救える者になるために(仮題)   作:オールライト

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評価に色がついていた!しかも緑や青じゃない!
こんなの初めてです!嬉しい!
てなわけで九話です、どうぞ。


第九話 ワンパンで終わる主人公なんてそうはいない

衝也の放った衝撃波により発生した砂埃が少しずつ少しずつ晴れてきたセントラル広場。

その広場の水辺の中にいる緑谷・蛙吹・の二人は目の前でむせこんでいる衝也に近づいて行った。

 

「五十嵐君!一番に飛ばされたから心配だったけど、無事だったんだね!よかった…」

「ゲッホゲッホ!ま、まあな。敵もそんなに強くない雑魚だったし、そこまで苦戦せずに済んだ。」

「五十嵐ちゃん大丈夫?苦しそうだけれど。」

「いや、ゲッホ!これは砂が喉にへばりついてゲッホ!」

「見ればわかるから大丈夫よ。」

 

鼻から水を垂れ流し、口から唾を吐き散らし…と、せっかくかっこよい登場の仕方っだったのに、その汚らしい姿がそれをぶち壊しにしていた。

そんな衝也を相変わらずの無表情で見つめている蛙吹とそんな彼女に「だったら言うなよ!」と恨めし気に声を張り上げ、またゲホゲホとむせてしまい、緑谷が心配そうに衝也の顔を覗き込んだ。

 

「だ、大丈夫?水汲もうか?」

「そうね、とりあえず水を飲んで喉にある砂を流しちゃいましょう。緑谷ちゃん、お水を汲んであげて。」

 

蛙吹がそういうのを聞いて、緑谷は自分が浸かっている水辺の水を両手ですくおうとする。

それを見た衝也は途端に青い顔をして、ブンブンと首を横に激しく降り始めた。

 

「ちょッ!?それは勘弁してくれよマジで!!ほら、取れた!もう取れたから!その水をこっちに近づけないでくれ!」

「えぇ!?な、なんでそんなに嫌がるの…。」

「五十嵐ちゃん、緑谷ちゃんは貴方のために水を汲もうとしていたのよ?その態度は失礼すぎるわ。」

「いやいや、当然の反応だぞこれは!ていうかお前らもいつまでもその水に浸かってるなよ!後ろ見てみろよ後ろぉ!」

「「後ろ?」」

 

衝也のその必死な叫びを聞いて興味がわいたのか、がっくりと落ち込んでいた緑谷もプンスコ怒っていた蛙吹も同時に後ろを振り返った。

そこには、眉毛一つ動かさず、ただただ真顔でその場に立っている1-A最強の思春期男子、峰田実がポツネーン…とたたずんでいた。

 

「後ろって、後ろには峰田君しかいないけど…」

「五十嵐ちゃん、いくら峰田ちゃんの事があまり好きじゃないからって言い訳に使おうとするのは流石にひどいと思うわ。」

「いや、だって峰田の奴、さっきこの水の中に思いっきりションベン漏らしてたぞ…!?」

「え、えぇぇぇえ!?」

「ケロッ!?」

 

峰田の水に浸かっている下半身に指を向けながらそう叫んだ衝也の声を聴き、先ほどまで肩を落としていた緑谷も、怒り顔で衝也を問い詰めていた蛙吹も慌てて今いた水辺からバシャバシャと音を立てて広場の方に上がっていった。

(峰田が漏らした場面がわからない人は第八話をよく見てみよう!)

 

「ちょ、ちょっと峰田君!?も、漏らしたんなら漏らしたって言ってよ!そ…そりゃ恥ずかしいかもしれないけどさ!!」

「峰田ちゃん…最低よ。」

 

水から出た緑谷は驚いたような、悲しいような、何とも言えないような表情を浮かべながら叫んでおり、蛙吹に至っては水道の三角コーナーに捨ててある生ごみを見るかのような眼を峰田に向けていた。

二人にそう言われた峰田は顔を緑谷と蛙吹と衝也、三人を転々と見続けた後、じわじわとその両目を潤ませていった。

 

「う、うるせぇなぁ!しょーがねぇだろぉが!!こちとらおめぇら二人が死んじまうかもしれねぇってめちゃくちゃビビったんだからな!!小便だって漏らすに決まってんだろぉ!?衝也が来なかったらおめぇらほんっとにやばかったんだからなぁ!?」

 

ついには目から噴水のように涙を流し始めた峰田を見て、緑谷と蛙吹はハッとしたような表情を浮かべた後、神妙な面持ちで顔をうつむかせた。

峰田の言う通りもしあそこで衝也が来てくれなかったらどうなるかはわからなかった。

 

(ううん、『わからなかった』じゃない。おそらく、いや、『確実に』殺されてた…!峰田君はそれを目の前で見ていたんだ。そりゃ、ビビるに決まってるよな…。)

 

もし自分の目の前で友達が殺されそうになっているのを見ていたら、自分も思わずちびってしまうかもしれない。

自分に迫る死とはまた違った、友に迫る死。

それは、恐らく自分に迫る死と同等の、人によってはそれ以上の恐怖を植え付けられてしまう。

その恐怖を峰田は肌で感じたのだ、ビビるのだって無理はない。

衝也は、いまだ涙を滝のように流し続ける峰田をじーっと何かを考えながら見つめ続けていた。

 

