救える者になるために(仮題)   作:オールライト

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雄英高校体育祭の障害物競争見てていつも思います。
これ下手したら死人出るんじゃね?と
てなわけで、十五話です
どうぞ!


第十五話 巨大ロボといい崖といい地雷といい、いつか死人が出るんじゃないかと俺は思います。

雄英高校体育祭の会場1年ステージ、そのステージはもうすでに興奮と熱気と歓喜と期待とでおおわれていた。

観客席およそ12万席が見事に埋まり、観客やプロヒーロー、テレビの取材陣が今か今かと待ち望んでいる中、その会場に1年ステージの実況担当、プレゼント・マイクの声が響きわたる。

 

『エヴィバディ!ついに始まるぜ雄英高校体育祭!ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!!どうせてめーらあれだろ、こいつらだろ!!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!

ヒーロー科!1年!!A組だろぉぉ!!?』

 

プレゼント・マイクの熱き言葉が会場にこだまする中、選手の入場口からゆっくりと

1-Aの生徒総勢20名が会場へと入場していく。

その顔には緊張と期待と不安と、そして何より覚悟の意が見て取れた。

彼らが入場したその瞬間、会場の空気どころか地面さえ震えてしまうのではないかと思うほどの歓声が響き渡る。

 

「うわぁ…やっぱ観客すげぇいんな。歓声がもう爆発音みたいになってやがる…」

 

「おいらちょっと便所行きたくなってきた…」

 

「俺も、何かここまで期待されると逆にプレッシャー感じて緊張してきた…」

 

「あそこの観客席にめちゃくちゃ美人なおねぇさんがいやがったんだ…!」

 

「お前は何をするために便所に行こうとしてるんだ!?ぶれねぇなお前も!」

 

観客席の熱気と興奮にあてられて心拍数が上昇してしまった瀬呂だったが、よだれを垂らしながら人間としてあれな峰田の言葉に思わずツッコミを入れてしまう。

そのほかにも、観客の歓声にテンションを上げるもの、緊張感を高める者、再び己を鼓舞するものなどさまざまな反応を見せる中、

 

「まずいどうしようどうにかしないと何言えばいいんだ何も考えてないどうしようどうしようどうしようどうしよう…!」

 

「五十嵐…お前、大丈夫か?」

 

「これはまずい、これはまずいぞどうしたらいいんだ誰か時間を、神様時間を止めてくれ十秒だけでいいんだ!」

 

「だ、大丈夫ではなさそうだな…」

 

衝也はあごに手を添え、珍しく真剣な表情でぶつぶつと何かをつぶやいていた。

人目をはばからずに小さな声で何かを言い続けるその姿は、少し、いやかなり気味が悪く、隣を歩いていた障子が思わず複製した口で衝也に話しかける。

が、それにも反応せずにつぶやき続ける衝也を見て、少し顔を引きつらせてしまう障子。

それを見ていた衝也の前を歩いている耳郎は、半ばあきれた様に手を横に振った

 

「ああ、無駄無駄、今の衝也には何を言っても耳に入ってこないと思うよ。完全に自分の世界に入ってる。」

 

「そ、そうか、さすがの五十嵐でもここまでの期待を浴びせられれば緊張するのだな…。

こいつは図太そうな奴だから大丈夫だと勝手に思っていたんだが、案外俺たちと変わら

ないな。」

 

「んー、たぶんあれはそういうんじゃないと思う…たぶんってか、絶対。」

 

衝也の方に視線を向けながら障子の言葉を否定した耳郎の言葉を聞いて、軽く首をひねる障子。

そんなことをしているうちに、B組や普通科、サポート科、経営科などのほかの組や科も続々と入場し、体育祭に参加する1年生の選手全員が会場の中央へと整列した。

 

「選手宣誓!」

 

その中央にて今年の一年の主審である18禁ヒーロー『ミッドナイト』が、鞭を一度振り回してから体育祭の始まりを合図すると言っても過言ではないほど重要な選手宣誓の開始を告げる。

途中常闇のツッコミが入るが、それを強引に黙らせて選手代表の生徒の名前を呼ぶ。

 

「選手代表!1-A五十嵐衝也!」

 

「お、来た来た!」

 

「へぇー、五十嵐君が選手代表なんだ…」

 

「あいつ、入試ではぶっちぎりで1位だったからな!」

 

「…ケッ」

 

衝也の名前が呼ばれたのを聞いて、切島や緑谷、そして瀬呂など、多くの生徒が衝也の方へと目だけを動かし視線を集中させた。

某いがぐり頭は、忌々しそうに舌打ちをしたのみだが。

そんな、生徒たちの視線を全身に浴びる中、衝也は、その場で大きく深呼吸をした後

ゆっくりと中央のマイクの方へと歩いていく。

そして、マイクの目の前で立ち止まると、生徒や目の前のミッドナイト、観客たちが見守る中、一度大きく息を吐いた後、ゆっくりと口を開き、

 

「……ご」

 

『ご?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「5分だけ時間をください…」

 

『なんでや!?』

 

頭を下げ、必死の懇願の言葉をマイクにささやいた。

思わず会場中からツッコミが入ってきてしまう。

 

「なんで5分!?考えてきたんじゃないの!?」

 

「しっかりしろよ衝也!お前選手代表だぞ!?」

 

「俺らに恥かかせんなぁこの間抜けぇ!」

 

「うるせぇ!こちとら選手宣誓やるなんざ聞かされてなかったんじゃぁ!聞いてないんじゃ考えるもくそもないだろボケェ!」

 

「お前以外皆聞いとるわこの馬鹿!」

 

