今回はちょっと短めになってしまいました。
夏休み前は忙しいので……色々と。次の更新は七月半ばとなる気がします。
原作崩壊って難しいよね。
自分でストーリーを作らなきゃいけないから。
でもそれがいい!
やぁ皆、星野 空だ。
束、千冬と一緒にあっさりと合格しちゃったよ。藍越学園に。
千冬がかなり優秀で驚きだった。
どうして仕事と勉強を両立できたのか訊いてみたところ、「お前と一夏がいてくれるから頑張れたのだ。」と返された。
うん、役に立てたのならなりよりだよ。………何か特別なことしたっけ?
入学してから二ヶ月。
千冬は何人か友達ができたらしく、楽しそうに会話するところをよく見る。
僕も初めての男友達ができ、帰りに寄り道したり遊んだりしている。
束は………一人黙々とPCをいじっているため、相も変わらず友達は僕と千冬の二人だけ。
それだけならまだよかったんだけど、よく問題を起こす。
だから、束を制御できる僕と千冬が彼女の抑え役となっている。
これはある日のひとコマ。
※※※
四時間目の物理が終わってようやく昼休みの時間。
始まって5分あたり、僕がまだ自作の弁当を食べていた頃に、担任の先生がやって来た。
「なぁ、星野。」
服が真っ黒の先生が話しかけてきた。
………………何故?
「……先生、なにがあったんですか?」
「篠ノ之のやつがまた何かしてると聞いて空き教室に行ったんだがな、ドアを開けたら墨汁が飛んできて………」
「あぁ…………ご愁傷さまです。」
「器物破損だとかそういうものは無かったんだが、その墨汁を飛ばす道具を持って逃げやがったんだ。おかげで廊下が墨汁だらけだ…………墨汁、落ちにくいんだがなぁ…」
「あはは………それで、千冬でも止められないから僕のところに来た…ってところですか。」
「ああ。毎回毎回申し訳ないが…」
「わかりました。引き受けます。」
「…今度、何かジュースを奢ってやるよ。」
「……なっちゃんのオレンジでお願いします。」
そう言って僕は席を立ち、廊下に出た。
束は校内を走り回っているようだから大声を出せば聞こえるかな?
「束!!!いい加減戻ってこい!!!!」
「あははは~~!やぁ~だよ~~!」
「おい、束、待て!!」
「ふふふ……そんなちーちゃんに…えいっ!!」
「ぬぉっ!!」
「あはははは!!!ちーちゃん真っ黒~!!」
「たぁ~ばぁ~ねぇ~!!!」
「じゃあね~ちーちゃん。逃げるが勝ちなのだよ!!」
「貴様ぁ!!許さん!!!」
……今回も千冬、大変そうだな。
なら、いつもので…
「今すぐ戻ってきたら、頭撫でてやるぞ!!!」
「え!?ホンt…ふ、ふんっ!!今回は引っ掛からないからね!!!」
さすがにこれくらいは学習するか。
なら…
「膝枕をつけて耳掃除もしてやるぞ!!!」
「うっそ!!?なら今すぐ戻r…ま、また罠だね!?」
「くっ……こういう時だけあの篠ノ之さんが羨ましい……!!」
「いいなぁ~膝枕。それに、耳掃除まで………耳元でふぅ~って…」
「あぁ………想像するだけで気分が……私、ダメになっちゃう…………もっと…もっと甘やかしてぇ……」
…………………。
…………………………………。
うん、僕は、何も、聞かなかった。
「なら、窓から飛び降りるぞ!!!!」
「へぇっ!!?ちょっ、待っt…ど、どうせそれも嘘でしょ!!」
束の叫びには反応せず、僕は自分の教室に戻り、開いている窓に足をかける。
「嘘!?うそだよねぇ!?返事してよぉ!!」
「ち、ちょっと星野くん?本気じゃないわよね…?」
「おい、お前、正気か!?」
クラスの人、それと廊下の人の視線を一身に浴びながらも、体を乗り出す。
「束はこうでもしないと止まらないからね。でもまぁ、これじゃ重症どまりかな。」
そう言って後ろ向きに倒れるように窓枠から手を離………す直前。
「ま、待ったぁぁぁぁぁぁ!!」
「ま、待てぇぇぇぇぇぇぇ!!」
束と千冬が勢いよく教室に入ってきて、束が僕の両足をがっちり掴み、千冬は窓をシャッと閉めた。
予想はしていたが突然のことだったため、僕は足を滑らせて床に落ち、尻餅をついた。
そこに束が、頭を僕の胸に押し付けながら抱きついてくる………って束の胸がっ……
「そ、空ぁ……しん、死んじゃやだよぉ……私には、空が、必要なのにぃ……」
………束、割と本気で泣いてないか?
