救える者になるために(仮題)   作:オールライト

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オリジナル展開も考えてみたいけど、私の想像力では無理そうなのでやろうかどうか悩んでいる今日この頃。
原作沿いの小説、私は好きなんですけど…オリジナル展開のあるものも好きなんですよね…。

てなわけで五話です、どうぞ!






USJ編
第五話 ヴィランって何?って聞かれたらとりあえず爆豪を指させばいい


 雄英クズ集団襲撃事件改め雄英マスコミ襲撃事件から数日後の水曜日。

『何かの手違いにより』故障してしまったとされている雄英の無敵の壁、雄英バリアーの修理も完了し、それに伴い厳重になっていた警備態勢も『多少』だが緩和された。

 警備が解けないのにはそれなりの理由があるのではないか?と某頭の良いバカやイケメンのハーフ&ハーフ等の一部の生徒は疑問に思ったりもしたのだが、学校から正式にマスコミ対策だと発表したため、一応はそういうことだと納得する形となった。

 そんなちょっとした普段との違いはあったものの、この数日は特に大きな変化もなく日常が進んでいった。

 そして今日もいつもと変わらない午後の授業、ヒーロー基礎学の時間がやってきた。

 

「いつも思うんだが、どうして午後の授業開始時間は13:20からなのに寝袋先生の時だけは12:50から授業を開始するんだろうか…」

「最初に言ったろ?生徒の如何は教師の自由、どんな授業をするのかもその教師の自由なんだよ。つーか寝袋先生ってのやめろ五十嵐。」

「だからって昼休みがたったの20分ってのはやりすぎでしょーよ。おちおち昼飯も食えないぜ…。」

「ヤオモモにたかって得た昼飯がねー。」

「おう、今日もうまかったぜ!」

「それを笑顔で言えるアンタがウチには百のヒモにしか見えない。」

「八百万、いやなら断ってもいいんだぞ?」

「すいません先生、五十嵐さんのお弁当を見るとその…見てられなくて。」

「余計な事言わないでくれよ寝袋先生!八百万の神からおかずがもらえなくなったら、俺は掌サイズの味無し白米が昼飯になっちまう!」

「……」

「……」

「今度職員室来い。余ってる職員用の弁当分けてやるから。」

「アンタは神か弁当先生。」

「お前大概にしとけよホント…。」

 

 衝也の切羽がつまりにつまり過ぎている私生活に思わず相澤も同情の視線を彼に向けた後、視線を1-Aの生徒全員に戻した。

 そして大きく首をまわした後、若干たるそうに話をし始めた。

 

「えー、一人のドアホのせいで邪魔が入ったが」

「ドアホて…」

「これから今日のヒーロー基礎学を始めるんだが…今回は俺とオールマイト、それとあともう一人の三人体制で見ることになった。」

「はーい先生。『なった』ってことは特例かなんかなんですか?」

(うわぁ、五十嵐君直球に聞くなぁ…。僕にはできないよ。)

「少し黙れこの超絶間抜け野郎。」

「寝袋先生、だんだん俺に対して態度が辛辣になってきてんな…」

「はーい、先生。」

「今度はお前か!?なんだ瀬呂!!」

「え…なんで俺こんな怒鳴られてんの?」

 

 完全に衝也の理不尽なとばっちりを受けてしまった瀬呂は少しだけショックを受けたような表情を浮かべたが、すぐに気を取り直して先ほどの言葉を続けた。

 

「えっと、今回はどんなことすんのかなーって。そう思っただけっす、すんません…。」

「いや、謝るのは俺だ、怒鳴って悪かったな瀬呂。どっかのバカのせいで少し気が短くなっちまった。」

「人のせいにするのはよくないと思うんだが…。」

「お前ちょっと黙っとこうなホント。」

 

 またもやおバカ発言で先生を無意識に怒らせようとしている衝也をガチめのトーンで注意する切島を見て、相澤はホッとしたように息を吐くとポケットをごそごそとあさり始めた。

 

「今回の授業は、災害水難なんでもござれの人命救助訓練(レスキュー訓練)だ!!!」

 

 そう言ってポケットから取り出して生徒たちの目の前に出したのは『RESCUE』と大きな文字が書かれているプラスチックのカードだった。

 それを見た生徒達はザワザワと騒ぎ始めた。

 上鳴に至っては少しばかり嫌そうな表情を浮かべている。

 