「ま、とりあえず早くそこからあがれよ峰田。そんなところにずっといると、正直色々やばくなるぞ。」

「わ、わかってらぁ!」

「あ、やっぱそのままでいいや。こっち近寄んないでくんね?」

「え」

 

涙をゴシゴシと拭いて水辺からあがろうとした峰田だったが、衝也の割とガチ目な表情と共に放たれたかなりガチな言葉に思わず固まってしまう。

その間にも衝也はススス…と峰田から距離をとっている。

 

「じょ、冗談だよな?」

「上がってくんな沈めんぞ。」

「……」

 

恐る恐る聞いてみた峰田に返って来た言葉は無情にも上がるどころか仲間に沈められるかもしれないというあまりにもひどすぎる物だった。

それを見ていた緑谷は「と、とりあえず上がってもらおうよ。峰田君も風ひいちゃったら困るしさ!」と苦笑いをしながら衝也をなだめる。

衝也は緑谷のその話を聞き、「んー、緑谷がそう言うなら…」としぶしぶといった形で峰田が上がるのを了承する。

どうやら結構本気で言ってたらしく、思わず緑谷も若干固まってしまったが、気を取り直したように峰田の方へむき、申し訳なさそうに顔をうつむかせた。

 

「ほ、ほら!大丈夫峰田君、動ける?」

「み、緑谷、お前…こんな小便にまみれたオイラに手を伸ばしてくれるのか…?」

「ひ、卑屈すぎる…。ていうか、そういう生々しいこと言わないでよ、匂わないはずなのに匂ってきちゃうように感じるじゃないか…。」

 

若干顔色を悪くした緑谷だったがそれでも苦笑いしながら峰田に手を伸ばす緑谷。

峰田はその手を握りしめ、「面目ねぇ…」と呟いた後、やっとこさ水の中から出てくることができた。

軽く体を震わせ、「はっくしょん!」と大きくくしゃみをした峰田は寒そうに軽く体をさすり始めた。

そんな彼を、蛙吹は神妙な面持ちで見つめていたが、不意に峰田に声をかけた。

 

「峰田ちゃん…。」

「ん?何だよ蛙吹。」

「ごめんなさい。」

「へ?」

「貴方の気持ちも考えずに最低だなんて言ってしまって…。私も目の前でお友達が殺されそうになったら、きっと怖くて泣きそうになってしまうもの。」

「いや、オイラは泣いたどころか漏らしちまったんだけど…。ま、まぁとりあえずあれだな!これでお前もオイラに負い目ができたわけだし、おっぱい揉んだのはこれでチャラってことで」

「許さないわ。」

「え」

「絶対に許さないわ、絶対に。」

「…」

 

蛙吹の無表情にも関わらず威圧感を感じるその顔に思わず言葉を失って震えてしまう峰田。

衝也もそんな峰田を道端に落ちている犬のふんを見るかのような眼で見つめていた。

その様子を見ていた緑谷は思わず苦笑いをしてしまうが、ふと慌てたようにまわりを見渡す。

 

「!そ、そうだ!こんな呑気なことしてる場合じゃない!ヴィ、ヴィランはどこに!?相澤先生は!?は、速く相澤先生を連れてここを脱出しないと…!」

「とりあえず落ち着けよ緑谷。一辺にそんな考え事しても頭がパンクするだけだ。一つ一つゆっくり考えて消化していこう。」

「あ、う、うん!」

 

アタフタしながらキョロキョロまわりを見渡していた緑谷の肩に置き、真剣な表情で落ち着くよう諭した。

それを見た緑谷は一瞬驚いたような表情を浮かべたが、大きく頷いたあと目を閉じ、徐々に心と頭を落ち着かせていった。

 

「落ち着いたか?」

「う、うん!さっきよりはだいぶ。」

「蛙吹と峰田は?」

「問題ないわ。」

「お、オイラも!しょ、正直まだビビってはいるけど…」

 

冷静で無表情な蛙吹とは逆に、軽く体を震えながら顔をうつむかせる峰田だったが、そんな彼を励ますように衝也は口を開く。

 

「ビビるのはしょうがねぇよ、命がかかってるんだからな。これでビビらないのなんて爆豪か轟くらいだろ。とりあえずでも落ち着ければ十分以上だ。さて、とりあえず最初はねぶく…相澤先生の事なんだが」

「間違えたわね…」

「うるさいな…とりあえず相澤先生のことは大丈夫だ。そろそろ来る。」

「へ、来るって…!?」

 

衝也の謎の発言に緑谷が首を傾げて呟いたその瞬間

ドッボーン!という音が彼らのすぐ近くの水辺から聞こえてきた。

その音と同時にそれなりに大きい水の柱ができ、辺りに水しぶきが飛んできた。

いきなりの事に敵襲かと思った緑谷たちは、思わず身構えてしまう。

しかし、衝也だけは驚いた様子もなく軽く首を一周回した。

 

