魔法科高校の劣等生と優等生、加えて問題児   作:GanJin

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はいどうもです

十月に入り、だんだん寒くなってきました

私の周りに体調不良の人が増えているので体調管理はしっかりしましょう

ではお楽しみください

2020/04/08:修正しました。


無駄な努力かどうか

 ブランシュに協力していた壬生が保健室にいる理由を真由美に聞いてみると、どうやらエリカと一戦交えたようである。流石に剣道の腕は高くとも、千葉家の女には手も足も出なかったようだ。

 真由美と共に壬生のいる保健室に行く途中で摩利と出会い、事情を説明した瞬間、禅十郎は腹を思いっきり殴られた。仕事中である為、不意打ち対策はしていた為、ダメージがあったのは摩利の手だったが、攻撃を防がれたことに腹を立て脇を蹴られた。あまりにも理不尽である。

 ヘルメットを被った禅十郎が保健室に入った時、深雪、エリカ、レオは訝しんだが、そこは真由美が適当に言い含めてくれた。

 それから壬生の事情聴取をしている間、禅十郎は壁に寄りかかって傍観していた。

 現在、学校を襲撃した侵入者達は教職員が警察に引き渡すために拘束している。

 いくら生徒達を束ねる立場である真由美達でさえ、生徒である以上壬生に手を出すことが出来ない。加えて最も真実に近づいている禅十郎から情報が得られない為に、真由美達は壬生から話を聞くしか情報を得ることが出来ないのである。

 壬生から伝えられた情報はここにいる多くを驚かせた。

 剣道部だけでも司甲の同調者が多くいた事。生徒の自主的な魔法訓練サークルを装って思想教育が行われていたこと。ブランシュが想像以上の時間を掛けて周到に第一高校で足場を築いていたこと。

 数々の情報がもたらされ、各々が衝撃を受けている中、摩利だけは違うところに驚いていた。話を傍観していた禅十郎もその話に興味があった。

 それは壬生が司甲の話を聞く切っ掛けとなった出来事における摩利と壬生との記憶の食い違いであった。その出来事とは昨年の勧誘週間で、剣術部が起こした騒ぎでのことだ。当時、壬生は摩利の剣技を見て、一手ご指導をお願いしたが、二科生だからという理由ですげなくあしらわれたと口にした。

 それを聞いた摩利は困惑してそれを否定する。

 当時、摩利が壬生に言ったのはこうだ。自分の腕では壬生の相手は務まらない故に、無駄な時間を割いてしまうから自分の腕に見合う相手と稽古してくれ、という内容だった。

 確かに摩利は剣術を習っているが、それはあくまでも魔法と併用することが大前提である。純粋に剣技を磨き続けてきた壬生に敵う筈がないのだと摩利は当時のことを話した。

 摩利の口からそのことを聞かされ、壬生はそれが事実だと思い出した。

 

「なんだ、あたし、バカみたい……。勝手に、先輩のこと誤解して……自分のこと、貶めて……。逆恨みで、一年間も無駄にして……」

 

 壬生は自分のしたことを嘆いた。そんな彼女に真由美達は声を掛けることも出来ず、しばし沈黙が続いた。

 

「努力が無駄だった、なんてことはよくあることですよ」

 

 その沈黙を禅十郎が破った。

 当初は傍観しているつもりだったが、話を聞いた後、彼女の状態を見て気が変わった。

 多くの視線にさらされながらも、彼は気にもせずに壁から離れ、壬生の隣に立った。

 マスクにはボイスチェンジャーが取り付けている為、まず禅十郎だと勘づかれることはない。

 

「お嬢様、申し訳ありませんが、少々口を挿ませていただきます」

 

「え、ええ……」

 

 流石に禅十郎から慣れない呼び方をされて、真由美は歯切れの悪い返事となってしまった。しかし、真由美は止めはしなかった。自分が何を言っても彼女を立ち直せることは不可能でも、武術を習っている禅十郎であれば何かできるのかもしれないと期待を寄せていたからだった。

 

「壬生紗耶香さん、でしたね」

 

「……はい」

 