「逆になんでお前らが聞かされてんの!?そっちの方が不思議なんだけど!?」

 

緑谷や切島、瀬呂、果てはクラスのほとんどからブーイングやらツッコミやらを投げかけられ、半ばやけくそ気味に叫び始めた衝也。

そんな様子を見て観客やほかの生徒たち、目の前のミッドナイトまであきれ顔である。

 

『YEAH!あいっかわらずクレイジーで面白すぎるぜあのリスナー!俺ぁあいつ気に入ってるぜぇ!んで、イレイザー、お前ちゃんとあのクレイジーボーイに選手宣誓のこと伝えたの?』

 

『きちんとプログラムと一緒に詳細の紙を渡してある。大方見るのを忘れてどっかやったんだろ。ったく…』

 

実況席で爆笑中のプレゼント・マイクと相沢の会話がマイクを通して会場に響く中、ミッドナイトはあきれた様にため息を吐くと、いまだクラスメートと言い争いをしてる衝也へと話しかけた。

 

「んー、事情はとりあえず分かったわ。五十嵐君、とにかく早めにパパッと言葉を考えちゃって。それっぽければなんでもいいから。」

 

「それ、先生が言っちゃダメなんじゃ…」

 

「もとはといえばアンタのせいでしょうが、文句言うな。」

 

「うっす…」

 

後方から聞こえた耳郎のツッコミに返事をしつつ衝也は腕を組んで言葉を考え始める。

そして、なんとも無駄な3分が浪費された後、腕を組んでいた衝也はその腕をゆっくりとほどいた。

 

「よっし…先生!とりあえずそれっぽいの考えました!」

 

「よっしゃ!それじゃ改めて選手宣誓!」

 

ピシャアン!と鞭の音を響かせたミッドナイトが改めて選手宣誓の始まりを告げると同時に、衝也はマイクの目の前でゆっくりと口を開いた。

 

『宣誓!我々、選手一同は!日頃のつらく、苦しい授業の中培ってきた力を存分に出し切り!共に切磋琢磨しあった仲間と全力を出してぶつかりあい!

今ここで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長きにわたり続いたこの体育祭の歴史を終わらせることを誓います!!』

『終わらせるんかい!!』

 

前半はまあまあ良かったというのに、後半で一体何をしようというのかと思わず聞いてしまいたくなるような物騒なことを言ってまたもや会場中からツッコミを入れられてしまう衝也。

だが、当の本人はくるりと後ろの方へと身体を向けて

 

(何とかなったぜ!)

 

と言いたげにクラスの方にさわやかな笑顔で親指を立てていた。

どうやら会場にいる全員が自分のことを『だめだこいつ、早く何とかしないと』とあきれたような目で見られていることに気づいていないようだ。

そんな衝也を見て、1-Aの生徒たちは、

 

今この時だけは他人のふりをしようと心に決め、全力で視線を逸らしていた。

 

「なんだかずいぶん濃いキャラした一年が出てきたなー…」

 

「あの子もヴィランの襲撃を受けたっていう1-Aの生徒だろ?」

 

「なんか急に胡散臭くなったなー…ほんとに襲撃乗り切ったのか?」

 

一年ステージの観客席からザワザワとそんな声が聞こえてくる中、衝也は達成感溢れる笑顔を浮かべながらクラスの元へと戻っていく。

そして、グッ!と親指を自分に向けながらどや顔を決めだした。

 

「どうよ!即興にしちゃあなかなかよかったろ今の!」

 

「よかねぇわこのドアホ!」

 

「そうだそうだ!おいら達に恥かかせてんじゃねぇよ!」

 

「クラス一の恥さらし者にだけは言われたくねぇよ。」

 

「…」

 

どや顔の衝也にツッコミを入れた切島に便乗した峰田だったが、衝也のまさかのカウンターの右ストレートに思わず固まってしまう。

だが、そんな彼らに続くように周りから衝也へのツッコミが入っていく。

 

「ほんと勘弁しろよなー。お前がこんな大勢の前でバカやると俺らまでバカに見られちまうだろー?せっかくいい感じで注目されてたのによー!」

 

「大丈夫、お前はもうすでにバカのレッテルが張られてる。今更何しようがお前のそのバカのレッテルははがれることはない。良かったな上鳴、お前はこれ以上バカになることはないぞ。ベスト・オブ・BAKAだ。あまりのバカっぷりに周りはあきれを通り越して尊敬してるはずだ、喜べ!」

 

「お、お前な…」

 

渾身の笑顔とグッドポーズをして盛大に上鳴をディスった衝也のその言葉に上鳴は片手で胸のあたりを抑えながら片膝を地面についてしまう。

中身はチャラいが打たれ弱い上鳴は容赦のない衝也の言葉によく心を痛めつけられているのだ。

 

「公衆の面前でお前が醜態をさらせば、俺たちの評価まで貶めることになる。もっとクラス代表という自覚を持て。」

 

「そうだぞ五十嵐君!選手宣誓という僕たち生徒を代表して誓いを立てる大切な儀式であのような行動をとるのはさすがにいただけない!雄英生として、最高峰としての自覚を改めて再認識すべきだ!」

 

だが上鳴に続いて、常闇、飯田から連続でツッコミを受け、さらにはほかのクラスメートからも指摘を入れられる衝也だが、当の本人はどこ吹く風という様子で腕を組み、実に堂々としている。

 

「おいおい、人のせいにするのは良くないぜ?俺の一言で評価が落ちるようだったら、それはお前らの評価がそれまでだったってことだろ?本物の実力者だったら周りがバカやっても評価が下がったりはしないんだよ。周りを見てみろ!」

 

『?』

 

