俺の青春がスポコンになるなんて間違っている。   作:nowson

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バレー部へ本格参加の後編です。




※注意
スポーツのトレーニング描写がメインの為所々マニアックな部分が入る恐れがあります。

最初に書いた原稿があまりにもマニアック過ぎた為一度書き直し簡潔化させましたが、念のため捕捉します。


比企谷八幡はタバタ式にプロトコる

「サーブ始めんぞ!!」

休憩が終わると共に響く七沢の号令、その言葉に各自それぞれエンドライン後方に下がりサーブ練習に入る。

 

八幡と七沢がジャンプフローターサーブ、飯山がジャンプサーブ、それ以外がフローターで練習をする。

 

 

八幡は自分のサーブ練習をしつつ周りを見る。

(七沢は相変わらず上手い、飯山も3本に1本ミスってるけど身体能力を生かしたいいサーブだ、一年もフローターだけど丁寧にコースを狙うように意識して練習してる……が一人よく分からんサーブ打ってるやつがいる。)

 

 

「フッ!」ドンッ!!

目線の先にはサーブを打つ稲村の姿。

 

 

(見た目は弾道の低い普通のフローター、けど打音が可笑しいでしょ!)

サーブ然りスパイクしかり手のひらでボールを打つ特性上、打音はバチンやバンッという表現になるような音になる、しかし彼のサーブは固いもので打ったような鈍い音。

 

 

(よく遊びで拳を作ってサーブ打ったりしたがそれに近い音だな、だけどあいつは普通に掌で打っているし、打球の軌道も何だかおかしい)

八幡の頭に思い出される3対3の試合でサーブカットの際に稲村のサーブを七沢がカットできず後ろにそらしたシーン。

 

中学時代からすでに七沢のレシーブ力はかなり高い、それはかつて決勝戦で戦った八幡もよく分かっていた。

 

だがあの場面、七沢は正面で捕ったにもかかわらずカットできなかった。

 

 

 

(あのサーブは間違いなく普通のサーブじゃない。)

バレーボーラーとしての血が騒ぐのか自分のサーブ練習をしながら八幡は稲村の方へ目を向けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

―数時間後―

基本、スキル、3対3を終わらせ、バレー部はフィジカル強化に移る。

 

 

「うし、楽しいフィジカルの時間だ!!」

どっかの筋肉バカが喜びの声を上げる。

 

 

 

「まさか、死ぬまで筋トレとか言わないだろうな?」

八幡は戸塚の依頼の際、彼を鍛えるために行った事と雪ノ下の言葉を思い出す。

 

 

(あの時はひたすら腕立てやらされてへとへとな上に試合だったから散々だった。)

 

 

 

「死ぬまで筋トレとかナンセンスだ!!怪我の危険が高まるし、何よりマッスルの神様(マ神)は正しく鍛えた者にしか微笑んでくれない!」

そんな事するもんかと憤慨する。

 

 

「それなら安心だ」

あんなフィジカルやらなくて済むなら安心だ、とばかりにホッと息を吐く。

 

 

 

「そういえば、フィジカルは何をやるんだ?」

経験者ではあるものの練習初参加の八幡にとって、基礎やスキル等の練習は多少の違いはあれどそれなりに理解しこなせるのだがフィジカルになると話が変わる、何をやるか知らない八幡は質問をした。

 

 

「トレーニング室でウエイトトレーニング、そんで神経系のトレーニング、心肺機能の強化にタバタだ。」

飯山が専門用語を使いまくりで八幡に説明をする。

 

 

「タバタ?」

誰それ?的なニュアンスで質問する。

 

 

「タバタ式プロトコルの事だよ、20秒トレーニング10秒インターバルの8セットで計4分やるトレーニング、テレビで特集されたり、アスリートもトレーニングメニューに取り入れている、まあ実際にやってみれば分かるさ」

とりあえず行こうぜとトレーニング室へ指をさす。

 

 

 

「よくわからんがそうなのか」

その時の八幡は特に気にしてはいなかった、競技から離れて3年、昨日の試合と今日の練習で体にかなりの疲労があるものの、アドレナリンが回った状態で思った以上に動ける事と技術そのものの衰えはあまり感じない為か、まだイケると内心すこし浮かれていた。

理性の化物と銘打たれる彼とはいえ、まだ高校生で若い。

 

つまり若さゆえの過ちなどいくらでも起こるのである。

 

 

 

 

―総武高校トレーニングルーム―

パワーラックやダンベル、バーベル、スクワット台、フラットベンチなどフリーウエイトを中心に数種類のマシンが置かれている。

筋肉意識高い系の生徒がよく訪れる部屋である。

 

 

 

 

 

「はい、これをどうぞ~」

飯山がトレーニングの内容と記入欄が書かれたプリントをチームに配る。

 

 

「何これ?」

八幡は渡されたプリントをみて質問する。

 

 

「うちの練習メニュー決めは、スキルが俺でフィジカルが飯山が担当してるの」

七沢が説明役に入り八幡に声をかける。

 

