救える者になるために(仮題)   作:オールライト

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やっと、やっと轟君との戦闘が終わったー!!
けどまだ一回戦!!
ヒエッ

てなわけで二十六話です、どうぞ


第二十六話 ツンデレは確かにかわいい…けどやっぱり少しウザいかもしれない

「……知らねぇ天井だ」

 

ゆっくりと目を開けると、見知らぬ天井が目に入った。

まるでどこかの漫画の主人公のような奴が見る光景がベッドに横たわる少年、轟焦凍の眼前に広がっている。

そして、少し鼻に来る消毒液の香りが自身の嗅覚を刺激した後で、彼はようやくここが医務室であることを知った。

 

「そうか、俺は…負けたのか。」

 

真っ白でシミ一つない天井を目にしながら、誰に言うでもなく一人そう呟く。

膨れ上がっていく憎悪もない、燃え上がるような怒りもない、ただただその『負けた』という事実をかみしめるかのように、轟はその言葉を口にした。

 

そしてなんとはなしにゆっくりと顔を横に向けると、自分の横たわっているベッドの一つ開けたその隣に、同じようにベッドで横たわっている五十嵐衝也の姿が目に入った。

その左手には、見るのがためらわれてしまうほど痛々しい火傷がある。

左手どころか、左腕一本全体の皮が火傷によってところどころ剝がれており、自分が火傷を負ったわけでもないのに思わず左腕を抑えてしまいそうになる。

 

 

 

 

 

さかのぼるのはわずか数分前の出来事。

 

轟の灼熱の炎と、衝也の衝撃。

その規模の凄まじい火力と火力のぶつかり合いは、ステージ全体を揺らし、そしてめちゃくちゃにした。

まるで波のように広がっていく熱気と爆風と衝撃波。

会場の観客がその余波の大きさに顔をしかめ、あるものは身体が飛ばされかけていた。

その余波に吹き飛ばされないように半ば本能的に背後に作り出した氷の壁に背中を押し付けながら、轟は前を見続ける。

否、正確には、立ち込める煙と熱気をかき分けながらこちらへとまっすぐ進んでくる

 

五十嵐衝也を。

 

長らく使っていなかった左側、制御も何もできていない。

だからこそ、アクセル全開、べた踏みの最大火力。

その威力は、周囲の冷気を膨張させ、一種の大爆発を引き起こすほどだった。

だが、その最大火力を、衝也は打ち消した。

左腕から放たれた連続の衝撃、それによって衝也は自身を襲う炎を退けて、着実に轟の方へと進んでいたのだ。

皮がめくれ、筋肉が抉れ、骨にまで到達しそうな程溶けてしまっているその左腕

 

だが、そんな左腕など意に返さないかのように、衝也は笑いながらこちらへと向かって追撃をして来ようとする。

 

そして、轟の間合いと、衝也の間合いがぶつかり合ったその瞬間、衝也はすぐさま轟のこめかみめがけて蹴りを放とうと右脚を上げようとする

 

が、その右脚が動かなくなってしまう。

 

咄嗟に、衝也の視線が下へと向く。

そして衝也は目を見開く

 

自身の両足が、氷によって地面に縫い付けられているその光景を見て。

 

『…ッ!』

 

『これで…俺の…勝ちだ!!五十嵐!!』

 

そういって、轟が左腕を振りかぶる。

ずっと、ずっと見ていた。

彼の一挙一動を見逃すまいと、必ず現れるであろうわずかな隙を見逃すまいと

この戦いが始まってから片時も目を離さずに、彼の姿を追っていた。

何度地面にたたきつけられようとも、何度自身の身体が吹き飛ぼうとも、決して彼から目を離さずにいた轟が気づいた、一筋の光。

それは、彼が氷山を壊したその時から、一度も右腕を使っていないこと。

始めに気づいたその小さな違和感は、やがて希望へとつながっていく。

もしかしたら、彼の右腕は、先ほど氷山を壊す際に負傷してしまったのではないかという希望に。

 

そして、轟の推測は見事に的中した。

USJの事件によって生まれたデメリットの増大が、轟の唯一にして最後の好機を生み出した。

 

轟の左側が熱を帯びる。

今まで、10年間ずっと封印してきた左側が熱を帯び、今まさに轟を勝利へと導こうとしている。

父の力ではない、母の力でもない。

他ならない、自分自身の力で、轟は今衝也から勝利をつかもうとしていた。

 

そして、轟の炎が再び衝也へと振るわれようとするその刹那

 

轟の腹部に、衝也の右拳(・・)が突き刺さった。

 

『…ッが!』

 

鈍い衝撃とこみ上げる吐き気が彼を襲うと同時に、轟の身体は大きく後ろへと吹き飛んでいき、自身が吹き飛ばされないために作り出した氷の壁に自身の背中が勢いよくぶち当たる。

 

その直後

 

轟の顔面に衝也の左飛び膝蹴りが撃ち込まれた。

個性によって速度が増したそのスピードを殺さずに放たれるその飛び膝蹴りの威力は轟の意識を刈り取るのには十分すぎる。

そして、背中にあった氷の壁が粉々に砕かれ、その破片と共に吹き飛んでいった轟の身体は

 

ステージの場外まで飛んでいき、力なくその体を地面へと沈ませた。

 

 

轟の敗因は、その希望の光が

 

衝也自身によって刷り込まれた・・・・・・ものだと気づくことができなかったこと。

甘くなってしまった右手への対処を付け込まれた一撃によって生まれてしまった隙が、彼に反撃を許してしまった要因になってしまったのだ。

 

