救える者になるために(仮題)   作:オールライト

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どうも、オールライトです。
ヒロアカにはまってついつい書いてしまった駄文です。
あまりおもしろくないかもしれませんが、よろしくお願いします。


雄英高校入学編
第一話 壊されるロボのために大金をかけるのは悲しい


 事の始まりは一つのニュース。

 中国にて発光する赤子の誕生というSFじみたニュースが世界中に流れたその日を境に世界は一変した。

 世界総人口の約八割が何らかの特異体質、「個性」を発現するようになった現代。

 個性の発現に伴い圧倒的に増加した犯罪件数、それに対抗するように生まれた職業は『ヒーロー』。

 まるで漫画のようにド派手に、かっこよく、エレガントに犯罪者を打ち倒すヒーローは瞬く間に脚光を浴び、なんと国から正式に公的職務として定められた。

 もはやヒーローはテレビの中の架空の存在ではなく、ごく一般的な職業となったのだ。

 ヒーローが職業となった今、そのヒーローを養成する環境も整えられている。

 全国の学校等に『ヒーロー科』といった子供たちをヒーローへと育成する科ができたのがいい例である。

 そのヒーロー科の中でも特に有名かつ難関で人気があるのが『雄英高校』と呼ばれる高校である。

 倍率は毎年300を超えるその高校の卒業者はNo1ヒーロー「オールマイト」をはじめ、プロヒーローの中でも屈指の実力を持つ者ばかりである。

 そんな超絶的な人気を誇る雄英高校の受験者人数は他の高校とは一線を凌駕している。

 そして今年も、多くの受験生達が自分の抱く『夢』へと向かっていくために雄英高校の狭き門をくぐろうとしのぎを削っていた。

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

「うへぇ、でかいなぁ…あれが校舎かよ。俺の中の校舎のイメージとだいぶ違うなおい。」

 

 数字の書いてある大きな扉や、ビルのように近代的なフォルムの雄英高校校舎を感心したように見つめる少年は感嘆したように溜息を吐いていた。

 どうやら自分の抱いていた古き良き校舎のイメージを覆されて、少しばかり驚いているようだ。

「やっぱり古き良き校舎の造形にするよりも今の近代的デザインにした方がいろいろと便利なのかね…。俺としてはノーマルな造形のほうがいいんだけど。」

 と人目をはばからずに独り言を言いまくる少年は傍から見たら気味が悪いことこの上なく、試験説明会場に向かっていくほかの受験者から訝し気な視線を向けられていた。

 しかし、少年はそんな周囲の視線を気にする様子はなく、「ま、これはこれで雰囲気あるからいいか。」と勝手に自分で納得して何回か顔を頷かせた。

 

「さってと、それじゃ俺も試験説明会場に向かうとするか。さすがにそろそろ移動しないと時間に間に合わないかもしれないし。しっかし、こんだけ広いと迷ったりしないか不安だな…。」

「おっおっ、おぉおおおお~」

「うお、何だ!?」

 

 いざ試験説明会場へと足を動かそうとした少年だったが、突如として聞こえた奇妙な叫び?のようなものに驚き思わずそちらへと体を向けた。

 その声の主は意外にも少年のすぐ近くにおり、そのことに再度少年は(ちっか!?)とびっくりした。

 

(ずいぶんと変な雄叫びだなおい。気合い入れるならもうちょっとましな雄叫びがあったろうに。)

「お、おおおお、お互い頑張ろうって言われちゃった。あんな可愛くて優しい女の子が本当にいるなんて…。ていうか僕、すんごい久しぶりに女子としゃべったような気が…」

「おおぅ…」

 

 頬を赤く染めながらブツブツと何かを呟き続ける目の前の声の主を見て軽くドン引きをする少年。

 つい先ほどまで自分も独り言をつぶやいていたのを棚に上げてのドン引きである。

 

「…とりあえず見なかったことにしよう。これは頭の中から消した方がいい。」

 

