俺の青春がスポコンになるなんて間違っている。 作:nowson
撮り貯めした、春高バレーに高校サッカー、ラグビー、アニメに積んだゲームにオフのトレーニングにより予定より時間がとれず更新が停滞してました。
俺ガイルの舞台である千葉県の代表は習志野高校、千葉県最高成績の3位
良いチームと良い応援、素晴らしかったです。
スポーツって本当にイイですね!!
―自宅―
帰宅し夕食を済ませた八幡は、居間のソファにゴロンと横になり携帯ゲーム機をピコピコさせていた。
(らしくない……か)
温泉で七沢に言われた何気ない言葉が胸に引っかかる。
(確かに我ながら、らしくない行動をしている自覚はある、いつからだ?)
バレー部に助っ人に入る前か?練習に参加した時か?
いや
(体育でボールを持った時だ)
高校で使われるボールは5号、八幡が昔使っていたボールは中学だったこともあり4号、一回り違う規格のボールに触れた時、壁打ちでボールを扱ったあの時、ただのアップのようなものだが心が躍った。
(やっぱ俺、バレーがやりたかったんだな)
幼い頃から積み重ねたトラウマにより早い段階で割り切りと諦めを覚えていた八幡、自分の本位とは関係なしにバレーを離れた時も割り切りと諦めで自分の心に蓋をしていた。
普段は、持ち前の理性で色々な物を押さえつけている彼でも3年間の我慢は抑えきれなかった、らしくない行動も無理はない。
「らしくないと言えば、あいつもか」
頭に浮かぶのは仲違いしかけている一人の女性、八幡の頭に彼女の言動が浮かぶ。
いつもなら受けるはずの依頼を断り、自己犠牲を否定していたのにもかかわらず自分から生徒会長に立候補した。
(俺のらしくない行動がバレーやりたかったからだとすると、あいつは生徒会長になりたかったからか?)
そんなわけないか、と頭に浮かんだ事を否定しようとするが
『なんかゆきのんがそうゆうのやるって意外だよね』
『私としてはあなたがいた方がいがいだったけれど』
『……お前はらしくないけどな』
突如思い出される文化祭前の奉仕部での会話の一部。
(あの時俺は、らしくないって雪ノ下に言った)
確かに、あの時の雪乃の行動はらしくない、その一言に尽きる。
自分から文化祭実行委員に参加した事、普通なら断るような相模の依頼を引き受けた事、まるで想定していったかのような副委員長になってからの指示出しを含めた仕事。
(もしかして雪ノ下はあの時、実行委員長になりたかったんじゃ?だとしたら辻褄が合う……ということは今回も!)
ゲーム機をスリープ状態にして起き上がる。
『あたし、この部活好きなの』
一昨日、結衣と一緒に下校した時の言葉を思い出す。
(だとしたら奉仕部は?由比ヶ浜は……俺は……どうすれば)
悩んでも出てこないその答え、自室に戻り布団に入っても頭から離れない。
それでも睡魔はやってきて、八幡を睡眠へと誘った。
―日曜日―
少し前の八幡なら自堕落を満喫し昼に起床するところだが今は違う。
起床しジャージに着替え、キッチンに向かい炊飯ジャーを開け中に入っている飯と冷蔵庫にあった筋子でおにぎりを作り頬張る。続いて冷蔵庫の麦茶でそれを流し込み、部活に向かうべく家を出た。
練習試合まで間、少しでもボールに触れる為。
―総武高校体育館―
練習1時間前
早くついたはずなのに体育館からはボールの音、誰か練習しているのか?八幡は扉を開け
中へと入る。
「おう、おはよう比企谷」
サーブ練習をしていたのだろうか、乱雑に転がるボールの中、エンドラインより後方にいた七沢が挨拶をする。
「早すぎだろ」
「俺、いつもこのくらいだよ」
七沢はそう返答すると持っていたボールで八幡に向かいトスを上げ、八幡もトスを返す。
トスだけだったパスは、いつしかアンダー、オーバー、打ち込みを含めた対人パスになる。
「なあ比企谷」
「なんだ?」
「様子おかしいけど何かあった?」
「いや、別に」
(態度に出てたか?)
「相談あったらのるよ!」
「んで、相談のる代わりトス上げてくんない?この前のスパイク練習したい」
「まあ、トス上げるくらいならべつにかまわないが」
「やった♪」
(自分がスパイク練習したかっただけじゃないだろうな?)