『…っっっ!!轟君…場外!!勝者、

 

 

 

五十嵐君!!!』

 

ミッドナイトの宣言が、会場に響き渡る。

それから数秒、沈黙が会場を支配した後、

 

会場を震わせるほどの大歓声が沸き上がった。

実況のプレゼントマイクの興奮冷めやらぬ叫び声と、それに不満を漏らす相澤先生の言葉

彼らの健闘をたたえる拍手や歓声、そのすべてを一身に受け続けた衝也は、未だ倒れ伏したままの轟にゆっくりと視線を向け、その表情をほころばせた後

 

『ゔぁー…しんど…』

 

そう呟きながら、襲い来る疲労に身をゆだね、その意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

これが、試合の決着までの経緯。

轟が、自身が衝也に負け、衝也が彼と同じようにベットに横たわってしまっている理由。

それを思い出した轟はおもわずその右手を顔面へと持っていく。

視界には入ってこなかった包帯の感触が、彼の指へと伝わっていく。

通算で二回、衝也に顔面を、しかもどちらも勢いも威力もやばすぎるほどの攻撃を食らってしまったおかげか、鼻が少し変な方向に曲がってしまっている。

できることなら彼のイケメンに対する憎悪が生み出した結果ではないと信じたい。

次いで、彼に蹴られた場所や殴られた場所に手を添えてみる。

 

(…ッ!)

 

軽く添えると同時に走る少しの痛みに顔をしかめるが、それでも動けないほどではないし、悶えるほど痛くもない。

恐らくは、リカバリーガールが治癒を施してくれたのだろう。

意識がない間にBBAのキスを済ませてくれたことに内心少しだけホッとした轟は、改めて視線を隣で寝ている衝也へと移す。

 

(俺は…結局勝てなかったんだな。)

 

当然だ。

いくら左側を使って、全力で戦ったからといって簡単に勝てるようになるほど衝也は甘くないし弱くない。

ましてや、左側は10年間使っていなかったのだから使い勝手もわからなくなってしまっているし、調整もくそもないような状態だ。

負傷の度合いも轟の方が圧倒的に上、負ける確率の方が高かったのは誰の目から見ても明らかだろう。

それでも、悔しくないと言えばうそになってしまう。

生まれて初めて、全力を出して戦った。

生まれて初めて、『自分の』力で戦った。

その結果、轟は衝也に最後の最後まで届かなかったのだ。

それにショックを受けていないわけではない。

だが、今はそれ以上に、彼の言葉を、彼が思い出させてくれたことに想いをはせていた。

 

自分を救うために、あそこまで声を張り上げて、自分の胸の内をさらけ出し、左腕を犠牲にしてまで戦った少年。

自分勝手で、上から目線に説教をし始めて、頼んでもいないのに人の心の奥にズケズケと入り込んで荒らしてきた少年。

だが、彼の言葉のおかげで、轟はようやく、忘れていた原点を思い出すことができた。

 

誰を救うために、自分はヒーローになろうとしたのか。

どんなヒーローになるために、自分は強くなろうとしていたのか。

自分の中で、一番大切な想いを今ようやく、轟は思い出すことができたのだ。

 

(ありがとな…ヒーロー(衝也)。お前のおかげで…お前が背中を押してくれたから俺は…)

 

 

10年間燃やし続けてきた父親への憎悪だって、消えたわけではない。

自分だけが、こんなに簡単に、実にあっけなく救われてしまうことに恐怖がないわけではないし、罪悪感を覚えないわけでもない。

今まで、たくさんの人を傷つけて…自分が救いたいと思った人すら傷つけてしまった自分が救われることにためらいを覚えないはずがない。

けれど、

それでも

 

そんな都合のいい言い訳を並べて、救うことから逃げ出すようなことを、轟は良しとはしなかった。

 

自分の父親への憎悪を、罪悪感を、自分の恐怖を言い訳にして、以前の自分のように、救うべき人から目を背けるようなことはしたくなかったから。

 

もう二度と自分の大切な人に、涙を流してほしくなどなかったから。

やるべきことは、清算するべきことはきっと山ほどあるだろう。

きっと、自分の忌むべき闇と、嫌悪する父親とも向き合わなければならないだろう。

 

 

 

 

 

だが、それがどうした。

どんなにつらいことがあったとしても、どれだけ自分を傷つけることになろうとも、母親(あの人)を救うためだったら、10年間、ずっと闇にとらわれ続けさせてしまっていた母親(あの人)を救うためなら…たとえどんなことになろうとも前に進むための覚悟はある。

 

(俺は…ようやく『俺』の力で、救うべきだった人を救えそうだ…。)

 

ほかならぬ轟焦凍自身の力で、自分の大切な人を救うための覚悟が…。

 

ゆっくりと一度だけ深く、未だ意識が戻らない衝也へと頭を下げる轟。

数秒か、あるいは数十秒か、頭を下げ続けた轟は下げていた頭を上げた後、くるりと身体を回転させて、医務室の出口へと向かっていく。

どうせ、あの父親のことなら、医務室に続く廊下のどこかで自分を待ち伏せしているのだろう。

こちらへ言ってくる言葉も大方予想がつく。

ようやく駄々を捨てたのかだの、お前は俺の上位互換だだの、的外れな事を言ってくるのが想像できるあたり、自分もあの父親のクズっぷりが身に染みてわかっていることが理解できた。

 

だがら、そんなヒーローとも思えない父親にぶつけてやるのだ、今の自分の言葉を

 