「さっきの選手宣誓で俺の評価はダダ下がり!もうやってらんねぇ!」

 

『わかってんだったらどうにかしろよ頼むから』

 

腕を組みながらどや顔でそう言い放つ衝也の胸にクラスメート全員から切なるツッコミが突き刺さる。

そんなクラス中のツッコミを浴びつつ、衝也は自分のいた場所へと戻ると、どこか達観したような笑みを浮かべて目の前にいる耳郎へと話しかけた。

 

「耳郎…」

 

「何?」

 

「俺、将来自分に家族ができたら家訓を作るわ…

『選手宣誓の言葉は言う前にきっちりと考えるように』って家訓。」

 

「いやそれ至って普通のことだから。アンタがどうしようもないほど間抜けなだけ。家族にまで恥をかかせようとするなこの馬鹿。」

 

「うぃっす…」

 

耳郎の至極もっともな返答に衝也が軽くうなずきを返している中、体育祭の説明は着々と進んでいく。

そして、とうとう体育祭の大事な初戦、つまりは第一種目がミッドナイトにより発表された。

その第一種目とは

 

「障害物競争かぁ…」

 

障害物競争

約四キロあるスタジアムの外周をコースに沿って進んでいきゴールを目指す至極シンプルな競技であるが、一つ特出すべきところがあるとするならば、

コースに沿ってさえいれば何をしてもかまわないということ。

もちろん、個性使用による妨害や相手への直接攻撃だってかまわない。

 

(つまり、裏を返せば『個性を使用しなければ到底乗り越えられない障害物がある』ってわけだな…いや、考えすぎか普通科やほかの科の生徒もいるわけだし。どちらかというと、個性使用を許可することによって生徒同士の闘争をより過激なものにしていくのとプロヒーローたちへのアピールの機会を増やすのが狙い、なのかもな。しっかし…こういうのはヒーローを目指してる者より、個性を持て余してストレスが溜まってるヴィラン予備軍的な奴にやらせた方がストレス解消になる上にゴミが減るからそっちの方がいいんじゃないか?)

 

なんてことを考えながら衝也は目の前の大型モニターの方へと視線を向け続ける。

 

「?何やってんの衝也、早くいくよ。もうスタート地点に並ぶんだって。」

 

「え、もう?速くない?おやつ休憩とかないの?」

 

「あるわけないでしょ…」

 

「あはは、それもそうだなぁ。おやつは競技が終わってからか!」

 

「遠足に行ってる小学生じゃないんだからさ…」

 

後ろから耳郎に声を掛けられて思わず不思議そうに返答している衝也を見てあきれた様子を見せる耳郎。

そんな彼女のあきれた様子を見た衝也は後頭部を片手で掻きながら笑い声をあげる。

そして、衝也は耳郎やほかのクラスメートと一緒にスタート地点に向かおうとするが、不意にキョロキョロとあたりを見渡し始めた。

その様子を見ていた耳郎は明るく首を傾げる。

 

 

「?どうかしたの衝也?」

 

「いや…なんか、どっかから視線を感じるような気がして…」

 

「視線?ウチは特に何も感じないけど…緊張のしすぎなんじゃ…ってアンタに限ってそれはないな、うん。」

 

「なんかさ、耳郎最近俺に冷たくないか?ウサギはさみしくなると死んじゃうんだぜ?」

 

「アンタよりウサギの方が1千万倍可愛いから。」

 

「いやいや、俺にも中々どうして世の女子を魅了する可愛さが…」

 

「ないから。」

 

「即答かよ!?こいつはシヴィー!」

 

ケラケラと笑いながらプレゼント・マイクの物まねをした衝也は、あきれた様にため息を吐く耳郎と共にスタート地点へと歩いていく。

 

そして

 

そんな彼らを遠目から見ている者がひとりいた。

彼らが歩いていた場所から少し離れた場所で、二人と同じようにスタート地点に向かって歩いている少年、B組の物間寧人である。

 

「いたいた、やっと見つけたよ、五十嵐衝也。」

 

そういって、物間はわずかに唇の端を吊り上げる。

 

「あの時の借りを、返させてもらわないとな…」

 

あの時、衝也が退院してきたときに受けたあの屈辱。

その屈辱は、彼の、いや、彼らの心に深く刷り込まれている。

あの日の放課後

 

突然教室にやってきたと思ったら、この前自分たち全員をモブ扱いした爆豪とかいう少年の代わりに、クラス代表もかねて詫びを入れに来た、と笑顔で言ってきた少年は、手土産にフルーツの盛り合わせを持って謝りに来た。

その態度を見て、同じクラスメートの鉄哲徹鐵などや、ほかならぬ自分自身も、A組にもこういうやつがいるんだな、と感心した。

だが、その関心もすぐに敵意に代わることとなった。

あの男は去り際、決して許すことはできない言葉を口にしたのだ。

自分たちをなめているとしか考えられない、あの言葉を

 

『ま、ヒーロー科と普通科、お互い違う科だけど、体育祭の日は正々堂々勝負しような!あ、フルーツは早めに食べちゃってくれよ!腐らせたらもったいないし。そんじゃ、また体育祭の日に会おうぜ!』

 

そういって教室を出ていったのだ。

B組は普通科ではない。

A組と同じように、ヒーローを目指すもの達が集まり、A組と同じカリキュラムを受けているヒーロー科なのだ。

それをあろうことかあの男は、普通科と言い放ったのである。

これは、B組に対する明らかな侮辱行為に他ならない。

実際、B組の生徒大半がぶちぎれた。

結果、B組の生徒たちは決意したのだ。

あのUSJの事件以来明らかに調子に乗っているA組どもを、体育祭でぼこぼこに叩きのめすことを。

 

