教官   作:takoyaki

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外伝35です。


もう、1人と1匹完結してから一年経つんですね……

では、謎解きです!!


てなわけでどうぞ


「いやぁ、残念だ。点滴さえなければなぁ…………」

「………………あれ?そうですよね?」

クイーンは、戸惑いの表情を浮かべながら首を傾げる。

「私の飛び級があったのだって、十六からだ。十一歳以前には、適用されるわけがない」

ルイーズは、眠そうなタレ目を光らせながらクイーンを見る。

「待ってください、それなら、どうして学校に一緒に行っていたんですか?同じクラスどころか学年も違うのにそんなことをする理由があるなんてないと思うんですけど…………」

「私達の学校には新入生と一緒に学校に行くという伝統があるだろう?」

「あ………!」

ルイーズは、あまり実行する事はなかったが、そういう伝統なのだ。

ルイーズは、渋い顔のまま続ける。

これからやる事は、友人の断罪だ。

笑顔ではいられない。

そこで言葉を切ってクイーンを心配そうに見る。

「…………やめとくかい?ここから先は………」

「私が何かをしてしまったことを話すんでしょう?」

「……………」

「らしくないですよ、ルイーズ。ルイーズは、筋の通らないことが嫌いなんじゃないですか?」

クイーンは、ルイーズに指を突きつける。

「私がやってしまったことを私が知らないままでいるなんて、そんな筋の通らない話を容認するんですか?」

ルイーズは、首を振る。

「そうだね……………わかった続けるよ」

大きく深呼吸をすると、ルイーズは、話し始めた。

「クイーン、君はからかわれた時何と言って否定した?」

外れてくれとルイーズは、祈った。

クイーンからその言葉を聞けばルイーズの暴論は、推論へと変化してしまう。

そんなルイーズの祈りを受けながらクイーンは、ルイーズの質問に答えた。

「えぇーっと、さっきも言ったですけど恋愛感情はないと言ったはずです」

その言葉を聞いた瞬間ルイーズは、目を伏せる。

決定的だった。これ以上ないほどに。

その目に自分の手が、殴ることに長けた手が見える。

この拳では解決できない。

そして、きっと、この答えを突きつけてもルイーズでは解決出来ない。

何故ならこれは、クイーンの問題なのだ。ここから先はクイーン次第なのだから。

でも、だからこそ信じなければならない、クイーンなら大丈夫と。

それが、友人としての役目だ。

「クイーン、私はね、齢十一で、その回答をしたとは思えないんだ」

「え?」

「あの年頃の子が『恋愛感情はない』なんてちゃんとした表現が出来ると思うかい?私は思わない。例え、そう思っていても、それを言葉にするには語彙が足りない」

ルイーズの言葉にクイーンは、頷く。

「じゃあ、私は何といったんでしょう?」

クイーンの質問にルイーズは、斜め下を見る。

そして、大きく深呼吸する。

「あの年頃の子が『好意を持っていない』と表現すらなら、その言葉は一つしかない」

ルイーズは、真っ直ぐ指をさす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『嫌い』だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

クイーンは、目を丸くする。

「ちょっと待ってください、そんなこと…………」

「『ありえない』かい?もちろん、証拠はない。だから、君が否定してもいい。でも、根拠はあるよ」

ルイーズは、差した指を天井に向け、くるくると回す。

「エラリィは、言っていたね。この前、私が君にエラリィのこと好きなのか聞いた時、『そんなことありえませんよ』って。どうしてあそこまで断言できたと思う?」

クイーンは、口を押さえる。

呼吸が荒くなる。

 

 

 

 

 

 

 

「それって、君がそう言ったからじゃないかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────

 

 

 

『クイーンちゃんっていつも、あの男子と一緒だよね』

『そんなことないですよ。行き帰りだけですよ』

『もしかして、好きなのか?』

『違うですよ』

『えぇー、本当に?』

『本当ですって!!好きじゃないです!!嫌いです!!』

 

 

 

 

 

 

『…………………そっか、ゴメン』

 

 

 

 

 

 

─────

 

 

 

 

 

 