 

「でも本人の体は本人が一番分かってるから、一人ひとりメニュー変えてるし、質問や要望とかあったら話し合いしてより良い方向に持っていく、その為に一回一回トレーニングメニューと実際の実施の記録をとる」

大雑把そうな見た目に対し、意外に細かい男飯山が口を開く。

 

 

「とりあえず比企谷は初めてだから大変だと思うけど頑張れ」

 

 

 

「分かった」

バレーの練習による高揚感でアドレナリン分泌中の八幡はあっさりと頷く。

 

 

 

 

各自2人一組になり器具をセッティング、片方がトレーニングして片方が補助をする。

 

 

初めてである八幡にはトレーニング指導も兼ねて飯山が付いた。

 

 

 

「アブクランチは息吐きながら腹凹まして、それを丸めるように体を起こすんだ。体起こし切ったり反動使うのは筋肉に効かないし腰痛める要因になる。」

 

 

(腹筋ってこんなにきつかったけ?)

 

 

 

 

「スクワットは持ち上げるより地面を蹴るイメージだ!」

 

 

(脚にくるーー!!!)

 

 

 

 

そして数種類のトレーニングが終わり。

 

 

 

 

「次はケトルベル、今回は基本のスイングだ!」

 

 

※ケトルベル

ロシア生まれのトレーニング器具、取っ手のついたその姿からケトルベルと名づけられた器具、ダンベルやバーベルなど筋肥大の為に使用される器具と違い、反動を使って行うトレーニングが多いため、神経系のトレーニングとして取り入れるアスリートや格闘家もかなり多い。

 

 

 

「そう、その調子だ!上手いじゃないか!」

 

 

(これはキツイが案外できる)

持ち前の運動神経で器用にこなす八幡。

 

 

 

 

 

「じゃあ最後はタバタ、今日はバーピーだ」

飯山はそういうと一連の流れを実践する。

 

タバタ&バーピーと言う言葉に一年の顔が一瞬こわばる。

 

※バーピー

立った状態→しゃがんで手を床につける→腕をついたまま体を伸ばし腕立て伏せの状態にする→床に手をつきしゃがんだ状態に戻る→しゃがんだ状態から勢いよくジャンプし両手を頭の上にのばし一回拍手と言った流れのサーキット、おそらくかなりの方が経験あると思います。

 

 

(バーピーか、昔はよくやったな……)

八幡は昔を懐かしむ。

 

 

「それじゃタバタタイマー起動するから準備!!」

スマホのタバタタイマーのアプリを立ち上げ音量を最大にする。

 

 

 

そして

 

 

 

ピィィィィ!!

タバタ開始の笛がなり一斉にバーピーを開始する。

 

 

1set

(あれ?意外とイケるな)

意外と動くその体に少し安堵する。

 

 

2set

(……ん?体重くなったか?)

 

 

3set

(もう10秒たったのか……)

まだ5秒もたっていないかのような感覚に襲われる。

 

 

4set

(うそ!?体動かない!!息キツイ!!)

何とか体を動かす。

 

 

5set

(インターバルのタイマー壊れてないか!?明らかにおかしいぞ!!)

運動中は永遠に感じ、インターバル中は一瞬に感じる、八幡の心肺機能が悲鳴を上げる。

 

 

6set

(……ウソだろ?まだ終わらないの?)

 

 

7set

(らめぇぇぇぇ!!!もう体が動かないよぉぉぉぉぉぉ!!!!!)

声を上げる事さえ出来ない彼は心の中で悲鳴を上げる。

 

 

8set

(……)

人間は本当に苦しくてどうしようもない時、思考はとまり“苦しい”以外なにもかんがえられなくなる。

 

 

タバタタイマーから終了のファンファーレが鳴り響き、初心者の八幡のみならず部員たちも倒れ込む。

 

 

「比企谷大丈夫か?」

隣にいた稲村が声をかける。

 

 

「ハア……ハア……」フルフル

四つん這いのまま無言で首を振り何もいう事が出来ない。

 

 

(これ、雪ノ下がやったらどうなるんだろ?)

恐らく今の自分よりひどい状態になるな、あいつスタミナ半端なく無いからと少し笑う。

 

 

((比企谷先輩初めてのタバタで笑ってる!!))

そんな八幡を見て驚愕する一年たち。

 

 

 

―所変わって奉仕部―

 

 

(何か比企谷君にバカにされてる気がするのだけど……)イラッ

自分が馬鹿にされたと感じた雪乃は言い知れぬ不快感に襲われていた。




タバタとケトルベルは自分もシーズンに入る少し前からメニューに加えています。
オフシーズンは筋肥大重視のウエイトトレーニングに重点置く為心肺機能が衰えてしまいます。

その衰えた心肺機能がタバタを続けてるうちに良くなるのでおススメです。


youtubeにもよく動画がupされているので興味のある方はやってみてもいいかも



次回は日常チックな話を予定しています



来週は旧友達と会うため、飛行機で花の東京へ行くため更新できないかもしれません

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