「な!て、敵!?」

「空から降って来たぜおい!?」

「いや、敵じゃねぇよ。」

「敵じゃないの?」

 

衝也の言葉を聞いて不思議そうに首を傾げた蛙吹に、衝也は自分の背後を親指で振り返らずに指さした。

 

「ここに来る一瞬の前にボッコボコにされてる血だらけ寝袋先生を見つけてよ。助けられれば良かったんだが、いかんせんお前らもちょいとやばそうな雰囲気だったもんでな、とっさに飛ばしたんだ。衝撃に巻き込まれる可能性もあったし。」

「「「飛ばした?」」」

「おう、飛ばした。」

 

どや顔で不吉すぎる言葉を口にした衝也を見て、思わず緑谷達三人は不安そうに聞き返してしまう。

その三人の不安そうな表情を見ても顔色一つ変えずに言い放った衝也の一言で、三人の頭の中にあった一つのいやな予感が浮かび上がってくる。

まさか、いくら衝也でも重傷を負っている人間にそんなことするはずがないだろう!と自分たちの頭によぎった嫌な予感を振り払おうとする三人。

そして、恐る恐る後ろを振り返り、先ほど何かが落ちてきた水辺に視線を向けた。

先ほど彼らが居た水辺は、落ちてきたものの衝撃で水面にそこそこ大きな波ができており、かなり大きなものが落ちてきたのであろうことが想像できた。

波によって揺れている水面をじーっと見続けている衝也達だが、ふと、その水面に黒い影ができた。

水面にできたその影は徐々に徐々に大きくなってきて、その影ができていた水面から

傷だらけの相澤先生の背中がプッカリ浮かんできた。

 

「って…五十嵐おめぇ何やってんだぁぁぁぁああああ!!」

「あ、相澤先生ーー!?」

「ケロ!」

 

大声で叫びながら衝也の脛辺りに思いっきり蹴りを入れる峰田とその横で青い顔をして相澤先生の名前をこれまた大声で叫ぶ緑谷。

緑谷の叫びもむなしく、全く反応を示さずにプッカリプッカリ浮かび続けている相澤を緑谷の横にいる蛙吹が慌てて舌を伸ばして救出する。

ちなみに峰田の蹴りをもろに脛に喰らった衝也は「いっでぇ!?」と脛を抑えてしゃがみこんでいた。

 

「安心して、息はしてるみたい。」

「ホント!?よ、よかったぁ…!」

「五十嵐ぃ!おめぇなんで重傷の人間に鞭打つような事するんだよ!?下手すりゃ息できずに溺死してたぞあれぇ!?」

「いや、だってさすがに着水の姿勢までは決められないし…しょうがないじゃん。」

 

蛙吹の言葉を聞いて割と本気で安堵の息を吐いた緑谷の横で、衝也は珍しく峰田に正論で怒られており、少し顔を後ろに引いて気まずそうな表情を浮かべていた。

そんな衝也に、先ほどまで相澤の容態を確認していた蛙吹がプンスコモードで衝也に詰め寄って来た。

 

「五十嵐ちゃん、相澤先生を飛ばしたってどういうことなの!?」

「え、いや、その衝撃でその、ポーンと」

「相澤先生はさっきまで私たちを守るためにボロボロになるまで戦っててくれたのよ?その先生に対してなんでそんなことしたの?普通に抱えればよかったじゃない。」

「そりゃ俺だってそれができたならそうしたさ。だけど、ヴィランの人数と位置と時間と俺の位置と距離とその他諸々を考慮したらどーしたって両手での攻撃が必要になってくる。だから寝袋先生には悪いけど、衝撃を利用して先生を水辺の方まで投げ飛ばしたんだよ。そっちの方が俺の衝撃の余波にぶち当たっちまった時よりも体の負荷が軽くなるしさ。」

「ケロォ、言われてみれば確かにそうだけど…」

 

怒り顔で詰め寄って来た蛙吹に努めて冷静に自分の見解と行動の理由を述べる衝也。

確かに、衝也は先ほどの攻撃の際両手を使っていたし、その余波も凄まじい物だったので彼の言うことに間違いはない。

ましてや蛙吹達は彼が迷わずに相澤を飛ばしてくれたおかげでこうして命がある状況であるため、まさにぐうの音もでない状態である。

 

「と、とりあえず、先生も僕たちも無事なんだし、結果オーライってことでいいんじゃないかな!?」

「そうね、緑谷ちゃんの言う通りだわ。ごめんなさい五十嵐ちゃん、命を助けてもらっていながら厚かましいことを言っちゃって…」

「いや、蛙吹のいうことだってもちろん正しいよ。後で先生にもきっちりかっちり謝っとくさ。」

「てか、その『後』があるのかどーかも怪しいんじゃねぇかオイラ達。」

「た、確かに…。」

「ケロ…」

 

珍しくまともなことを言った峰田の一言で、暗い表情を浮かべる緑谷と、不安そうな鳴き声を上げる蛙吹。

峰田の言う通り、今生徒たちはUSJに閉じ込められ、助けも来ないような状況で敵と戦わなければならない。

プロヒーロであるイレイザーヘッドも、もはや動けるような状態ではない。

むしろ生徒が担ぐなりなんなりして運ばなければいけないのだ。

 