(俺は…アイツの上位互換なんかじゃない、俺は俺だ…他ならない俺の力で母さんを…顔も知らねぇ誰かを救えるような…そんなヒーローになるんだ。)

 

ドアの取っ手をひねり、ゆっくりとドアを開いて医務室を出ていく。

その目には、今までのような復讐の炎などみじんも灯されていない。

その目には

 

新しい光の炎が、小さく、されどしっかりと揺らめいていた。

そして、轟焦凍は前へと進んでいく。

10年間、ずっと待たせ続けていた母親を救け出すために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

「さて…目が覚めた直後で悪いけど…アンタに一つ仕事だ、

 

この体育祭で負った怪我を復唱してみな、ハイ三、二、一」

 

「大砲で撃たれた時と鉄板でぶたれた時と地雷でぶっ飛ばされた時と氷山ぶっ壊した時と轟の炎に突っ込んでった時。」

 

「…アンタ、疫病神でも憑いてんじゃないだろうね?」

 

「否定できないところがつらい!」

 

意識を失った衝也が轟に遅れて目を覚ました直後、衝也はベットの上でリカバリーガールに呆れの視線を向けられていた。

それもそのはずだ、

障害物競走の時に治癒したはずなのにそのわずか二競技後、しかもトーナメント一回戦ですぐさま医務室に重傷で飛び込んできたのだ。

こんなペースで医務室に駆け込んでくる生徒などめったにいない。

緑谷ですらトーナメント前の競技では医務室に来なかったし、治癒も一回で済んでいるというのにである。

 

「左腕の火傷に右腕の筋線維断裂と右上腕骨にヒビ…障害物競争の時の裂傷やら打撲やら火傷やらを治癒したと思ったら、今度はそれをもう一段階ひどくして戻ってきて…アンタあれだね?わかってはいたけどアホなんだね?いくら私でも呆れて言葉が出ないよこのド阿呆め。」

 

「傷だらけで意気消沈の生徒にかけるような言葉じゃないでしょそれ!傷つくんですけど!?」

 

「アンタのせいで私の仕事が増えてく一方なんだよ。年寄りはもう少しいたわってくれないと困るんだ。」

 

「あ、なーんだ自覚はあるんですか?ならせめてリカバリー『ガール』だなんて名乗らないほうが」

 

「それ以上言ったらこの巨大な注射器をアンタの肛門にぶち込むよ?」

 

「ちょっと待ってどこから出したんですかその注射器!?」

 

調子に乗ってリカバリーガールをおちょくる衝也の目の前で衝也の身長を優に超える注射器をちらつかせるリカバリーガールに少しだけ恐怖を覚える衝也。

そんな彼に二度目のため息を吐きながらリカバリーガールはその注射器の針の先を衝也へと向けた。

 

「まったく、一回戦からこんな傷を負ってるんじゃ、体育祭終わった後生きてないんじゃないかいアンタ。」

 

「…?一回戦…?あ!」

 

「忘れてたね?アンタこれが一回戦だってこと完全に忘れてたね?」

 

「くっそ!だから俺は戦うのは決勝戦が良いって言ったんだ!それなのにくじ引きのやつめぇ!!」

 

彼女の言葉に一瞬首を傾げた衝也のその反応にもはや呆れることすらできないリカバリーガール。

そんなリカバリーガールの言葉を聞いた衝也が沸き上がる怒りをくじ引きにぶつけている。

 

「ったく…アンタってのは本当に…緑谷って子もそうだけど今年の一年はどうしてこう私の世話を焼かせるような子が多いんだろうね…」

 

「確かに!緑谷はもうちょい自分を省みて行動をしたほうが良いっすよねー。まったく、見てるこっちがハラハラしちまいますよ。ねぇ?」

 

「アンタだってその世話焼かせてる子の一人だろう!」

 

「脇が痛い!すいません!」

 

まるで他人事のように後頭部を掻きながら笑っている衝也の脇を杖で叩くリカバリーガール。

そんな彼女の一撃を受けた脇をさすりながら「養護教諭が生徒を痛めつけてやがる…」とつぶやきを漏らす衝也を見て、本日三度目のため息を吐く。

そして、少しだけ表情を真剣な物へと変化させた。

 

「…無茶しようがなんだろうが、死なない限りは私が治してあげれるけどね…

 

死んだらもう治しようがないんだ、無茶するのはUSJの時だけでお終いにしときなよ。

アンタも緑谷も、轟も、どいつもこいつも無茶しすぎさね。今はまだアンタの体力が残るから治癒するけど、これ以上のけがをしたら治癒しきれなくなるよ。ていうか、こんだけの怪我を負って動ける上に一日で治癒できるって、アンタのスタミナと身体はいったいどんな構造してるんだい?アンタ、ひょっとしてサングラスかけて過去を渡って任務を遂行するためのロボットじゃないだろーね?」

 

「ターミ〇ーターですか俺は…」

 

くるりと、椅子を回転させて顔を衝也からそらすリカバリーガールを苦笑しながら神妙な面持ちで見つめる衝也。

そして、ゆっくりと左腕と右腕の調子を確認した後、ゆっくりとベットに端座位で座った。

 

「でも、そういった無茶をしなくちゃ、人を救うことなんてできないでしょう?自分の身体も張らずに、無茶もせずに人を救えるほど、救うという行為は簡単なことじゃないはずだから。」

 

自分の身体を傷つけて、友人の心の傷をこじ開けて、そうした無茶を繰り返してようやく

 