「待ってろよA組…そして五十嵐衝也。僕たちをバカにしたお返しは、この体育祭でたっぷりとしてやるよ…」

 

黒い笑みを浮かべながらスタート地点へと向かって歩いていく物間。

そんな彼を見ていたB組学級委員長、拳藤一佳はあきれた様にため息を吐き

 

「そういうの…試合前に言ったら負けるフラグじゃないかぁ…?」

 

とつぶやいて、プライドの塊みたいな自身のクラスメートを心配そうに見つめていた。

 

 

 

 

 

 

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『さぁさぁ!位置に着いたかボーイ&ガールども!緊張で胸がドキドキの奴も、闘志メラメラ燃やしてやがる奴も!けつの穴引き締めて覚悟を決めろぉ!そんじゃ!雄英高校体育祭第一種目!障害物競争…す』

 

「スタート!!!」

 

『うぉい!?そこ俺がいうとこだろーがミッドナイト!リハーサルと全然違うじゃねぇのよ!?』

 

プレゼント・マイクの…ではなく主審であるミッドナイトによる掛け声を合図に

スタート地点にいた生徒たちが一斉にコースの中へとなだれ込んでいく。

が、スタート地点のゲートは予想以上に狭く、まるでワイングラスに蓋をしてるかのようにゲートは人であふれかえっていた。

 

「な、何だよこれ!ゲート狭すぎだろ!?」

 

「こんなの通れるわけないじゃない!」

 

「いてぇ!おい誰だよ今俺の足踏んづけたやつ!」

 

『おおっと、スタートゲートで早くも小競り合いが続いてやがるぜ!この光景は、あれだな!人がごみのようだっやつだぁ!開始早々醜い争いが始まってやがるぅ!』

 

『合ってはいると思うが、その言葉は使いどころが違うんじゃねぇか?』

 

スタートゲートで早くも小競り合いを起こし始めている生徒たちを見て、プレゼントマイクがケタケタと笑いながら実況を始める。

そんな彼にツッコミを入れつつ相沢は目の前の選手たちの行動に注目をする。

 

(スタートゲートからすでに選手のふるいは始まってる。ここを抜けれもしないような奴らは、この先の障害を乗り越えることはできない。さて、あいつらはどう動く?)

 

すると、早くもスタートゲートで最初の動きがあった。

 

『おお!ここで早くも妨害発生!1-Aの轟が後ろの選手たちを氷漬けにしやがった!しかもちゃっかり自分のコースまで確保してやがる!こいつはせけぇ!』

 

 

先頭集団を走っていた轟が素早く前方と後方の道を氷結させ、後方の生徒の妨害と自身のコースの確保をしたのだ。

おかげでスタートゲートにいる大半の生徒が凍って動けなくなってしまうが…

 

「そううまくはいかせねぇよ半分野郎が!!」

 

爆豪をはじめとした1-Aのクラス陣が各々の個性や身体能力を生かし轟の氷結を突破していく。

その行動の速さを見るに、どうやらここで轟が行動を起こすのはすでに予想済みだったようだ。

 

「クラス連中は当然としても、思ったよりよけられたな…ん?」

 

轟は軽く後ろを振り向きその様子を確認する。

自身が勝つと宣言した緑谷がどこにいるのかを把握するのも忘れない。が

彼はその光景を見て、わずかに眉をひそめた。

 

(…五十嵐の野郎が、いねぇな。)

 

五十嵐衝也、クラス一と噂される実力者の轟や、戦闘センス抜群の爆豪ですら認めるほどの圧倒的戦闘能力を持つ彼(ほとんどの者からはただのバカとしか見られていないが)の姿が、スタートゲートの付近には見られなかったからだ。

 

轟も、体育祭に参加するからにはもちろん狙うのは優勝だ。

それもただの優勝ではない。

(父の力)を使わずに(母の力)のみで優勝し、あの男を完全否定する。 

そのために狙うは右のみを使い優勝しなければならない。

当然、オールマイトに目をかけられている(らしい)緑谷や爆豪、尾白などの実力者の行動はしっかりと警戒しなければならないと考えていた。

その中でも一番轟が危険視していたのが、衝也である。

圧倒的な戦闘能力に加えて頭の回転も速い。

判断力や決断力や身体能力、およそ戦闘にかかわるすべての能力がかなりの水準に達している彼(普段の言動が致命的)は、今現在轟が最も警戒しているといっても良い。

そんな彼が自分の攻撃をよけられないとは到底考えにくい。

 

(攻撃を受けないよう後方で様子を見てんのか、俺が視認できないほど個性を使って高く飛んだのか…どちらにせよ油断しない方が…)

 

そう思って轟が再び前を向こうとしたとき

 

「だああああああ!暑苦しいわァァァァ!!!」

 

という叫び声が聞こえたかと思うと

 

『!?う、うわああああああああ!!?』

 

ものすごい轟音と共に、スタートゲートでぎゅうぎゅう詰めになっていた選手たちが、ポップコーンのように勢いよく吹き飛んだ。

その衝撃に足を凍らせて動けなくなったものも、何とか回避して前に進もうとしたものも、見境なしに吹き飛ばされていく

そして次の瞬間

 

トップを独走していた轟の後方から、一瞬風が通り抜けたかと思うと

今まで姿を見せていなかった五十嵐が、轟を抜き去り怒涛のトップに躍り出た。

 

『早くも首位が変わったぁ!その首位とは!聞いて驚け、さっきのさえないフェイスのクレイジーボーイ、五十嵐衝也だぁ!なんだよやればできんじゃん!正直全然強くなさそうだったけど!もしかしたら実力者なのか!?あふれ出る雑魚臭は払しょくできるのかぁ!?』