 そう言って顔を体の向きを元に戻した少年は軽く頭を横に振り、先ほど見た気味の悪い光景を頭の中から外へと放り出した。

 そして軽く二回ほど頬を両手で叩いて気合いを入れた後、「よっしゃ!」と軽く呟いた。

 

「気を取り直して向かうとしますか、雄英高校入学試験!合格して、ヒーローのスタートラインにきっちり立っておかないとな!」

 

 やったるでー!と声を張り上げて右手を大きく空へと突き上げた少年。

 大分恥ずかしい行動を平然とやってのけた少年を近くから見ていたもさもさ頭とそばかすが目立つとある少年は

(なにやってるんだろうあのひと…?と、とりあえず、見なかったことにしよう。)

 普通にドン引きしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

『今日は俺のライヴにようこそー!!エヴィバディヘイ!!!』

「HEーY!!!」

(あいつ…普通に反応した…。)

(反応したぞ…。)

(バカだろあいつ…。)

『オーケーオーケー!返事をしてくれた受験生リスナーは一人だけ!!こいつは中々シヴィーだぜぇ!!!緊張してるからって実技で腹痛起こしたりしないでくれよ!!んじゃ、実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?』

「『YEAHHHHHHH!!!』」

(また反応した…。)

(バカだこいつ。)

(バカだろ…。)

(アホ…。)

(クソうるせぇ…。)

(あ、さっきの変な人だ…。声かけなくてよかった…。)

 

 程よい緊張感が場を支配していた会場の雰囲気とは明らかに場違いなテンションをぶつけてきたのは雄英高校の英語教師を務めているプロヒーロー『プレゼント・マイク』と先ほどの少年である。

 少年はプレゼント・マイクのうっとうしいレベルのハイテンションな掛け声に立ち上がって拳を振り上げて、これまたハイテンションに返事をしていた。

 憑き物を落としたような晴れやかな笑みを浮かべてである。

 プレゼント・マイクが試験の説明を始めたのとほぼ同時に席に着いた少年は満足そうに息を吐いた。

 

「ふぅ~。いやぁ、どいつもこいつもくそまじめな雰囲気ダダ漏れで重苦しくてしょうがなかったんだ。これで教師まで真面目だったら息が詰まっちまう所だった。プレゼント・マイクさまさまだ。」

 

 そう言いながらうんうん頷いている少年。

 その様子からして、自分が周囲からバカ認定されていることには全然気が付いてないようである。

 彼の周りにいる受験生達も顔を少年から逸らし、絶対に目を合わせようとはしていなかった。

 触らぬ神に祟りなし、危険そうな人物は極力接触しないようにしようという人間の防衛判断が働いているのだろう。

 少年も周りの人間が自分から目を逸らしていることに気づいてはいるが(俺の周りの奴はシャイな奴が多いんだな)としか思っていない。

 変なところで鈍い奴である。

 

「しっかし、雄英高校の入試試験か…。一体どんな試験なんだろうなぁ。」

「それを今から説明してくれるのよ?」

「それはわかってるって。でもやっぱ気になっちまうだろ?後でわかることだとしても、できるだけ早く知りたいし…。」

「その気持ちはわかるけど、今は我慢して先生の話を聞きましょう。」

「うー、やっぱそれしかねぇよなぁ。じっとして話を聞くのって苦手なんだよなぁ俺。」

「私は嫌いじゃないわよ。好きでもないけど。」

「……」

「……」

「誰だアンタ?」

「今このタイミングで聞くのね…。」

(((知り合いじゃねぇのかよ!?)))

 

 しばらく会話をつづけ、数秒見つめ続けた後さらっと少年が放った一言に周りが仰天している中、少年に声をかけた右隣の少女もほとんど表情を動かさないでいた。

 少女はしばらくの間、じーっと少年を見続けていたがふいに口を開いた。

 

