クッキーと後、残りの材料で出来そうなお菓子作っとく」

「お、おお。悪いな」

「あぁ、それと、説明会の資料おくれよ」

「説明会って文化祭実行委員会の資料でいいのか?」

「いいよ。というか、それが欲しい」

「別にいいけどよ」

スカーレットは、そう言って、資料のファイルを渡す。

「何に使うつもりだ?」

「内緒。女の子は秘密があった方が素敵だからね」

ルイーズは、ウィンクをして教室を出て行った。

残されたのは二人、スカーレットとリッパーだ。

(き、気まずい……………)

スカーレットは、困ったように目をキョロキョロと動かす。

(何であたしだけ、置いてくんだよ!!こいつとは全然喋ったことないから、すっげえ気まずいんだけど!!あ、喋ったことないのこいつだけじゃなかった。クラスメイトと喋ったことねーわ)

そんな一人問答を行なっているスカーレットに構わず、リッパーは、足元に転がっている元看板を手に取る。

「…………丁寧な仕事だね」

下手すれば聞き逃してしまうほど小さな声でポツリとリッパーは、呟いた。

「そうかぁ?特に何も考えずに叩きこわしてると思うけど?」

まさか聞かれているとは思わなかったのだろう。

リッパーは、ビクっと肩を震わせ、それから首を横に振る。

「ち、違うよ。そっちじゃないよ。看板の色塗りの方だよ」

木片をぎゅっと握りしめながら、リッパーは、そう答えた。

「た、確かにそこまで上手じゃないけど、でも、仕事がとても丁寧だよ。い、色ムラをなくそうとか、ダマにならないようにとか、そういう細かい作業に神経を使ってるのがすごく伝わってくる」

いつものように言葉をつっかえながら喋るリッパー。

それでも必死に伝えようとしているのが分かる。

スカーレットは、少し目を丸くした後不機嫌そうに顔をしかめる。

「何だ、お前。偉そうに批評しやがって」

ジロリと睨むスカーレットにリッパーは、ビクっと肩をすくめる。

「だ、だって、僕、美術部だし…………」

「…………は?」

「い、いつも、画用紙に絵を描いてたんだけど…………」

「絵って、あの黒塗りの奴か?」

「み、みんな同じ反応なんだ………」

がっくりと肩を落とすリッパー。

「い、いちおう、あの黒い部分を削って描く絵なんだけど……」

 「あー、そうだったのか…………てっきり、心にどえらい闇でも抱えてんのかと思った」

 「あーうん。ぼ、僕こんな性格だしね」

 斜め下を見ながら落ち込むリッパー。

 スカーレットは、拳をギュッと握って口を開く。

 「それで、ここからどうすんだよ?」

 思った以上に不機嫌な声が出てしまった。

 口から出てきたその声を聞いたスカーレットは、思わず下唇を噛んだ。

 こんなのただの八つ当たりだ。

 自分よりも弱そうな奴に当たり散らす、それは、そいつになら何を言ってもいいと見下している事に他ならない。

 「………い、いや悪ぃ……その……」

 「だ、大丈夫だよ。や、八つ当たりなんていつもの事だもん」

 リッパーは、軽く笑いながらそう答える。

 それから、ポンと手を叩く。

 「あ、あのさ。そんなことより」

 「?」

 「ひ、一つ心当たりがあるんだ」

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 リッパーに連れられて、スカーレットがやってきたのは美術室だ。

 リッパーに促されるままにスカーレットは、美術室に入る。

 油絵の具の匂いと、それと旧校舎の匂いが混じった匂いが美術室を満たしていた。

 いつ来ても独特な空間だ。

 しかし、スカーレットは、それほどこの空間が嫌いではなかった。

 他とは違う不思議な空間と言うのが、スカーレットをすこしだけわくわくさせる。

 「それで、お前の考えって?」

 スカーレットが訪ねると、リッパーは、おずおずと指で示す。

 「何それ?」

 「キ、キャンパスをおく台、イーゼルとか画架とか云うんだけど」

 リッパーは、そう言ってそれを自分の前に持ってくる。

 「こ、これを台にして画用紙とか置けばそこそこ見栄えのする看板になると思わない?」

 リッパーの提案にスカーレットは、目を丸くする。

 「それだ!!」

 スカーレットは、ガシッとリッパーの両肩を掴む。

 女子が目の前にいるのだが、突然摑まれた肩の痛みがひどくてはリッパーは、それどころではない。

 「ついでだ!お前にその絵を描くの頼んでいいか?」

 「い、いいよ。というより、元々そのつもりだったし……」

 「よっしゃあ!!これで万事解────」

 「んなわけないだろう」

 いつの間にやら追いついたルイーズが後ろから例の資料をまとめてスカーレットの頭を叩く。

 スパンといい音が美術室に響き渡りスカーレットは、忌々しそうに頭を抱えて睨む。

 「この資料によれば、学校の備品を借りる場合は、事前に申請を出さなくてはならないって事らしいよ」

 「なら、申請出せば………」

 「因みに申請期間は、昨日まで」

 「………………このぐらいなら、別によくね?」

 「クラスのはみ出しものの私たちがルールを犯せばここぞとばかりに糾弾されちゃうよ」

 それこそ鬼の首を取ったように騒がれてしまうだろう。

 スカーレットは、がっくりと肩を落とす。

 「そっか………いい案だと思ったんだけどなー」

 「な、なら、僕のうちの使う?」

 

 

 

 

 「へ?」

 

 

 







学園編は、まだまだ続きますよ!!


では、また外伝64で( ̄∇ ̄)

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