「思い………出した…………」

クイーンは、顔を歪ませる。

あの時、言ってしまった、決して忘れてはいけない言葉をクイーンは、ようやく思い出した。

「そうです、ルイーズの言った通りです…………」

クイーンは、自分の髪をくしゃくしゃと握る。

声が震えるのが自分でもわかった。

「私は、みんなにからかわれていたんです。だから、恋愛感情はないと伝えたかった。でもどう言葉にしていいかわからなかった。

だから、『嫌い』って言ったんです。そしたら、そしたら…………」

クイーンは、ぐっと唾を飲み込む。

 

 

 

 

 

 

「そこに、私を呼びに来たエラリィがいたんです……………エラリィは、私のその言葉を聞いていたんです…………」

クイーンの脳裏にエラリィの顔が思い出させる。

全てが塗りつぶされたような表情で一言だけそう謝るとエラリィは、姿を消してしまった。

「それから、登下校することもなくなったんです。だから、ちゃんと学校でやれているか不安になって、教室まで行ったんです」

そしたら、と言葉を続ける。

「エラリィは、クラスで一人でした。ずっと一人で過ごしていたんです」

クイーンは、ぎゅっと唇を噛む。

「私は、そこでようやく気付かされたんです。エラリィにとって、あの登下校こそが、居場所で、そして、私しか頼る人がいなかったんだって………」

「そのクラスを覗きに行った時の映像が合成されて、同じクラスだったっという記憶になったんだろうね」

ルイーズの言葉にクイーンは、俯くしかなった。

自分に取って都合のいいように記憶を編集し、戸惑っていた。

そんな罪深い行いをクイーンは、ずっとしていたのだ。

「何となくだけど、私の下級生の兄貴は、君をからかっていた連中のひとりだったんだろうね」

だから、弟も男女で学校に通うことを嫌がったのだ。

そこに看護師が入ってきた。

「クイーンさん」

「はい」

 

 

 

 

 

 

「エラリィさんが、目を覚ました」

 

 

 

 

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、クイーンは、目を丸くすると直ぐに立ち上がり、病室を出て行った。

ルイーズは、クイーンが見えなくなってからゆっくり立ち上がり、病室を出た。

「女の子の会話を盗み聞きなんて感心しないよ、ベイカー」

ベイカーは、エラリィの病室とは反対方向の壁に背中を預けながら腕を組んでいた。

「教官、女の『子』でしたっけ?」

「いやぁ、残念だ。点滴さえなければなぁ…………」

拳を握り締めるルイーズにベイカーは、目をそらす。

「女性があんな顔すれば心配になりますよ」

呆れたような顔でいうベイカーにルイーズは、目を丸くする。そして、口元に手を当てニヨニヨ笑いをし始めた。

「へぇ〜」

「な、何ですか」

「いや、意外に紳士だなと思って」

「意外にって何ですか、俺はいつだって紳士ですよ」

ルイーズは、肩をすくめる。

「何ですか?」

「いや、私に闇討ち仕掛けてきた男を紳士と呼ぶには、無理があるなって思って」

ベイカーは、頬を引きつかせる。

「い、いや、その………」

微妙に居心地悪そうなベイカーを見てルイーズは、くすくすと笑った後壁に背中を預ける。

「私もそんな顔すれば君は、心配してくれるのかい?」

「へ?」

ポカンとするベイカーにルイーズは、からかうようにそして、少しだけ寂しそうに笑っていた。

ベイカーは、ぷいと顔をそらす。

「教官は、ダメです」

「えぇー………」

「ちゃんと、言葉にしてくれないと心配しません」

ルイーズは、目を丸くした後、半眼になる。

「察しの悪い男はモテないよ」

「教官は、本当に苦しいことは、絶対顔に出さないですから。俺じゃ分かりません」

だからと、言葉を続ける。

「プライド捨てて言葉にしてくださいね」

ルイーズは、肩をすくめて、片目だけ開ける。

「考えておくよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エラリィ!!」

クイーンは、慌ててエラリィの病室に入る。

エラリィは鳩が豆鉄砲を食ったような顔した後、目をそらす。

クイーンは、それに構わずベイカーのベッドの側の椅子に腰を下ろす。

何を話すべきか悩む。

謝るべきか?