 

「実況に悪意しか感じねぇ!?俺ってそんなに雑魚っぽいか!?」

 

プレゼントマイクの実況にツッコミを入れるほどの余裕を見せる衝也に対して吹き飛ばされた後方の選手はボロボロ。

どうやらゲートの中で思いっきり衝撃をぶっ放してから前へと飛んだらしく、ゲートは先ほどよりも二回りほど大きくなっており、その周りにいる選手たちも傷だらけだった。

中には白目を剥いて気絶してしまっている選手もいる。

 

 

「衝也ぁ!おめぇ少しは加減しやがれ!俺らならともかく、ほかの奴らがこんな規模の衝撃耐えられるかぁ!?」

 

全身を硬化させながら切島が走りつつツッコミをする中、当の本人はどこ吹く風というような表情で顔を後方へとむけた。

 

「おいおい、何甘いこと言ってんだよ切島!まるで砂糖とキャラメルとホイップクリームとチョコレートソースを盛ったアイスクリームみてぇな思考だぜおい!これは体育祭!全員が今自分の出せる全力を出し尽くして戦う戦争だ!そこに加減もくそもねぇ!あるのはただ勝者と敗者のみ!敗者は潔く地面の砂でもなめとけばいいんだよ!もしくは俺の足でもいいけどなぁ!」

 

『YEAH!とんでもなく悪い顔してとんでもねぇこと言いやがるぜ!もう顔つきがヴィランにくりそつ!さっきのクレイジーさも考慮してみるに、あのクレイジーボーイは碌な人間にならねぇと俺は思うぜ!』

 

『ま、だがいうことには一理あるな。今あいつらがやってんのは遊びじゃない、自分自身の目標、夢に近づくために戦ってる。ただただがむしゃらに、ただただ全力でな。そういう意味じゃ、アイツの言った通り、この体育祭は戦争ともいえるかもな。ま、敗者は別に五十嵐の靴をなめる必要はないけどな』

 

衝也のヴィラン顔負けの黒い笑みと言葉にプレゼントマイクと相沢が各々の見解を述べる中、首位を奪われた轟は一瞬悔しそうに歯ぎしりした後

 

「…ッ!ッの!」

「うおっとぉ!?」

 

前方を個性を利用してほとんど足をつかずに突き進んでいる衝也を狙って氷を地面へと這わせる。

が、衝也は相変わらず余裕そうに笑みを浮かべたまま斜め上へと飛び、氷をなんなく回避する。

 

「あっぶねぇな!何すんだよ轟!俺ら友達だろ!?友達を氷漬けにしようだなんて、お前は悪魔か!?」

 

「さっきお前も容赦なくほかの奴ら吹き飛ばしてただろうが。自分だけやられたかねぇってのは虫のいい話だろ?」

 

「人間だれしもそういう生き物よ…それにほら、俺って好きな人に程いやがらせしちゃう天邪鬼な性格だし?」

 

「言ってろ!」

 

再び轟が衝也に向けて氷を這わせていくが、その瞬間衝也は、轟にとって予想外のうごきを起こした。

なんと、あろうことか一瞬動きを止め、くるりと身体を反転させたのである。

 

右腕を構えた状態で

 

「ッ!?」

 

「お前、緑谷に『絶対勝つ』って言ったんだって?さっすがクラス一の実力者。絶対勝つだなんて言葉を真正面から相手に言えるなんてすげぇじゃねぇの。俺だったらよっぽど勝てる自信のある奴にしかそんな言葉言えないぜ?ほら、俺って小心者だしさ。

だから言わせてもらうけど

 

 

 

 

 

 

 

『今の』お前にだけは絶対に勝つぞ、轟。」

 

 

 

「ってぇわけで、ふきとべぇ!40%インパクト!」

 

そう衝也が叫んだ瞬間、彼の右腕から衝撃が放出される。

その瞬間、衝也に向けてはなった氷は粉々に砕け散る。

なまじ先に衝也に向けて氷を這わせたものだから衝撃から身を守るための氷を出すのがワンテンポ遅れてしまう。

ゆえに、轟はその衝撃により発生する波をまともに受け

 

「がッ…!?」

 

大きく数回バウンドしながら後方へと吹き飛んだ。

それを見た衝也は、一瞬、ほんの一瞬だけ表情を曇らせた後、

再び前を向いてコースを進み始める。

そして、ついに、この障害物競争の第一の関門が姿を見せた。

 

『さあ、障害物が出る前から白熱してたが!ここでついに障害物の登場だぁ!まずはて始め!この巨大なロボの大群をどう切り抜ける!ロボインフェルノぉ!』

 

「手始めがすでに手始めじゃねぇ!死人が出るぞこんな障害物!?」

 

プレゼントマイクの声に続くかのように衝也が前へと進みながらそう叫び声をあげる。

第一関門、ロボインフェルノ。

その名のとおり、無限のごとく続くロボの猛攻を選手たちがどう切り抜けるかが問われる関門である。

そのロボとはもちろん、入試で大活躍を果たしたあのロボたちである。

特に、0Pの巨大ロボなど数え切れないほどの数、出動している。

 

「ターゲット補足、攻撃開始!ニンゲンヨ、ワレラキカイノオソロシサヲシルガイイ!」

 

「ニンゲンハミナゴロシダ!」

 

「ヤキツクセ!イッペンノホネスラノコサズヤキツクセェェェ!」

 

「一体どんなデータがインストールされてんだよ!?ッと!!」

 

