魔法科高校の劣等生と優等生、加えて問題児   作:GanJin

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どうもです

お気に入りに入れてくれた人が200人近くいることに驚いてます

夏に入って、めちゃくちゃ暑いです

自分も去年かかってしまったのですが、皆さん、熱中症には気をつけましょう

それではお楽しみください

2020/04/07:修正しました。


依頼主

「……勝者、司波達也」

 

 達也と服部の試合は一瞬で片が付いた。

 為すべきことを為した顔をして、達也はCADの片付けに取り掛かろうとする。

 

「待て」

 

 摩利が達也を呼び止める。

 

「今のは自己加速術式を予め展開していたのか?」

 

「魔法ではありません。正真正銘、身体的な技術です」

 

「だな。大体、渡辺先輩ほどの実力者がその程度のことを見破れない筈が無いじゃないですか」

 

 摩利も禅十郎の言う通りだと思っている。

 二人のサイオンの流れを注視していたのだから、判定に間違いはない。だが、どうしても頭がその判断を受け付けない。

 試合開始直後、達也が瞬間移動と見間違えるほどの速さで動いたのだ。

 魔法を使っていたと考えた方が納得できてしまう。

 

「兄は忍術使い、九重八雲先生の指導を受けているのです」

 

「あの九重先生と……」

 

 対人戦闘に長けた摩利が八雲の名を知っていても不思議はなかった。

 

「渡辺先輩だって、魔法を使ってるように見せる歩法を知ってるじゃないですか」

 

「確かにそうだが……。これほどとなるとな」

 

「まぁ、俺もあそこまで動ける自信はないっすね。極めて近い動きなら出来ますけど」

 

 摩利だけでなく他の上級生たちも達也が古流の体術を習っていることを知り、その奥深さに驚いていた。

 

「じゃあ、あの攻撃に使ったのも忍術ですか? サイオンの波動そのものを放ったようにしか見えなかったんですが。それではんぞー君が倒れたとは思えないのですが…」

 

 真由美の言葉使いが硬いのに服部の呼び名は変わらないことに禅十郎は笑いを堪えていたが、話の続きが気になり何とか堪えてみせた。

 

「サイオンの波動に酔ったのでしょう」

 

 すると鈴音が真由美の疑問に答えた。

 その答えに真由美は納得していない様子であったが、鈴音の説明はここで終わることはなった。

 

「司波君は振動数の異なるサイオン波を三連続で作りだし、三つの波がちょうど服部君と重なる位置で合成されるように調整して、強い波動を作り出したのでしょう。服部君はその波動に酔って倒れたと言うことです」

 

「お見事です、市原先輩」

 

 鈴音の説明に達也は関心して頷いた。

 

「それにしても、あの短時間でどうやって……。それだけの処理速度があれば、実技の評価が低いはずがありませんが……」

 

 面と向かって成績が低いと言われ苦笑いする達也。

 そんな達也は先程から、時々、達也の手元を見ている中条が鈴音の疑問に答えた

 

「あの、もしかして、司波君のCADは『シルバー・ホーン』じゃありませんか?」

 

「シルバー・ホーン? あの謎の天才魔工師トーラス・シルバーのシルバー?」

 

「そうです!」

 

 一気に目を輝かせる中条に禅十郎は呆気にとられた。

 

(中条先輩、デバイスオタクかよ……)

 

 中条が長々とトーラス・シルバーと彼が開発したループ・キャスト・システムを語り始め、それを見兼ねた真由美は待ったをかけた。だが、ループ・キャストについて語るのを止めたが、今度は達也が持っているCADについて語り始めた。

 気弱に見えた中条が豹変したと言えなくもない喋りっぷりに、禅十郎はふと目が遭った摩利に「どうするんですか?」と目で言うと、摩利は手の施しようがないと顔で返した。

 

「あーちゃん、ちょっと落ち着いて」

 

 それを見兼ねた真由美がとうとう止めに入り、中条はかなり息が切れていた。

 

「ですが、ループ・キャストは全く同一の魔法を連続発動するためのシステムです。それでは、三種類の異なる波動を作り出したことに対する説明がつきません」

 

