ようやく原作に入りました。
会話が多くなったけどいいよね?
さて、ここからが長いです。
原作みたいなイベントももちろん書きますが、日常編というものも書きたいのでさらに遅くなるかと。
少なくとももう一話は今月中に投稿したいです。
僕は今、鈴ちゃんの両親が営んでいる食堂で朝食を摂っている。普通なら営業時間外なんだけど、僕は特別だ。
「いや~、それにしても坊主には感謝してもしきれねぇなぁ。がっはっはっは!」
「そうね。あの時の空くんの剣幕といったら……」
「あはは……恥ずかしいのでその話はあまり………」
「いいじゃない、別に。私たちにとって貴方はヒーローのようなものなんだし。」
「そこまで大仰なものじゃ……」
「なぁに言ってるんだよ坊主。お前がいなきゃ今頃俺たちゃ離婚してたんだからよ!」
「えぇ。鈴音のことも考えずに怒鳴り合ってた私たちを止めてくれたんだもの。」
朝ごはんとして作って貰った酢豚を頬張りながら彼らの言葉を流す。鈴ちゃんが中二のときに起きた喧嘩を鎮めてからずっとこの調子だ。再び夫婦円満になれたのは良かったんだけど……
「だからって頼んだ品を増量した上にお金を取らないというのはやり過ぎな気がするんですが……」
「それほど感謝してるってことよ。」
最後の一切れを白米とともに流し込む。やはり美味しい。
「ふぅー…ごちそうさまです。これ、お代ですから。」
「だから気にしなくてもいいのに……」
「僕が気にするんですよ!……とにかく僕はもう行きますから。」
ぶっきらぼうに言い放ってしまったが二人は微笑みながら手を振っていた。ちゃっかり手なんて繋いでるし。そんな仲睦まじい夫婦を尻目に食堂を出る。
そこから一度家に帰ってからどこでもドア弐号機を使って束のいる潜水艦へと移動する。いやぁ~。よくポンコツだとか言われてるけどやっぱりドラえもんは偉大だよ。ひみつ道具が便利すぎる。
今度は木目が入っている和風な模様にしたドアから束の居場所へと出る。
ーーーガシャン
…………………………あ。
「うん?この物音は………空だぁ!!空ぁぁぁぁぁ…あぁ……………あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
僕の足元を見て絶叫するウサ耳装備の束。ご丁寧に「ガーン」というSE付き。また無駄な発明を………
「それはぁぁ!!束さん渾身の『超リアル・動く空くんフィギュアボイス付き1/12スケール』がぁぁぁぁぁぁ!!!」
……………踏んで正解だった。
「そんなことより束、今日は何の用で……」
「そんなことぉ!?いま、そんなことって言ったぁ!!?束さんにとってこれは死活問題なんだよ!ただでさえ空と会える回数が少ないっていうのに日々の癒しがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ふぁぁ~……束様、煩いです。」
パジャマ姿で銀髪の女の子が眠そうに目をこすりながら歩いてくる。そういえば束に預けたんだっけ。
「あ、クロエちゃん、おはよう。」
「おはようございます、お父様。」
「ちょっ!私を無視しないで!!」
「クロエちゃん、なんで僕がここに呼ばれたかわかる?」
「えっホントに無視しちゃうの!?」
「それはですね……今日IS学園に入学する一夏様に専用機を届ける、ということがひとつ。あちらと束様との間で連絡を取れるようIS学園にお父様を送るということがひとつです。」
「え?私、放置されてる?空気扱いされてる?」
「………つまり、一夏くんたちが卒業するまであそこで過ごすってこと?」
「…あぁ…なんか新しい感覚……」
「そういうことになります。……といっても、ならざるを得ない、が正しいですが。」
「これが……無視され続ける快k…おぉっと危ない!また変な扉を開くところだったぜぃ。」
「それはどういう……ってまさか!」
「はい。お父様がISに乗れるということを束様が公開しました。」
「やっぱり………で、束。どうやって行くの?」