二人はしばらく対人パスと終わらせると、その後スパイク練習へと移った。
―しばらくして―
「次はCで!」
センターとレフトの間に上がったトス、七沢は追い付くと体がブレる事無く決めて見せる。
(やっぱり、相当上手いなコイツ)
いくら八幡の上げるトスの精度が高いと言っても、七沢はクイックを打ってまだ間もない、にも関わらず高いレベルでこなす。
(これなら試合でも使えそうだな)
練習試合に向けて増えた手札、司令塔として使ってみたくなる気持ちがこみ上げた。
「なんだ、もう練習してんのか」
「というかいつの間にクイックを……本職の飯山より上手いんじゃね?」
練習40分前、飯山と稲村も自主練しようとしてたのか姿を見せる。
「……チッ!そりゃあ七沢は夜のCクイックをノーブロックで決めた男だ、俺より上手いだろうよ」
悔しかったのだろう、朝っぱらから下ネタ交じりの悪態をつく。
「えっ?ブロックされたよ!奈々は処女だったたから処女まk……」
「「「言わせねぇよ!!!!」」」
このSSに警告タグをつけさせてはならない、問題発言しようとした七沢を3人が制す。
「それより比企谷、俺の筋肉もスパイク打ちたがっているから参加していいか?」
「あ、俺も俺も」
「アップはいいのか?」
「トレーニングした後、走って来たから大丈夫」
「以下同文」
ボールを拾い、普段のスパイク練習のように並びだす二人。
その後、練習20分前にやって来た一年の二人が練習開始時間を間違えたと勘違いし泡を食うのだが、それはまた別のお話。
―練習後―
練習が終わり、八幡と七沢は相談事と同時に運動して空いた小腹を満たすべくサイゼリアへと足を運んでいたのだが……。
「……なあ」
「「何だ比企谷?」」
「何でお前らまでいるの?」
「どうせなら相談役は多い方がいいかなと、3人寄れば文殊の知恵っていうでしょ?」
何故かついてきた飯山と稲村、そのことを説明する七沢。
「おい、これがもし隠し事な要件ならシャレにならないぞ」
「安心しろ!俺は貝のように口と筋肉が堅い!!」
八幡のツッコミに対し、今日の筋トレで鍛えた上腕三頭筋の長頭をモミモミしながらナチュラルに返答する飯山。
「いや、貝の口って一番信用できないからな!あいつら熱加えるだけで簡単に口開くから!」
そう、会話に熱が入れば簡単に口を開くのだ。
「上手いな比企谷」
「ああ、さすが俺たちのリーダーだ」
どうやら彼らの中で八幡は、チェリーズのリーダーで確定してるらしい。
「とりあえず本題は注文済ませてからにしようか」
七沢がメニュー表を広げると4人はドリンクバーと各々自分が食べたい物を注文した。
「そいいえば俺が悩んでるの何で分かったんだ?」
相談があるや、悩んでる仕草をした覚えがない、不思議に思った八幡が七沢に聞く。
「比企谷はバレーする時だけ目が普通じゃん?なのに今日は普通じゃない目のままだったから何かあるのかなって?」
「ちょっと待て!普段の俺の目が普通じゃないって言ってるのと同義だからなソレ」
「すまん比企谷、それはフォローできん」
「悪いな」
そんな彼に対しフォローできなかった二人が形だけの謝罪をする。
「いいよ、どうせ言われ慣れてるし、むしろ言われ慣れ過ぎて様式美とまでなってる」
実際、目の事はよく言われる、今更気にしても仕方ないと割り切った。
―数分後―
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?ごゆっくりどうぞ」
ウエイター(男)が注文した料理を一通り運んでくる。四人は雑談しながら各々が料理に手を付ける。
「なあ比企谷」
「何だ稲村?」
「お前、何でバレー部入らなかったの?」
「……」
突然の問に八幡は閉口する。
「……まあバレーは辞めたつもりだったからな」
「つもりだった……ねえ」ニヤニヤ
「何だよ」
「何でもないさ」
稲村は、八幡の居心地悪そうな顔を見ながら含みのある笑みを受かべる。
「辞めたにしても体験入部に来てくれたり勧誘に引っかかってくればよかったのに、俺入学式からアンテナ張って色々な奴勧誘しまくってたんだから」