友人の背中を押すことができた。

だが、あくまで背中を押すことができただけだ。

道を変えるのはあくまで轟自身なのだから、それも当然といえば当然なのだろう。

衝也は、新しい道があることを彼に教えただけ。

そう、道を教えただけで、彼を救ったわけじゃない。

今回、彼を救えるのはほかならぬ彼自身だし、『あの人を』救うことができるのも轟しかいない。

だが、それだけでもここまでの無茶が必要になった。

ならば、人を救うのには、さらに無茶する必要があるはずだ。

 

自分の身体では済まない、もしかしたら命を懸けて救わなければならない時があるかもしれない。

 

それは、リカバリーガールももちろんわかっていることだ。

だが、その命を懸けるという選択が簡単にできるヒーローなど、プロの中でもそう多くはない。

彼女が見て来た中でもそんな選択が躊躇なくできた人間は極少数だ。

 

自分を待っている大切な人がいるから、自分が死んだら悲しんでしまう人がいるから

 

ヒーローとは言え、一人の人が命を懸けるのに躊躇するにはありきたりで、それでいて一番根本的にあるであろうその想い。

その想いをリカバリーガールは否定もしないし、非難もしない。

それが当然の反応のはずだからだ。

 

だが、

衝也には、それに一切のためらいも見せないように見える。

傷つくことにも、命を懸けることにも、最悪死んでしまうような重傷を負っていったとしても

 

何一つ気にせずに、むしろそれが当然だとでもいう風にただひたすらに前へと進み続けてる。

もちろん緑谷も似たところがある。

あの子は、おそらくオールマイトに対するあこがれや、元来の性格などが原因であそこまで無茶をしてしまうのだろう。

本人はそれを『動けなくなってしまうから』という理由で何とか克服しようとしているようだが、本当はそれではだめなのだ。

もっと根本的な物、自分が傷つけば周りがどうなるのか、それを本当の意味で理解しているとは言い難い。

ヒーローが傷つけばどうなるか、自分が傷つけばどうなるか、誰がどういった反応をするのか。

それが理解できれば、おそらく緑谷はもっと上を行くことができるだろう。

 

 

だが、衝也は彼の場合とは少しだけ気色が違うように見える。

 

『たった一人の命すら救えなかった人間がいるのを…俺は知っている!!』

 

病的なまでの敵への殺意にも近しい敵意

病的なまでに自身を勘定に入れないその行動

それらはすべて、衝也のあの過去が中心にある。

雄英高校の教師の中でも担任と校長、そしてリカバリーガールしかしらない彼の深い、深い心の闇。

 

 

決して消えることのできない…あるいは消すことができない罪を背負った少年が、幼いころに下した決断が一体どういうものなのか。

それは過去を知っているリカバリーガールですらわからない。

だが、少なくとも彼はずっと、幼いころからずっとその決断をしたその日から、ずっと孤独に、たった一人で強くなってきたのだろう。

 

きっと『本当の意味で』彼を救ってくれるような人間が、彼の目の前に現れてはくれなかったのだろう。

そしてそれは…きっと想像もできないほど…本人も気づいていないほどつらいことなのだろう。

 

 

「リカバリーガール、何度も心配かけたことは、本当に申し訳ないと思ってます。

けど…俺は俺の救いたいという想いを、自分の傷や相手のことを理由に無視するなんてことはしたくないんです。

例えどんなに無茶しようが、身体が傷つこうが

 

…たとえ死んでしまうことになったとしても、俺は…最後まで大切な誰かを救うようなヒーローになりたいんです。

 

それが、おれがあこがれたヒーローの姿だから…。」

 

そこまで言って、いったん言葉を区切った衝也は、ゆっくりとなるべく身体に負担をかけないように立ち上がり、一度だけ頭を下げて「治癒、ありがとうございました!おかげで何とか次も戦えそうです。意識を失ってたからBBAのキスなんていうデメリットも見なくて済んだし…」と一言余計なお礼をどことなく青い顔で呟いた後、医務室から出ていこうと扉へと足を運ぶ。

そんな彼の背中を、視線だけを動かしながら見つめるリカバリーガール。

 

彼女には、彼のその背中に途方もない闇がしがみついているように幻視みえてならなかった。

 

(アンタの言うことが間違ってるわけじゃあない。アンタのその信念が間違ってるわけじゃあない。

だけどね…

アンタが進むその道は…いずれあんた自身を傷つけてしまうかもしれないんだよ?)

 

リカバリーガールの心の中のつぶやきなど聞こえない衝也は、そのまま歩みを前へと進めようとする。

そして、彼が医務室のドアノブに手をかけようとしたその瞬間

 

「衝也ぁ!轟ィ!大丈夫かぁ!!?」

 

「ブッフ!!?」

 

彼の顔面に医務室のドアがたたきつけられた。

恐らくは外側から開けられたであろうドアに顔面を強打された衝也は、たまらずに尻もちをつく。

突然の出来事にリカバリーガールも目を丸く見開いた。

そして、ドアを開けた張本人である赤髪の少年、切島鋭児郎は医務室に入りながら衝也の名前を呼び続ける

 

 

「衝也ぁ!?どこだ衝…あれ、衝也?お前、そんなところで何うずくまってるんだ…」

 

「な、なるほど…今の俺のこの状況を見てそんなことが言えるとは…お前相当にクレイジーだな…。」

 

「…?とりあえず大丈夫そうって解釈して問題ない感じか?」

 

「どこをどう解釈したらそんな結論出てくんだよ!?」

 

首を傾げながらもどこか嬉しそうに話しかけてくる切島にツッコミを入れる衝也だが、さらに詰め寄ろうとしたところで

 