「相澤先生も担いでなおかつ助けも来ない状態で目の前の敵と戦わなきゃならない…そう考えると今のこの状況はかなりやばい状況なんじゃ…」

 

顎に手を当てながら思考を巡らせる緑谷は、今の自分たちの置かれている状況のやばさに少しばかり表情を曇らせた。

そんな彼の言葉を聞いた峰田と蛙吹も同じように表情を曇らせたが、衝也だけは表情を崩したりせずに、皆を安心させるように声をかけた。

 

「大丈夫だって。流石に直接衝撃をぶち込むことはできなかったが、その代わり出力65%の衝撃波であいつらを吹っ飛ばしたんだ。少なくともこの辺にはもういないだろうし、仮に居たとしても動けるような状態ではないだろうよ。」

 

衝也の個性『インパクト』の威力は凄まじく、出力半分程度でビルよりも大きいロボットを粉砕できるほどの威力を出すことができる。

その出力の半分以上の衝撃波で吹き飛んだとしたら、常人ではまずその衝撃に耐えられずに意識を手放すことだろう。

先ほどの轟音と砂埃と強風が、その威力をわかりやすく物語っている。

実際辺りに人の気配は感じられず、先ほどまで感じていた敵意や殺気も感じられなかった。

 

「確かに、あの威力の衝撃波で吹き飛ばされたらそう簡単に動けはしないかも…。」

「本当なら直接衝撃ぶち込みたかったんだけどな。あいつらのお仲間さんの話では、あの三人がオールマイト殺しの実行犯だって話だったし。」

 

倒れている相澤先生を「よっこらっしょ」という掛け声と共に肩に担ぎながら若干悔しそうに緑谷のつぶやきに言葉を返す衝也。

そんな衝也の後ろで担ぐのを手伝っていた蛙吹は、励ますように衝也の背中に手を置いた。

 

「仕方がないわ、誰かを助けなければならないあの状況でさすがにそこまでの事は出来ないもの。むしろ、敵を倒すことより私たちの命を優先してくれたことに感謝してるわ。」

「ん、まぁさすがにそこで敵をぶっ倒すこと優先するほどクズじゃねぇからな…。それに…!?」

 

どこか照れくさそうに指で頬を搔いていた衝也だったが、不意に頬を搔いていた指を下ろし、表情を真剣な物へと変えていった。

その様子を見て峰田は、何かあったのかと恐る恐る辺りを見渡した。

蛙吹と緑谷も何かあったのかと衝也の顔を不思議そうに見つめる。

 

「お、おい急にどうしちまったんだよ五十嵐…そんな怖えぇ顔して。」

「…普通、あの衝撃波に耐えられるような人間はそうはいないんだがな。腐ってもヴィランの親玉、普通の人間じゃねぇらしい。」

 

ゆっくりと顔をセントラル広場の中央へと向けていく衝也。

そんな彼につられて、緑谷たちも衝也と同じ場所へと顔を向ける。

そこには

ヴィラン連合のリーダー死柄木弔が、黒い霧の中から這いずるように出てきていた。

 

「「「!?」」」

 

その姿を見た緑谷たち三人は、予想外の敵の登場に思わず身構えてしまう。

死柄木はドサリ、と黒い霧から地面へと倒れ込むように出るとゆっくりと体を起こし始めた。

 

「ってぇ…。くそ、ガキが…。」

「大丈夫ですか死柄木弔?」

 

黒霧が心配そうに声をかけて近寄るが「うるさい、大丈夫だ。」と死柄木は彼を手で払いのける。

そして、顔をうつむかせたままガリガリと首元辺りをかきむしり始めた。

 

「くそ、くそ!あのガキ、調子に乗りやがって!何だあの衝撃波は…!?邪魔しやがって…あともう少しでガキ二人殺せたのに…クソが!」

(なるほど、どうやら多少なりともダメージはあるみたいだな。恐らく吹き飛ばされる瞬間に後方に下がって衝撃波を軽減したんだろう。んで、吹き飛んでった死柄木をワープゲート野郎がその個性でここまでワープさせてきたわけか…。ちっ、やっぱ先にワープゲート野郎からたおしとくべきだったか。)

 

首元をしきりにかきむしりながら苛ついてるかのように早口で捲し立てる死柄木は、そのままうつむかせていた顔を衝也達の方へ向けた。

 

「舐めた真似しやがって…殺してやる。」

「ぁ…!?」

「ヒィ!?」

「!」

 

彼のその一言を聞いた瞬間、緑谷たち三人はその明確な殺意に、思わず声にならない悲鳴を上げた。

峰田に至っては声に出してしまっている。

血走った眼、まとう雰囲気、無邪気さの中にある狂気

様々な『影』の要素から生み出された強烈な殺意をじかに向けられ、三人はじりじりと後ずさりしてしまう。

そんな中、衝也だけは不敵な笑みを浮かべながら死柄木へと声をかける。

 

