2月13日 バレンタインデー前日
世間はバレンタインに向けてこれでもかと広告、CMで宣伝をし、盛り上げてる中
俺は1人悩んでいる。
どうしても答えが出ない。
選ぶことが出来ない。
この1週間家に籠ってずっと考えていたが、一筋の光明すら見えてこない。当然だ。正解なんてものは存在しない。ベストな解答もベターな答えもない。あるのはただ、選ばなかった者たちへの後悔と後ろめたさ。そして待っているのは大切な拠り所の崩壊。あぁ、今なら海老名さんの気持ちが分かってしまう。俺はもうあの場所を壊したくないんだ。それに必死なんだ。
時計を見るともう20時近い。
………マッ缶でも飲もう。とりあえず気分を変えよう。
とりあえず、冷蔵庫の扉を開ける。
「あ、もう切らしてたか……」
冷蔵庫にはマッ缶の存在はない。
なんか、間が悪いことこの上ないな。仕方ない、買いに行くか。
コートを着て、玄関からでる。すると、外では雪が降っていた。
「雪か……なんかさっきから幸先が本当に悪いな……。」
一番近くのコンビニまで歩いていく。
気分を変えてもあまり意味はないのはわかってる。でも何かをしていないともうあそこでつぶれてしまいかねないのだ。ふと、そんなことを考えながら足元を見ていると、前方に人影が写る。
「まったく、ちょっと見ない間にずいぶんと目がよどんだな、八幡よ」
「八幡、ちょっといいかな?」
そこにいたのは材木座と戸塚の2人だった。
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「それで、何の用だ?」
とりあえず、話がしたいということで俺たちは公園へ移動した。
「決まっておろう、お主の話だ。まぁ、事情は大体聞いておる。」
「戸塚もか?」
聞くと、戸塚もうなずいた。まぁ、この時間と時期だ。俺も察しはついていた。
「別に何も言うことなんてない、これは俺自身の問題だ。」
「八幡……」
「まぁ、貴様の言う通り、答えをだすのはお前だ。でも相談くらいはしてくれてもいいんじゃないか?」
相談ね……ここで俺が話をするということは相談という建前に隠れた、ただの弱音を吐くという行為に他ならない。そんなことをするのはゴメンだ。
「相談もねーよ。さっきも言ったろ。これは俺自身の問題だ。答えなら出す。」
自分の弱くて醜い部分はさらしなれてる。けど、こいつらにそれは見られたくない。俺はもう昔と違って心が弱くなり過ぎた。
「八幡が答えを出せるなら、選ぶことが出来るならそれでもいいんだ。でも、それが出来ていないから、そんな顔をしているんじゃないの? 八幡の友人をやってきたんだよ。その顔を見てわかんないとでも思ったの?」
戸塚の発言はとても耳が痛い。
そんなに露骨に顔に出したつもりはないが、そりゃそうか。こんな目が濁りまくってたらそう思われて当然か。でも……
「確かに答えを出すことも選ぶことも今、出来てない。戸塚の言う通りだ。でもこれは俺が考えて導かなきゃいけないもんだ。だからここでお前らに頼ったらダメなんだよ。俺が出さなきゃダメなんだ。」
「まぁ、別にお前の考えは間違っておらん。」
「材木座君!」
「まぁ、戸塚殿……ちょっと見ててくれないか。」
なんだ、こいつのこの感じ。今までで一番の迫力というか、なんだろう。一番真面目な感じは……。
「選択肢を一つ増やそうじゃないか。」
「は?」
「逃げればいい。あの4人から……全部捨てて。ぼっちに戻ればいい。元ぼっちプロなら簡単だろうに。」
材木座の発言に場が一瞬で凍った。
「お前、何言ってんだ……」
それだけは絶対にしちゃいけないだろう。俺にそんな権利あるわけ……
「正直、お前の大学生活を見てて、ずっとギャルゲの主人公かと思っていたよ。昔もそして今も……な。」
「は? お前は本当に何を言ってるんだ?」
「4人の女性と大学生活を楽しそうに送り、イベントを乗り越え、付き合う。今のお前の生活とギャルゲに何の違いがある……お前は今、ゲームで言うなら……誰と付き合うかの場面の選択肢手前にいるだけだ。ゲームならその手前でセーブして、終わり次第ほかのヒロインのルートに移行する。選べないならゲームを閉じるのも手だな。もしかしたら大団円のハーレムエンドもあるかもな。逃げたって誰も攻めたりはしないぞ。ぼっちは誰にも迷惑かからない存在だからな。」
