戦隊ものが面白いです。
毎年毎年、今年こそは見ようと思っては、挫折していたんですが、今回は、全部見れそうです。
夏の映画は、両方楽しめそうです。
てなわけで、どうぞ
「おっどろいたぁ………君が私の名前呼ぶなんて初めてじゃあないかい?」
帰り道ルイーズになんとか追いついたクイーンは、息を切らしている。
呼吸を整えるとクイーンは、ルイーズの隣に立つ。
「一つ聞いてもいいですか?」
「ヤダと言っても聞くんだろう?」
「当然です」
クイーンは、そう返すとルイーズを見る。
「今日まで掃除当番を見逃していたのはワザとですか?」
そう、あのように思っていたのなら、1日目の帰ろうとした瞬間に言うべきなのだ。
ルイーズは、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。
「当然。私に喧嘩売ったんだ。それなりの報いを受けてもらわなくちゃ」
ルイーズの性格は、決して良くない。
そんなことわかっていたはずだが改めて再確認した。
「…………それで、溜飲が下がったから今日、あんな風に言ったと?」
「そ♪流石にあれ以上見逃すのは私が私を許せない」
「そうですか…………」
クイーンは、そう答えてルイーズの隣を歩く。
そんなクイーンを見ながらルイーズは、不思議そうに首をかしげる。
「それで、君はどうして私と帰っているんだい?あんなに嫌がっていたじゃあないか」
「ルイーズ」
「あ、また、名前」
「私と友達になってください」
迷うことなく紡がれた思いにルイーズは、思わず歩みを止める。
クイーンは、隣にルイーズがいないことに気がつくと振り返る。
振り返った先には狐につままれたような顔をしたルイーズがいた。
その顔があまりにもおかしくてクイーンは、思わず笑いそうになる。
しかし、ここで笑ってはへそを曲げられてしまう。
何とか堪えながらクイーンは、尋ねる。
「返事は?」
「いや、それより、なんで!?」
ようやく意識が戻ったルイーズは、いつもの胡散臭い笑みを何処かに消しとばし、混乱しながらクイーンに食い気味に尋ねる。
「今日のルイーズが素敵だったからです」
「へ?」
「私は、素敵な人と友達になりたいんです」
「いや………私素敵だった?」
「ええ。とても」
ルイーズは、怪訝そうな顔でクイーンを見ている。
「返事は?」
「いや、だからね………」
「あぁ、そう言えばルイーズの出した問題を解かないとダメなんでしたっけ?」
「いや、あれは冗談……」
「ルイーズが下級生を置いて行ったのは、アレでしょう」
やや呼吸を整えてからクイーンが続ける。
「ルイーズ自身が遅刻してしまうからでしょう?」
クイーンの言葉にルイーズは、固まった。
放課後の夕焼けの温度を乗せた風が二人の間に吹く。
「何故、置いて行ったのか?を考えるから分からなかったんです。何故一緒にこないのか?を考えるべきだったんです」
クイーンは、なかなか答えにたどり着けず悩んでいた。
「つまり、まだ通学に慣れていない下級生と行くと遅刻するからルイーズは、一緒に行かなかったんです」
クイーンは、そこまで言って首を横に振る。
「いいえ。一緒に行けなかったという方が正しいですね」
ルイーズは、黙ってクイーンの言葉を聞いている。
「さて、では少し整理しながら話すです」
クイーンは、指を一本立てる。
「問題になっていた、集合場所にルイーズがいないという点ですけど、実際は、こうだったんじゃないですか?」
ルイーズに原因があると考えていた。
「集合時間に下級生がいなかった」
だが、逆だ。
下級生に原因があったのだ。
「ルイーズとしては、下級生が間に合う時間を考えて集合時間を設定したのでしょう。でも、下級生が来なかった。この後来たとしても一緒に行けば確実に遅刻する。だから、置いて行った」
クイーンは、続ける。
「下級生は、驚いたでしょう。そのまま教室に行ってルイーズの悪行訴えれば自分の遅刻はなかったことです」
「悪行って………」
ルイーズの不満は、無視してクイーンは、指をもう一つ立てる。
「弱音を吐いても突き放したのは、ルイーズ自身では何も出来なかったから。元々下級生に合わせてギリギリの時間だったのでしょう。慰めたりなだめたりしている時間はなかった」
クイーンは、指を更に立てる。
「歩幅を合わせなかったとの話でしたね」
「…………」
「恐らく、ルイーズは歩幅を合わせていた。一定の距離を保つ程度に」