「……………ふぇっ?…あ、あぁそのことね。それなら大丈夫!この人参型ロケットでひとっ飛びだよ。」
「どこでもドアあるじゃん。」
「そう、確かにどこでもドアの方が便利だ。だが、それだとインパクトが足りないのだよ空くん。それに、目的地までの道でくつろぐという至高の時間を味わえるではないか!」
「くつろぐも何も、これ見るからに一人用なんだけど。」
「束様……(お父様と密着する口実として作りましたね?)」
「うぇっ!?そそそそんなことないよ!!」
「動揺しすぎです。私だってそうしたいというのに…大体、束様はですね………」
僕がドイツで拾ってきた女の子、クロエ・クロニクル(束命名)と束が言い争っている間に入学式が終わってしまったらしく、すぐに出発ということになった。クロエちゃんは留守番だからIS学園に行くのは僕と束の二人。で、結局束が駄々をこねて人参ロケットで向かうことになった。クロエちゃんを入学させても良かったんだけど、彼女がいないと束の生活が家事全般でままならなくなるから仕方がない。
クロエちゃんに見送られながら束とロケットに乗り込み、発射。自分が飛ばされてる感覚がするが………狭い。というか束の柔らかい胸がむにゅむにゅと押し付けられてヤバイ。色々とヤバイ。束の顔を見ると、何かを期待しているような眼差しで僕を凝視していた。さては………
「謀ったね…」
「あはは……バレた?…たまにはいいかなって。ほら、私達最近会えてなかったでしょ?だから空に甘えたくて……」
「……それもそうだね。ほら。」
束の腰に左手を回して抱き寄せながら右手で頭を撫でる。しばらくすると、束が話し始めた。
「実はね、いっくんの専用機を造るの行き詰まってたんだ。でも、もうすぐ入学だし、くーちゃんもまだ子供で手伝いは無理だしで一人でやるしかなかったんだよ。」
「言ってくれれば手伝ったのに。」
「それは!………いつも空に頼ってばっかだったから、また空に頼るのも、迷惑…かな………って」
「迷惑、だと思ったことなんて一度も無いよ。僕だって、束に会えたから生きる世界が広がったし、束のおかげで両親の夢を叶えられたんだよ。それとも、僕が束に頼ったのは迷惑だった?」
「そんなことはない!!!それは絶対にない!!!!」
「それだよ。僕も同じ気持ちさ。だから……何かあったら、辛かったら僕に相談しな?僕はいつでも束の味方だから。」
「そ、らぁぁ…………あ、ありがど…う…ぅぅ」
「ほら、泣かない。僕がいるから。それに、僕は束の笑ってる顔が好きだから。」
束が両手で僕を抱き締めてくる。無言で、優しく、強く。そして、不意に上げた顔には可愛く綺麗な笑みが浮かんでいた。
「大好きだよ、空。」
ーーーー僕もだよ。
***
IS学園に着く前に束はいつもの調子に戻った。あの後、千冬や真耶のことはどう思っているか訊かれ、「もちろん好きだよ。」と答えたら頬を膨らませてしまった。訳がわからないまま損ねた機嫌を直すため、束と軽くキスをした。うん、柔らかかったよ。目を閉じてプルプルしてた束も可愛かったし。おいしかったです。
「で、どうやって降りるの?」
「それは……着陸寸前に外に放り出されちゃうよ♪」
「おい待て束なんだそれ聞いてないぞ。」
「大丈夫大丈夫!私達が外に出たらこのロケットは勝手に潜水艦にワープで戻るから。」
「そっちじゃなくてね……」
「あ。もう着くよ。」
「はぁ!?ちょっと待っ……うわぁ!」
視界が一気に明るくなって体が宙を舞う。咄嗟に束を抱き寄せ、彼女を衝撃から守る。直後、背中に痛みが広がった。束は無事なようだ。
「痛い………」
「もう空ったら、だ・い・た・ん♪」
「へ………?」
目の前の束から視線を外し周りを見る。立ってこちらを見ている一夏くんと金髪の女の子、それと座っている箒ちゃん、鈴ちゃんと見知らぬ女の子たち。そして、羨望に満ちた瞳をじーっと束に向ける真耶と、背後に阿修羅でも見えそうなスーツ姿の千冬。
………………………終わった。