「私の名前はあす」

『O,K!?』

「オーケーイ!!」

『YEAH!ノリノリな返事サンキューな受験生リスナー!』

「条件反射で反応してしまうのね…。」

「いやーああいうノリ大好きなんだよねー俺。面白いよなー、プレゼント・マイクって。」

「そうね、でもちょっとうるさいかも…。」

「ノリが悪いぜ、あす。もっとノリに乗って生きてかねぇとつまんねぇぞ。」

「あすじゃないわ、蛙吹よ。蛙吹梅雨っていうの。」

「お、そうなのか。なんか、THE・カエルって感じの名前だな。カエルに梅雨だもんな。」

「ストレートに物を言う人なのね、貴方。」

「あ、わりぃ気ぃ悪くしちまったかな?俺って思ったことサラッと言っちまうタイプなんだよ。直さなくちゃとは思ってんだけど…。」

「大丈夫よ、私も思ったことは言っちゃうタイプだもの、気にしてないわ。」

 

 蛙吹と言う少女は言葉通り気にした様子も見せずに少年の顔を見続けていた。

 というより、彼女自身の表情は最初から一貫して表情を変えていないため本当に気にしていないのかどうかはいまいちよくわからないのだが。

 

「貴方って、空気読めないって言われたことあるでしょ?」

「直球だなおい。本当は気にしてただろ?」

「そんなことないわ、ただのお返しよ。」

「気にしてるんじゃねぇか、わっかりにくいなぁアンタ。」

「ケロケロ♪」

 

 うへぇ、とすこし苦い顔をする少年を見て、嬉しそうに鳴く蛙吹。

 少年はそれを見て(変な奴だなぁ)と自分の事を棚に上げてそんなことを思った。

 だが、周りからすれば少年のほうが10倍くらい変な奴に見えるため、そんな少年と会話している蛙吹になかば感心している状態である。

 

「ところで、貴方の名前はなんていうの?」

「俺か?別に答えてもいいけど、なんでまた急に?」

「実は私、同じ中学の受験生がいなくて少し寂しかったの。だからせめて同じ演習会場の人と仲良くなっておこうと思って。それで話しかけさせてもらったの。」

「だからって俺に声をかけるとは…。面白い奴だな、蛙吹は。」

(((自分で言うんかい!?)))

 

 周りの思考が再びシンクロしたとき、少年が何かに気づいたように声を出した。

 

「ん、てことは蛙吹もDの演習場なのか?」

「ええ。」

「まじか!え、てかなんでわかったんだ?もしかして透視とかそういう感じの個性!?」

「貴方の資料をが横から見えたからよ。」

「ただのカンニングかよ畜生!返せ、俺のワクワクを!」

「ごめんなさい。」

 

 悔しそうに目の前の机に拳をダンダン!と打ちつける少年を見て、すこし表情をシュンッとさせて謝る蛙吹。

 しばらくそれを続けていた少年はふーッと息を吐いて心を落ち着かせた後、ゆっくり蛙吹の方を向いた。

 

「ふー、落ち着いた。んで、何してほしいんだっけ?」

「あまり頭はよくないの?」

「やっぱ直球なんだな蛙吹は。」

「梅雨ちゃんでいいわよ。それで、貴方はなんていう名前なの?」

「おお、そうだったそうだった。名前を聞かれたんだっけな。」

 

 ポンッと思い出したように手を叩いた少年は、申し訳なさそうにタハハと笑った。

 

「いやぁ、悪いな。俺って意外と忘れっぽくてさ。すぐに何か忘れちまうんだよ。」

「意外ではないわよ、安心して。」

「何をどう安心しろと…。まぁいいや!」

 

 そう言って少年は蛙吹の目の前に右の掌をズイッと出してきた。

 そして、二カッと笑顔を見せた。

 

「俺の名前は五十嵐衝也っていうんだ。よろしくな蛙吹!」

「よろしくね、五十嵐ちゃん。それと梅雨ちゃんでいいわよ。」

「おうよろしくな、蛙吹!」

「……」

 

 このあと、説明を全く聞いてなかった衝也は蛙吹にもう一度試験の説明をされた。

 

「面目ない、蛙吹…。自分が恥ずかしくなってくるぜ…。」

「大丈夫、なんとなく予想していたから。」

 

 

 

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

「よっしゃ、これで75Pっと。だいぶ倒したなぁ、さすがに疲れてきたぞおい…。」

 