 中条が詳細に語ったものの、それでも達也がどのように魔法を発動したか説明になっていたかった。

 

「確かに振動数を定義する部分を変数にしておけば複数の異なる波動を作り出せることが可能です。ですが座標・強度・持続時間に加えて、振動数まで変数化するのを実行するなると……、まさか、それを実行しているのですか?」

 

 鈴音は驚愕に言葉を失い、達也は肩をすくめた。

 

「多変数化は処理速度としても演算規模としても干渉強度としても、この学校では評価されない項目ですから」

 

 真由美と摩利も達也の技量に驚く中、ふとある言葉を思い出した。

 

―――――有り得ないことなんて、有り得ない

 

 先輩の言葉を久しぶりに実感した三人であった。

 その後、倒れていた服部が起き上がり、自身の了見の狭さを実感したことで、深雪に身贔屓と言ったことを謝罪し、禅十郎達は揃って生徒会室に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 戻っている途中、禅十郎は達也と話をしていた。

 

「にしてもさっきの動きはスゲェな。ありゃ、九重のおっさんが俺らに使った動きだろ。いつの間にできるようになったんだよ」

 

「何年も師匠に稽古をつけてもらってるからな。自然と出来るようになった」

 

「言うねぇ。俺はあの動きの所為で何度も酷い目に遭ったんだよなぁ。あの人、いい年して時折子供じみたことするんだよ。なぁ、九重のおっさんって修行中も相変わら飄々としてんのか?」

 

「ああ、この間も深雪にちょっかい出そうとしていた」

 

 達也の言葉に禅十郎は呆れて顔をしていた。

 

「大丈夫か。色欲って戒律に触れるんじゃなかったか?」

 

「師匠のことだ、いつもの口八丁で誤魔化すだろう」

 

 そいつは違いないと禅十郎は軽快に笑った。

 

「ああ、そういえば、毎朝やってんだって例の総掛かり」

 

 禅十郎が言っているのは九重寺の中級以下の門人二十人による総掛かりの稽古のことだ。

 

「ああ。毎日手厚くもてなしてもらっている」

 

「いいなぁ、俺も久しぶりに顔出すか」

 

 ここ最近では稽古をつけてもらうために九重寺に出向いているわけではないため、たまには稽古をつけてもらおうかと禅十郎は考えていた。

 

「師匠のことだ。お前が来たら、上級者の総掛かりをやらせるんじゃないか」

 

「勘弁してくれ。九重のおっさんの上級者の門人が総掛かりとか、命がいくつあっても足りねぇよ」

 

「ほう、『武術の申し子』と呼ばれたお前が随分情けないことを言うようになったな」

 

 禅十郎の言葉に眉をひそめる達也。

 

「はっ、その申し子に黒星をつけた奴が何言ってやがる」

 

 嫌味ったらしく言う禅十郎だが、それを見ていた深雪は不機嫌になることは無かった。

 

「ま、今度行く予定があるから一年半ぶりに手合わせ頼むわ」

 

「勘弁してくれ。今のお前と渡り合える自信がない」

 

「うっせ、勝ち逃げなんぞ俺が許さねぇっての。百五戦中四十七勝五十五敗三分け。俺の連敗の最高記録は最初の頃の十四連敗、連勝の最高記録は後半での六連勝だ。あと九回連続で勝つか、十五連勝になるまで付き合ってもらうぞ」

 

「相変らずの負けず嫌いだな。そんなことよく覚えてるな」

 

 流石の達也も呆れていた。

 

「今までの試合はこの『勝負録』に書いてあるから当然だっつうの」

 

 懐から手のひらサイズほどの手帳を取り出して胸を張った。手帳の表紙には堂々と『勝負』と書かれていた

 『勝負録』とは、その名の通り、今までの試合などの結果を記録している手帳のことである。そこには、あらゆる試合の内容と結果が詳しく書かれており、禅十郎は時々それを見て気を引き締め直すのだ。

 ここにいる三年生はその手帳を見て呆れていた。

 中条と深雪も若干引き気味だったが、禅十郎は全く気にしていない様子であった。

 達也も何処か懐かしんでいるように見えたが、内心は呆れていた。

 

