ぼっちの黒春学生Life ~青春?恋?そんなものは残像だ~ 作:村六分
早朝、俺は来る日に向けて準備を整える為に隣街のショッピングモールに向かうべく電車に揺られていた。
その途中、膝の悪そうなお爺ちゃんが杖でギリギリ重心を保っていた。ここは紳士力の見せ所だと感じ柄にもなく席を立ち。
「お爺ちゃんよかったらどうぞ」
と席を譲ろうと手を差し伸べたのだが……。
「…のか……」
「ん?」
何やらぼそぼそ言っている。ははん?さてはシン樣の紳士パゥワーに感動して言葉を失うって……ーー。
「ワシを年寄り扱いするなあああああああああッッッ!!」
お爺ちゃんは差し伸べた腕に肘打ちを放った!
「ごあああああああッッッ!?」
クリティカルヒット!筋に入った!
深海は12の肉体的ダメージ、9999999の精神的ダメージを受けたっ!
「全く、これだから最近の若い衆は!昭和の人間の気持ちがわかっとらん!いいか、ワシはまだ85じゃああああああ!足腰もピンピンしとるわい!」
その割りには危うい体勢だったような気が……ーー。
「キッ!!」
老人に余計な事を考えたのが悟られたのか鬼の形相もよろしくで睨む。ヒエエエエエエ怖い……。思わず内股になってしまう。
「今お前。このクソジジイうるせえなあとか思ったろう!?」
「いやいやそんな滅相もなーー」
「いいわけ無用じゃああああああ!」
その後俺はやってもない思ってもない冤罪で延々と説教を喰らわされたのであった。
そのせいで幾つも目的の駅から遠ざかってしまいショッピングモールに着いたのが結局お昼過ぎであった。乗り継ぎの料金も掛かったし本当最悪な出だしだ。あのじじい許すマジ。
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「はあやっと終わった……。乗り継ぎ料金のせいで飯も食えんかったしはよ帰りましょ……」
あれから約束の日(意味深)の準備に服装、ヘアーカット、万が一偽造ラブレターだったときの対応策に秘密兵器の電子機器を買って貯金箱にあった金はもう底を尽きかけていた。まだ、帰りの電車賃があるだけ幸いだ全く。
食事も無しに慣れない高級そうな店に行ったのだからもう精神的にも肉体的にもぼろぼろだ。
まず、服屋。ユニ○ロやしま○ら以外のブランドの服屋なんてまず店のシャレオツな雰囲気からしてコミュ症の俺には敷居を跨ぐのすら辛い。だというのに、余計な気を使ってくれた店員が「何をお探しですか?」ってニカッとリア充スマイルをくれたもんだから非リアの俺は「あっ、えちょ……。これをお願いします!」ってマネキンが着ていたオサレグッツ一式買うことになってしもうた……。止めに自動ドアまでのお見送りわざわざ買ったものまで持っていく傍迷惑なサービス付きで。店を出てからも後ろを振り返ったら俺が見えなくなるまで深々頭下げてるし。真心もここまで来ると流石にドン引きである。
次いで、美容院。普段は行き付けの床屋でおっちゃんに「何時もので」って言えば通じるが服屋同様にオサレ空間なここではそうは問屋が降りない。なんか洒落たパツキンのアンちゃんらの間に座らされて1時間以上待たされた。皆ファッション雑誌やスマホを片手に髪をイジイジしてカッコつけてて俺もの凄く場違いでした。やっと俺のターン!席に着いてから「5分の丸刈りで(キリッ)」と店員にお願いしたらなんか珍獣に遭遇したような表情をされた。なんか可哀想なってきて(主に俺)「やっぱ、お任せで……」と言い直した時の店員の安心仕切った顔に切なさを感じてしまった。だけども、百戦錬磨の孤高の学徒たる俺はその程度ではめげなかったのさ!衝撃シーンがこれだ。
「シャンプーと顔剃りどうしますか?」
店員は問う。
「両方お願いします。シャンプーは炭酸水でね(キリッ)」
俺は答えた。
この時の俺は勝利を確信した。っふ!見たか、俺だってやればできんだ……ーー。
しかし、現実はそう甘くなかった。
何故か店員の表情は固まっていた。
アレー?オッカシイナー?来んなハズジャナカッタノニー。
余りのショックに心の中でエセ外国人風に呟くのであった。
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結局、炭酸水は止めにしてカットが終わったら会計をそそくさと済まし足早に美容院を後にした。
それから電気屋で秘密兵器を購入し今に至る。
ん?秘密兵器は何かって?それを聞くのはやぶさかですぞ旦那~。秘密兵器は秘密であってこその兵器ですからな。