「うへー、レスキューか…今回も大変そうだなぁ」

「バカか上鳴、これこそヒーローの本分だぜ!?鳴るぜ!!」

「腹が?さっき飯食ったばっかだろ?ランチラッシュの所で。金がないからランチラッシュのメシを食べられない俺に対する当てつけかこらぁ!!?」

「ちげーよ!どんな被害妄想だ!?腕だ!腕が鳴るんだよ!!」

「腕が鳴るわけねぇだろ!馬鹿にしてんのか切島コノヤロー!」

「お前ほんっとうに頭いいのにバカなのな…」

「上鳴、お前のその空っぽ豆電球みたいな頭の中身をぶちまけてやろうか?」

「落ち着いて五十嵐ちゃん。席から立つのはよくないわ。」

「……(あれさえなけりゃなぁ)」

 

 最早定番になっている衝也のおバカ発言に呆れて声も出せなくなってしまった相澤だったが、さすがにこのままにするわけにもいかないので軽く衝也達を注意した後説明をつづける。

 そして、今回はコスチュームの着用は自由であることと訓練場が離れた場所にあるためバスに乗って移動する旨を伝えた後、そのまま準備をするよう促した。

 相澤に促されて、生徒達も更衣室に向かい準備を開始する。

 コスチュームの着用は自由ではあるが、ほとんどの者はやはりコスチュームに着替えている。

 男子更衣室にいる者たちの中でコスチュームではないのは体操服に着替えている緑谷と衝也だけである。

 

「お、何だよ緑谷に五十嵐、オメーらはコスチュームじゃないのかよ?」

「あ、うん。僕のは屋内訓練の時に壊れちゃったから、サポート会社に頼んで修復してもらってるんだ。」

「俺は昨日洗濯しちまったからまだ乾いてないのよ。」

「せ、洗濯…。」

「まぁ、オメーらのコスチュームはオイラのとは違ってかっこわりぃからなぁ~。着なくて正解だったんじゃねぇか?」

「そ、そんなことないよ!僕にとっては最高にかっこいいコスチュームさ!」

「…峰田のコスチュームそんなにかっこよくなくないか?轟とか上鳴の方が全然かっこよくね?」

「喧嘩売ってんのか五十嵐ぃ!?あんな素がイケメンの奴はコスチューム着なくたってかっこいいんだよぉぉ!!つーかてめぇだってごく普通の平凡顔じゃねぇか!?その上コスチュームもクソ地味なのにオイラのコスチュームバカにすんなよな!!」

「機能性と実用性重視だ。それに、ヒーローってのはコスチュームや容姿が端麗だからかっこいいんじゃねぇんだからよ。人を助けるその姿がかっこいいだけだろ?だからコスチュームなんてなんだっていいんだよ。大事なのはここよここ。」

 

 軽く私怨が混じった峰田の言い分に自分の胸のあたりを叩いてそう反論する衝也。

 それを聞いた峰田は「ぐぬぬぬ…」とうめきながら悔しそうに拳を震わせていた。

 そこへ切島が衝也の肩を笑いながらバシッ!と叩いた。

 

「よぉく言ったぜ衝也!そうさ、ヒーローに必要なのは燃え滾るように熱いハートだハート!熱い心さえあれば、男ってのはいつだってかっこよく見えんだよ!なぁ、緑谷!」

「え、う、うん。五十嵐君の言ったことは一理あると思うよ。僕もヒーローが人を助けている時が一番輝いて見えるから。」

 

 そう言って緑谷は握りしめた自分の拳に視線を移して、真剣な表情を浮かべて感慨深そうにしていた。

 何かを思い出しているような緑谷を衝也はじーっと見つめていたがしばらくしてうつむいてボソリと、誰に言うわけでもなく小さな声で呟いた。

 