「へぇ、どーやら口先だけは一人前らしい。さっきまで何もできずに俺に吹っ飛ばされた雑魚キャラとは思えない強気っぷりだ。」

「……」

「知ってるか?雑魚キャラの『殺してやる』ってセリフは世の中では『死亡フラグ』っていうんだぜ?」

「…クソガキがぁ!」

「落ち着きましょう死柄木!ここは冷静に!」

 

衝也のバカにしたような口ぶりに思わず身を乗り出してしまう死柄木だったが、それを隣にいた黒霧が諭す。

そして、死柄木の耳元に小声で話しかけた。

 

「彼にペースを乱されてはいけません。彼の名前は五十嵐、恐らくここにいる生徒たちの中で最も警戒すべき少年です。むやみに突っ込んでいってはどうなるかわかりませんよ。」

「うるさい!そんなことはわかっている!いちいち口出しするんじゃない!お前から粉々にするぞ黒霧!」

「わかっているのなら飛び出すのはやめなさい!大丈夫です、彼はもうすでに倒したも同然なのですから。」

「!?…どういう意味だ?」

「先ほどの攻撃を見て彼の個性のおおよそは理解できました。私の推論が正しければ、彼はもうすでに詰んでいる。死柄木、あれをここにもう一度呼んでください。恐らく、あれはまだここにいる。」

 

黒霧が嬉しそうに目を細めるのと同時に、衝也は緑谷たち三人に小声で話しかけていた。

 

「緑谷、蛙吹、峰田、俺が時間を稼ぐ。その隙にお前らは出口の方まで走れ。それと、蛙吹、峰田、寝袋先生を頼む。」

「!何言ってるんだよ五十嵐!?さっきの見ただろ、ぜってぇやべぇって!あいつらガチでお前の事を殺そうとしてんぞ!?」

「そうだよ、ここはみんなで一旦逃げて体制を立て直さないと…」

「向こうにあのワープゲート野郎がいる限りどう考えたって逃げるのは難しいだろ。ましてや向こうには触られたら一発アウトの個性を持ってる死柄木とかいうやつもいる。もしワープゲートで死柄木の所まで転送されたらその時点で死んじまうぞ?」

「でも、それは五十嵐ちゃんだって同じでしょ?だったら、下手に戦うより逃げた方が」

「だからこそだよ。俺だったら機動力だってあるし、いざとなればさっきの大火力だって出せる。そう簡単にワープ野郎には捕まらない。あいつを煽って標的をこっちに絞り込ますこともできたしな。後は俺の踏ん張りとお前らの逃げ足次第よ。」

 

そう言った後、衝也は軽く両手を握ったり開いたりして、感触を確かめ始めた。

 

(50%以上を出せるのはあと5~6回ってとこだな。65%以上になるともう3回くらいしか出せねぇ。ここで一発に、火災ゾーンでも一発撃ったし、結構酷使しすぎたかもな…。)

 

そこまで考えた衝也は軽く深呼吸した後、緑谷たちに視線を向け、グッと親指を立てた。

 

「大丈夫、俺を信じろよ。そう簡単にはやられやしないって。勝てそうになかったら隙見て俺も逃げるからよ。」

「い、五十嵐君…。」

「合図だしたら思いっきり走れよ、緑谷。こん中じゃ、お前を一番頼りにしてるんだからな。蛙吹と峰田の事、よろしく頼むぜ。」

「…うん!」

 

覚悟を決めたかのような表情を浮かべて大きく頷いた緑谷を見た衝也は満足そうな表情をした後、視線を死柄木達へと向けた。

 

「さてと、そんじゃあやるとしますかね。ヴィラン連合なんてRPGの序盤で出てきそうな中ボス野郎どもに正義の鉄槌を喰らわせてやるよ。」

 

にやりと笑みを浮かべながら拳を構える衝也、それに応じるかのように緑谷たちも腰を低くして、いつでも動けるよう準備をする。

だが、彼らに対してヴィラン連合の二人は何もせずに堂々と立っているままだ。

それを見た衝也は怪訝そうに眉をひそめた後、大声で目の前の敵に声をかけた。

 

「おい、どーしたよ死柄木さん!そっちから攻撃しかけてもいいんだぜ!?それともビビってママの所に帰りたくなっちまったのか!?」

「……」

(なんだ、あいつなんだか様子が)

「脳無、命令だ。あのくそ生意気なガキを殺せ。」

「?あいつ今、何呟いたんだ…!?」

 

死柄木のつぶやきが聞き取れず思わず怪訝な顔をしてしまった衝也だったが、すぐにその顔は驚愕へと包まれた。

なぜなら

突然目の前に脳みそ丸出しの大男が立ちはだかったからだ。

 

(!速い!)