「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしています」
お約束の台詞を背に店を出る。バスで駅まで行きたいところだったが懐が淋しい。歩いて行けない距離でもないから健康の為にも歩きますかなあ。
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徒歩20分やっとこさ駅に到着。春休みだからか近郊地域にしてはそこまで駅混み合っておらずスムーズに電車に乗車できた。
「あらーやっぱこうなるのね……」
駅は混んでなくとも電車は満員であった。残念……。まだ、近くに可愛い女子高生でも入ればおっさんの加齢臭と中和されるのだが……ーー。
そんなバカな事を考えていたら天使が舞い降りた。
「すいません……。ちょっと通ります……」
控え目な姿勢で人混みをより分けて少しずつ移動していく少女。なんということだ。俺と肩が触れる位置までくるではないですか!これは……ーー。やっぱりモテ期かーー。いや、だが俺には既に…っ!んなわけないな。
一瞬で高揚が冷めてしまう。よーく思い出せ。俺は厳つくおっさんみたいな顔してるから痴漢の犯罪者に置換されそうになったことが
しばしば……。この手の年頃女子は少し当たっただけで痴漢扱いする発情期だから細心の注意を払わないとサバンナの中のオワシスどころがーー。
よし決めた。俺は荷物を背負い両手で吊り革を強く握りしめた。これで俺が痴漢に置換される可能性は減った。もしされても吊り革を握ってたから無理だと言い切れる。更に俺の手汗は常人のそれを優に越えているために吊り革がしっとり濡れて握っていた証拠になるのだ!どうだ!この完璧な痴漢置換対策。パーフェクトっ!
それからずっと吊り革を握り締めて腕を上げていたため腕を吊ったのを我慢しながら目的地を待つのだった。
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「あぁぁっ……」
何やら少女から喘ぎ声が発せられる。念の為に言っておくが俺は何もしていない。人混みが邪魔で状況が分からないが何やら彼女の背後が怪しい。
少女は尻の辺りを必死に抑えている。背伸びをしてみると小太りの中年が少女の桃の様な尻をまさぐっているのを発見。中年の手は徐々にスカートの中に伸びていく。少女はスカートを抑えて浸入を防ごうとするが男になにか囁かれるとビクンっと反応し抵抗が弱くなった。
それを好機と思ったのか男は一気にスカートへと手を伸ばし……ーー。
いかん!見惚れてる場合ではない。至急助けにいかんと少女の貞操がアカン!?
中年男の元へ歩みを進めようとするが、途中で止まってしまう。
ーー今朝みたいに大きなお世話かもしんない……。
今朝の老人のような件もある。更に以前も痴漢の毒牙から助けに行ったことあるが、結局余計なお世話、大きなお世話だった。感謝どころが返ってくるのは罵倒か無視。世の中誰かがやらねばならないことは沢山ある。俺が毎度毎度その『誰か』である必要性はあるのだろうか?善意が悪意で返ってくる事に何の意味があるのだろうか?答えはどちらもノー。世の中何処かしらで歯車が合うようにうまく出来てるのだ。そう俺がやらなくとも『ヒーロー』は必ず現れる。
だが。
気に食わない。こんな密集したところだ。俺以外にも気付いてる輩はいる筈だ。だが、なぜ動かない?きっと自分以外の誰かが何とかしてくれるだろうと居もしない誰かに無責任な期待を寄せて自分達は安全な高みから傍観してる奴らがそれ容認している腐った世の中が気に食わない。昔から人は自分が最後には可愛いのだ。だから多少理不尽だったり、悲惨な事でも他に押し付けれる人間の本質だ。そのせいであの時、アイツも……ーー。
「大きなお世話、大いに結構。考える前に動けってか……」
溜め息を1つして、痴漢男に近寄り腕を掴んだ。
「ひっひええ!?」
「おっさんなにやってんの?てか、ナニをやってたのか?」
「くっ、放せ。手を放せ!」
男は掴まれた腕を振り払おうするが無駄だ。俺の握力は60kgだ。元柔道部なめんな。
「駅員さんこの人なんか変です!ちょっと来てください!」
大声で叫ぶ。周囲もざわめき始める。これだけの目の中見られてんだ。もう詰みだおっさん。
『間もなくー○○○ですー』
アナウンスが次の駅が近いことを知らせる。おっさんをそこにしょっぴいて後は駅員に任せて自慢のステルスぼっち(影の薄さ)でトンずらしようと思ったの矢先にーー。
ツルッ。ガシッ、スルッ、ペッチン!