「まぁ、そういう意味では俺が一番かっこよくねぇヒーローになりそうだけどな…」

「ん、どうした衝也?腹でもいてぇのか?」

「…いんや、ちょいとぼーっとしてただけだ。」

「そうか?ならいいんだけどよ…。」

「なぁなぁ、なんか俺の名前が聞こえたような気がしたんだけど、一体何話してたんだ?」

「上鳴の頭の中身はおぼろ豆腐しか詰まってないんだろうなってはなし。」

「……」

「う、嘘だから!?五十嵐君の軽いジョークだから!」

「そうだぜ上鳴!?むしろお前の事イケメンとか言ってたんだからよ!」

「ほ、ほんとかそれ!?」

「イケメンなんて死んじまえばいいのに…」

「え」

「イケメンでもアホじゃなぁ。天は二物を与えずってやつの典型的だな、上鳴は。」

「……」

「ちょ、峰田君!?今の上鳴君にそれはきついって!」

「うるせぇ!イケメンなんてこの世から消えちまえばいいんだよぉ!そうすれば自動的にオイラがイケメンになれるんだ!」

「峰田君ちょっと性格歪んでない!?」

「衝也!おめぇそんなこと言うなんて男らしくねぇぞ!?さっきまでのお前はどこ行った!?」

「あ、わりぃ。俺って思ったこと何でも言っちまう性格なんだよ。悪かったな上鳴、思ってたことを口に出しちまうのは俺の悪い癖なんだ。これからは心の中で言うだけにしとくよう頑張るから許してくれ。」

「お前ホント大概にしとけよ!?見ろ、上鳴がもううつぶせで倒れこんじまってるじゃねぇか!?」

「…………」

 

 その後、上鳴のメンタルを持ち直すのにかなりの時間が掛かったとか掛かっていないとか。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

 訓練場に向かうバスの車内。

 緑谷の個性の話になり、そのまま皆の個性の話へと発展していき次第にワイワイし始めた楽しそうな車内で、衝也は

 

「……」

「…チッ!」

 

 爆豪の隣で思いっきり彼にがんを飛ばされて舌打ちまでされていた。

 爆豪は隣にいる衝也を、まるで親の仇のような目で見ており、その視線を一瞬たりとも衝也から外すことはなかった。

 衝也はもう汗がダラダラでひたすらに向かいの八百万と麗日の方へと顔を向けていた。

 それを見ている彼女たちも同情したような表情を浮かべていた。

 麗日は口パクで『頑張って』と言い、軽く親指を立てた。

 しかし、衝也の心情はもう『限界』の二言しかないような状態である。

 彼がこうなった理由はこの数分前のこと。

 バスに乗り込もうとしていた衝也は、相変わらず真面目スロットル全開の飯田に言われて番号順に並んでいた。

 だが、いざバスに乗り込むと飯田が想定していたバスの席とは全く違ったため意味がなくなってしまったのだ。

 なのでとりあえず自由に座ろうということになり、衝也はなるべく後ろの方へ行こうとしたのだが、突然耳郎に呼び止められたのだ。

 

『ねぇ、ちょっといい五十嵐。』

『ん、どしたん耳郎。』

『アンタさ、今どこ座ろうと思ってる?』

『ん、まぁ…』

 

 耳郎にそう言われてぐるりと辺りを見渡してみる。

 空いている席はあと二つしかなく、一つは隣が口田、一つは隣が爆豪と言う形になっていた。

 それを見た衝也は

 

『……』

『ちょっと待って!お願いだからちょっと待って!』

 

 何も言わずにすぐ近くの口田の席に向かって行った。

 なまじバスの通り道は狭いため、どう考えても席に近い衝也が口田の席に座るような形になってしまうのだ。

 

『むりむりむりむり絶対に無理だって。俺あいつに会うたびにめちゃくちゃがん飛ばされてるんだぜ?なんか知んねぇけど俺あいつにめちゃくちゃ嫌われてるんだ。隣に座ったらどうなるかなんて見え透いてんだろ!』

『ウチだっていやに決まってんじゃん!爆豪の隣なんて絶対にロクなことになんないじゃん!』

『とにかく運がなかったと思ってあきらめてくれ、頑張れよ耳郎。』

『明日おかず2品あげるから!』

『俺がいつでも食い物に釣られると思うなよ耳郎。流石に自分の命には代えられ』

『唐揚げとハンバーグにしとくから。』

『爆豪がなんだってんだ!やってやるぜ俺は!』

 

 こうして思いっきり食い物に釣られた結果が今のこの状況を作り出したのだ。

 速い話が完全に衝也の自業自得である。

 

(もう隣から殺気しか送られてこない。こいつ本当にヒーロー志望かよ!?絶対にヴィランとかの方が向いてんだろ!!)

