教官   作:takoyaki

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外伝58です!


申し訳ないです…………アップし直しました


「だよねぇ~」

【チィ!!】

切り裂きジャックは、空いている短剣でルイーズの拳を防ぐ。

【この!!】

掴まれた腕をぐるりと回し、切り裂きジャックは、ルイーズの拘束を解く。

そして、その短剣を横薙ぎに振るう。

ルイーズは、それをかわし、宙返りをして机の上に立つ。

「やれやれと、持ってきて正解だったねぇ」

そう言いながらルイーズは、もう片方の手に真っ黒な手袋をはめる。

そして、机の上から飛び降りると同時に切り裂きジャックを殴りつける。

切り裂きジャックは、短剣を二つを交差させて、受け止めた。

【つっあ!!】

掛け声と共にルイーズの拳を二つの短剣を使って弾く。

弾かれた拍子にルイーズの身体が半身になる。

「っだぁら!」

これ以上下がらぬよう堪えると床を打ち鳴らし更に拳を放つ。

【戦迅狼破!!】

次の瞬間切り裂きジャックから狼をかたどった闘気が発せられた。

それは拳を放つルイーズを巻き込み、教室のロッカーに叩きつけた。

「っ!!」

ロッカーの空洞音が夜の教室に鳴り響く。

衝撃に顔をしかめているルイーズ。

そんなルイーズに切り裂きジャックは、短剣を投げる。

(二つ!)

「っらあ!!」

ルイーズは、迫る短剣を拳で殴りつけた。

甲高い鉄と鉄をぶつけた音が鳴り、短剣は、地面に落ちた。

「今度はこっちの番だ!!」

ルイーズは、近くにあった椅子を掴みそのまま切り裂きジャックに投げつけた。

宙を進む椅子。

投げたのは椅子だというのに、まるでボールのような勢いで空を切って進む。

【剛招来!!】

赤い闘気を纏った切り裂きジャックは、それを避けず自分から向かっていく。

その勢いに椅子は一瞬空中で動きを止める。

切り裂きジャックは、それを乱暴に払いルイーズに向かい、逆手に持った短剣で斬りかかる。

ルイーズは、近くにあった椅子で防ぐ。

短剣は、椅子に刺さり動きが止まった。

ルイーズは、椅子に短剣が刺さった瞬間、椅子から手を離す

短剣に椅子の重さがかかり切り裂きジャックの次の行動が一瞬遅れる。

そこにルイーズは、右の拳を叩き込んだ。

僅かによろめく切り裂きジャック。

そこにルイーズは、更に追撃を放つ。

切り裂きジャックは、態勢を崩しながらももう片方の短剣で防ぐ。

「甘い!!」

ルイーズは、拳を思い切り振り抜いた。

殴り飛ばされた切り裂きジャックは、そのまま机を巻き込み床に打ち付けられる。

眼前でルイーズは、拳を開く。

その中には短剣があった。

「あの一瞬で投げてくるのかい…………」

そう呟き短剣を地面に捨てる。

立ち上がった切り裂きジャックは、更に短剣を投げる。

ルイーズは、拳を構え向かってくる短剣を殴り飛ばす。

次の瞬間、肩に鋭い痛みが走った。

「?」

不思議に思って肩を確認するとそこには、短剣が刺さっていた。

「………全部落としたはずだけどねぇ」

ルイーズは、真っ直ぐ短剣を引きに抜く。

それと同時に切り裂きジャックが距離を詰める。

迫り来る短剣をルイーズは、自身の血で塗れた短剣で防ぐ。

【戦迅狼破!!】

再び現れたの闘気の狼にルイーズは、廊下まで吹き飛ばされた。

「っつう…………」

短剣の刺さった肩から地面に落とされ思わず呻くルイーズ。

呻きながら手にある短剣を確認する。

「…………黒い……そうか、そういうことか」

【何がだ?】

短剣を振り上げた切り裂きジャックがそう尋ねてきた。

振り上げられた短剣は、当然のようにルイーズに向かって振り下ろされる。

ルイーズは、廊下を転がり立ち上がる。

「白刃を数本投げてその中にこの暗さに溶け込むほど黒い短剣を投げる。白刃にしか目がいかない私はまんまと黒い短剣の餌食となったわけだ」

血塗られた短剣を確認する。

「大したものだよ。初手ならまず避けられない。だけど───」#

再び切り裂きジャックが短剣を投げる。

ルイーズは、体を捻ってかわす。

短剣は、廊下に散らばる。

「一回食らえば防げるねぇ」

拳を開くとその中には、真っ黒な短剣があった。

「まさに初見殺しってやつだねぇ」

【……………】

切り裂きジャックは、再びルイーズに向かってきた。

しかし、ピタリと足を止める。

耳に手を当て何やら話しているようだ。

「お喋りなんて余裕じゃあないか!!」

その隙にルイーズは、距離を詰める。

【残念だが、仕切り直しだ】

切り裂きジャックは、足元に投げつける。

その瞬間、辺りを白い光が包む。

(閃光弾!!)