***
はい。空です。千冬に説教を食らいました。人参ロケットのことで束と一緒に十分間きっちりと怒られました。きつかったです。正座は……嫌い。
「おい空、聞いているのか。」
「あー……うん。死にそう。」
「はぁ………今回はこれくらいにしておいてやる。今日の20時に私の部屋に来い続きはそこでだ。……それでだな、何故束と抱き合っていた?」
「それは……」
「それは?」
「そんなことより今日は用事があって来たんだよ、ちーちゃん。」
「………ふむ。そういえばそうだったな。で、何の用だ?」
「それはだね……はい、いっくん。」
「へ?この…腕輪はなんですか?」
「ちっちっち、これは腕輪じゃなくてガントレットと言うんだよ。ちなみに君の専用機だよ。」
『………はぁ!!?』
「専用…機……ってセシリアが持ってるっていうあれか。」
「そうそう。この束さんがいっくんのために造ったんだよ!大事にしてね!」
「あ、ありがとうございます。」
「ISを造った……てことはまさか!」
「ふふふ……そう!この私がかの大天才篠ノ之 束だ!」
『な、なんだってぇぇぇ!!!』
このクラスの皆ノリがいいね…。
「あれ?そっちの男の人は……?」
「今朝ニュースでやってた!二人目の男性IS操縦者なんだって!」
「え…?てことはIS学園に…?」
「あぁ。だが、こいつは私と同い年なのでな。生徒として、ではなく教師の一人としてこのクラスにいることとなる。皆、敬意を持って接するように。」
『キャァァァァァ!!!』
あ…ぁ……耳が……。
「ま、待って下さい!!そんなの認められませんわ!」
さっきから立ったまま呆けていた金髪の女の子が千冬に異議を申し立てた…って勇気あるなぁあの子。ほら見てよ。千冬があからさまに不機嫌そうな顔してるし。
「オルコット、何が気に食わない?」
「先程も申しましたが、この極東の島の、それもただISが扱えるだけという男がこの学園の教師を務めるなど言語道断だと言っているのです!!」
「ほぅ…貴様、何を以てこいつをそう判断している?やはり男だからか?」
「当たり前ですわ!男なんてみな…」
「ならひとついいことを教えてやろう。今の世の中に出回っているISのコアと生命維持機能以外は全てこいつの発明だ。」
「なっ!…織斑先生、冗談ですよね……?」
「いやいや、ちーちゃんの言ってることは正しいよ。ISは束さんと空との共同の発明なんだよね。この束さんが作ったのはそのISコアと生命維持機能だけ。ISコアから機体全体に繋ぐ回路や量子変換技術、加えて、君のISにももちろん装備されているであろう武器も、全部空の発明だし、全部空から教わったものなんだよ。」
『……え?』
「な…な……嘘…でしょう?」
え。何その顔。クラスの皆も口をあんぐりと開けて驚いてるし。そんなに意外?……なんか傷付くなぁ。でも仕方ないか。束ってそのことについては誰にも言ってなかったみたいだし。(クロエを除く)
教室が一瞬静まりかえる中、僕のよく知る二人が席を立った。
「嘘ではないぞ。」
「嘘じゃないわよ。」
「ど、どうしてそういうことが言えるんですの?」
「だって、私の専用機を作ってくれたのって空だもん。」
「私のもそうだ。どちらもISのコアから作ったと言っていたな。」
ドヤ顔で言う二人に一同また驚く。あれ、千冬も真耶もドヤ顔だ。珍しい。というか千冬そのこと知ってたんだね…。束は言うまでもなく。…て、一夏くんこのこと知らなかったんだ。なんか悲しい。
とここで千冬が手を叩いて注目を集める。
「空の処遇について異論はもうないな?…よし。なら本題に戻ろう。オルコットと織斑で勝負をし、勝者を一組のクラス代表とする。試合は今日からきっかり一週間後とする。こちらも異論はないな?」
「ま、待ってくれ千ふ……」
「ないな?」
「は、はぃ……」
「そうだ、ついでに空も参加させるか。そこで実力を示せば、女尊男卑の輩も手出しできなくなるぞ。」
…………余計なお節介で。
鈍感って一種の病気だと思うんだ。