はたから見ればそれは、ルイーズだけが先に行き、下級生が後をついて行くという状態になってしまう。
歩幅を合わせて横並びとは言い難い。
「では、何故、そんなことになったか?答えは簡単、下級生の方から一緒に行きたくないと言われたから」
「それは、おかしいよ矛盾している。一緒に行きたくと言ったくせにどうして、下級生が私と一緒に行けないことを不満に思うんだい?」
「あの年頃に自分の言葉に責任を持たせるなんて無理でしょう」
クイーンは、そう言いながら思い出す。
「今日の出来事を見ていて思ったんです。何も考えずに言った言葉は、自分の首を絞めてしまう。ルイーズの下級生は、正にそれだったんでしょう」
クイーンは、咳払いをする。
「つまり、順番は、こうでしょう?」
クイーンがエメラルド色の瞳をくるりと輝かせながら続ける。
「まず、下級生がルイーズと一緒に行きたくないと言う」
前を歩いていたクイーンは、後ろにいるルイーズへと一歩距離を詰める。
「だから、歩幅を合わせて一定の距離を保ったまま学校に行く」
もう一歩詰める。
ルイーズは、もう何も言わない。
「そして、案の定弱音を吐く。でも、ルイーズとしてはかまっている余裕はない」
クイーンは、更に一歩詰める。
「そんなことを毎日続けている矢先に下級生が集合時間に遅刻する。これ以上待って一緒に行ったら遅刻するからルイーズは、先に行く………」
そこまで言ってクイーンは、首を横に振る。
「いや、それだけじゃないですね。ルイーズは、それだけが………
「もちろん」
二人の間にもう先ほどまでの距離はない。
それこそ机を挟んで向かい合う程度の距離しかない。
ルイーズとクイーンは、同時に口を開く。
「「一緒に行きたくないと言った人間を
ルイーズは、ニコニコと笑っている。
出来の悪い下級生を庇うのはまだいい。
だが、自分を拒んだ下級生を庇えるかと問われれば答えは、答えはNOだ。
いや、もしかしたら出来る人間もいるかもしれない。
しかし、ルイーズは、それが出来ない。
そうまでして人に尽くすつもりはない。
それは、今回の掃除当番騒動ではっきりとした。
あれは、あの女子を助ける行動ではない。
クイーンが指摘したように助けるつもりならもっと早くから動くべきだし、何より最後の一言はいらなかった。
見事当てて見せたクイーンにルイーズは、不敵に微笑む。
「よく分かったね。大正解だよ」
「ルイーズのヒントと後、その下級生のクラスメイトから話を聞いたおかげです」
ルイーズは、言っていた。
私は悪いことはしていない、と。
更に先生にも怒られていない、と。
確かに下級生を連れて行くのは伝統だ。
だが、遅刻をしないことは校則だ。
校則を守ったルイーズを教師として怒ることは出来ない。
「クラスメイトにぐらい説明しても良かったんじゃないですか?」
「聞こえよがしの陰口になんて言って説明すればいいんだい?」
つまらなそうにいうルイーズにクイーンは、首を横に振る。
「1人聞きに来てたじゃないですか」
「あの子最初から私にごめんなさい言わせようとしてただけだろう?無理無理」
ルイーズは、手を顔の前で振って不可能といった様子を現す。
「クラスの連中は、自分の信じたいものを信じていたからね。何を言っても聞かないさ」
諦めたように言った後、ルイーズはクイーンを指さす。
「でも、君だけは『何で』って聞いてくれた。だから、君だけには話そうと思ったんだ」
ルイーズがニッコリ笑うとクイーンは、ジトッとした湿度の高い視線を送る。
「だったら最初から全部教えてください」
「それじゃあ、つまらないじゃん」
予想以上に能天気な返しにクイーンは、大きくため息を吐いた。
そして、念のためもう一つ仕入れていた情報を話す。
「まあ、件の下級生ですけど、ルイーズが置いていった日に遅刻したそうです」
「だろうね」
ルイーズは、歩き出した。
「一応、言っておくと、私はこれでも下級生と一緒に学校に行くことたのしみだったんだよ」
「本当ですか?」
「本当だよ。下級生の歩幅を計算して大体このぐらいかかるから、この時間に集合すれば間に合うってのを考えたんだよ」
クイーンは、ルイーズが想像以上に面倒見が良くて驚く。
「まあ、そんなわけで挨拶しに行ったんだよ。そしたら、その男の子は、泣き出すわけだよ。女子と一緒に行きたくない!兄ちゃんと一緒に行きたいって」
「あー…………それは………」
クイーンは、何とも言えない顔をする。
「仕方ないかもですね………気持ちは分からないでもないです」