「うっせぇ、お前だって勝負事に関して冷めてるとこが変わってねぇじゃんか」

 

 その後、禅十郎と達也は摩利と共に風紀委員会本部にまっすぐ向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 風紀委員会本部に向かった禅十郎と達也は何故か風紀委員会本部の掃除をしていた。

 きっかけは達也が風紀委員会本部の机の上に散らばっているCADを見て耐え難いものがあったらしく、ついでに部屋に散らばっている書類や本などもまとめて片付けることになったのである。

 

「じゃあ、達也は魔工技師を目指すってわけか」

 

「あれほどの対人スキルがあるのにか?」

 

 部屋の掃除をしながら、達也の話を聞いていた禅十郎が尋ねた。

 摩利も首をかしげていた。

 

「俺の才能じゃ、どう足掻いてもC級までのライセンスしか取れないですから」

 

「他人事みたいに自虐を言うなっての。反応しづれぇじゃねぇか」

 

 ジト目で禅十郎が達也を見るが、当の本人はどこ吹く風と肩をすくめた。

 

「事実を言ったまでだ。すまん、それを取ってくれ」

 

「ほらよ。ま、今の評価じゃ、実践で使えても使えないって言われる奴も少なくないしな。警察官とか軍人は例外があるらしいけどな」

 

「俺はどっちにもなる気はない」

 

「そりゃ残念。噂じゃ、癖の強い魔法師を集めた部隊があるらしいんだが、達也が軍人になったらそこにスカウトされるんじゃないか? そうなったら面白そうだ」

 

 その言葉を聞くと、達也はCADをことりと置くと少しだけ時が止まったように動かなかった。しかし、それも僅か一瞬のことで摩利には気付かれなかった。

 一方、禅十郎はそれをはっきりと見ていたのだが、それほど気にする必要はないと思い作業に戻った。

 それから一通り片付けをしていると、達也と禅十郎はあることに目が移った。

 

「渡辺先輩、気のせいか、先輩の周りだけさっきよりひどくなってる気がするんですが……」

 

「そ、そんなことは無いぞ。これは、その、あれだ」

 

 どれだよ、と達也と禅十郎は心の中でツッコんだ。

 慌てている摩利を見て達也は禅十郎を見る。禅十郎は肩をすかしてこう言った。渡辺先輩はこういう人だ、と。

 要するに事務処理と整理整頓が苦手なのである。

 

「もういいです。後は俺と達也でやっておきますから、先輩は椅子に座って見ててください」

 

「いや、だがな……」

 

 風紀委員長として以前に先輩として、後輩に丸投げする気になれない。

 だが、禅十郎はそんな摩利の気持ちをくむ気は更々なかった。

 

「そもそも先輩達がちゃんと掃除していれば、ここもそこまで汚くはないですよね?」

 

「うっ……」

 

 もっとも言われたくないことを言われて息を詰まらせる摩利。

 

「聞いてますよ。鈴音先輩から何度も注意されても、中条先輩が何度懇願しても掃除しなかったって」

 

 顔を歪ませ、摩利を睨み付ける禅十郎から禍々しいオーラを感じ取り、彼女は冷や汗を掻いていた。

 

「わ、分かったから、そう怖い顔するな。なっ」

 

 委縮する摩利の姿を見て、達也は呆気にとられていた。

 禅十郎が摩利に何度もシバかれていることは噂で聞いていたが、目の前では全く逆のことが起こっている。とても奇妙な光景である。

 

「渡辺先輩」

 

 摩利を呼んで、一瞬にして穏やかな顔になった禅十郎。だが、禅十郎から感じるオーラは顔と全く一致しておらず、正反対であった。

 

「は、はい」

 

 流れに呑まれてしまい完全に委縮してしまっている摩利。

 

「反省してくださいね」

 

「はい……」

 

 そして、摩利を放置して禅十郎と達也はテキパキと部屋を掃除していくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 その後、色々あったが達也が正式に風紀委員に入ることになり、深雪も生徒会の仕事の仕方を大体教えてもらい、今日の生徒会の業務は終了した。

