救える者になるために(仮題)   作:オールライト

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やっとUSJ編が終わり、ついに体育祭!
なんですけどね…まあ番外編はつけないと
物語上においても必要なことなのです。
あと、私の息抜き。脳無倒すのにHP使いすぎました。
てなわけで短いですけど番外編その…2か
どうぞ





幕間 その2
有無を言わさず無理やり入院させられるのは人権侵害に当たるのか否か


USJで起きたヴィラン襲撃事件

その場にいた生徒と後から来たプロヒーローたちによって何とか潜り抜けることができたこの事件は、事件に関与したヴィランおよそ72名を検挙、

しかしながら襲撃の主犯格を取り残してしまうという失態も残してしまうこととなった。

現場に居合わせたプロヒーローは、イレイザーヘッドと13号の二名。

そのうち、13号は背中から上腕にかけての裂傷はあるものの命に別状なし。

イレイザーヘッドのほうは、両腕を粉砕骨折していたり顔面を骨折していたり、商売道具でもある眼に重傷を負ったりはしたが、幸い命に別状なしということになった。

生徒たち全20名も、約一名両足骨折はしているものの、特に目立ったケガもなく無事警察に保護された。

…約一名を除いて

 

「リカバリーガール、俺の聞き間違いでしょうか?今貴方…乳輪って言いました?」

「それは普通に聞き間違いだね…。私が言ったのは乳輪じゃなくて入院だよ。」

 

その約一名とは、この事件最大の功労者にしてこの事件で相沢と同等の重傷を負った、五十嵐衝也である。

敵の最大戦力と思われる怪人を見事撃破し、生徒たちの命を守り通した彼は、その代償としてみるのも痛々しいほどの深い傷を負ってしまったのだ。

そんな彼が今いる場所は、リカバリーガールの保健室。

保健室のベッドで横たわっている彼は身体中に包帯がまかれており、かろうじて掌が見えているような状態だった。

あたりはすでに赤い夕陽に照らされており、事件直後まで保健室で治癒を受けていた緑谷やオールマイトも今は各々の家に帰ってしまっている。

そんな時間になぜ彼がここにいるのか…それは単純に、いま先ほど衝也は意識を取り戻したからである。

無事事件が解決し、友が皆無事だったことを確認することができた衝也は、安心して今まで張りつめていた緊張が解けてしまったかのように意識を失ってしまったのだ。

そのせいで、彼を必死に支えていたロッキングガールや暑苦しい赤鬼達は軽くパニックに陥り、赤鬼に至っては警察官の胸倉をつかみ、必死にリカバリーガールを呼んでくれぇ!と叫んでしまうこととなったが…。

ちなみにこの話を聞いた衝也は後で警察の方々と赤鬼達にお礼を言っておこうと思ったとか思っていないとか。

そして、ほどなくして彼はリカバリーガールの保健室のベットの上で目が覚め、開幕早々入院宣告を受けたというわけである。

 

「あ…なんだ、聞き間違いか…よかったぁ。起きて早々『まったく、とんでもない無茶したもんだねぇー、アンタ…乳輪だよ』って言われたからちょっと焦っちゃって。いきなりなんてドギツイ下ネタぶっこんでくるんだこのBBAとか…ぶっちゃけお前の乳輪のほうがやべぇだろとか思っちゃいましたよ。」

「お前さん、よく本人を前にしてそんなこと言えるね…勝手に聞き間違いしといて。」

 

思わずといった風に安堵のため息をはく衝也に対してリカバリーガールの表情はあきれ顔である。

衝也はそんなリカバリーガールの目の前で軽く額から流れ出た汗を拭こうとして、

 

「ん?ちょと待てよ…入院…入院!!?」

 

慌てたようにベッドに横になっていたその体を勢いよく起こした。

 

「っ!!?ぬっぐぐっぐぐ…!」

 

すぐに体中に走った激痛で悶絶し微動だにしなくなった。

そんな様子を見ていたリカバリーガールはあきれた様子でため息をはき、ゆっくりと視線を衝也の身体のほうへとむける。

 

