ルパパト終わってしまいましたね…………
寂しいですがとても素敵な最終回でした!!
てなわけで、どうぞ!
「何だい、これ」
「ローウェル・ヒュラッセイン学園の女生徒用の制服です」
時を遡ること数日前、窓際で本を読んでいるルイーズにクイーンが一着の服を渡した。
「いや、それは知ってるよ。何でそれを君が持ってるんだい?」
「潜入捜査で必要だからっといったら本部から支給されたんですよ」
「いや、いらないだろう?潜入するのは、ベイカーとエラリィだもの」
「まあ、私もですけどね」
「……………君がこれ着るのかい?犯罪だよ。ギルティだよ」
「何勘違いしてるんですか?」
「へ?」
マヌケな顔するルイーズとは対称的にクイーンは、満面の笑みだ。
「ルイーズが着るんですよ」
ルイーズの額に汗が噴き出してきた。
「いや、待って待って。私だってもう二十超えて………」
「大丈夫ですよ。ルイーズ、童顔ですし、身長だってそんなものですし、スタイルだってそんなものですし」
「大丈夫ですよっていた後、全部悪口なんだけど………どの辺が大丈夫なの?というか、スタイルに関して言えば君も人のこと言えないからね」
「隊長みたいな人は、スレンダーというんです。身長ってやっぱ大事ですね」
「喧嘩売ってんなら買うよ、ベイカー」
横から口を挟んだベイカーを睨みつける。
ベイカーは、そっぽ向いて口笛を吹く。
「まあ、でも、女生徒からの情報収集もした方が効率もいいと思うので………」
エラリィが遠慮がちに口を添える。
だが、
「絶対ヤダ!!着ないよ!!スカートってのがヤなのに二十超えて制服着るって頭おかしいだろう!!」
「それでですね、潜入する際の名前ですが」
「無視するんじゃあないよ!!着ないよ!!」
ルイーズは、必死の形相で喚き立てるがクイーンは、知ったことではない。
クイーンは、ルイーズの腕を掴む。
「とりあえず、先ずは着てみないことには、何とも言えないですね」
「本当に話聞いて!!着ないって言ってんの!!」
「ベイカー、エラリィ、部屋から出てください。これから私は、ルイーズを着替えさせるのです」
「え?」
「「わかりました。準備できたら呼んでください」」
「何で声揃えてんの!!あ、君達さては最初から打ち合わせしてたなぁ!!」
ルイーズの嘆きなどどこ吹く風。
ベイカーとエラリィは、無言で部屋を出て行った。
扉を閉めるととても着替えをしているとは思えない音が鳴り響く。
「おかしい…………普通ここは衣摺れの音が聞こえてきてドキドキする場面だよね?」
「さっきから戦闘音しか聞こえてこないな」
別の意味でドキドキだ。
まあ、それを置いておいてもだ。
「俺たちに協力してくれるのは、ありがたいね」
「まさか、生徒として潜入させるとは思わなかったがな」
二人に助けを求められたクイーンは、直ぐに本部に電話をし、女生徒用の制服を手配したのだ。
「……………気のせいかな?隊長、なんだか凄く楽しそうだったんだけど」
そうその時の手続きをする時の顔は、いつものルイーズに振り回されてる時に見せるあの諦めたような顔ではなく、うきうきと、それこそ夕飯の食材がをやってきたどころか鍋まで用意してくれた、そんな嬉しさがにじみ出ていたのだ。
「クイーン隊長、ここ最近、『ルイーズ、どうやったらスカート履いてくれるんでしょう』って悩んでたからなぁ」
「…………悩みが解消出来そうでよかったね」
「二人とも〜出来たので、入ってくださいー!!」
そんな話をしているといつの間にやら着替えが終わったようだ。
部屋の中からクイーンが呼ぶ声が聞こえる。
「え、ちょ、ま…………」
部屋に二人が入るとそこには学生服に身を包んだルイーズがスカートの裾を弄りなら立っていた。
髪型は緩い三つ編みにし、伊達眼鏡を掛ける。
地味になりすぎず、かといって派手になりすぎずその微妙な匙加減は、クイーンの采配によるものだ。
「どうですか!!素敵でしょう!!やっぱり私の目に狂いはなかったんですよ!!」
「へぇ。似合ってますね」
エラリィの言葉にクイーンは、隣で満足気に頷いている。
「凄いですね。教官、全然違和感ありませんよ」
「おい、ベイカー、君、それ褒めてるつもりかい」
制服着ても違和感がないと言われても何も嬉しくないルイーズは、眠そうなたれ目を鋭くしてベイカーを睨みつけた。
そんなルイーズに構わずクイーンはうきうき顔で物差しを構えている。
「スカートの長さ、どうしようか迷うですよね〜一応、膝と同じくらいにはしてあるんですけど……個人的にはもう少し短くても……どう思うですか、ベイカー」
「なんで俺に振るんですか!」
「えぇー、やっぱり一番弟子に聞きたいじゃないですか!!」
ニヤニヤと笑うクイーン。
それと、心もとなさそうにスカートの弄るルイーズ。
一瞬、真剣に悩むが直ぐに頭を振る。
「どっちでもいいですよ!!」
「なるほど、もう少し短い方がいいんですね」
「何をどう間違えればそうなるんですか!!」
「えーだって」
物差しを顎に当てながらクイーンは、ニヤリと笑う。
「長い方が良ければ素直に『長い方がいい』っていうでしょう?でも、短い方がいいなんて、男子から言いづらいですよね?とはいえ、答えなければならないとなれば、こう言えばいい『どっちでもいいです』ってね」
クイーンの指摘にベイカーは、顔を赤くして黙る。