「研鑽を重ねる人は必ずしも望んだ成果を得られるわけではありません。私も武術を習っておりますが、長く修練を重ねても良い結果が出なかった方々を私を含め多く見てきました。時間を掛けた分の努力が実らず、望んだ結果を得られなかった。それを人は無駄な努力と言って嘆くでしょう」

 

 壬生は黙ってゆっくりと頷いた。

 

「ですが、壬生さん、あなたの努力は本当に無駄でしたか?」

 

「え……?」

 

 その言葉を聞いて、先程まで俯いて泣いていた壬生は目を僅かに開いた。

 

「あなたはこの一年間、ただ彼女を恨んでいただけでしたか? 剣道の修練をしてこなかったのですか?」

 

 禅十郎の質問に壬生は首を横に振る。

 

「この一年間、私の中では過去一番剣道に没頭していたと思います。二科生だからって私の剣技まで侮られたくない。そう思ってずっと剣を振り続けてきましたから」

 

 壬生は辛そうに口にした。自分の努力が無駄だと思っているのなら、彼女の反応は当然と言えるだろう。

 

「では、今と一年前のあなたならどちらの剣技が優れていると思いますか?」

 

「それはもちろん、今の私の方が……強いと……思います」

 

 自信を無くした小さな声で呟いた。そう口にしたのかは、強くなってもそれが勘違いによる憎しみによるものである為に、得てしまった力と向き合うことが出来ないからなのかは本人にしか分からない。

 

「見方を変えればこの一年間の修練は無駄ではありません。剣道の技に磨きがかかっているのですから」

 

「でもそれは……!」

 

「ええ、あなたの望んだやり方ではありません」

 

「……はい」

 

 恨みや憎しみで得た強さは自分が求めたものではない。だから、この努力は無駄だったのだと壬生は決めつけていた。

 

「確かに、純粋に好きな事を打ち込む人にとって恨みや憎しみで技に磨きをかけることに抵抗があるかもしれません。ですが、現にあなたはそれで強くなってしまった。その事実は変えることは出来ませんし、どんなに否定してもあなたの今の剣技を一年前のものに戻すことは不可能です」

 

 禅十郎は壬生に厳しい現実を叩きつける。どんなに否定しようが、過ぎてしまったことを無かった事には出来ない。

 

「はい……」

 

 壬生もそんなことは分かっていた。この事実を無視することは出来ない。だが、どうしても認めたくなかった。憎しみで強くなった自分の剣技が自分の目指していた物と全く違うものである為に、このまま剣道を続けられる気がしなかった。

 

「ですが、その力をどう使うかはこれからのあなた次第です」

 

 禅十郎の言葉に壬生は顔を上げ、彼を見つめた。

 

「過程はどうであれ、その力は間違いなく剣道の力であることに変わりはありません。それとどう向き合っていくか、それこそがこれからのあなたに必要なことではないですか?」

 

 過去は変えられないなら、未来を変えればいい。今の結果を未来への過程にすればいい。

 何故ここまで真摯に向き合おうとしているのか、壬生には分からなかったが、彼の言葉の意図を彼女は理解した。

 

「まだあなたが剣の道を進みたいという気持ちがあるのなら、しっかり向き合ってください。事実を直視せずにこれから先一生尾を引いて生きていくよりずっと良い」

 

「……はい」

 

 確かに、この一年間で得た強さは間違いなく剣道の為の強さだった。それをどう向き合うかで自分にとってその価値に変化が生まれると彼は教えてくれた。

 壬生はそれがうれしかった。少しでも自分を肯定してくれる誰かがいるというだけで、今の彼女を立ち直させるには十分だった。

 

「ありがとう……ございます」

 

 笑みを浮かべ涙を流し、禅十郎に頭を下げた。

 

「うっ、うう……」

 

 それから気が済むまで、壬生は泣き続けた。

 周りがおろおろとしている中、禅十郎はじっと彼女を見ていた。

 

(もう、この人は間違わないだろうな。……それに)

 

 禅十郎は視線だけを保健室の窓の外に向ける。そこには刀を携えた男子生徒が一人、ここから離れている姿が見えた。

 