「あんまり動くんじゃないよ…傷に響くからね。というより、よくもまぁそんな重傷な体で動き回れたもんさね。普通ならとっくに意識が飛んでてもおかしくない、ここに来る前まで意識があったなんていまだに信じられないよ。」

 

そう言ってリカバリーガールは軽く肩をすくめた後、カラカラと座っていた大きい椅子を動かして自身のデスクにあるパソコンをいじくり始める。

そんなリカバリーガールに、衝也は苦悶の表情を浮かべながらも必死に訴えかける。

 

「いや、で、でも…ここにいるってことは、俺は貴女の治癒を受けたってことじゃないっすか…なんでわざわざ入院なんざ」

「右腕複雑骨折」

「…?」

 

衝也のその問いかけを無視したリカバリーガールは、パソコンをいじくる両手を止めないまま、淡々と口を動かしていく。

 

「左腕骨折、両足の骨にもヒビ、肋骨8本の骨折、消化器管の損傷、頭部損傷、おまけに衝撃波で全身裂傷と打撲だらけ。怪我の一部を上げるだけでも気が遠くなってくるよ。こんだけの怪我すべてを治癒だけで治せるもんかね。体力がいくらあったって足りゃしないよ。」

「…寝袋先生のですか?」

「アンタに決まってるだろ話聞いてたのかい。」

 

信じられない!という顔を浮かべている衝也の言葉に思わず動かしていた手を止めて突っ込みを入れてしまうリカバリーガール。

そんなリカバリーガールの言葉を聞いた衝也は一瞬呆けた顔をしたかと思うと急に笑顔を作り、その顔をリカバリーガールのほうへとむけた。

 

「ま、またまた御冗談を…。そんなに重傷な怪我は負っておらんでしょー…俺、自慢じゃないですけど結構動けてましたよ?そりゃ、骨にひびくらいは入ってるかなぁ、とは思ってましたけど、まさか入院なんて…」

「大切な私の生徒に嘘なんか教えるかね。ましてや本人の怪我の状態なんだから。」

 

そういうリカバリーガールの顔は真剣そのもので、その顔を見てようやく衝也は彼女の言葉が嘘でないことを確信する。

そして、ゆっくりと視線を自身の右腕へとむける。

その神妙そうな面持ちを見て、リカバリーガールはくるりと椅子を回して顔を後ろへ向けた。

 

「その右腕、アンタの残ってた体力のほとんどを使って修復させたよ。右腕は…正直残ってたのが奇跡みたいなもんさね。実際現場を見に行ったが…衝撃吸収の個性相手に衝撃を当ててなおあの威力だとしたら、その威力はオールマイトの100%以上。そんな規模の衝撃を放ってたら、普通は反動で腕そのものが爆散しててもおかしくはない。そのゆがんだ右腕は、アンタの行動が生んだ結果さね。」

 

彼の見つめる右腕、その右腕は動かすことも拳を握りしめることもできる…が

歪にゆがみ、傷を残してしまっているその右腕は最早普通の右腕ではない。

その傷は、仲間を助けるためとはいえ自身の身体を酷使しすぎてしまった衝也をまるで責め立てているかのようだった。

 

「戒めにしとけってことですか?ほかならぬ自分自身の…。」

 

顔を俯かせたまま、視線を右腕に送り続けていた衝也はリカバリーガールにそう言葉を投げかける。

その言葉を聞いたリカバリーガールは、しばらくの間何も言わないでいたが、不意にその口をゆっくりと開き始めた。

 

「…アンタの行動は、現役のプロヒーローたちから言わせてみれば、無謀以外の何物でもないよ。個性の相性が悪かったり、実力差があまりにも開いていた場合は、抗戦するよりも一旦退いて応援を呼ぶのが鉄則。アンタたち生徒たちのようなヒーローですらない卵たちなら、なおのこと応援を呼ぶほうが賢明だ。アンタだって、それがわかっていたからこそ、飯田や上鳴たちを脱出させて、応援を呼ぶよう指示したんだろう?…アンタが、そこまで自分を犠牲にせずともすむような結末だって、あったかもしれない。」

 