 そう言って軽く深呼吸をして口元についていた返り血ならぬ返りオイルをぬぐう少年こと衝也。

 その彼の目の前には、武器を壊され、攻撃手段を失い行動停止したロボットがあった。

 今彼が、というよりも受験生全員が演習場で取り組んでいる入試試験の内容は、簡単に言えばロボ掃除である。

『仮想敵』ヒーローになった際に戦うことになるであろう敵を想定して作られたロボットを行動不能にし、そのロボットの強さに応じたPをもらえ、そのPをとにかく稼ぎまくるというものである。

 会場に蛙吹と共に向かった衝也はしばらく彼女と談笑していたのだがプレゼント・マイクの『スタート』の言葉を聞いた瞬間反射的に動き出した衝也は他の受験者が出遅れる中、好調なスタートを切りだした。

 それを見た蛙吹は「やっぱり条件反射で反応するのね…」と呟いていたりした。

 そのまま勢いに乗って着々とPを稼いでいた衝也はぐるりとあたりを見渡した。

 辺りでは時折爆音が聞こえており、ほかの受験者たちも戦いを続けているのがわかる。

 

(市街地に似せているこの演習場に、各々特徴の分かれている仮想敵。加えて『倒せば』ではなく『行動不能』にすればPが入るっていう仕組み。そして限られている制限時間。結構実戦を加味した試験になってるって訳か。)

 

 チラリと自分が先ほど行動不能にしたロボットに目をやる衝也。

 そのロボットは装備していたミサイル発射装置を見事に粉砕されており、攻撃手段が残されていないような状態だった。

 

(武器を壊したっつっても機動力まで削いであるって訳じゃない。なのに行動を停止させたってことは恐らく、『武器を壊されたら停止』するようにって命令がインプットされているってことだろ、たぶん。そりゃそうか、試験の中ではヒーローである俺たちが敵とはいえ一人の命を奪うのは流石にやりすぎ。機械の見てくれだから忘れてたがこいつはあくまで『仮想敵』。きちんと一つの命として扱わなければいけねぇって訳か。ヒーローは命を奪う職業じゃなくて命を救うもんだからな。ま、加減するのは得意だから苦じゃねぇし、負担も楽になるからいいんだけど。)

 

 ま、さすがに全壊にしても失格になるこたぁねぇだろう。と呟いた衝也はいまだ爆音が響く演習場を見渡して、ガシガシと頭を搔いた。

 

「しっかしまいったな、周りに敵が全くいねぇ。ここら一帯のやつらはあらかた行動不能にしちまったしなぁ…。こんだけ時間が経ってるとほかの奴らも結構倒してるだろうから数も少なくなってるだろうし、どうすっか、もうあんま時間ねぇぞ?」

 

 ここで派手に暴れてロボをおびき寄せるか、自分が動いて探した方がいいのか、どちらが効率的かをうんうん唸って考える衝也。

 そんな彼の背後から突然ものすごく大きな音が響いてきた。

 何事か!と一瞬で背後に顔を向けるとそこには

 

 とんでもないでかさの仮想敵がいた。

 

「デカッッッッ!?なんだあのでかさは!あんなでかい敵なんてそういねぇだろおい!仮想も行きすぎたら仮想じゃねぇぞ!」

 

 そう叫んだあと「あ、でもMtレディみたいな奴もいるし、案外仮想に当てはまるのかもな。」と呟いて勝手に一人で納得する衝也。

 周りが慌てふためいているのに実に冷静である。

 

「しっかし、あんなロボット作れるなんて、雄英の懐はどうなってるんだ?壊されるためだけのロボットなんだし、あんま金かけなくてもいい気がするんだよなぁ俺は。」

 

 雄英高校のお財布事情に疑問を抱く衝也だったが、そんなくだらない考えをしている間

 にドデカロボはズンズンと歩みを進めていた。

 よく見るとドデカロボは数体ほど見受けられ、どれもゆっくりではあるが受験生たちめがけて歩いていた。

 