「おいおい、そんな乱暴に入るなよ切島、ここ医務室なんだからよ。」

 

「おーい衝也ー、ちゃんと生きてっかー?ついでに轟もー。」

 

切島をたしなめる瀬呂と上鳴が衝也の名前を呼びながら医務室に入ってきた。

 

「お、なんだよ、案外元気そうじゃん!よかったよかった!」

 

「つーか、あれだけドンパチやってて元気そうって、タフネスの権化じゃねぇか。この才能マンめ」

 

「あ…?瀬呂に上鳴まで?なんでお前らここに…つーか次の試合は…」

 

「五十嵐と轟が試合場を文字通り壊したから、セメントス先生の修復が終わるまではしばらく試合中止だってさ。」

 

「!尾白…お前まで」

 

「やっ!とりあえず試合お疲れ様。なんというか、色々とすごい試合だった。勉強にさせてもらったよ。」

 

瀬呂と上鳴が来たことに若干驚いていると、その後ろから尾白が衝也の疑問に答えていく。

二人に続いて尾白までがここに来たことに驚いていると、その後ろからも続々とクラスメートたちが医務室へと駆け込んできた。

 

「二人とも、怪我の具合は大丈夫か?すごい爆発だったが…」

 

「すごかったよねぇ、五十嵐君は試合はちゃんと出れそうなのー?ってあれ?轟君はどこに?」

 

「確かに、轟さんの姿が見えませんわね…。…まぁ、少なくと五十嵐さんの方はご無事そうで何よりですわ。あのような規模の試合をしたものですからお二人の安否が気になってしまって。」

 

『二人とも、怪我はなかったんだね!よかったよ…!』

 

障子に葉隠に八百万に口田、1-Aクラスメートたちが続々と医務室へと入ってきて轟や衝也の安否を心配して声をかけてくる。

そんな様子に唖然としている中、遅れて来た緑谷が、飯田と麗日と一緒に医務室へと飛び込んできた。

 

「…ッ!五十嵐、君!轟君!怪我、大丈夫!?なんともない!?」

 

「デク君、とりあえず落ち着こうよ…息が上がっとるよ。」

 

「みんな!医務室にこんな大勢で駆け込むなど非常識だぞ!四人ずつ!四人ずつで入っていくんだ!!」

 

息を切らしながら衝也や轟を心配して医務室へと来た緑谷とそんな彼を落ち着かせようとする麗日に、大勢で医務室へと詰め寄っていくクラスメートを注意する飯田。

 

気づけば、爆豪を除いたクラスメートたちがこの医務室に訪れていた。

 

その様子を、衝也は半ば呆然としながら見つめていた。

 

「緑谷達まで…つーかなんで、なんでお前らここに…」

 

「はぁ、アンタさぁ…本当にバカだよね…全員アンタらバカ二人が心配だから来たに決まってるじゃん。」

 

「うおぅ!?なぜ背後から耳郎の声が!?」

 

そんなつぶやきが衝也の口から洩れる中、突然の背後からの耳郎の声に思わずのけぞってしまう。

そして、少しだけ息を整えながら話しかけてきた耳郎の言葉へと疑問をなげかける。

 

「いや、ていうかいきなり背後にいたのにも驚きだけどさ、最近みんなして俺のことをバカ扱いしてくることが一番驚いてるんですけど…。さっきもリカバリーガールからも言われたし…。」

 

「USJの時にけがで入院してるくせに、体育祭でも種目を終えるたびにけがをしてる…つまりは学習能力がない。=それってバカってことなんじゃないの?」

 

「ぐうの音も出ねぇ…反論の余地すらねぇ…」

 

床でがっくりとうなだれながら「でもさ、耳郎…俺が悪いのかもしれないけどバカは言い過ぎだと思うんだよね…」と小さくつぶやきを漏らす。

そして、ひとしきりつぶやきをつづけた衝也は相変わらず床に四つん這いになりながらも顔だけは耳郎の方へと向けた。

 

 

「っていうかさ…俺が言うことでもないんだけど…ぶっちゃけ病院に入院したことだってあったんだし、たかだか体育祭で怪我したくらいで大事にしなくても…」

 

「マジでアンタが言うことじゃないでしょそれ…」

 

「いや、まぁそうなんだけど…」

 

不思議そうに首をかしげる彼を見ながら、耳郎は少しだけため息を吐く。

そして、少しだけ顔を衝也からそらしながら、ゆっくりと口を開いた。

 

「…だからこそでしょ。」

 

「…?」

 

「みんな、USJの事件の時にアンタが無茶して入院したって聞いて、すごく不安になった。相澤先生からは死ぬことはないって言われたけどさ、それでも、もしかしたら自分の衝也が、自分の友達が、クラスメートがいなくなるんじゃないかって、ずっと心配で、不安だった。

だから、皆それぞれアンタんところに来てお見舞いしに来たんでしょ?」

 

「……」

 

「ただでさえそんな無茶して入院になった人が、今度はほかのクラスメートと一緒に無茶してる。そんな姿見たら、心配するのが当然でしょ…」

 

「心配って…俺は別に「アンタが大丈夫だろうが、ウチらはそうは思えないっていうのを、いい加減に理解しなよこの大馬鹿。」

 

「ッ…。」

 

そういって、コツンと軽く衝也の頭を小突く耳郎。

そして、少しだけ頬を赤くしながら、それでも笑顔で衝也へと視線を向けた。

 

「USJの時に言ったでしょうが。アンタは一人じゃないんだ。ウチだけじゃない、皆にとっても大切な友達なんだ。

 