衝也の姿を補足した瞬間、物騒な言葉とともにミサイルやらなんやらの重火器を撃ちまくってくるロボ達。

そんなロボ達にツッコミを入れつつも衝也は重火器の嵐や、巨大なロボの拳を個性を使ってよけていく。

彼の個性、衝撃は足からも放出ができ、少し応用すればスーパーボールのような跳躍力

や機動力を得ることができる上に、空中を高速移動することも可能なのだ。

ロボの頭上や股座やわきの下など、攻撃の隙間を縫うようにロボの攻撃をよけながら衝也は先へ先へと進んでいく。

 

『おお!あのクレイジーボーイ、かなりクレーバーな動きでトップを独走中だぁ!後方との差もぐんぐん開いてくぅ!っと、ここで二位の轟も第一関門に到着だ!急げ急げ!もうすでに衝也はこの関門を超えちまいそうだぜぇ!?』

 

『前々から思っちゃいたが、五十嵐は個性の使い方がうまいよ。戦闘やそれ以外のことに使うときも含めてな。空を飛んだり、高速で移動したり、方向転換に使ったり、自身の個性のことをきちんと研究してやがる。こういう動きは、ちょっとやそっと鍛錬しただけじゃそう身に着くもんじゃねぇぞ…。一体どんな特訓してきたんだあいつは。』

 

実況と解説者の二人が感心したように衝也のことを話すのを聞いて、ほかの選手たちも負けじと進む速度を上げていく。

そんな中、轟はイラついているかのように小さく舌打ちをした後、少し屈んで左の手の平を地面へと着ける。

 

(くそ…だめだ、こんなんじゃ…だめだ、こんなんじゃ…!)

 

「くッそが!!!」

 

そう忌々し気につぶやいた後、左の手の平を勢いよく上にあげる。

その瞬間、

轟を補足していた巨大ロボやほかのロボ達が、一瞬にして氷像へと姿を変えてしまった。

 

『おおっと!ここで轟、大量のロボ達を大量の氷のオブジェへと変えやがった!あれだな、こいつの個性ずっけぇな!俺もこんなかっこいい個性がほしかった!』

 

プレゼントマイクがそういってる間にも轟は相変わらずイラついたような表情のまま凍らせたロボの足元をとおり、先に進んでいく。

 

「おい、アイツのおかげで隙間ができた!通れるぞ!」

 

それに追従するように、ロボを壊すことができずにいた選手たちが轟の作った道へと進んでいこうとするが、

不意に、その凍ったロボがぐらりと揺れたかと思うと、勢いよく地面に向けて倒れてきた。

 

「お、おい!やべぇぞ!倒れてきてる!早く逃げろ、下敷きにされんぞ!」

 

一人の生徒がそう大声で叫ぶものの、ロボは倒れるのをやめてはくれず、とうとう足元に選手がいるのにも関わらず重力にしたがい地面へと倒れこもうとする。

ビルよりもでかいロボの氷像に押しつぶされた人間がどうなるかなど、言わなくてもわかるだろう。

だれもが、その光景を想像し、目を逸らす中

 

「55%インパクトキック!!」

 

突然、そのロボの氷像がドバゴォォンという音と共に粉々に砕け散った。

その音と衝撃に近くにいた選手たちの何人かが吹き飛ばされたり、しりもちをついたりする。

そんな中、衝撃による砂埃が舞う中、そのロボを粉々にした張本人は、ゆっくりと地面へと足をつき、あきれた様に前方の方に顔を向けた。

 

「何とか、間に合ったか。ったく、あのハーフのイケメン野郎め、せめて忠告かなんかしろっての。これじゃあほんとに死人が出るぞ…!」

 

その張本人とは、先ほどまでトップを独走していた五十嵐衝也、その人だった。

焦っていたのかそれともいら立ちのせいなのか、忠告の一つもせずに進んでいった轟に苦言を漏らしている。

 

『おおっと、ここでまさかのトップが後退!轟の妨害により倒れてきたロボを粉々に打ち砕きやがった!なんてパワーだすげーなおい!』

 

プレゼントマイクが興奮気味にそう実況する中、先ほど下敷きになりかけた少年の一人、切島が走って衝也の方へと駆け寄っていく。

 

「衝也!わりい、助かったわ!サンキューな!」

 

「……」

 

「おい!?なんだよその『こいつかよ、だったら助けなくてもよかったなぁ』みたいな顔は!」

 

「切島かよ、だったら助けなくてもよかったなぁ…」

 

「声に出すなよ!?結構傷つくぞそういうの!」

 

「いやだって、お前身体硬化できるから助けなくても死なないじゃん?」

 

「そ、そりゃあまあ、そうだけどよ…」

 

「あーあ…ここまで来るのにめちゃくちゃ苦労したのにまさかの無駄足とか…ほんとありえねぇ。なんか一気にだるくなってきた…切島、とりあえずお前死んで詫びてくんない?」

 

「冗談だよな!?冗談で言ってんだよな!?」

 

頭をぼりぼりと掻きながら割とがち目なトーンと表情でそう言い放つ衝也に思わず詰め寄ってしまう切島。

そんな様子を、たすけられたもう一人の少年、鉄徹が不思議そうに見ている中、衝也は軽くため息を吐いた後、切島の方に人差し指を向けた。

 

「はぁ…まあいいや。切島、とりあえず俺行くわ。切島は俺のために缶ジュースとたこ焼きを買ってきてくれ。もちろんお前のおごりで。」

 

「絶賛競技に参加中だわボケ!って、あ、こら、人の話聞け衝也ぁ!くっそ、買うのは競技終わった後でだかんなぁー!!」

 