こいつ……本気で言ってんのか……。
「とりあえずそろそろ中二病卒業したらどうだ?ここは現実だぞ。お前はゲームと現実の区別すらつかなくなったか。そんな選択肢許されるわけないだろ。大団円な選択肢なんて現実には存在しないんだよ!俺には逃げることは許されてない。」
すると、材木座は笑みを浮かべ
「分かってるじゃないか。これは現実だ。大団円の選択肢など存在しない。お前の居場所を守りつつ、ほかの人たちにも迷惑をかけない選択肢も答えも存在しない。」
「……っ!」
こいつ、俺にそのことを自覚させるためにわざと……
「今のお前は本当の意味であの4人と向き合っていない。お前はその存在しない答えを探して選択から逃げてるだけだ。選べ。お前の道はそれ以外存在しない。」
ここまでの正論の暴力を受けたのは久しぶりだ。しかも相手はあの材木座。
なのに、言い返す言葉すら思い浮かばない。
けど、俺は……
「こんなの俺に選べるわけないじゃないか。誰を選んでも必ず角が立つ。リア充が選べないって葛藤してたのをバカにしてたけど……俺にはこんなの無理だ。できるわけがない。俺みたいに性格もひん曲がってて、心も弱り切った俺なんかにはできない。」
「それは違うよ、八幡!」
「戸塚……」
「八幡は八幡が思ってるほど、ダメな人間じゃないよ。だから雪乃さんも、結衣ちゃんも、いろはちゃん、陽乃さんだって……僕たちだってそうだよ。八幡は僕が会ってきたどんな人よりも心が綺麗で優しい人だよ。だから……じ、自分の……ことを……そんなに悪く言わないで……。」
「八幡よ、キツイことを言ったが、お主が選べないならそれでもいい。逃げるのは別にわるいことではない。ただ、我々はお前がどんな選択をしたって友人だ。この関係だけは壊れることは絶対にない。だから俺らのことは言い訳にだけはするな。お前が好きなように選べ。誰のためでもない。お前のために選ぶんだ。」
戸塚はこんな俺のために涙を流してくれている。
材木座も俺のためにわざとけしかけるような真似をしてくれた。
俺は……
「………お前らの気持ちは分かった。色々と迷惑をかけて悪い。今度、何か付き合うよ。」
「本当だ、後でわれの小説を読んでもらうぞ。」
だが、それは断る。
「大丈夫だ、それはネットにアップロードして酷評してもらうものだ。安心しろ。」
「八幡、我、さっき良いこと言った。そこはもうちょい優しい言葉をかけてくれても……」
「戸塚、寒くないか?」
「あ、うん、僕は大丈夫」
「送ってくぜ、駅まで。」
「あ、ありがとう」
「あれ、なんで急に我、空気? ちょっとちょっと待ってくれぇぇぇ!!」
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あいつらを送った帰り道、つくづく良い友人を持ったなと実感していた。中学時代の俺に見せてやりたいほどの友人だ。本当に俺は恵まれている。
あいつらの言う通りだ。俺は自分の居場所が守りたくてあいつらを見ていなかった。俺は本当に自分のことしか考えていなかった。もともと計算をする場所を間違っていた。
どうやったら関係が保てるかじゃない。どうやったら迷惑をかけないで済むかじゃない。
あの4人の中で誰と一緒にいたいかだ。完全に問題をはき違えていた。
と言っても……俺は本当に選べるのか?
ここでようやく問題が分かっても結論がそんな簡単に出るわけが……
すると、横に黒塗りのどこかで見たかのような車が止まり、人が出てきた。
長い黒髪に白衣をまとったその人は俺を見てニコリと笑った。
「補講の時間と行こうじゃないか。比企谷。」
そう、平塚先生が立っていた。
熱い展開がやってみたかったんや……すまない……向いてない。
ちなみに平塚先生の出番を消していたのはこのためです。
最後の助言役は平塚先生と決めてました。
材木座はキャラが大分熱血になってしまった。
いや、これはこれでいいのかなぁw
さて、恒例の謝辞を
今回も読んでいただいてありがとうございました
ラストまで応援よろしくお願いします。