(ちゃんとあんたを見てくれる人がいるじゃねぇか)

 

 誰にも気づかれることなく、禅十郎は満足げな笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 それからしばらくして、ようやく壬生は落ち着きを取り戻した。

 

「さて、問題は奴らが今、何処にいるか、ということですが」

 

「達也君、まさか、彼らと一戦交えるつもりなの?」

 

 達也が今後の行動方針を口にして、真由美は達也が何をしようとしているのかを悟った。

 

「その表現は正しくありませんね。一戦交えるのではなく、叩き潰すんですよ」

 

「危険だ! 学生の分を超えている!」

 

「私も反対よ。学外の事は警察に任せるべきだわ」

 

 それに反対したのは摩利と真由美であり、彼女達の言い分は間違ってはいない。

 

「では、このまま彼女を強盗未遂で家裁送りにするべきだと? 確かに彼女がしたことは許されるべきことではないでしょう。ですが、主犯を捕まえれば今回の件で加担した生徒を減刑することは出来るのではないでしょうか?」

 

「ええ、俺もそう考えています」

 

「それは確かにそうだけど……」

 

 禅十郎も達也と同意見であった。そのことに真由美はあまり意外だと思わなかった。禅十郎なら壬生を擁護するように動くと真由美は予想しており、案の定、彼女を減刑させるように働きかけていた。

 

「成程、警察の介入は好ましくない。だからといって、このまま放置することも出来ない。だがな、司波。相手はテロリストだ。下手をすれば命に関わる。俺も七草も渡辺も、当校の生徒に命を掛けろとは言えん」

 

「当然だと思います。最初から委員会や部活連の力を借りるつもりはありません」

 

 克人に達也は臆せず答えた。その意味を克人はしっかりと捉えていた。

 

「……一人で行くつもりか」

 

「本来ならば、そうしたいところなのですが」

 

「お供します」

 

「あたしも行くわ」

 

「俺もだ」

 

 すかさず、深雪とエリカ、レオの三人が参戦の意志を表明した。

 

(ハハハ。分かってはいたが、随分血の気が多い奴らだな)

 

 そんな彼らを見て、禅十郎は苦笑いを浮かべる。ヘルメット越しで分からないようになってはいるが、気のせいか真由美の視線を感じた。

 

「司波君、もしあたしの為だったら、お願いだからやめてちょうだい。私は平気。それより、あたしの所為で司波君たちに何かあったら……」

 

「壬生先輩の為ではありません」

 

(ほう……)

 

 冷たく言う達也に禅十郎は興味ありげに笑みを浮かべる。

 

「自分の生活空間がテロの標的となったんです。俺と深雪の日常を損なう者を、全て駆除します。これは俺にとって、最優先事項です」

 

 達也が本音で言っているとここにいる全員が理解した。

 

(初めて会った時から面白い奴だとは思ってたが、ここまでとはな)

 

 改めて達也と一緒にいるだけでこれから退屈しないなと、思わず笑みを浮かべた。

 

「しかしお兄様。どうやってブランシュの拠点を突き止めればいいのでしょうか?」

 

「分からないことは知っている人に聞けばいい」

 

 そう言うと達也は保健室の扉を開ける。

 

「小野先生?」

 

 そこにいたのは真由美の声に困惑混じりに苦笑いする遥であった。

 

「九重先生の秘蔵の弟子から隠れ遂せようなんて、やっぱり甘かったか……」

 

(嘘つけ、隠す気全くなかったじゃねぇか。俺でも気配を感じきれたぞ)

 

 そんなことを心の中で愚痴っていると、遥はこちらに目を向けてきた。

 それに気付いた禅十郎は遥の下へと歩き出す。

 近くにいた達也も含め、全員が二人に目を向けた。

 お互いに端末を取り出すと、遥は禅十郎の端末に情報を送信した。

 

「これが約束の物です」

 

「ご協力感謝する。ああ、それとこれを」

 

 禅十郎はあるモノを遥の端末に送信した。それを見た遥は一瞬目を丸くした。

 

「では、今後ともよろしくとお伝えください」

 

「え、ええ……」

 