そういって、リカバリーガールは再び椅子を回して、衝也のほうへと顔を向ける。

実際、ほかならぬ衝也自身が応援を呼ぶ機会はあった。

脳無によって外にまで吹っ飛ばされたあの時、あそこで動けていたのならば、再びUSJに戻らず、一旦学校まで戻ってプロのヒーローたちを呼んでいれば、自身の身体を傷つけずに事件を解決することもできた『かも』しれない。

そんなリカバリーガールの言葉を聞いた衝也は、しばらく自身の右腕に視線を向け続けた後、ゆっくりと、口を開いた。

 

「確かに、俺の行動はプロのヒーローたちからしてみれば無謀な行動なのかもしれない。実際、俺一人が敵と戦ってるんだったら、応援を呼ぶことだって考えたかもしれません。…けど、あの時

 

俺は一人じゃなかったんです。」

 

そういって衝也はそのゆがんだ右腕を固く、固く握りしめる。

 

「友達が、いたんです。俺にとって大切な、失いたくない、とっても大切な友達が。その友達が、目の前で殺されそうになってるのに、『個性の相性が悪いから』だとか、『自分より相手のほうが強いから』だとか、『自分じゃなくても、ほかのだれかが助けてくれるから』だとか、そんな自分に都合の良い言い訳並べてその場から逃げるなんて、そんなことしたくなかったんです。目の前に救うべき人たちがいるのに、そんな都合の良い言い訳を言ってその場から退くのがヒーローとして正しいことなんだとしたら、俺は…ヒーローになんかなれなくったっていい。」

「……」

「だって別に、ヒーローじゃなくったって、だれかを救うことはできるんだから。

ヒーローだから、人を救うんじゃない。人を救うからこそ、その人たちはヒーローと呼ばれるんです。俺は、職業としてのヒーローではなく、だれかを救えるヒーローになりたいんです。それはきっと、失うことのつらさを知っている者にしかできないことだから…。」

 

そういって衝也は握りしめていた拳をゆっくりと元に戻し、二カッ!といつものような笑顔をリカバリーガールのほうへとむけた。

 

「この右腕は、あなたの言う通り戒めとして受け取っておきます。この先、もっともっと力をつけて、たくさんの人を救えるような者になれるように。」

 

「今みたいにすーぐボロボロになるんじゃ話になんないっすからねぇ…。」と苦い顔をしながらぼやく衝也。

そんな彼を見つめていたリカバリーガールは優し気な笑みを浮かべるものの、その表情をわずかに曇らせた。

 

(この子の信念、思いは確かに素晴らしいものさね、ヒーローが公務と化し、徐々に飽和しているこの時代で、この子のような信念を持ち続けている人間はそう多くはない。けど…この子の『誰か』には、きっとヴィランは含まれてはいないんだろうね…)

 

くるりと、椅子を回して顔を衝也から逸らしたリカバリーガールはゆっくりと視線をしデスクにあるパソコンの画面へとむける。

 

(この子の心に秘めてあるその信念は、彼が『失った』からこそ持つことができたもの。大半の人間はそのような信念を『描く』ことはできても『抱く』ことはそうはできない。けど

彼の持つ憎悪もまた『失った』からこそ持つことができたもの。その深く、暗い憎悪は、ちょっとやそっとじゃ取り除くことはできない。

何かを『失う』ことによって得ることができた信念が正義()へと変化していくように『失う』ことにより植え付けられた憎悪は、そのまま悪意()へと変化していくのだから。その闇を取り除くには、)

 

「結局のところ、自分次第さね…。他人がいくら言葉を紡いでも、光も闇も、取り除くことはできない…。きっかけには、なるかもしれないが…。」

 

小さくつぶやいたリカバリーガールはちらりと横目で衝也を見る。

リカバリーガールにみられてることにも気づかない衝也は軽く右腕を動かし「む、この右腕、動くな…。これは…頑張れば筋トレとかできそう…?」と物騒なことをぶつぶつとつぶやいている。

 

「願わくば…この子の光が、いつかその闇をかき消してほしいものさね…。」

 

そういってリカバリーガールはパソコンの電源をプツリと切り、身体の動かせる部位をしきりに探している衝也に向けてあきれたような顔を向けた。

 