「おい」

「俺が何したってんだよなんでこんな目にあってんだもう嫌だここから離れたい」

「無視すんじゃねぇぞこのクソバカモブ野郎!!」

「誰がアホなことしか言わずにすぐ序盤で死にそうなモブキャラじゃぁ!こちとら天才主人公様だぞこのやろぉぉぉ!!」

「うわぁ、なんだかすごいことになってるよ五十嵐君たち…。」

「見てはいけませんわ麗日さん、巻き込まれますわよ。」

 

 爆豪の発言により衝也も軽くキレてしまい、クラス一のとんがり頭をもつヤンキーVSクラス一の天才系おバカ野郎の戦闘が勃発しかけている様子を見て、まわりの生徒達も顔を逸らしてとばっちりを受けないようにしている。

 

「いいか、よく聞けバカモブ!てめぇみてぇなクソバカに俺は負けねぇ!てめぇも半分野郎もデクの野郎も追い抜いて、俺が1番になる!だからあんま調子に乗るんじゃねぇぞ!わかったか!?」

「はぁぁ?何いきなり意味わかんねぇこと言ってんだあほじゃねぇの?1番になるだか何だか知んねぇけど、入試の時も体力テストの時も順位俺より下じゃねぇかお前。そんなんで1位を取るとか冗談はそのアホみてぇなとんがり頭だけにしとけよな!ツーカなんだその頭イガグリかよ!!中身の栗はちゃんと入ってんのか!?」

「地毛に決まってんだろ爆殺すんぞゴラァ!!」

「派手で強いっつったらやっぱ轟と爆豪、あとは衝也だよな。なぁ、爆豪、衝也!」

「「うるせぇ黙ってろこの地味個性!」」

「……」

「今の二人に関わったら飛び火しちゃうわよ、切島ちゃん。」

「かっちゃんはともかく五十嵐君があんな怒ってるのは珍しいね。」

「そうかな?五十嵐君ってバカ!とかアホ!っていえば大体キレるよ?」

「でもあそこまで本気で怒ることなくない?」

「あ~確かにそうかも」

「まぁ、隣でずーっと殺気の籠った視線を浴びせられ続ければ怒りたくもなるんじゃねぇの?」

「上鳴ちゃんって時々確信を突くような事言うわよね。」

「いい加減にしろ爆豪に五十嵐!もうすぐ着くんだから静かにしとけ!」

『ハイッ!』

 

 そんな衝也にとって最悪以外の何物でもないバスでの移動もようやく終了し、到着したのは

 

「おかしいな、俺たち訓練場に来たんだよな?目の前にあるのめちゃくちゃ楽しそうな遊園地なんだけど。幻覚かなんかか?」

「すっげー!!なんだこれ!USJかよ!?」

 

 まるで世界的に有名な某アミューズメント施設のような広大な訓練場だった。

 その入り口で興奮したように叫ぶ1-A御一行の目の前にいるのはこの訓練場の管理者でもあるスペースヒーロー『13号』である。

 宇宙服を着て素顔をすっぽりと隠している彼は、傍から見れば不審者同然だが災害救助を得意とする超絶優しいヒーローなのだ。

 

「あらゆる事故や災害を想定して僕が作った演習場、その名もウソの(U)災害や(S)事故ルーム(J)です!」

「うわー、まるで狙っているかのようなネーミングだな…。」

「ちょ、五十嵐君…。」

「水を差すような事言うんはやめようよ五十嵐君…。」

 

 衝也の身も蓋もない言葉に軽く肩を落とす麗日と緑谷。

 どうやら麗日は13号の大ファンらしくかなりテンションが上がっていたのだが、衝也の余計な一言に目に見えてテンションが下がっていた。

 

「それにしてもすっげーなここ。水難に火災に土砂災害…と。災害のオンパレードじゃねぇか。こりゃ結構本格的な訓練ができそうだな。」

「つくづく雄英のすごさが身に染みてくるよね。ヒーローに必要なことを学ばせるためにここまでの事をするなんて、普通は考えられないよ。」

「それだけ俺らに期待してるってことだろ!?男として、先生たちの思いにこたえられるよう全力で頑張らねぇとな!」

「おい、そろそろ始めるぞ。全員静かにしろ。」

 