ルイーズは、慌てて眼を閉じる。

そして、しばらくして目を開けるとそこには誰もいなかった。

「………………逃げられたか……」

ため息を一つ吐いてルイーズは、校舎を後にした。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「ただいま」

「おかえりです。随分遅かったで────」

帰ってきたルイーズの姿を見てクイーンは、絶句した。

「ルイーズ!!どうしたんですか!!それ」

肩からは血が流れ、それ以外もぼろぼろだ。

クイーンの声につられてベイカー達もルイーズの方を見る。

「切り裂きジャックがいた」

ルイーズの短い返答を聞いたクイーンは、目を細める。

「…………とりあベイカー達は出て行ってください。ルイーズの傷の手当をするので」

「それじゃあ、教官。上着貸してください」

ルイーズは、言われた通り、ベイカーに制服の上着を渡す。

「着るんじゃあないよ」

「元気そうで何よりです」

ルイーズの冗談にベイカーは、冷めた声でそう返すと渡された上着を持って部屋から出て行った。

クイーンは、二人が出て行ったのを確認すると応急処置用の黒匣(ジン)を引っ張り出してくる。

「嫌な顔してる場合じゃないですよ」

露骨に嫌そうな顔をするルイーズにクイーンがぴしゃりと言い聞かせる。

ルイーズは、観念したようにワイシャツを脱ぐ。

クイーンは、応急処置用の黒匣(ジン)を使用する。

傷自体はそこまで深くないため、あっという間に塞がった。

因みにワイシャツは、短剣の刺さった場所を中心に真っ赤に染まっていた。

「こりゃあ、大変ですね。洗濯でおちるでしょうか」

「まあ、水につけとくしかないんじゃあない?」

「ですよねぇ」

ルイーズは、適当にそう返しながらルームウェアに着替える。

「ベイカー、エラリィ、もう入っていいよ」

ルイーズは、部屋の外にいる二人に声をかける。

しかし、入ってきたのはエラリィだけだった。

「……あれ?」

「ベイカーならもう少しかかりますよ」

「?そ、そう」

エラリィの返答に少しだけ困惑するルイーズ。

エラリィは、そんなルイーズを気にもとめず血だらけのワイシャツを見る。

「明日、ワイシャツどうするんですか?」

「上着の中がワイシャツだったらなんでもいいみたいだし別にどうってことないよ」

「でも、上着が…………」

クイーンが大きくため息を吐く。

血はワイシャツが吸ってくれのであまり目立たないが、ナイフで貫かれた穴が空いている。

「あぁ。それなら大丈夫だ」

「へ?」

エラリィの言葉にクイーンは、大きくため息を吐く。

するとコンコンと扉がノックされた。

「いいよ」

ルイーズが許可をするとベイカーが、上着を持って入ってくる。

「君何してたんだい?」

ルイーズが尋ねるとベイカーが手に持った上着をルイーズに向かって投げる。

「直しときました。よく見ないとわからないと思いますよ」

ベイカーに言われたルイーズは、目を凝らす。

確かに近くでよく見れば塞いだ跡があった。

しかし、普通に見れば分からない。

「おっどろいたぁ!!君すごいね」

素直に感心しているルイーズにベイカーは、プイと顔をそらす。

「これぐらいならまあ」

ベイカーは、そう言いながら裁縫道具をしまう。

「ただし、これ以上破れたらアップリケを付けざるをえませんからね」

「マジで!!」

「何でちょっと楽しみにしてるんですか!!」

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

「何してんだ、転校生?」

「宿題。昨日やるの忘れてた」

朝早く来たルイーズは、机の上でプリントを広げる。

昨日アレだけ苦労して手に入れたというのにルイーズは、宿題もせずに寝てしまったのだ。

それに気付いたのは、朝起きてから。

おかげで左手でパンを食べながら右手で問題を解くということをやる羽目になった。

スカーレットは、どかっと椅子に腰を下ろす。

「メガネのクセにそれかよ」

「メガネ関係ないだろう」

宿題の問題を見て一瞬考え込む。

過去に勉強した内容だが、それも昔の話だ。

やり方を必死に思い出しながら、答えを埋めていく。

「それでスカーレット、君は?」

「なあにちょっと切り裂きジャックの調査に来たんだよ」

胸を張ってそういうスカーレットの口元から八重歯が覗く。

「安楽椅子探偵も憧れるけど、やっぱり捜査の基本は、足で稼ぐことだ」

「現場百片は、刑事だと思うけどねぇ」

ルイーズは、最後の空欄を埋める。

「それで、何かあったのかい?」

「いいや。まだ何にも」

「ないな」

「無駄足だったね」

「捜査の基本は無駄足を踏むことだ」

「それはそれは…………と、よし、出来た」

丸付けまで済ませたルイーズの宿題をスカーレットは、横から覗き込む。

「何だい?」

「………いや、答え写したりしないんだなって」

「そう言う君は写したのかい?」

「当然」

そう言って見せるスカーレットの宿題は、全て答えが埋まっていた。

ルイーズは、そんなスカーレットの宿題を見て呆れたようにため息を吐く。

「君さあ、答えだけ写してるとバレるよ。せめて解き方も一緒に写さなきゃ」