「こいつ、さっきの!?」

 

緑谷が驚いたように叫び声をあげるが、それに一切の反応を示さず、衝也は迅速に行動を起こす。

 

「60%インパクトナックル!!」

 

強く握りしめた拳を大男に思い切り打ち込み、打ち込んだと同時に衝撃を放出し直接相手に叩きこむ。

その瞬間、ズドォォォォン!!という轟音が響き渡り、辺りに再び強風と砂埃が舞う。

普段から鍛えられている衝也の肉体から打ち出される強烈な右ストレートと特大の衝撃放出を組み合わせた近接戦闘用の大技。

出力60%ともなれば、まともに喰らって動くことはおろか下手をすれば重傷を負いかねないその技を喰らってなお

その大男は顔色一つ変えずにそこに立っていた。

 

「!?」(なんだこの感触…!)

 

打ち込んだときのわずかな違和感を感じ取った衝也は、目の前の大男を一瞥した後、驚愕したように目を見開いた。

 

(まずい!こいつ、まさか…!)

「三人ともぉ!早く」

 

何かに気づいた衝也が、後ろを振り返り、三人に何かを言おうとした瞬間

その衝也の姿が突然消えた。

そのすぐ後に、ズドォォォォン!という大きな音と木がそれてしまうほどの大きな強風が辺りに広がった。

 

「!五十嵐君!?」

 

両手で顔をかばうようにしながら、必死に五十嵐の名を呼ぶ緑谷。

しかし、衝也からの返事はなく、その言葉はむなしく辺りを震わせた。

 

「おい、おいおいおいおい!!?何だよこれ、何が起きたってんだ!?」

 

吹き飛ばされないように緑谷の体操服にしがみついている峰田がそう叫んだあと、吹き荒れていた強風がやみ、

遠くの方からドガァンという何かが壊れたような音が聞こえてきた。

それを聞いた緑谷たちはゆっくりと視線を音がした方向へと向ける。

その方向、山岳ゾーンのちょうど真後ろ辺りのUSJドームの天井付近。

そこに大きな穴がぽっかりと開いていた。

 

「まさか、五十嵐ちゃんは…」

「そ、そんな…」

「う、嘘だろおい…」

 

あまりの出来事に声を失い、絶望したような表情を浮かべる三人。

自分たちを助けようと動いてくれた衝也は、あろうことか一瞬にして吹き飛ばされてしまったのだ。

 

「く、くはははは!!いいねいいね!さすが先生の作り出した怪人!ワンパンであのクソガキを殺してくれたよ!ハハハハ!!何が死亡フラグだ、フラグが立ってたのはお前の方だったよ五十嵐衝也!さっきまでのセリフを今のお前に聴かせたいぜ、さぞや恥ずかしいだろぉなぁ!まあ、もう聞くことすらできないだろうけど!?クハハハハ!!」

 

両手で顔を覆いながら大声で笑い続ける死柄木。

子供を一人殺したというのに、まるでなかなか倒せなかったゲームの敵を倒せたかのように楽しそうに、無邪気に笑い続ける死柄木を見ていいようのない恐怖を感じ始める三人。

 

(ま、まずいまずいまずい!とにかく、逃げなきゃ!!あんな化け物、正面から挑んだって勝てっこない!)

「峰田君、蛙吹さん!」

「やれ、脳無。」

「!」

 

死柄木のそのつぶやきを来た緑谷の身体はほぼ反射的に動いていた。

素早く蛙吹を抱えると、個性を使って無理やり体を横へと飛ばす。

その直後、ドバァァァンという音と共に辺り一面に水の雨が降り始めた。

大男の放ったパンチの衝撃が水辺の水を吹き飛ばしたのだ。

水辺には水は残っておらず、地面すら見えている。

その威力を目の当たりにして思わず背筋が凍ってしまいそうに感覚を覚えた緑谷だったが、地面に転がった瞬間、強烈な痛みが彼を襲い、意識はすぐにそちらに向けられた。

 

「いッ!?」

「緑谷ちゃん、大丈夫!?」

「!お、おい、緑谷!おめぇ大丈夫か!?」

 

緑谷に抱えられていた蛙吹は慌てて緑谷のもとに駆け寄る。

峰田も若干ほうけていたものの、緑谷のうめき声を聞いて慌てたように駆けつける。

見ると、緑谷の脚は痛々しく折れ曲がっており、誰が見ても一発で骨折してるのがわかるような状態だった。

 

(くっそ、さっきはうまくいったのに!!)

「緑谷ちゃん、脚が…」

「いいから!早く逃げないと」

「逃がすなよ脳無、必ず殺せ。」

「!」

 

死柄木の言葉に反応したのか、脳無はゆっくりと突き出していた拳を引き戻し、倒れこんでいる緑谷たちへと視線を向ける。

 

「よ…寄るな!こ、こっちに来るんじゃねぇ!!」

「おいおい、そんなに嫌がらなくてもいいだろ?俺は親切でやってるんだ。アンタらが寂しくならないように、お友達と同じところに連れてってやろうとしてるだけなんだからさぁ。」

 

恥じらいもせずに大声で泣き叫ぶ峰田をみて、ニタニタと気味の悪い笑みを浮かべて楽しそうに言葉を紡ぐ死柄木。

その間にも脳無はゆっくりと足を動かし、緑谷たちの方へと向かって行く。

そして

 

「殺れ、脳無。これでまずは1stステージクリアーだ。」

 