異性と一緒に通えばからかわれるだろう。
だからその下級生は、そう言ったのだ。
そんなもの年下の戯言と聞き流せば良かった。
本当にそれだけの話だったのだ。
だが、ルイーズは聞き流せなかった。
聞き流せるほど寛容でもなければ鈍くもなかった。
「頭が真っ白になるってああいう事を言うんだね。だから、何も考えずに言っちゃったよ。『だったら、お兄ちゃんと行けばいいだろう?』って」
兄がいるのならルイーズがその下級生を連れて行く必要はないのだ。
「そしたら?」
「更に泣き出しちゃった。どうにも話を突き詰めていくと、彼の兄がどうしても弟と一緒に行きたくないって言ったらしいんだよ。それで私にお鉢が回ってきたってこと」
「なんで?」
「上が下を嫌う理由なんて、下の方が扱いがいいからに決まってるだろう?」
ルイーズの言葉にクイーンは、はははっと笑う。
得てして上は、我慢を強いられることが多い。
まあ、親も子育て初心者なので、どの程度許していいか分からないのだ。
そんな一人目を経験した二人目なので、ある程度許していいラインが分かってくる。
そうなると、上が我慢していた事を下が許されるという事態が起きてくる。
そうなれば上は、全く持って面白くない。
仲が悪くなるのは当然だ。
「まあ、そんな事を言う奴を私が世話する道理もない。そんな奴のために一緒に遅刻なんてしてあげない」
「一緒に登校してあげないんですか?」
ルイーズは、肩をすくめて悪戯っぽく笑う。
「集合時間にちゃんと来ればね?」
「ですよね」
クイーンも面白そうに笑う。
ルイーズは、そこまで言うとクイーンの方を振り返る。
「それで、こんな私だけど、それでも私と友達になりたいのかい?」
「そんなルイーズだから友達になりたいんです」
にっこりと笑いながら頷くクイーン。
そんな彼女を夕焼けが優しく照らす。
「賭けてもいいけど、ロクな目に合わないよ」
ルイーズは、悪戯っぽくけれども少しだけ真剣な言葉にクイーンは、肩をすくめる。
「今までと大して変わらないですね」
クイーンの言葉にルイーズは、眠そうなたれ目を少しだけ嬉しそうに下げると頷く。
「はいはい。私の負けだ」
ルイーズは、そう言ってクイーンに手を差し出す。
「よろしく、クイーン」
「こちらこそ、ルイーズ」
◇◇◇◇
「ま、こんなところです」
「その下級生ってどうなったんですか?」
「確か、友達が出来て学校に馴染んで来た頃ルイーズに仕返ししてましたよ。
友達と一緒に」
徒党を組んでルイーズに襲いかかったのだ。
「石を遠くから投げつけてたんですよ。まあ、運悪く一緒にいた私にも当たっちゃったんですけど」
「一応聞くけどどうなったんですか?」
「パンチで前歯へし折ってたです」
ベイカーの質問に淡々と返すクイーンに、二人は頬を引きつらせる。
「案の定、ルイーズは職員室に呼び出し。弁解のために私が行かなきゃどうなっていたことだか………」
クイーンは、暗い顔をしながらため息をつく。
「本当、それ以降暴力に対して暴力でやり返すので、何度弁解しに職員室に行ったか分からないです」
ベイカーは、その話を聞いて何となく思ったことを口にする。
「ルイーズ教官、クイーン教官のことちゃんと大事にしているんですね。なんか、今の話だと友達より信念を取る人かと………」
「同じぐらい大事にする人ですよ、ルイーズは。ただ、もし、どちらかを選ばないといけない時がきたらどっちを取るかはわからないですけど」
クイーンは、そこまで言って時計を見る。
なかなかにいい時間だ。
「さて、じゃあ、この辺りで解散とするです」
立ち上がるクイーンの後をベイカーとエラリィがついて行く。
食器を片付け寮へと帰って行くクイーン。
そんなクイーンにベイカーは、最後の質問をぶつける。
「どっちを取るか、教官は、分かっているんじゃないですか?」
クイーンは、ゆっくりと振り返りながら口に人差し指を当てて微笑む。
「当然です。なんと言ったって私は、ルイーズの唯一の友人ですから」
それじゃあ、と短く別れを済ませるとそのまま自分の部屋へと帰って行った。
その後ろ姿を見送ったベイカーは、ポツリとこぼす。
「……………何というか、クイーン教官もまともじゃないよな」
ベイカーの言葉にエラリィは、肩をすくめる?
「ルイーズ教官と友達になりたいと思う時点でまともなわけないだろ」
親子揃って友人に謎を解かれてるんだから、世話ないですね。
さて、今回の過去編は、ここまで!!
では、また外伝20で( ´ ▽ ` )ノ