 服部、鈴音、中条は既に生徒会室を後にしており、摩利も風紀委員会本部の戸締りをして先に上がっている。

 生徒会室にいるのは真由美と禅十郎だけだった。

 まだ下校時間まで時間があり、真由美が少し話がしたいということで禅十郎はお茶を淹れていた。

 ただし、禅十郎が用意しているお茶の数は三つ。つまり、もう一人ここにやってくるということだ。

 お茶を淹れていると誰かが生徒会室の扉をノックする音が聞こえた。扉を開けて入ってきたのは克人だった。

 

「いらっしゃい、十文字君」

 

「ああ」

 

 軽く挨拶をした後、克人は椅子に座る。

 禅十郎は淹れたお茶を真由美と克人に配り、克人に向き合うように椅子に座った。

 

「それで、今回の話は先日の続きですか?」

 

「そうだ」

 

 話を持ち出したのは禅十郎に、克人は頷いて肯定する。真由美も首を縦に振って肯定するが、何処か申し訳なさそうな顔をしていた。

 十師族の家系といっても、次期当主になる者とそうでない者とではこうも違いがあるものだろうかと克人と真由美の態度を見て、そう感じた。

 

「それで、今回はどのようなご用件ですか? 上から情報を出すなと言われているのであまりお役にたてないと思いますが……」

 

「いや、今回聞きたいのはブランシュの情報ではない」

 

 それに禅十郎は怪訝な顔をした。

 

「エガリテの情報も開示するなと言われています」

 

「それも構わん。向こうの情報もどうにかすれば手に入るからな」

 

 克人の言葉は最もである。十師族の力を持ってすれば、ブランシュの情報は容易いわけではないが、手に入れることは可能である。

 そもそも先日の話から篝家に聞くのは難しいのは理解しているはずであり、呼ばれた理由が分からなかった。

 

「篝、今回聞きたいのはそちらが()()()()()()()()ということだ」

 

「……なるほど、それでしたか」

 

 想定内の質問ではあったが、こうも早く来るとは思ってもみなかった。

 篝家は徒手空拳の名門であり道場も開いているが、それはあくまでも表の顔。魔法師の家系によくある裏の顔も当然持っている。

 その仕事をこなすうえで情報収集能力が必要であり、今では十師族に匹敵するほど、時にはそれ以上の情報を持っているのだ。

 克人は篝家がブランシュの情報を集めていることを彼の父である現当主から聞き、情報を提供するよう交渉するため先日の会合を開いたのである。

 

「然るべき報酬さえ支払えば、それに見合った情報を渡している。だが、今回は情報の提示に制限が掛けられていた。つまり、ブランシュの情報を集めることは依頼された仕事であると予測するのは容易だ」

 

 克人の考察力に禅十郎は笑みを浮かべて頷いた。

 

「十文字先輩の仰る通り、ブランシュの情報収集は然るお方からの依頼によるものです。その為、依頼主から許可が下りた情報しか皆さんに提示できません」

 

「なるほど、そういう理由だったか。それで依頼主の件だが……」

 

「依頼主をそう簡単に口にすることが出来ないのはご理解していただいているはずです」

 

「理解している」

 

 分かっているうえで尋ねてくるあたり、何か裏があるのだろうかと懸念していたが、ふとあることに気が付いた。

 先程の話からも気になっていたのだが、今回の件について真由美が積極的ではないのだ。

 生徒会長として生徒の身を案じているために情報が欲しいのであれば、もう少し欲を出してもいいはず。だというのに先日から克人や摩利、鈴音が主に話していたが、真由美は必要最低限の話しかしていない。

 寧ろ禅十郎から情報を得ようとしていることに躊躇いがある気がしなくもなかった。

 そう考えているうちに禅十郎はあることに思い至った。

 

「先に言っておきますが、今回の件は七草の御当主が依頼していることではありません。加えて申し上げるなら、十師族、師補十八家にもおりません」

 

「禅君?」

 

 その一言に真由美の目の色が変わった。先程まで何か後ろめたい様子であったのだが、少しばかり安堵している目だ。

 それを見た禅十郎は軽く溜息をついた。

 

「なるほど。つまり今回は七草家の御当主が依頼主ではないかと確認したかったということですか」

 

 ピクリ、と真由美の肩が動いた。

 