再び個性を使って上空を移動し始めた衝也の背中に向けてそう言い放つ切島を軽く見て笑顔を浮かべ、前方を突き進む。

 

(さって、予想外の出来事でちっと時間をくっちまった…あんまし轟との距離が開いてなきゃいいんだが…)

 

そこまで考えて衝也は一瞬表情を曇らせた。

 

(ん…待てよ?仮に俺が轟に勝ってとしても、それはあの人の頼みをかなえたことにはなんねぇよなぁ…。下手したらもっと意固地になってよりいっそう囚われ続けることになるかもしんないし…。でも、アイツこのままじゃきっと…)

 

なにやら難しそうな顔をしてうーん、と首を傾げる衝也。

考え事をしてても移動ができるのはなんというか、さすが衝也としか言いようがない。

だが、所詮は移動ができているだけで、決して周りが見えているわけではない。

なので

 

「まぁ…とりあえずはこの体育祭を全力で…バッハァ!!!??」

 

考え事をしていた彼の背中に後方から放たれた大砲の球がぶち当たるのもなんら不思議ではないのである。

 

「い、五十嵐さん!?すすす、すいません!?あの0pを倒そうとしたら、照準が五十嵐さんとちょうど重なってしまって…!?」

 

「おお、すごいじゃんヤオモモ。ロボを倒すと見せかけて衝也に攻撃とか。ヤオモモのそういうところ、ウチ結構好きだよ。」

 

「ち、違うんです耳郎さん!わ、私は故意に五十嵐さんを撃ち落としたのではなくて…!」

 

「どうせ考え事でもしてよそ見かなんかしてたんでしょ。それにほら、アイツも言ってたじゃん。これは戦争、情け容赦はいらないんだって。大丈夫、衝也はあれくらいじゃ死なないから…さ!!」

 

慌てふためく八百万をなだめながら耳郎は向かってきた小型ロボ、ヴィクトリーの攻撃をかわし、そのメカメカしい体にプラグを差し込み、自身の爆音の心音を内部に響かせて行動を停止させる。

そんな様子を見て八百万は少しばかり不安な様子を見せたものの、少しだけ笑みを浮かべて走り出した。

 

「わかりましたわ…確かに、今は五十嵐さんも、ほかの皆さまも敵同士、下手な同情や心配は、逆に皆様への侮辱になってしまいます!」

 

「そういうこと!もちろん、ウチラもだからね、ヤオモモ。」

 

「ッ!はい!」

 

そういって軽くウィンクをする耳郎をみて後を追うように八百万は笑みを浮かべて走り出す。

 

「それにしても耳郎さん。」

 

「ん?」

 

「よく見てるんですね。」

 

「……違うから、そういうんじゃないから。勘違いしないでよ。」

 

そういってプイと顔を前へとむけなおす耳郎。

しかし、彼女のコードは、まるで確信をつかれて焦っているかのようにしきりにプラプラと動いていた。

 

(…誰を、とは言っていないのですが。)

 

そういってくすりと笑う八百万の顔は、彼女には似合わないほど意地の悪い笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

衝也が八百大砲に撃ち落とされてからおよそ数分後。

レースも終盤となり、戦局は大きく揺れ動いていた。

第二関門のザ・フォール(蛙吹いわく大げさな綱渡り)

崖から崖へとつながれた一本の細い縄の道を通っていくという綱渡りだが、その高さが問題だ。

何せ底が見えない。

もし落ちたら確実に…なんてことが容易に想像できてしまうほどの暗さである。

加えて一本しかない縄も問題だ。

ルートはいくつかあるものの、もちろんルートが被れば何人もの人数の参加者が縄を渡ることになる。

もし一本の綱が途中で重さに耐えきれずぷっつりと切れたらどうなるか、それはご想像にお任せする。

ほかにも、縄の上での選手の妨害なども考えられるため、精神的には第一関門よりつらいものがあるだろう。

そして続くは第三関門、つまりは最後の障害物。

それは怒りのアフガン…名前は壮大だがつまるところ地雷が埋め込まれた地面を通るだけというものである。

だが、その威力はなかなかのものだが、良ーく見ればどこに地雷があるかわかるため、集中力と周りを見る視野の広さが大切になってくるものだ。

ここで今、まさに手に汗握る白熱の戦闘が繰り広げられていた。

大砲で撃ち落とされた衝也に代わってトップとなっていた轟だったが、ここで若干の失速。

そこをついて爆豪が爆破の衝撃を利用して衝也のように地面に足をつけずに移動することで地雷を気にせず前へと進んで轟と並んだのだ。

そこからは醜い足の引っ張り合いが二人の間で行われていたが…

ここで一つの変化が訪れる。

 

なんと、ここまで40位ほどに甘んじていた緑谷が、入口付近にあった地雷原をこれでもかと掘り起こしてかき集め、第一関門のロボから強奪した装甲と、大量の地雷による大爆発を利用して轟と爆豪を抜き去り、単身トップに躍り出たのだ。

 

『おおおおおおおお!!A組緑谷爆発で猛追っつーか…トップ二人を抜きやがったーぁぁぁぁ!!』

 

『うるせぇ…それと汚い』

 

大興奮のプレゼントマイクが唾をまき散らしながら実況を続ける中、爆発で空を勢いよく飛んでいた緑谷。

それを追って、今まで醜く争うだけだった轟と爆豪の二人がいったん争いをやめて緑谷を抜くことだけに集中する。

それを見たプレゼントマイクは共通の敵やら争いはどーたらだ云々カンヌン訳の分からないことを実況していく。

果たして第一種目の障害物競争のトップとなるのは一体誰なのか、観客全員が固唾をのんで見守っている中、

 