そして、僕の側に膝をついてうつ向き、瞳を僅かに濡らしている千冬も口を開いた。
「そ、そうだ!勝手に死なれては困る!………だから、あの二人みたいに、いなくならないでくれ…」
…………
さすがに悪いと思い、二人の頭を撫でることにする。
ついさっき、戻ってきたらするって言ったし。
「ほら、束も千冬も泣かないで。」
「わ、私は泣いてなどいない!!」
「とにかく、僕は二人の前からはいなくならないよ。」
「ほ、ホント……?」
「勿論だよ。」
なでなで。
「あ、あの…空……?」
「うん?束、どうかした?」
なでなでなで。
「そ、そろそろ頭を撫でるのをやめて欲しいんだけど…」
なでなでなでなで。
「あぅ……ぁ……ぇ……」
「…………さすがの束さんでもこれは恥ずかしいよ…(ボソッ」
……二人とも顔が真っ赤だけど、どうしたんだ?(無自覚)
ま、かわいいからいいか。
この日を境に、束が問題を起こすことはなくなり、周りの生徒から生暖かい視線を受けるようになった。
本人は「くぅ……!これはこれで居心地が悪いぃぃぃぃぃぃ!」と叫んでいたが。
そして僕は、陰で「天然ジゴロ」と呼ばれるようになったようだ。
解せぬ。
ちなみに、束が何故か耳かきを持っていたので、膝枕と耳掃除は放課後にちゃんとやってあげました。
羨ましそうに見てる女子には、さすがに同じ耳かきを使い回すわけにはいかなかったので、昼に残した弁当をわけてあげました。
弁当を食べた女子たちは、嬉しさと悲しみと後悔が混ざったような顔をしていました。
男子たちには凄い形相で睨まれました。
解せぬ。
※※※
あれから一年、僕たちは高校二年生になった。
高校一年生の頃、人目を気にせずに撫でたり皆の言う「あーん」をしていたためか、束がところ構わず抱きついてくるようになった。
どうやら羞恥心というものを捨てたらしい。僕は初めからなかったけどね。
しかも、「箒ちゃんも、いっくんにやればいいじゃん。あの鈍感ないっくんでも、箒ちゃんを意識するかもしれないよ!」と箒ちゃんに助言していた。
後日、顔を真っ赤にしながらもどこかイラついている箒ちゃんを見ることになったけど。
僕らの生活は特に変わりなく、強いて言うならばいつも相談に乗ってあげる後輩ができたことぐらいだ。
その後輩は僕と同じ料理研究部の山田真耶という女の子で、部活の料理中や放課後に立ち寄る喫茶店などでよく話を聞いている。
彼女は内気な性格を直したがっているため、相性が良さそうな千冬もたまに連れてきているので、千冬とは早い段階で仲良くなったようだ。
千冬と会わせて三ヶ月ほどが経った頃から、二人は同時に溜め息をつくことが増えた。
どうかしたのだろうか?
聞き出そうとしても答えて貰えず、箒ちゃんが一夏くんを見るような目で見られた。
何故だ。
※※※
束はかなり小さいときからずっとあるスーツの設計をしている。
僕の両親がなし得なかった、空を個人で飛べるようになるスーツだ。
ただ束の場合は、宇宙への進出や宇宙開発が視野に入っているからさらに性能、技術を引き上げなければならない。
そのためか、なかなか設計の段階が終わらないのだ。
手伝おうとして断られたこともしばしば。
一人で完成させたいから、ということらしい。
けれど、色々と変わった今の束なら受け入れてくれるかもしれない。
そう思い、PCに向かっている束に声をかける。
「ねぇ、束。」
「うん?どうしたの?」
「その設計、手伝ってもいい?」
「え~?前も言ったけどさ、一人でこれは仕上げたいんだよねぇ。」
「やっぱりダメ?」
「うーーーん………………」
「ほら、僕と束の共同作業だと思ってさ。」
「…共同…作業………いい。その響きすっごくいいね!まるで私たちが夫婦みたいな………あぁ、早く来年にならないかなぁ……そしたら空にサインしてもらってそのまま二人で……………」
………で、結局、手伝っていいの?ダメなの?
「じゃあ、空!一緒に完成させよう!!空の両親のためにも………ね?」
「…っ!…ありがとう。」
この日から束の製作作業を手伝うことになった。
設計図の完成は高校二年の間に終わるだろうけど、実際に機体を作り上げるのにはもっと時間がかかりそうだ。
高校卒業までには終わるかな。
Q. 空くんスルースキル高い。そして鈍感すぎる。何故だ。
A. 15歳まで重度の引きこもりだったからです。
イチャイチャまでが遠い…
だがやるしかないのだ!
ちなみに束が作った道具は、自動照準の据え置き型の銃です。
水でも良かったのになぜ墨汁にしたのか。
束だから。
………くぅ、文才が欲すぃ