「おっ!両足も痛いけど何とか動かせそう…ということはめちゃくちゃ頑張ればスクワットとかもできそうだな。なんだ、怪我してても案外鍛えることできるな…」

「…言っとくけど、動かせるからってむやみやたらに動かしまくったら怪我が悪化するからね。しばらくは身体を動かすのは禁止だよ?」

「!なん…だと…!?」

 

リカバリーガールのその言葉に両足をピクピクと動かして笑顔を浮かべていた衝也がまるでこの世の終わりを見たかのような表情を浮かべる。

そんな衝也の表情を見てリカバリーガールはさらにあきれたような表情を浮かべてため息をはいた。

 

「当り前さね…何のために入院すると思ってるんだい?身体の傷を治すためだよ?その傷が治るまでは絶対安静さね。」

「そんな殺生な!俺は、個性のデメリットに耐えうるためにも!トレーニングは毎日欠かさず行っているんです!それなのに…それを取り上げるなんて!」

「入院するっていったって、体力さえ元に戻ればまた私が直せる。長くても一週間かそこらで退院できるから、それまでは身体を鍛えるのは禁止さね。」

「じゃあ個性を鍛えるのならいいと!?」

「人の話聞いとるのかい?だめに決まってるさね」

 

筋トレがだめなら個性のトレーニングならどうだぁ!とばかりにそう言い放つ衝也の言葉をバッサリと切り捨てるリカバリーガール。

そんなリカバリーガールの言葉を聞いた衝也はがっくりとうなだれる。

 

「そんな…日課のトレーニングを取られたら俺は入院中何をしていればいいんだ…?」

「身体を休めな、それが入院の目的でもあるんだから。」

 

何言ってんだこいつ、みたいな表情を浮かべるリカバリーガールは片手をこめかみにあてながらため息をはき、軽く思案した後口を開く。

 

「たまには身体を休めて趣味にでもいそしんだらどうだい?アンタ、休日は何してるんだい?」

「トレーニングです。趣味もトレーニングです。後は料理とか、掃除とか、家事全般を…」

「主婦かいアンタ…」

 

うなだれながらそういう衝也の言葉に思わずダンベル片手にエプロンつけて料理をする衝也の姿を連想してしまうリカバリーガール。

そのあまりのシュールさに軽く顔を引きつらせてしまいそうになるが、それはさすがに衝也に失礼なので何とかこらえる。

 

「後は…音楽を聴くとか?ヒップホップとかロックとか演歌とか聞いたり」

「それを先に言いなよ。じゃあ入院中歌でも聞いてな。」

 

そういってやれやれというふうに首を振るリカバリーガール。

そんな彼女を見て衝也はげんなりとした様子でリカバリーガールの方へと視線を送る。

 

「…なんですかその、聞き分けのないガキだねー、みたいな反応…。」

「似たようなもんだろうに、ああいえばこういって…」

「ていうか!そもそも俺は別に入院したいとか!そんなことも一言も言ってはいないわけで!こうやって半ば無理やり病院へぶち込まれるあたり横暴だと思うのですが!?」

「けが人はおとなしく医者のいうこと聞いてればいいんだよ。」

「横暴だ!?ていうかアンタ医者じゃなくてヒーローじゃん!?」

「何言ってんだいこう見えて医師の免許は持ってるんだよ?手術だってできるさね。」

「このBBA抜かりがねぇ!?」

「それに、ご家族の了承もきちんと得ているしねぇ。『家の息子をどうかよろしくお願いします』だってさ。いい親御さんじゃないか?もう病院でアンタが来るの待ってるみたいだよ?」

「マジで抜かりがねぇ!もう入院しなきゃいけない流れになってる!?」

「というか、本気で入院拒否する腹づもりだったんだねぇ、その怪我で…。そっちのほうが私驚きだよ…。」

 

こうして、衝也の入院が決定する。

そして、衝也はこの入院で知ることとなる

とある少年の抱える苦悩を

 

 

 

 




なんか、こういった場面は特に駄文になってしまいますね…
まぁ、ほかの部分は良いのかと問われると汗しか流れ出てこないですけどね!

番外編、あとどれくらいで終わるかなー
早く体育祭編書きたいです。

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