 歯切れの悪い返事をする遥に周りは訝しんだが、余計な詮索はしない方が良いと誰もが察した。

 

「それと彼女のことはお任せします。小野先生」

 

「ええ、分かっています」

 

 そう言うと遥は自分の役目を全うする為に、壬生の下へと駆け寄った。

 それから禅十郎は達也達に現在司一がいる場所を端末の地図で示した。

 

「放棄された工場か。車で行った方が早いな」

 

「正面突破ですか?」

 

 深雪の質問に達也は頷く。

 

「相手の意表を突くには、それが一番だからな」

 

「方針を決めるのは結構ですが、どうやってそこへ乗り込むつもりですか?」

 

 攻略方針を決めていく二人に、禅十郎は車をどうやって手配するかを尋ねた。

 

「心配するな。移動用の車は俺が用意しよう」

 

 代わりに答えたのは克人だ。

 それには真由美も目を丸くする。

 

「えっ? 十文字君も行くの?」

 

 克人の一言に多くが疑問を抱いた。達也が赴くことを止めておきながら、自分も行くと言い出したのだから当然である。

 だが、彼らの疑問はすぐに解決した。

 

「十師族に名を連ねる者として当然の務めだ。だが、それ以上に、俺もまた一高の生徒として、この事態を看過することは出来ん」

 

「じゃあ……」

 

「七草、お前はダメだ」

 

「この状況で生徒会長が不在になるのはマズい」

 

「お嬢様、少々ご自重なさってください。いくら生徒会長と言えども、十文字殿と異なり次期当主でないあなたが動くべきではありません。それに、もし怪我でもされたら私の首が飛びます。私はまだ職を失いたくないので」

 

 それを聞いた摩利は予想外のことに吹いた。

 一方で、主従関係でありながら、割とストレートに言ってくる真由美の従者(偽)に達也を除く一年生は揃って唖然とした。

 禅十郎の言い分に対して真由美は膨れっ面になった。自重することに関しては自分だって人のことを言えない為に不満であったが、彼の正体を知らせるわけにはいかない為、真由美は物凄く不機嫌になりつつも渋々了承した。

 

「だったら摩利、あなたもダメよ。残党がまだ校内に隠れてるかもしれないんだから。風紀委員に抜けられたら困るわ」

 

 自分も行こうとしていることに勘付かれており、摩利は不承不承に頷いた。

 

(ま、当然だろうな)

 

 そう納得していると、真由美がこちらに目を向けた。

 

「達也君、だったら念のために彼にも同行してもらってもいいかしら?」

 

 真由美は禅十郎を指名した。

 

「そちらの方は会長の護衛のはずですが、よろしいのですか?」」

 

「大丈夫よ。残りは先生方や警察が対応してくれるでしょうし、彼なら間違いなく役に立つわよ、肉壁として」

 

「お嬢様、流石の私も怒りますよ?」

 

 従者の扱いが真由美にしては随分と適当であり、その光景に何人かが苦笑を浮かべた。

 

「だってトラックに撥ねられても平気でしょう?」

 

「無論です。それぐらい出来なければ護衛は務まりませんので」

 

 その考え方はおかしいと多くの者がツッコミを入れたかったが、これ以上話が脱線するわけにはいかないと自分の感情を抑え込んだ。

 そんなことも露知らず、禅十郎は真由美の配慮に感謝していた。司一を捕らえることになるので方向性としては間違ってはいない。加えて先程、端末にメッセージが来ており、任務はこのまま継続することになっているのでこのまま達也達と一緒に向かった方が楽なのである。

 狙ってやったのかは本人しか分からないことなのだが。

 

「それにね、十文字君はともかく、後輩だけで行かせるわけにはいかないもの」

 

(ほう……、俺は年下に入っていないと?)