いや、まず誤解を解かない限りエラリィは、こちらを見てくれない。

「ルイーズから教えてもらって思い出したです」

クイーンは、ぐっと、エラリィを見る。

「私は、エラリィのことが嫌いじゃないです」

エラリィは、それを聞くと目を丸くした後苦虫を噛み潰したような顔になる。

「ごめんなさい………私は、エラリィを傷つけた。怒って当然です、口をきいてくれなくて当然です。私が、私が………」

言葉が途切れるクイーン。

エラリィは、ぎゅっと布団を掴む。

「どう接していいか分からなかったんです…………」

エラリィは、初めてクイーンに言葉を返した。

クイーンの瞳が少しだけにじむ。

「ある程度歳をとったら、流石にどういう意図で言われたか分かりました。でも、もしかしたら、本心だったんじゃないかと思うと話しかけられなかった」

エラリィは、下を向いたまま続ける。

「そうこうしているうちに、どう話していいか分からなくなってしまった」

「話してください!!」

クイーンは、肩を掴み俯く。

「こんなこと言えた義理じゃないのは、分かってるです。でもルイーズとベイカーを見ていて思ったんです、あんな風にエラリィと話したいって!!」

クイーンは更に続ける。

「言ったでしょう、私は、エラリィのことが嫌いじゃないんです!!だから、話してください」

エラリィは、困惑した後ため息をつく。

ここまで言われて意地をはるほど、エラリィは、クイーンのことが嫌いではない。

だったら、取るべき行動は一つだ。

「わかりましたよ。僕もいい加減この状態に終止符を打ちたかったところですから」

エラリィのその待ち望んでいた言葉を聞いた瞬間、クイーンは、パッと花が咲いたような笑顔になった。

エラリィは、笑顔で手を差し出す。

「改めてよろしくお願いします、隊長」

その言葉にクイーンも笑顔で手を差し出……………さなかった。

それどころか、先ほどの笑顔は何処へやら。

完全な仏頂面だ。

「あれ?」

「………………(敬語)

「へ?」

「だから、敬語!!昔は、そんな言葉つかいじゃなかったじゃないですか!!」

「昔っていつ話ししてるんですか!」

「七歳」

「バッカじゃねーの!!」

思わず出たタメ口にエラリィは、慌てて口を覆う。

だが、クイーンは、とても嬉しそうだ。

それを見たエラリィは、大きくため息を吐く。

「分かった。それじゃあ、まあ、なんとか頑張る」

「後は、昔みたいに呼んでほしいです」

「昔みたい?」

「そう、クイーンお姉ちゃんと!!」

「絶対呼ばない!!どうやったてって隊長だからな」

顔を真っ赤にしながら否定するエラリィ。

そんなエラリィに対しクイーンは、少しだけ顔を赤くして顔を背ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それなら、せめてクイーンは、つけて(ヽヽヽ)ください」

 

 

 

 

 

 

クイーンから出されたお願いにエラリィは、戸惑う。

謝りに来たはずなのにお願いをしてくるこの困った隊長にエラリィは、どう答えたものかと迷う。

しかし、まあ、いくら迷っても意味のないことだ。

何せ、答えは決まっている。

エラリィは、コホンと咳払いをする。

「改めてよろしく、クイーン隊長」

クイーンは、差し伸ばされたエラリィの手をを少しだけ戸惑いながらも握り返した。

「はい、よろしくです、エラリィ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「盗み聞きは、感心しないんじゃないんですか?教官」

エラリィの病室の外でルイーズとベイカーの二人はひょこりと聞き耳を立てていた。

「やらないとは言ってないだろう、それにこんな面白そうなことを見逃す手はない」

「素直に心配だからって言えばいいじゃないですか」

呆れたようにいうベイカーにルイーズは、ぷいと顔を背ける。

「うるさい」

「それで、感想は?」

「ヘタレって感じだよね、何嫌いじゃないって、好きっていいなよって感じ」

そう言ってルイーズは、ドアをノックする。

エラリィとクイーンは、入り口にいるルイーズとベイカーに視線を向ける。

ルイーズは、手を上げて挨拶すると病室に入った。

そして、隣を歩くベイカーにだけ聞こえる声で囁いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、でも、良かったよ。やっぱり、二人には仲良しでいて欲しいもの」








さて、ようやく仲直りです。
まあ、前回の話ほど泥沼にならなかったので少しはいいかな?と思っています(笑)


では、また外伝36で( ´ ▽ ` )ノ

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