「七草家の現当主が依頼し、ブランシュの動向を学内で監視せよと依頼したのではないか確認したかった。違いますか?」

 

 禅十郎の言葉に克人は首を縦に振って頷いた。

 

「そうだ。先日、七草に頼まれてな。自分の口では聞きにくいと言うから、このような形になったという訳だ」

 

「ちょっと、十文字君!?」

 

 克人はあっさりそれを認めてしまったことに真由美は愕然とした。

 

「気付かれたのであれば、黙っていてもこの男ならいずれ答えに辿り着く」

 

「それはそうかもしれないけど……」

 

 不貞腐れている真由美に禅十郎は笑うことを堪えるので精一杯だった。

 

「まぁ、俺が第一高校に進学してから懸念してたんでしょうね。本当なら俺は第三高校を進学するつもりだったのに、それを止めたのは誰かの指示だからじゃないか、と」

 

 真由美の反応を見るに当たりだと確信した。

 

「加えて、第一高校にはブランシュによる侵食を受けている訳ですし、少なからず篝家は五年前からブランシュと因縁がありますしね。それを切っ掛けにブランシュを片付けたいと思っている誰かが自分の家に依頼してきたとすれば、かなり力のある家系、それも十師族かそれに匹敵する人になります。それにこういう裏工作といえば七草家の現当主が第一に出てきますから、そう懸念されても仕方ないでしょう」

 

 これも図星であるらしい。

 

「大体、この程度の情報なら、普通に聞いてくれても話しましたよ」

 

 最後の言葉が砕けた口調になっているのは、真由美だけに言っているのはすぐに分かった。

 

「ごめんなさい。なんだか、気が引けちゃって」

 

「気にしてませんよ。あのおっさんのやり口を知ってるならそう考えるのも当然です」

 

 ほっとしている真由美にはこれ以上余計なことを言わないようにしようと禅十郎は心に決めた。次期当主になるわけでもない真由美にこれ以上余計な重荷は背負わせる気にはなれない。

 何せ、彼女が懸念していたことは依頼主を除いてほとんど合っているのだから……。

 

 

 

 

 

 

 

 話を終え、禅十郎達は生徒会室を後にし、真由美とは校門前で分かれた。

 克人とは途中まで道が同じであるため、流れでそこまで一緒に歩いていた。

 

「篝、最後に聞きたい」

 

「何でしょうか?」

 

「最後まではぐらかした依頼主についてだ」

 

「それは仰ることは出来ないと申し上げたはずです」

 

「分かっている。だが魔法師の、それも力のある家系しかブランシュという名を知る筈がない。だが、お前は数字持ち(ナンバーズ)には依頼されてないと言った。数字持ち(ナンバーズ)ではなくとも権力のある家系は古式魔法も含めていくつかあるが、直接的な被害を受けてない以上、わざわざ手を出す必要がない。加えてブランシュの件を知っている警察の上層部や政治家がわざわざ頼むこともしないのは明白だ。とすれば、今回の依頼主は……」

 

「十文字先輩」

 

 克人が最後まで言いきる前に禅十郎が口を挿んだ

 

「先程、お出しした()()()()()()()()()()?」

 

 突然の質問に十文字は訝しんだが、気後れすることなく答えた。

 

「ああ、うまかった」

 

「それは良かった。この間、客人に同じものを持て成したときに()()()()()()()()と言われたので、少し気掛かりだったんですよ」

 

 それだけ言うと、禅十郎は軽くお辞儀をして先に歩きだす。

 克人は当分の間、そこに立ち止まっていた。

 

―――――お茶はいかかでしたか?

 

 次期当主である克人は禅十郎がどういう意図で先程の質問をしたのかを即座に理解した。

 そして、その質問の後に禅十郎が言った言葉によって克人は今回の件の依頼主が誰なのか確信するのであった。




いかかでしたか?

当分、更新することが難しいため今回は少し長めになりました

可能な限り更新するつもりですが、確実に再開できるとしたらお盆に入ってからになると思います

さて、次回から新入部員勧誘週間に入ります

予定では、優等生ネタで行こうと思っていますのでお楽しみに!

それでは今回はこれで

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