「なるほど、恐らくはあれがお邪魔ギミック、0Pか。確かにあんだけでかくて0Pじゃ倒す気も失せるわな。おまけにゆっくりでも歩幅がでけぇからすぐに追いつかれちまう。ここはセオリー通り逃げるとするか。ついでに逃げるのに夢中になってほかのみんなが取りこぼしたロボも壊していこう。Pが稼げる。」

 

 そう言ってくるりと反転して逃げの姿勢を作ろうとした衝也だったが、ふいにその足を止めた。

 彼は顔を斜め後ろに向けたままとある場所を凝視している。

 彼の視線の先にあったのは、0Pロボのせいで倒壊したであろうビルの向かい側の道路である。

 その道路にいたのは、瓦礫に足を挟まれている少女、蛙吹梅雨だった。

 

 

 

 

 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△

 

(う、抜けない。完全に挟まってるわねこれ…。)

 

 自分の足の上にある大きな瓦礫、そしてズキズキとくる尋常じゃないほどの痛みに梅雨はわずかにその表情を曇らせた。

 本当ならばこんな風になるはずではなかった。

 0Pのロボットの出現、それにより彼女は行っていた仮想敵との戦いを中止、すぐに逃走を開始した。

 常に冷静でいられたからこそできたとっさの判断と動き。

 そのまま逃走をしていれば、こんなことにはならなかったはずなのだ。

 だが見えてしまったのだ。

 恐怖のため足がすくんでしまったのか、0Pのすぐ近くで動けなくなっている一人の受験生を。

 その受験生の上に、0Pが破壊したビルの瓦礫があったのを。

 それを見た瞬間、蛙吹の体は動いていた。

 受験生との距離はおよそ50m前後、到底自分の舌が届く距離ではない。

 だが彼女はとっさに舌を出してつかんだのだ、近くの信号を。

 そしてそのまま思い切り斜め前にとんだ蛙吹の体は、振り子のように揺れて前へと飛んで行った。

 そして舌を信号機から離した蛙吹はそのまま舌を受験生へと伸ばし、その受験生を思い切り後ろへとぶん投げた。

 そしてその後すぐに舌を後ろに伸ばして前へと向かう勢いを殺そうとしたのだが、間に合わずにそのまま瓦礫の下敷きに巻き込まれてしまったのだ。

 

(足だけだったと喜ぶべきだったのかしら?)

 

 挟まっている足を見ながらそんなことを考えた蛙吹だったが、すぐ近くから聞こえてきた大きな音によりすぐに意識がそちらへと向けられる。

 そこにあったのは、今まさに自分をつかもうとしている0Pの掌だった。

 

「やっぱり喜ぶべきではないわね…。」

 

 もう終わりかもしれない。そう思った瞬間、背筋が凍るような感覚を蛙吹は覚えた。

 いやだ、まだ終わりたくない。

 死にたくない。

 こんなところで、終わりになんてしたくない。

 まだやりたいこともやれてない。

 まだ高校に入ってもいない。

 できた友達だって

 

「五十嵐ちゃんだけなのに…!」

「おう!呼んだか蛙吹!」

「へ…?」

 

 今日初めて聞いたばかりの声が聞こえた蛙吹は、思わずその声のした方向へと顔を向けた。

 声がしたのは彼女の上、仮想敵の顔目前にいたのは、大きく拳を振りかぶった五十嵐衝也だった。

 

「い、五十嵐ちゃん!?どうしてここにいるの!?というか、どうしてそんなところに…!?と、とにかく逃げて五十嵐ちゃん!そんな大きなロボットに勝てるはずがないわ!それじゃぁあなたまで…」

「馬鹿言うんじゃねぇよ、蛙吹!たとえ敵がどんなに強かろうが!自分より敵のほうが格上だろうが!」

 

『助けるべき人がいるなら、逃げちゃいけねぇのがヒーローってもんだろうが!』

 

 そして衝也はその拳を

 思い切り振りぬいて

 0Pの顔面にたたきつけた。

 そしてゴッ!という音が、響いた。

 

 その瞬間、0Pのドデカロボットの顔面が

 大きな音を響かせて

 粉々に

 