その友達が無茶して、何度も何度も怪我してさ、心配にならないほど薄情じゃないんだよ、少なくともウチらはさ。」

 

「…耳郎」

 

「ったく!耳郎のいう通りだぜ衝也!今回はきっちりリカバリーガールに治してもらえたからよかったものの、もしあそこで腕一本コゲコゲになってたらお前一生片腕生活だぞ!?もっと自分の身体をいたわれ!今度無茶したら電気アンマの刑だからな!」

 

「重傷人にとどめ刺す気かよお前は…。まぁ、俺もおおむね上鳴と同意見、おめぇが無茶するのには何か理由があるんだってのはなんとはなしにわかるけどよ、あんま無理して自分の身体ぶち壊したら本末転倒どころじゃないぜ?」

 

耳郎の言葉を聞いていた上鳴がビシィ!と人差し指を衝也に向け、彼の言葉を聞いた瀬呂もそれに同調するかのようにうなずく。

そして、そんな彼らの横にいた切島が珍しく真剣な顔で小さくうなずいていた。

 

「三人の言う通りだぜ衝也!おめぇのそういった危険も省みずに前へと突っ走ってく男らしさは尊敬するけどよ…尊敬するからって心配がねぇわけじゃねぇんだ。

無茶するなとも、怪我するなとも言わねぇけどさ…もっと自分を大事にしろよ。」

 

そういって心配そうに衝也へと手を伸ばす切島の姿を見て、わずかにリカバリーガールは笑みを浮かべる。

 

自分が傷つけば、同じだけ傷つく人間がいる。

そのことに気づいている人間というのは、意外とそう多くはない。

多くの人間は、その気持ちを、本人を想って隠してしまうから。

その人が傷ついたときに同じだけ傷つけるということは、それだけその人のことを大切におもっているということだから。

大切におもっている人の重荷に、足枷になりたくないと思ってしまっているということだから。

だが、それでもなお、その大切な人を守りたい

例えその人の重荷になってしまったとしても…その人のゆく道を遮ってしまったとしても、

その人のことを守りたいと思える人は、きっとその傷つく人を救うために行動ができるだろう。

そして、それもまた…一種の『ヒーロー』と呼べるものなのだろう。

 

緑谷にも、衝也にも足りていないのは、その『ヒーロー』がとても身近にいるということだ。

それに気づくことができたなら、きっと彼らは…また次へと進むことができる。

 

「…なんだよ、つまりはみんな俺のことが大好きってわけ?やっぱり皆俺がいないと満足できない身体になりつつあるわけですかー。まったく、人気者はつらいねぇ…」

 

「…ウッザ。やっぱあのまま死んどけばよかったのに」

 

「ちょっと待って耳郎さんさっきと言ってることが違う。」

 

「いやお前、いくら冗談でも今この状況でのそれはナイわ。」

 

「五十嵐ちゃん、最低ね…」

 

切島の手を握りながら胸を張ってとんでもないことを言いやがる衝也にたいして辛辣なツッコミをする耳郎と上鳴と蛙吹。

ほかのみんなも一様にうなずいており、その視線は一気に冷たいものへと変化する。

 

「え!?ちょ、まってなにその返答!?何その『だめだこいつ腐ってやがる、遅すぎたんだ』みたいな雰囲気の視線は!?俺何も間違ったこと言ってないでしょうが!!」

 

「何のためらいもなく間違ってないと言えるアンタの精神がウチは一番すごいと思う。」

 

「なんで!?あ、もしかして今はやりのツンデレという…」

 

『違う「いますわ」』

 

「なんで!?」

 

クラスメート全員からのツッコミにオーバーリアクションで反応する衝也。

そんな彼をしばらくの間冷ややかな目で見続けていたクラスメートたちだったが、しばらくすると、誰が誰というわけでもなく笑い出す。

その様子を見ていたリカバリーガールは、自然と笑みを浮かべてしまう。

目の前でクラスメートに笑われている衝也や、一緒に笑っている緑谷を見て。

 

(…この様子なら、そう近いうちに…二人は気づくことができるかもしれないねぇ。)

 

一気ににぎやかになった医務室の中で、リカバリーガールは、衝也の闇を飲み込む光を見たような気がしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、彼らは知らない。

 

衝也の持つ闇の深さを、

彼が背負った罪の重さを

 

クラスメートたちも、緑谷も、耳郎も、切島も、リカバリーガールも知らないのだ。

 

 

 

(自分を大事に…かぁ

 

 

 

 

ダメだよ、切島…耳郎…緑谷…みんな

 

ダメなんだよ、こんな俺『なんか』を大事になんかしちゃあいけないんだ。

 

皆は知らないだけなんだ、知らないから…こんな俺を大切にしてくれる。

 

こんな俺を心配してくれる。

 

それはすごく、すごくうれしいことだけど…

 

本当の俺は、皆にそんなに心配される資格すらない人間なんだ…

 

 

自分の大切な人を

 

 

自分の大切な家族を『殺してしまった』この俺に…そんな資格はないんだよ。)

 

この先、幾万の人を救おうとも

 

この先、どれほどの命を助けようとも

 

この先、どれほど大切な人を守ろうとも

 

彼が『殺してしまった』命は、もう戻ることはなく

 

彼が背負った罪もまた、永遠に消えることはないだろう。

 

そんなことは、彼自身が一番よくわかってる。

 

それでもなお、彼が人を救うのは…

 

『衝也は生きて!生きて衝也は…自分の大切な人を、自分の手で守れるほど強くなって

 