脳無が腰を低くし走り出そうとしたその瞬間、

脳無の動きがぴたりと止まった。

脳無だけではない、先ほどまで気味の悪い笑みを浮かべていた死柄木も、今は苦悶の表情を浮かべて微動だにしていない。

 

「くっ…なんっだコレ!?」

「それは、氷!?」

 

彼らがその場から動けない理由、それは

広場一帯の地面と共に、彼らの両脚が凍らされているからである。

死柄木が自分の足元をみて忌々しそうにつぶやいたその直後

 

「死にさらせぇ!!クソモブどもがぁ!!」

 

実に乱暴極まりない叫び声と共に、豪音と共に凄まじい規模の大爆発が起きた。

辺り一面に黒煙が広がり、その爆発による余波飛んでくる。

あまりの威力に地面に伏せていた緑谷たちにも影響が出そうになるが

 

「ダイジョブかお前ら!」

「「「!?」」」

 

突然誰かが三人を守るかのように現れ、その衝撃と爆発から彼らをかばう。

そして、黒煙が晴れていくと同時に彼らの姿が徐々に視界に入ってくる。

それを見た蛙吹は驚いた表情を浮かべて、思わず目の前にいる少年に声をかけた。

 

「き、切島ちゃん!?」

「おう!けがはねぇか梅雨ちゃん!?てか爆豪!お前ダチが居るのにこんな大火力で攻撃すなぁ!?危うくダチまで吹っ飛ばすとこだったぞぉ!」

「!?」

 

自身の個性「硬化」を使い三人を助けたのはつんつんした赤髪が特徴的な漢気あふれる熱血漢、切島鋭児郎だった。

切島が大声で叫んだその方向に視線を向ける緑谷たち。

そこには、自身の篭手に手を置いている爆豪の姿があった。

 

「うるせぇぞクソ髪野郎!そんなもんはてめぇとこのスカした半分野郎でどーにかしろってんだ!!」

「や、やっぱりかっちゃんだ!」

 

緑谷の叫び声を聞いた爆豪は「うるせぇ!黙ってそこで死んどけクソナードぉ!!」とにらみながら叫び、緑谷は「ひ、ひどい!」と若干ショックを受けたような表情を浮かべた。

 

「おい、油断するなよ。こんくらいでやられるような奴らじゃねぇはずだ。仮にも、平和の象徴を殺す実行役の奴らなんだからな。」

 

そんな彼らの気を引き締めるように声をかけたのは、1-A最強と謳われる少年

轟焦凍だった。

 

「す、すげぇ!轟までいやがる!クラス一の実力者たちが勢ぞろいだぜおい!!」

 

クラス一の実力を持つ轟とクラス一の戦闘センスを持つ爆豪、そしてクラス一の根性をもつ切島。

今考えられる増援としては最も頼りになる者たちが、セントラル広場に集結した。

そんな彼らの登場に黒煙の中から小さなつぶやきが聞こえてきた。

 

「…2ndステージ、突入~。」

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

同時刻、山岳ゾーン

 

山岳ゾーンに飛ばされてた耳郎、八百万、上鳴の三人はいままさに絶体絶命のピンチに陥っていた。

実力はともかく、圧倒的に数の多い敵を倒すために、八百万の作った特大絶縁体シートと上鳴のMax120万ボルト放電を使った三人は、見事に敵を撃破した。

ただ一人、地面に隠れていた伏兵を除いてである。

 

「なんだよ、今の爆音…。さっき飛んできた訳の分からんものといい、何が起きてるんだ?死柄木さんたちが動いたのか?」

 

右手からバチバチと電気を放電しながら、先ほどぽっかり開いてしまった天井の穴を見つめる伏兵のヴィラン。

恐らくはこのヴィランが通信手段の妨害をしているヴィランなのだろう。

彼の左手には上鳴が襟首を握られた状態で人質に捕られていた。

そのヴィランが視線を外しているのに気が付いた耳郎はスルスルとイヤホンのコードを足元スピーカーへと伸ばした。

彼女のスピーカは指向性スピーカーとなっており、自身の心音を爆音で相手に届けることができるのだ。

 

(あと、もうちょい…!)

「おっと」

「!」

「ウェイ!?」

 

だが、あと一歩という所でヴィランは右手を上鳴の首元に近づける。

そのまま右手が上鳴の首に当たれば放電により焼き切られてしまう。

普段の上鳴なら大勢の敵を倒したように放電で相手を倒せるのだが、今の彼は

 

「ウェ~イ…」

 

幼稚園児の落書きみたいな顔をしてウェイしか言えないアホになってしまっているのだ。

彼は放電のW数が許容オーバーすると脳がショートしてしまい、一時的にアホになってしまう。

その状態では何かをすることもできず、ただただ何を示しているかもわからない親指を立てたいわゆるグッジョブポーズをすることしかできなくなってしまうのだ。

 