 皆、想像以上の訓練施設にテンションを上げてより一層気を引き締めて燃えていた。

 それを頼もしそうに見つつも注意をすることは忘れない相澤の言葉により、視線はUSJから教師たちに移された。

 13号は生徒の顔を見渡した後、満足そうにうなずいて話をし始めた。

 

「えーそれでは訓練を始める前に軽いお小言を一つ、二つ…三つ…四つ。」

「やべぇぜってぇやばい人だぜあの宇宙服先生。」

「その、人の特徴で先生の名前を呼ぶのはやめた方がいいと思うよ五十嵐君。」

 

 そんな衝也の小言にツッコミを入れる緑谷だったが、13号の言葉に耳を傾けることは忘れていない。(それは衝也も同じであるが)

 13号は『個性とは物によっては簡単に人を殺せてしまう力。しかし、君たちは人を傷つけるために力を使うのではなく、人を救うために個性を使うようにしてほしい』というとてもありがたい話をして生徒達から拍手喝采を受けていた。

 

「さすが人命救助専門のプロヒーローだな、言うことが違う。なぁ、爆豪?」

「なんで俺に言うんだよバカモブ…。」

「お前が一番そういうことしそうだからだろ?」

「するわけねぇだろ殺すぞコラァ!!」

「お前話聞いてたのか?」

「よし、話は終わったな?んじゃ早速訓練を…!?」

「おい、何だあれ…?」

 

 相澤が顔をUSJの広場に向けた時とほぼ同時に、衝也の疑問のつぶやきが響いた。

 相澤と衝也の視線の先にあるのはUSJのセントラル広場である。

 噴水や植物が飾られてあるその広場に二人の視線が集中したのにはある理由がある。

 そのセントラル広場の中央、そこにある噴水の少し前、そこに黒い霧状のモヤのようなものがあったからだ。

 そのモヤはどんどんと広がっていき、その中から

 大勢の人間が姿を現した。

 脳が丸見えの黒い大男

 顔や体に掌を付けた者

 ガスマスクと刃物という異常な恰好をしている者

 どれもこれも普通ではない出で立ちをしているその人間たちが続々とモヤ状の中を通って広場に集まってきた。

 切島は不思議そうな顔をして出てきた奴らを見つめ、衝也に話しかけた。

 

「なぁ、衝也…。これってよ、入試みたいにもう始まってるぞ!的な奴なのか?」

「んなわけねぇだろ。今回は人命救助の訓練だ、災害のある場所に助けを求める人がいたらやとわれた人間かなんかだと想像はつくが、あんな災害も何もねぇ広場に大勢で集まってる時点でその線は無しだ。紹介にしたって、先生達から何も言われずあんな場所にあんな方法で出る意味がねぇからそれも却下。それに、あんな目ぇギラギラさせてこっち見てるやつらが関係者に見えんのかよ。」

 

 そう言って衝也は軽く首を回した後、屈伸や伸脚などの準備体操をし始めた。

 その間も口は閉じることはなく、そのまま解説を続けていく。

 

「ここからでもわかる明確な敵意と殺意、加えて臨戦態勢の先生達…少なくとも関係者じゃねぇ。とすれば後は何か。そんなの明白だろ?」

「お、おい、まさか…」

「最近の不自然なほど厳重な警備体制、『なぜか』故障してまっていたという学校のセキュリティ、そしてマスコミの襲撃事件…。これらの出来事すべてを線で結んでいけば、奴らが何者かなんてすぐわかる。」

「全員その場から動くな!!」

「いつ来るかいつ来るかと思ってはいたが、まさかこんな早くに来るとはな…」

「あれは…ヴィランだ!」

 

 ヒーローの卵たちに向けられる本物の敵意と殺意。

 それを肌で感じている1-Aの生徒たちの中、ただ一人衝也だけが

 まるで餌を目の前にした猛獣のように舌なめずりをした。

 

「さあ、来いよ…ゴミクズ共」




グダグダの原因は会話が長すぎるせいだろうか?
ちょっと会話の量を減らせるよう努力してみよう…。
こんな小説でも少しずつお気に入り件数と感想が増えてきて本当に嬉しいです。
これからもよろしくお願いします。

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