この擬音4つで何が起こったのか想像できた素晴らしい。ズバリ、油断してたら手首の返しで拘束から痴漢男に逃げられてしまい、あろう事か俺の手が先程までの痴漢男の手の位置つまり少女のスカートの中に滑り込み更にパンツと肌のギリギリ境界線に手入り直に尻に触れてしまっいるのだ!
故に。
「キャアアアアアアアアア!」
平手打ちがクリティカルヒット!
「ここで捕まるかってんだ!」
男が扉が開くと同時に走りだす。
「くそ待って!」
俺もすかさず追跡しようとする。しかし。
「待って!君待って!お願いだから!」
何故か少女が制止を求めてきた。
「でも、早くしないと逃げられちまう……。ごめん!」
痴漢男の後を追おうとするがーー。
ビリッ。何か繊維の破る音が聞こえた。
音発生源を辿るべく後ろを振り返ると。
「Wow……」
そこには、パンツを剥ぎ取られてスカートを涙目で必死に引っ張って隠そうとする銀髪の女子高生とその戦利品を高々握りしめた真の変態がいた……。いや、俺だそれは。
………………………………………………
その後の展開は早かった。他の駅員が何やら強引に改札口を通ろうとしている男がいたため取り押さえて警察を呼び、無事逮捕されたようだ。
俺も色々と聞かれたり罵られたりしたが、少女に反省の意を全身全霊の土下座で印したらなんとかお許しが貰えた。
事情聴取がやっとこさ終わって解放されなりうきで少女と一緒に帰路へ。
「「………」」
謎の沈黙。ヤバい、気まずい……。
「あの!」
「うっす……」
折角あちらが沈黙を破ってくれたのに思いがけず薄い反応をしてしまう。
「えっと……。助けてくれてありがとうございました。バタバタしてて言うタイミング逃しちゃってやっと言えてよかったー」
えへへー。とはにかむ少女。……、可愛すぎやろ惚れてまうやろ!
「いや、助けに言ったはいいけど変なとこ触ってしまった上にあろうことかパンツをーー」
「ああああああああああ!言わなくていいからぁ!なに言いたいかは察しがつくからそれ以上いわないで……。恥ずかしい……。」
少女は朱色にほっぺを染めてスカートの裾を抑える。
「あ、ごめん!今ノーパn……」
「いやああああ!そうだよぉ!パンツ履いてないからスウスウして落ち着かないのぉ……!もうやだお家帰る……。いや、死のう死ぬしかない……」
「待て早まるなああああああ!」
そんあこんながしばらく続き。
「落ち着ち着きました?」
「取り乱してごめんなさい……」
「こっちこそ、すいません……。じゃあ、邪魔者は早急に消えますので。では」
そう言うと俺は足早にその場を去ろうとする。しかし、腕を何かに捕まれて阻まれる。
「待って!その……。何かお礼がしたいので連絡先教えてくれませんか?」
「なぬっ!?」
ちょとまってお姉さん。悪意は無いとしても変な事をそれも一生のトラウマに成りかねないレベルの事をされたのにそれでも尚痴漢を撃退したお礼がしたいと……。
女神…、いや天使だ。
少女を改めて見ると外国人なのかスカイブルーの大きな瞳と雪のように白い肌と腰の辺りまである髪が特徴的だ。更に細過ぎず太過ぎない適度な肉付きの健康美な体格で美しい曲線を描いている。ようは、どこぞのアイドルといっても良いほどの容姿だ。
そんな美少女とお近づきに成れる好機?
だが。
「いやいや!お礼なんかいいっすよ。俺も役得だったからお相子ってことで。冴えない童貞に喜びをありがとう!サラダバーっ!」
俺は腕を振り払って颯爽と去ってゆく。そうさ、彼女のようなリア充は俺みたいなのと関わっちゃ折角の青春の1ページが汚れちまう。これがベストなはず。
と自分にい聞かせるのであったが、後に盛大に後悔してしまうのだろう。
全くコミュ症は嫌である。
…………………………………
「行っちゃった……」
なんかサラダバーを求めて恩人たる少年は風の如く去ってしまった。
「でも、この駅に降りたってことは近くに住んでるかもしんないし、また会えるかなぁ……」
その時はちゃんと連絡先を聞いてお礼をするのだと決心するのであった。
書きたいことが多すぎで偽造ラブレターには入れませんでした。申し訳ない。プロローグは次かその次で終わるかな?
やっと本編が近づいてきたぜ!