 

 ヘルメット越しで真由美を睨み付けるが、見えていない以上、何の意味もない。

 摩利がちゃっかり笑いを堪えているのを見逃さなかったが、それは後回しにすることにした。

 そんなやり取りをしているの真由美の護衛に達也は視線を向ける。

 

「大丈夫よ、彼の腕は保証するわ」

 

 それを見た真由美は笑顔で断言した。

 

「いえ、そう言う事ではないのですが……」

 

 彼の手腕以前に気になることがあるのだが、ここで調べることは不可能だと達也は悟った。

 その後、準備に取り掛かる為に外に出た禅十郎につられるように達也達も保健室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 保健室を後にした禅十郎はバイクを取りに行くために別行動をしていた。

 バイクを止めている場所に着くとそこには、スーツを着た男が立っていた。

 背丈は禅十郎よりもあり、スーツの上からでもその体は鍛え抜かれたものであるのがよく分かる。

 

「荻さん、お疲れ」

 

「馬鹿者。まだ終わってないだろう」

 

 荻と呼ばれた男は呆れ混じりに言った。

 

「まぁ、そりゃそうだけどよ、あいつはともかく司一はなぁ……」

 

「言いたいことは分かる。確かに奴は手腕以外は大したことはない。が、あまり甘く見ているとどこかで足元をすくわれるぞ」

 

「まぁ、そりゃそうなんだが、あいつって小学生の俺にボコボコにされる程度の軟弱者じゃん。今更、警戒しろって言われてもねぇ……」

 

「その油断の所為で俺達はタダ働きをさせられたんだが」

 

 痛い所を突かれて、禅十郎は何も言い返せず、苦い顔を浮かべるだけだった。

 

「へいへい、あの時はすみませんでした」

 

「お前、反省してるのか?」

 

「まぁな、アレは正直今の俺じゃキツイわ。次までにあのロン毛野郎ブッ飛ばしてやる」

 

「いや、そう言う事じゃない。まぁ、その意見には賛成だが」

 

 禅十郎が消息を絶ってから色々とあり、『結社』もかなりドタバタしていた。実際、司一と直接的な関係は無いのだが、怪我の功名と言えば良いのか、あのことがなければ、ここまでスムーズに事が運ぶことは無かっただろう。

 そのことは一旦おいておいて、禅十郎は今後の方針について説明した。

 

「まさか、ブランシュを叩き潰すなんて言う学生がいたとはな」

 

 達也のことを報告すると荻は少々驚きつつもその学生に興味を持った。

 確かに達也が動くことは禅十郎でさえも予想外であるが、一緒に克人も同行するのは好都合ではないかと考えていた。

 

「成程、十文字家の御子息が動くとなれば好都合だな」

 

「ああ。こっちから割く人員を減らせるし、俺らより十文字家の方が普通の警察に影響力がある。面倒な事後処理も任せられそうだ」

 

 禅十郎の意見を聞いて、荻は少し考える。

 

「……分かった、社長には俺から伝えておこう。但し、お前の任務はそのまま継続する。司一は必ず捕縛しろ。その場にいる構成員も全員逃がすな」

 

「了解。……あ、そう言えば」

 

「ん?」

 

 唐突に間の抜けた声を上げる禅十郎に荻は首を傾げた。

 

「姉ちゃんが言ってたんだけど、晩飯が焼肉ってマジ?」

 

 任務中であるにも拘らず禅十郎が夕食の話題を出してくることに荻は呆れた。だが、こういう所が禅十郎らしいと思える為、とやかく言うつもりは無かった。

 

「千鶴がそう言ってたならそうだが、それはお前の働き次第だろうな」

 

「よっしゃー!」

 

 ガッツポーズして喜ぶ禅十郎(ヘルメットの所為で顔は見えないが)に荻は完全に呆れを通り越して、苦笑いしていた。

 

(これで結社の次期社長で来月には道場の師範代になるのか。器がデカいんだか、ただのバカなんだか……)

 

 そんなことを荻が考えているとは露知らず、禅十郎は「ひゃっほー、今日は焼肉だー!」と歓喜の声を上げてバイクでここから去っていくのだった。




いかがでしたか?

これでアニメだと六話の終盤まで行きました

次回から七話に入りますが、この章が終わるまでもう少しかかるかもしれません

前々回ぐらいで残り五話くらいとか言いつつ、なんだかんだで話が伸びてるのですが、ご容赦ください

では、今回はこれにて

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