総武高校への入学が決まった時点で清川のいるバレー部に顔を出していた為、入学式の時すでにバレー部員として行動していた。八幡が総武高校にいるなんて知ってたら速攻で口説きに行くに決まっている。
「俺は入学式の日に事故って、しばらく入院してたし無理」
八幡、雪乃、結衣の3人の意図しない邂逅きっかけになった事故、八幡の脳裏に雪乃と結衣の姿が浮かび、不意に左足の大腿部を触る。
「「えっ?」」
「入院って、その左足なんかやったのか?」
稲村が八幡が触っている左足を指さし問う。
「左脚大腿骨亀裂骨折、おかげでしばらく入院して初登校で晴れて高校ボッチデビューだ」
仮に事故がなくてもボッチな可能性は極めて高いのだが。
「後遺症とか大丈夫なのか!?」
「というかバレーやって大丈夫なの!?」
飯山と七沢が顔を真っ青にさせながら問いただす。
「まあ、普通より早く治ったし、医者は今後に支障はないような事を言ってたから大丈夫だろ」
方やバレーの練習をさせまくり、方やひたすらトレーニングをさせた自覚がある為か不安だったのだろう、八幡の言葉に二人はホッと胸をなでおろす。
「そう言えば気になってたことあるんだけど」
八幡の言葉に3人がどうした?と言う感じの顔になる。
「飯山と稲村、いつからバレーやってたんだ?」
(こいつらの実力なら中学の段階でかなり目立ってたはず、けど何で)
「いつからって」
「中学からだけど何かしたか?」
「お前らの実力なら中学の時、相当目立ってたと思うんだけど記憶にないからついな」
二人とも背は高い部類でフィジカルもある、そんな二人が中学時代に目立たなかったのが気になる。
「ああ俺ら二人は補欠だったし途中で1回バレー辞めてるから試合でてないんだ」
「は?」
「俺も稲村も中学の時、監督と上手くいかなくてな、途中で部活辞めて高校でまた始めたんだよ」
「何があったんだ?」
「俺いた中学は監督が頭が古いタイプの人間でな、器具を使った筋トレをすれば見せかけの筋肉が着くから筋トレするな!だの、サプリメントに頼ってできた筋肉はすぐ悪くなるから飲むな!だの非科学的かつ適当な事ほざいてな、反論して論破したら補欠にされた。んでプライベートでやってたウエイトリフティング優先するって言ってバレー部辞めたんだ」
「俺の場合は、空手の試合とバレーの練習日が重なって空手の試合を優先したら、先生から呼び出しくらったんだ。んで、空手とバレーどっちが大事なの!?って言われて『空手♪』って言ったら補欠にされたから辞めたんだ」
「もうちょっと言い方無かったの?違えばかなり……」
理由は違えど、八幡もバレーを離れた人間ではあるが、目の前に二人におもわず突っ込む
(俺もひとの事言えないか)
バレー部にいた中学2年、厨二病になり周りからナル谷と言われ、ナイフみたいに尖った言葉を口にしていた自分と重ねてしまう。
「そんで二人とも中学の途中でバレー辞めて、高校入学した時に俺に誘われてバレーまた始めたんだよね」
七沢は入学して部活選び中の二人にすぐさま声を掛けたようだ。
「まあ、そんなわけである意味俺らとお前はチームを追われた同士のようなもんだ」
「つまりは仲間ってやつだな」
二人は腕を前に組んでウンウンと頷き。
「俺、迫害どころかキヨ先輩のおかげで楽しい部活生活だった」
3人と違い良い部活ライフを満喫していた七沢は苦笑いを浮かべる。
「つまり七沢は仲間はずれって事だな」
「そりゃあな、こいつは非童貞なリア充だからな」
チェリーズの2人はナチュラルに元リーダーをハブる。
「まだ言うのそれ」
七沢はそんな二人に苦笑いを継続するしかなかった。
―数分後―
4人は運ばれていた料理をきれいさっぱり平らげ、ドリンクバーでお代わりを持ってきて、くつろいでいた。
(やっぱ紅茶は雪ノ下の淹れたやつのが旨いな)
仲違いしたあの日から口にしていない雪乃が淹れた紅茶を思い出す。
彼女の紅茶のブレンド仕方に違いがあるのか淹れ方に違いがあるのか、多分両方なのだろう。
方やドリンクバーのティーパックで自分で淹れた紅茶と、美少女がゴールデン方式で淹れてくれたブレンドの紅茶なのだから後者の方が圧倒的に旨いに決まってる。
(聞くとしたら今か?)