「おいおい、さっきも言っただろ?子供の浅知恵なんてものはバカな大人しか通用しないってよ。」

「くっ!卑怯ですわ、人質をとるなんて!」

「ヒーローのセリフとは思えねぇなお嬢ちゃん。俺はヴィランだ、他人の命を守らなきゃいけねぇ義理はないし、むしろ他人の命を奪ってでも自分のしたいことをするのがヴィランってもんだろ?それにほら、よく言うじゃねぇか、ヒーローは逆境を乗り越えて強くなるってよ。お前らもヒーローの卵だったら逆境を乗り越えねぇとなぁ?」

「こいつ…いけしゃあしゃあと言いやがってぇ…!」

 

八百万の悔しそうな叫びに、ゲラゲラと下品な声で笑い、そう切り返すヴィラン。

ヴィランの言葉を聞いた耳郎も悔しそうに歯ぎしりをする。

その言葉はヴィランのくせに割と正論であり、そのことが余計八百万の中に焦りを生む。

 

(耳郎さんの攻撃も封じられている。私たちの動きも!この状況で、どうやって上鳴さんを助ければいいの!?考えないと!このままじゃ三人とも…!)

 

両手を上げてヴィランの様子を見つめながらも必死に打開策を考え続ける八百万だが、自分たちの動きを封じられ、上鳴も動けないこの状況ではなかなか打開策を組むことができない。

その間にも、ヴィランはゆっくりと二人との距離を詰めていく。

 

「さて、これくらい近寄れば十分だろ。」

「?一体何するつもり…」

 

耳郎の訝し気な表情でつぶやいたその瞬間、

ヴィランの右手から放電されていた電気が明確に大きくなってきた。

バリバリという音も次第に大きくなっていく。

 

「この距離なら俺の放電も届く距離だ。俺の個性は放電にある程度の指向性はもてるが、その距離が短いもんでな。こうして近寄らせてもらったわけだ。」

「うっそ、上鳴の格上じゃん…!」

「くっ、このままでは…」

「いやいや、さすがに威力はこいつには及ばないさ。よくても人ひとりをぶっ倒すのが精いっぱい。だから」

 

そこまで言ってヴィランは放電を続けている右手を耳郎の方へと向ける。

それを見た耳郎は思わず脚に力を入れ、腰を低く落としてしまう

 

「!?」

「まずは一番厄介そうなアンタから始末させてもらうぜ、イヤホン嬢ちゃん。」

「!耳郎さん、何とか避けて…!」

「避けた瞬間、このアホ面がどうなるかは、わかるよな?」

「クソッ…!」

 

逃げの体勢を作っていた耳郎だったが、ヴィランの言葉をきき、姿勢をもとへと戻してしまう。

それを見たヴィランは「さすがはヒーロー…」とニタニタ笑みを浮かべたあと、右手に電気を放電し始める。

右手の電気はさらに大きさを増し、バチバチバチィ!と先ほどよりも大きな音を立てている。

その電気が今、すべて耳郎に降り注ごうとしていた。

 

「さてと、それじゃあまずは…一人目だ!」

(来る…!)

 

思わずギュッと目をつぶってしまう耳郎。

そんな彼女に向かってヴィランはその右手に蓄えられた電気を放電しようとした

 

「おい」

「!?」

 

その瞬間、後ろから低く、ドスの聞いた声が聞こえてきた。

その声が耳に入った途端、ヴィランの背筋はゾクリと鳥肌が立ち、思わず右手を次郎から背後にいる何者かに移そうとする。

 

「傷だらけで意気消沈で苛ついている俺の目の前で…一体何さらしとんじゃこのボケェェイ!!」

「フゴバァ!!?」

 

それよりも早く背後にいた少年の蹴りが

男の股間へと突き刺さった。

さらに

 

「インパクトゥオオ!」

「!!???!?!?」

 

容赦なく股間に衝撃を叩きこんだ。

ヴィランはその場で声にならない悲鳴を上げた後、糸が切れたかのようにその場に倒れ込んだ。

ついでに上鳴も「ウェ~~~イ?」と言いながら地面に倒れ込んだ。

 

「あ…アンタ」

 

その様子を見ていた耳郎は呆けた顔をして、男の象徴をぶっ潰した目の前の少年に視線を送る。

その少年とは

 

「ハァ…ここ、どこだ?くっそ、体中が痛ぇ…。つーか血で前が見にくいし、頭はくらくらするし、マジでイライラすんなぁ!」

 

頭から血をダラダラと流してその顔を赤く染めている、全身傷だらけの

五十嵐衝也だった。

 

 




ながいな!(確信)

えー、このたびあくまで候補ですが何人かヒロインを選抜することができました。
選んだ基準は私が好きかどうかです。
もちろん一番は送崎信乃さんと知床知子さんと土川流子さんと茶虎柔さん(ん?)なんですけどさすがに年齢差きっつくね?
ということで除外しました!
が、未練たらたらなのでどうなるかはわかりません!(おい)
これからも頑張りますので皆さまどうか暖かく見守ってください!
感想、評価共にお待ちしております

PS、最近、思いっきり題名被った小説がハーメルン内で出てしまって焦ってます。
だれか、ネーミングセンスを私に下さい。
もしくは「こんなタイトルいいかもよ」でもいいです。
土下座しながらまってます…





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