「ぬぐおおおおおおあああああああああ!!!」

 

突如コース全体を震わせるほどの大絶叫が聞こえてきた。

さすがに先頭の三人は必死すぎてその叫び声も耳に入っていないようだったが、後続を走っていた選手たちは何事かと目を向ける。

するとそこには

 

「せぇんとおは……どぅおこどぅわあああああああああああああああああああああ!!!!!!」 

 

『だ、だれだこいつぅぅぅぅぅ!!?』

 

ほこりまみれでぼさぼさな頭に焼けてボロボロな体操服、そして何より、若干狂気をはらませている血走った瞳。

どこから見ても危ないブツに手を出しているようにしか見えない少年が、猛スピードで後方から追い上げてきていた。

 

『おいおいおいおい!何かとんでもなくやばそうなクレイジー野郎が後方から怒涛の追い上げ!!つーかこいつ一体誰よ!?』

 

プレゼントマイクのツッコミが響いている間も、その少年はぐんぐんとスピードを上げている。

その少年はそのまま地雷原ゾーンへと突入するが、どうやら彼も爆豪のように地面に足をつけずに移動ができるようで、地雷を全く気にせず進んでいく。

だが、その速度は爆豪のそれよりもずっと速く、どんどんほかの選手たちとの距離を詰めていく。

そんな中、大体中位あたりで足元を気にしながらおっかなびっくり走っていた上鳴が、その少年の顔を見て驚いたように声を上げた。

 

「ったく…地雷原とか自衛隊かなんかかよ俺ら…って!あれ…おま、しょ、衝也!?お前、その恰好なんだぁ!?え、おまえ、一体何が…」

 

「どけよアホがあああああああああああああ!!」

 

「ゴフバァァ!!?」

 

ボロボロの衝也を気づかって声をかけた上鳴だったが

衝也はそんな上鳴を、まるで目の前を横切った蚊を払いのけるかのように握りしめた拳で彼の頬へとたたきつけた。

衝也の拳をまともに受けた上鳴はそのまま吹っ飛んでいき、直後大きな爆発音があたりに響き渡った。

 

『おわぁ…スパーキングキリングボーイの奴、瞬殺じゃねぇか…南無三…。ってそんなことより!そういえば見てないなって今更思い出したけど!ここでまさかの!まさかのだいぶ前の元トップ、五十嵐衝也が奇跡のカムバックだぁぁ!!なんだよなんだよ!イレイザー!お前のクラス熱いことばっかしやがるじゃねぇか!てぇか、アイツなんであんなにボロボロなわけよ!?』

 

『第一関門のときに、八百万が作った大砲の球をもろに食らったからだろ。つーか、よく大砲の球まともに食らって動けるもんだ…。タフな野郎だよ。』

 

『大砲!何それウケる!』

 

「うるせぇぞこのバナナ頭のでこひろしがぁ!!!こちとら死にかけとんじゃ!!バカにしてっとそのバナナの皮むしり取んぞごらぁぁぁ!!」

 

『え…あ、は、はい…』

 

『言われてるぞひろし』

 

『いや、おれひざし…』

 

鬼の形相で衝也に怒られたプレゼントマイクが一瞬たじろいている中、衝也はぐんぐんと後続の選手たちを追い抜いていき(目の前にいたテープと赤鬼は吹っ飛ばしたが)

ついに

 

「みぃつけたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

先頭集団の三人の背中をとらえることができた。

第一関門でどこからか放たれた副委員長の砲弾でボロボロになり、それでも何とか傷だらけの身体を引きずってここまで来た。

もう意地と執念と怨念とのみの力でここまで来た。

とはいっても、なまじ八百万には昼飯をたかってたりしていて借りがあるため、恨むわけにもいかず、だれを恨めばいいか迷いに迷った結果

 

 

 

 

俺に考え事をさせた轟が悪い!

 

 

 

 

 

という本人が聞いたら迷惑極まりない結論に至り

彼は意地と執念と『轟』への怨念のみの力でここに来たのだ。

そして、その怨念を向けるべき相手をやっととらえたのだ、ここで前に出ねば…

 

「ここまで来た意味がねぇんだよぉぉッぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

そういって足から放出する衝撃の出力を上げてスピードを底上げする。

そして、ついに、

 

轟と爆豪の間を潜り抜け、ついに

 

「これで、俺が…トップじゃぁぁああああああああ!!!」

 

「え…!い、五十嵐君!?」

 

「は…?」

 

衝也が彼らの間を通り抜けて頭一つ分抜けたあたりで、不意に上の方から声が聞こえた。

その声には実に聞き覚えがあり、衝也は思わず素っ頓狂な声を上げる。

彼の目に映っていたのは轟とその隣のいがぐり頭のみ

彼にしては珍しくそのうえにまでは視野がなかったのである。

 

そして、その予想外の声が衝也の耳に入った瞬間

 

「フゴブッ!!?」

 

彼の顔に分厚い鉄板がたたきつけられた。

そしてその直後

 

カチ

 

という音が四人の耳に響いてきた。

 

「「「あ…」」」

 

「……」

 

その時、衝也は頭の中で今までの人生の様々な走馬燈が走っていき、最後に一言、こう心の中でつぶやいていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺が一体何をした?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、地雷のアフガン

その場所に、

一つの爆発音が響き渡った。

 




あれですね…体育祭大変ですね、書くの。
ただでさえ駄文なのにいつもの5倍くらい駄文になってやがる。
もう読めたもんじゃねぇ。
なのにそれを投稿するとは…。
私も…堕ちたものだな…。









素直に謝ります、すいません…
転職を真剣に考えるか…

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