そしていつか…

 

たくさんの人の命を救えるような、そんなヒーローになって!』

 

あの日に『彼女から』交わされた最後の約束。

 

それはいつの日か、彼でも気づかないうちに、彼自身を縛る鎖となり

 

彼にとって、唯一自分の罪を贖罪できるものとなっていた。

 

 

 

 

 

そう、少年は誰を救うこともできず、誰からも救われることができなかったのだ。

 

その少年の闇の深さを…誰もまだ知らない。

 

あるいは…それを知っている者が一人でもいてくれたのならば

 

 

 

 

 

遠くない未来、彼が『二度目』の罪を犯すことには

 

きっとならなかったのだろう。

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

「いやぁ、素晴らしい力だなぁ…どうだい死柄木?ともに君の障壁となりうる少年たちだ!今の内にその姿を…」

 

「だめじゃよ先生。あの子供なら『くだらない』と何度もつぶやきながらどこかへ行ってしまったぞ。」

 

「…ふーむ、そうか。まぁ、そうやって悩み苦悩するのも時には必要なのかな?」

 

暗い、電気もついていない部屋の中。

その中で食い入るようにモニターを見つめていた先生と呼ばれた人物は喉につながっている管とその喉の隙間からシュコーっと音を立てながら後ろにいたはずの死柄木へと声をかけるが、その姿はどこにもなく、代わりに近くで何かをいじくっていた白髪の男性が返答を返した。

 

「まったく、先生はあの子供を甘やかしすぎとる。あまり甘やかしすぎればのちに支障をきたすやもしれない。」

 

「アハハ、大丈夫さドクター。時が来れば彼には今の倍以上に苦労してもらうことになる。そのためにも今は多少の甘やかしが必要だよ。

それに、自分で悩み、考えを巡らせ、心の中をのぞき見ることは別に悪いことではないだろう?」

 

「あれはイラついて癇癪を起しとるだけにわしは見えるが…」

 

先生の笑いに心配そうにするドクターだが、ふいに視線をテレビの前に映っている少年へと向けた。

雄英高校体育祭、その試合途中に無残に壊されてしまったステージ補修のつなぎとして放送されている解説付きの前に試合のハイライト。

そこに映し出されている少年。五十嵐衝也を見て、先生は少しだけ顔をしかめた。

 

「しかしまぁ、今どきのヒーロー社会では珍しい…厄介そうな子供が出て来たもんだ。…先生、正直わしは想像ができんよ。

 

 

彼がわしらの側へとついてくれることなど。

到底想像ができん。

 

彼の想いも信念も、すべて本物のようにわしは見えたが…

大丈夫なのかね?」

 

そういうドクターの表情には心配と疑念の感情がありありと浮かんでいたが、先生と呼ばれた人物は嬉々とした声色を上げた。

 

「もちろんだとも。

 

ドクター、君は気づかないかい?

 

彼の叫び、彼の言葉、彼の熱意、彼の信念から伝わってくるものが。

彼はとても素晴らしい!彼はねドクター

 

すでに半ば壊れかけている。

 

自分でもわかっていないほどに、彼は狂気に足を踏み入れている!

 

だってそうだろう?あそこまで素晴らしい信念を持っていながら、あそこまで素晴らしい覚悟を持っていながら!

 

彼はその狂気の一部を、明確にヴィランへとへと向けている。」

 

そういって、先生はモニターの前に置かれたキーボードをいじくりだす。

すると、モニターが急に画面を変え、一枚の写真を写しだした。

そこにあったのは

 

USJの火災ゾーン、その燃え盛る紅蓮の広場の中心で

 

嬉々とした表情を浮かべ、瞳の光を闇に変えて、敵へとマウントをとり、

 

何度も何度も、執拗にその敵を殴りつけている衝也の写真があった。

 

「見てみたまえドクター!この嬉々とした表情!一片の迷いもなく放たれる拳!人間の急所をあれだけ迷いなく、あれだけの威力で撃てる人間は、この世にそう多くはない!

彼はねドクター!あれだけ素晴らしい言葉を叫びながら、その抱える罪に耐え切れず、そのはけ口を僕らへと吐き出してしまっているんだよ!

人の命を救うために!大切な人を守るために!そんな言葉を言い訳にね!

実に、素晴らしい!実に素晴らしい『歪み』だとは思わないかいドクター!

 

 

だが、悲しいことに、彼の心はまだ完全に歪み切っていないんだ。

それはきっと『彼女』のおかげなんだろうね。

皮肉な事に…彼がこうして闇にとらわれ、狂い、歪んでしまった原因である『彼女』が、彼が前へと進み、誰かを救い、大切な人を守れるよう強くなってきた唯一の要因…いうなれば光だったんだ。

 

 

 

だからね、ドクター…ボクはまずその光を奪おうと思うんだ。

 

そうすれば彼は必ず

 

必ず壊れるはずだ。

 

壊れ、狂い、むせび泣き、打ちひしがれる。

そして、音を立てて崩れた心に光はなくなり、

やがて彼は完全に狂気に身を任せてくれるようになる。

 

そのための一手は、ボクと『彼女』が打って見せる。

 

そうすれば、彼は晴れて、死柄木の同胞の一人となれるさ。」

 

「先生自らが…か。それはまたなんとも…」

 

同情する

 

その一言は発さずに、ドクターは額に汗を流す。

 

そんな中、目の前にいる先生はそのにじみ出る狂気も闇も隠さずに嬉々とした表情で手元のキーボードをいじくる。

 