 

 

 

 ならず

 

 

 

 そのまま攻撃標的を衝也に切り替えた。

 0Pの顔面には傷一つついていない。

 かんっぜんに無傷である。

 

「五十嵐ちゃん!?まさか個性を出し忘れるほどアホだったの!?」

「そこまでアホじゃないわ!つーか誰がアホだ誰が!?」

 

 思わず突っ込んでしまった蛙吹に割とガチそうなトーンで返事をする衝也。

 その衝也に向かって0Pはその巨大な掌を向けてきた。

 それを見て蛙吹はハッとしたように声を出す。

 

「五十嵐ちゃん!あぶな」

「くねぇよ。行くぜ…」

 

 

「出力!55%!」

 

 

 

 

「インパクトォォォォォ!!!!!!」

 

 

 

 

 彼が叫んだその瞬間

 ドバゴォォォォォォン!!という轟音と共に0Pロボの顔面が粉砕され

 それに続くように0Pロボの身体が音を立ててバラバラに崩れていった。

 

「「「「「な、なにぃぃぃぃいいいい!!??」」」」」

 

 途端周囲から聞こえる叫び声。

 傍から見たらバカ丸出しな衝也である。

 普通に考えたら全然強そうには見えないのだ。

 しかし、その予想に反して、あのドデカロボを一瞬にして粉砕してしまうほどの強さを見せたのだ。

 驚くのも当然だろう。

 蛙吹も口をあんぐりと開けて呆けた顔をしている。

 舌もベローンと飛び出てしまっている。

 

「痛っつ…。やっぱ50%以上は体に負担がかかるな…。っと、それよりも大丈夫か、蛙吹?」

「!え、ええ…大丈夫よ。」

「そうか、そりゃよかった。待ってろ、今瓦礫ぶち壊すから。」

 

 衝也に声を掛けられてハッとしたように正気に戻った蛙吹。

 そして衝也が瓦礫に触れ、その瓦礫を粉砕した直後。

 プレゼント・マイクから終了の合図が出されて、無事雄英高校の入試試験は終了した。

 入試試験の結果、衝也、蛙吹はともに試験に合格。

 特に、衝也はヴィランP75と救助P80の合計155Pという異例のPでぶっちぎりの1位だった。

 

「五十嵐ちゃんって…」

「ん、どうした蛙吹?」

「強かったのね。」

「どういう意味だよ、おい。」

「助けてくれて、ありがとね……。」

「お礼が遅いってぇの、全く。助けた時に言えって。」

「あの時は五十嵐ちゃんの予想以上の強さにびっくりしてたから。」

「俺ってそんなに弱く見えるのか、蛙吹?」

「弱そうっていうよりアホに見えるから強そうに見えないの。それと、梅雨ちゃんでいいわよ。」

「ぜってぇに名前なんかで呼ばねぇ…一生蛙吹って言い続けてやる。」

「照れてるの?」

「お前もアホなんじゃねぇの?」

 




とつぜんですがオリ主の個性紹介を

個性『インパクト』

手や足から衝撃を放出する個性。
衝撃の強弱はコントロール可能で、弱ければ連続放出もできるぞ。
それを応用して空中を歩くように移動可能だ。
ただし、パワーが強いとそれだけ体への負担が大きくなってしまうぞ。
本人曰く体は鍛えてあるので出力50%までは問題なく使用できるとのこと。
裏を返せば出力50%を超えるときつくなってくるってことだぞ。
最大出力は本人も出したことがないので威力・反動と大きさは不明。
ちなみに昔出力80%を試したところとんでもないことになったらしい・
衝撃波を使った中~遠距離での戦いもできるぞ。
相手に触れて直接衝撃を叩きこむときは20%~30%のパワーでするようにしてるらしい。
理由は大体の人間はそれで倒せるためと、ダメージを与えすぎないためらしい。


大体こんな感じですかね。
何か本文と同じでかなりがばがばな設定ですけどご容赦ください。
イメージはワンピースのインパ〇トダイアルや〇ひげのグ〇グ〇の能力みたいな感じですかね。


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