「おい!!黙るんじゃあないよ!!否定したまえよ!!」
反論しない時点でもうお察しなのだが、それは言わないのが優しさなのだろう。
「多分、クイーン隊長の言う通りだと思いますよ」
そんな優しさを持ち合わせていないエラリィは、適当な言い方で爆弾を放り込んだ。
「ベイカー!!」
「俺に怒らないでくださいよ!!」
「まあ、ローウェル・ヒュラッセイン学園って、基本的に女生徒、スカートは膝の少し上なので最初からあげるつもりでしたけどね」
クイーンは、そう言うとスカートを少し詰め始める。
「「知ってたんなら聞くんじゃあない(聞かないでください)!!」
「ところで、エラリィ、潜入名考えてくれたですか?」
「とりあえず、幾つか考えたぞ」
二人の文句を無視して話を進める。
エラリィの出した候補を見ながら考え込む。
「おい!マジで、私潜入するのかい!?」
スカートの裾を押さえて今にも泣きそうな顔でいうルイーズに対し、クイーンは笑顔のまま振り向く。
「当然です。それじゃあ、ルイーズ、しばらくこの名前を名乗ってくださいね」
◇◇◇◇◇
「アイリーン・アニーミです!よろしく!!」
あの後、冷静なエラリィが変装用にと自分の大きな黒縁眼鏡を渡してきた。
度は入っていないためルイーズが掛けても問題はない。
そんなわけで見事ローウェル・ヒュラッセイン学園に潜り込んだ。
「それじゃあ、アイリーンは、一番後ろの席な」
指差されたそこの席に行くと隣の女生徒が軽くお辞儀をする。
「どうも」
「どうも………えっと、」
「スカーレット」
「へ?」
「だから、名前だよ。スカーレットって言うんだ」
ちょっとだけくせっ毛の短髪と微妙につり目な少女は八重歯を見せながら笑った。
「よ、よろしく」
「おう!それでよ、お前………」
ジィっと見つめるスカーレットにルイーズは、内心冷や汗だ。
(ば、ばれた?)
「眼鏡なんて印象悪いし、変えた方がいいんじゃねえか?」
「へ?」
「いやな、だいたい眼鏡かけてる奴って性格が暗いんだよ。だから、やっぱり、眼鏡を外すところから」
「スカーレット。それは、私に言っているんですか?」
銀縁眼鏡を掛けた男性の教師がスカーレットの後ろに立つ。
スカーレットは、ビクッと肩を強張らせた後、慌てて手を振る。
「い、いやだなぁ!そんなわけないじゃないですか」
銀縁眼鏡の教師はやれやれと言った調子で肩をすくめる。
「とりあえず、HRは終わりです。皆さんは、次の授業の用意をしてくださいね」
教師は、それだけ言うと教室を出て行った。
ルイーズは、質問の嵐が来ると身構える。
転校生は、全員が受ける洗礼だ。
ルイーズは、全てを覚悟し、この日の為にクイーンの作った設定を頭に叩き込んできたのだ。
しかし、誰も来ない。
(おや?)
「拍子抜けした?」
スカーレットだけがルイーズに話しかける。
ルイーズの戸惑いを目ざとく察知したスカーレットの言葉にルイーズは、頷く。
「少し」
「ほら、あたしたちももう十六なわけでさ、この年になってくると、転校生って珍しいわけよ」
「だよね」
「もう珍しすぎて、なんて話しかけたらいいか分からないんだよ」
「あ〜なるほど」
ルイーズは、ベレー帽を机の横にかける。
「でも、君は話しかけてくれるわけだ」
「何つったって学級委員だから」
スカーレットは、自慢げに歯を見せて笑った。
思わぬ展開にルイーズは、目を丸くした。
「おお?やっぱりそういう反応するよな!やっぱり、何事も意外性を狙っていかないとな」
「……………あ、いや、ほら、学級委員ってもう少し、こう眼鏡かけた大人しい子のイメージがあったから…………」
「お前みたいに?」
「まあね」
即答するルイーズ。
クイーンが隣で聞いていれば怒鳴り声を上げて掴みかかっていたところだ。
「いや、何か何となくやってみようと思って立候補したら誰もいなくてよ………そしたら、何かなっちゃったみたいな?」
「疑問系で言われてもなぁ…………」
少し困惑しているルイーズの肩をパンパンと叩く。
「まあ、経緯はアレでも私は学級委員だ。だから、学校の案内も昼休みの時にでもやってやるよ」
「それは助かるよ」
「本当は、いい学校だって紹介したいんだけどなぁ…………」
困ったようにため息を吐くスカーレットを見てルイーズは、首をかしげる。
「どうしたんだい?」
不思議そうなルイーズにスカーレットは、少し悩んだ後、耳打ちをする。
「切り裂きジャックって知ってる?」
「何か巷で有名だよね」
「そいつが、この学校にいるんだよ」
いきなり本題に入った。
ルイーズは悟られないように表情筋に力を入れて堪えた。
「へぇ。君は見たのかい?」
ルイーズの質問にスカーレットは、首を横に振る。
「いや。でも、専らの噂だ。何せ」
続けようとした瞬間教師の扉が開き一時限目の教師がやってきた。
「っと、もう授業だ。わりーな続きは、昼休みの時にな」
スカーレットは、ルイーズの前で両手を合わせて頭をさげ、教科書を開く。
ルイーズも支給された教科書を広げる。
(切り裂きジャックの噂、ねぇ…………)
ただの噂か、それとももっと別の何か、まだ現時点では分からない。
(穏やかな学園生活とは、いかなさそうだねぇ…………)
さあ、学園生活開始です!!
ちなみにアニーミは、TOIのヒロイン、イリア・アニーミからとりました。
ではまた外伝57で( ̄∇ ̄)