そして、モニターにある一人の少女が映し出される。

それは、いつかのUSJ事件の際に見つけた一つの資料

 

そのモニターには

 

上位(ハイエンド)脳無DATA、No,2 検体名 五十嵐 清奈』

 

と書かれていた。

 

 

 

「五十嵐衝也君…安心してくれた前、君の罪も、闇も…君が抱えるもの、すべて僕が粉々にしてあげよう。

大丈夫、たとえそれで君が君でなくなったとしても…そんな時のために

 

 

『僕はいる』」

 

 




いやー、ほんと自分でも書いていて思ったんですけど、これ一回戦なんだよなぁ…
やばいなヒーロー科

あ、それと、感想でキャラ紹介がほしいと言われたので、ちょいちょいだしていくことになりました。
初っ端はわれらが主人公五十嵐衝也君です。

五十嵐 衝也


所属 雄英高校ヒーロー科1年A組
出身 ???
BIRTHDAY 9月30日
HEIGHT 174㎝
血液型 O型
出身地 ???
好きな物 家族 、歌、鍛錬
嫌いな物 敵、峰田、パクチー
性別 男

戦闘スタイル 近・中距離戦闘


性格

短めの黒髪と青い瞳が特徴的な男。
普段から突拍子もない言動や行動で周りを困らせてる問題児。言動の7割は嘘と適当でできていて、行動の7割が奇行という迷惑きわまりないバカ。
上鳴と合わせて1-Aの二大バカとして日々飯田や相澤に絞られているが、懲りてる様子は一切無し。
明るい性格とその奇行も相まってクラスのムードメーカーとして目立ちまくっている。
口田などのコミュ障に近いような人物とも気さくに話せるほどコミュ力は高いが、基本的に思ったことはすぐに言ってしまうところがあるため、それと元来のバカっぷりが災いして敵を増やすことがしばしば。
女性に飯をたかろうとするほどプライドは低いものの、変なところで純情かつ紳士的なところがある。
パクチーは子供のころ父親と公園でストリートファイターごっこをしていた時に父親の昇竜拳を受けて倒れ込んだ時にカメムシを潰してしまい、体中カメムシのにおいになってしまったことがあった。
そしてその日の夕食に出たパクチーがそれと全く同じ匂いだったため嫌いに。
まぁ簡単に言えばつまりは父親のせい。
病的なまでに峰田が嫌い。触られると嫌悪感からアレルギー反応っぽいのが出てくる。
騎馬戦の時は地味に大変だった。
歌は演歌から民謡、JPOPからロックまで何でも聞くし、楽器もリコーダー以外ほとんど弾ける。
ただ歌うのだけは壊滅的で幼稚園の頃から音楽の授業で初めの一日以外歌わせてもらったことがない。
なお、その際に彼の隣にいた園児や生徒たちは例外なく一週間ほど吐き気と頭痛と嘔吐の訴えから欠席する。
ある意味敵の制圧に向いている衝也の最大の武器(本人に自覚はなし。)

パワー➡➡➡➡➡A
スピード➡➡➡➡B
テクニック➡➡➡➡➡【S】
知力➡➡➡➡BところによりE
協調性➡➡➡➡➡A

個性
【インパクト】

手の平や足から衝撃を放出する。
シンプルが故に使い方が大きく戦いを左右する。
応用をすればダッシュや回避行動はもちろん、空中移動も可能。
また、秘めるエネルギーは莫大で、そのパワーはオールマイトの全力にもひけをとらない…かもしれない。
その反面、個性を使用したさいの反動も凄まじく、使いこなすためにはそれ相応の身体能力と慣れが必要となる。

五十嵐衝也の
ヒーロー適正!

普段の明るい性格は皆の笑顔を誘うことも多く、ヒーローとして大切な要素を持っている。
戦闘の際もその戦闘技術はもちろん即興で仲間の個性を活かした作戦を立てることができる頭の回転の速さなどがあり、戦闘におけるヒーローとしての適正も高い。
反面、結論を出すことも、出してからの行動も速すぎる
ため、時折それが不味い方向に働くことも。
また、戦闘中に仲間を守ることに固執しすぎる面が垣間見え、それ故に自身が大怪我をおってしまうことも少なくない。
それに何より、異常とも取れる敵への私怨による殺意が、敵への過剰な暴力を生んでいるふしがあり、その背景には彼の心の闇と明かされぬ悲しい過去がみえかくれしている。

裏話

最初のころはもっと冷静でクールな主人公でした。
本編の時みたいに、あんなあほな事してませんでしたね。
性格のイメージとしてはDグレの神田君みたいな感じです。
個性もそれに合わせて刃物を形成するみたいな、八百万の劣化版みたいな個性でした。
ですが、自分が刃物より格闘技の方が好きだったため、個性を格闘技を取り入れられそうな今の『衝撃』に変えてみました。
個性はワンピースを読み返したときに思いついたので、結構がばがばな設定でした。
で、それをもとに本編を書いていたのですが、思うように筆が進まなかったため、ちょっと主人公の性格を変えてみようと模索し始めました。
残忍なブッコロ系から優しいさわやか系とか色々な性格の主人公がつくりだされましたねぇ(遠い目)。
そして、ふとバカでアホで底抜けに明るいけど実は強くて何かしらの闇を抱えてる主人公って面白くない?と考えてその通りの主人公で話を書き始めたら

筆がまぁ進んで進んで。
そんなこんなでようやく主人公が決まったわけです。
こうしてみると主人公を書くだけでもそうとう時間をかけてるくせによくもまあこんな駄文が書けるものだと感心してしまいますね。

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