「もしもの話なんだが」
くつろぎモードに入った中、八幡が口を開く。
「何?」
「仮にバレー部に1年が入ってこなくてバレー部無くなってたらお前らどうしてた?」
もしも奉仕部が無くなったら?それをバレー部に置き換えるように問いかける。
「どうするもこうするも……」
3人は少し考え
「バレー部なくても俺はバレーを続けるかな、どっか社会人サークルに入れてもらって続けて、大学行ってまたキヨ先輩と同じバレー部入る」
「お前どんだけ清川さん好きなんだよ!」
まるで彼女がいることはブラフで本命は清川じゃないのか?そう思えてしまう清川愛だ。
「もしそうなってたら俺は前から誘われてたパワーリフティングやるかウエイトリフティングに復帰するかだな、大学もバーベルクラブあるとこ行く予定だからな」
「俺は道場通いと筋トレに専念する形になるかな、空手は一生やるつもりだし」
「そうか」
3人の答えを聞き少し考えた素振りを見せ考える。
(やっぱり別々になるんだな……)
バレーと言う種目の元に仲間になった3人、それが無くなれば離れるのは道理、当たり前の事だ。
そして、それは奉仕部の3人にも言える事。
「でも3人でつるむのは変わらないよな」
「!!」
その言葉に八幡が反応する。
「お互い性格は違うんだけど、一緒にいて楽しいんだ。一緒に練習したりトレーニングしたり、飯食いに行ったり、バカやってふざけ合ったり、仮に部活無くてもそれは変わらないよ」
七沢のストレートな言葉に飯山と稲村は照れてるのか何とも言えない態度で相槌をうつ。
「部活無くても一緒か」
『私はこの部活が好き、ゆきのんがいてヒッキーがいて、他愛もなく話したりゆきのんが淹れた紅茶のんだり、皆で依頼に取り組んだり……いつも顔色伺ってばかりだった私でも自分をぶつける事もできたり……』
不意に浮かぶ結衣の言葉、その言葉が七沢の言ってる事と重なる。
それは結衣が思ってる事と七沢が思ってる事、それがどこか似ていたから。
(だったら俺は……奉仕部をどう思ってる?)
「ところで相談事って何?」
ここには八幡の相談事に来た、七沢が思い出したように口を開く。
「ああ、もう大丈夫だ」
「へ?」
「そうか、何かあったらいつでも言えよ」
「ああ、同じバーベル担いだ仲間だ」
「もっと他に言い方はないのか……」
仲間という言葉に言い表せないむず痒さを覚えつつ八幡は突っ込んだ。
―そして―
「じゃあ出るか」
「おう」
「そうだな」
「ここは奢る、前に暴言吐いた詫びだ」
飯山はそう言うと伝票を手に取りレジに向かおうとする。
「お、おい」
「悪いよそんな」
「いいから黙って奢られろ、こうでもしなきゃ俺の気が済まないんだ」
八幡と七沢が止めようとするが、飯山はそれを制しレジへと向かう。
「ゴチになりやす!」
「稲村、お前は自分の分払えや」
「しょぼーん」
そのやり取りをした後、4人は少しクスリと笑い店を後にした。
―自室―
自室のベッドに横たわりイヤホンを耳に挿し、いつの音楽を聴く、その音から意識が遠ざかる程に今の八幡は考え事をしている。
『それに、わたしはやっても構わないもの』
(雪ノ下は生徒会長になりたかった)
(そして由比ヶ浜は奉仕部を続けたい、俺はそう思っていた。だけどそれは多分違う)
八幡の脳裏に浮かぶのはサイゼでのバレー部の3人。
『お互い性格は違うんだけど、一緒にいて楽しいんだ。練習したりトレーニングしたり、飯食いに行ったり、バカやってふざけ合ったり、仮に部活無くてもそれは変わらないよ』
(きっと由比ヶ浜の思ってる事はあいつらと一緒だ)
何気ない会話、大好きな友達、放課後当たり前のようにある紅茶の香りに包まれた部室。
当たり前にそこにある、彼女にとってかけがえなない日常。
(俺にとって奉仕部は何だ?あの空間は?あの場所は俺にとって……)
青春
時に甘く時に酸っぱく、様々な同じようで違う色のような青のぶつかり合い、重なり合い経験し、一つの色となり大人という作品へと近づく大事な時期。
青春という言葉が無縁だと思っていた八幡にも、それは突然やってきて。
その中で彼は必至にもがいていた。
次回、奉仕部の話でその次から練習試合編に入る予定です。
スケジュールが乱雑気味なので次回更新は未定です。