ルイーズの言葉にスカーレットは、つまらなそうに鼻を鳴らす。

「別に。今までバレてないし、それにバレたってどうにもならねーよ」

スカーレットは、そう返すと少しだけくせっ毛の髪を手櫛で整える。

ルイーズは、解いた問題に丸付けをする。

流石に全問正解だと、目に付くので適度に間違えてある。

「ま、私はどうでもいいけど」

丸付けを終えたルイーズは、スカーレットに宿題を返す。

「宿題の答えすら諦めるような奴が、切り裂きジャックを突き止めようとかちょっと身の程を知らないんじゃあないのかい?」

ニヤリと笑うルイーズにスカーレットは、頬を引きつらせる。

「知り合って二日でその口の利き方かよ。ちったあ言い方考えろよ」

「自分を偽らないのが私のいいところだから」

潜入捜査をして身分と年齢を偽っているルイーズがいけしゃあしゃあと言う。

「さて、そろそろ授業が始まるよ」

いつの間にかクラスに人が集まり時間も早朝とは言えなくなっている。

スカーレットは、腕を組む。

「ちぇ、もう少し色々話したかったんだがなぁ」

「まあまあ、昼休みにでも聞いてあげるよ」

肩をすくめながらそういうルイーズにスカーレットは、半眼を向ける。

「お前助手だよなぁ?なんで探偵より偉そうなの」

「会って二日の相手に偉そうにしてんじゃあないよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

午前の授業が終わり、昼食。

「さて、スカーレット。私のお弁当はあるのかい?」

「覚えてたのかよ」

「まさか、作ってこなかったのかい!!」

「作ってきたよ。とりあえず、米は抜きでおかずだけでよかったよな?」

「そそ。米はあるからね。いやぁ、楽しみだなぁ!!あ、お金とりあえず500ガルドでいいだろう?」

「いや、金はいいよ」

遠慮するスカーレットにルイーズは、500ガルドを握らせる。

「後でタダで飯作らせてるとか言われたくないから、持っといて」

「お前、昔なんかあった?」

クイーンに暗黒と言われた学生時代を送ったルイーズは、ふぃっと目をそらす。

「ミステリアスな女って素敵だと思わない?」

「ミステリアスと胡散臭いって紙一重だよな」

「因みに私はどっち?」

「ノーコメント」

そう言ってスカーレットは、弁当のおかずを渡す。

卵焼きとウインナーといういたってシンプルな食べ物だ。

ルイーズは、目を輝かせながら頬張る。

「…………美味そうに食べるな」

「まあ、美味しいからね」

そう答えながらおにぎりも一緒に頬張る。

「ところで、私に話したいことってなんだい?」

ルイーズの質問にスカーレットは、待ってましたとばかりに身を乗り出し、ルイーズに耳を貸せというジェスチャーをする。

ルイーズは、言われた通り耳を傾ける。

「切り裂きジャックと思われる人物の候補者の話だ」

耳元でそう囁かれたルイーズは、目を丸くする。

「…………君、もうわかってるのかい?」

ルイーズの質問にスカーレットは、首を横に振る。

「いいや。あくまで、候補者ってだけで、それ以上絞り込めていない」

スカーレットは、少しだけ金色掛かった瞳を輝かせながら続ける。

「いいか、候補者全部で五人だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「一人目、スミスという男子学生。この子は、常に刃物をポケットに忍ばせているらしい。一度、何故、刃物を持ち歩いているのか聞いたところ、不思議そうな顔をして『逆に聞くけどなんで持ち歩かないの?』と質問したらしい。

二人目、ハレという女学生。この子はいわゆる、猟奇事件や未解決事件を調べるのが趣味なんだってさ。切り裂きジャックの事件が起きるたびに目を輝かせながら、一番いい笑顔で友達に報告していたとのこと。

三人目、ジョン。男子学生。相当な刃物マニア。スミスとウマが合うらしいよ。

曰く、刃物を見てると心が安らぐとのこと。いつもスミスと刃物のカタログを見ながら話している。

四人目、ハーブ。女学生だよ。

切り裂きジャックをまあ、ある意味崇拝してるっていうのが近いかな。殺し方が芸術的だって常に言っているらしい。

二人目のハレが事件を追うのが好きなら、ハーブは切り裂きジャックを追うのが好きらしい。曰く、『この世で切り裂きジャック様を一番理解しているのは私だ』とのこと。

最後、リッパー。男子学生。

クラスに一人はいる暗〜い奴らしい。休み時間の間ずっとブツブツ言いながらノートに何か書いている。一度、リッパーがいない間にそのノートを見てみたらページが真っ黒。ちなみに御多分に洩れず、刃物持ち」

ルイーズは、そう言って今日スカーレットから聞いたことを報告した。

「さて、誰が怪しいと思う?」

『『全員』』

 

 

 

 

 

 

 

「だよねぇ〜」

 

 

 

 

 

 

ベイカー達の揃った声にルイーズは、苦笑いを浮かべてため息を吐いた。







はい、てなわけで、大変申し訳ないです!!
お詫びにもう一話アップしますので、それで許してください!!

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