笑顔仮面のサディストがダンジョンに潜るのは間違ってるっすか?   作:ジェイソン@何某

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深読み(故意)をした結果どうなるのか→大したことにはなりません。




第4話『深読みごっことアイテム確認っす』

「……はぁ…全く…ベル君、駄目じゃないか。今日からボク以外にも女の子が居るんだってことを忘れちゃ」

「はい…すみません…」

 

 なんだろう、似たような光景をほんの数時間前にも見た気がする。ソファーの上で腕を組むヘスティアと、その眼下で正座をしているベルを眺めながらもルプスレギナは心の中で呟いた。

 

 

「ふぅ……さて、ルプスレギナ君もいつまでもそうしてないで、シャワーを使ったらどうだい?」

「うぇっ…い、いやぁ、私は別に大丈夫っすよ。魔法使えるんで」

「魔法、ですか…? え、でも、どうやって体を…」

 

「《洗浄(クリーン)》」

 

「「………え?」」 

 

 シャワー、という言葉に露骨に嫌そうな表情を浮かべたルプスレギナを訝しむヘスティア。挙句の果てには魔法で済ませるなどと言い出すと、素直な疑問を口にしたのはベルだった。

 

 その疑問の言葉を最後まで聞き切る前に、ルプスレギナは洗浄の魔法を唱える。するとルプスレギナの体が淡い水色の光に包まれ、数秒もしないうちに光が消えると、風呂上がりの石鹸の様な良い香りが部屋に僅かに漂った。

 

「いやぁ、良いお湯でしたっすよ~」

「いやいやいやいや!!い、今のは何だい!?」

「何って、魔法すけど…?」

「……君の(世界の)魔法はなんでもありなんだな…」

「それ、どっかの爪切りさんも言ってたっすね」

 

 元々ルプスレギナは全く汗を掻いていなかったし、服もほんの少し埃が付いていた程度で目立つ汚れは無かったので正直魔法を掛ける前と外見的な違いはさほど見られないが、漂う石鹸の香りの発生地が他ならぬルプスレギナ自身なのだから、あの魔法は出まかせでも何でもないのだろう。

 

 爪切りさん?とルプスレギナと会話を続けるヘスティアの隣で、ベルは未だに呆けていた。

 

 

……

 

 

「さて、と…それじゃあそろそろ明日に備えて寝ようか。」

「はい、神様。 …あ、でも寝られる場所が…」

 

 なんとかベルが我に返ったところで今日はもう寝ようと切り出したヘスティアと、それに賛同したベルであったが、ここで問題が生じた。

 

 この隠し部屋にはベッドが一つしかないため今まで――といってもまだここ数週間の話だが――は、ヘスティアがベッドで、ベルがソファーで寝ていた。

 

 しかし、今日からはこの部屋で寝るのが3人となる。すると当然一人は新たに寝る場所を確保する必要があるが、生憎とそんなスペースに余裕はない。困ったように悩む素振りを見せたのち、ベルは始め自分が雑魚寝をすると提案したのだが、そう気を利かせてくるのを予期していたかのようにヘスティアが待ったを掛ける。

 

「そんなわけにはいかないよベル君っ! ここは、一番新しい団員であるルプスレギナ君にベッドを使ってもらい、ボクたちは一緒のソファーで寝ようじゃないか!」

「え、えぇっ!?」

 

 ソファーであればベッド以上に狭くて密着せざるをえなくなる(・・・・・・・・・)

驚き、遠慮しようとするベルをなんとか丸めこもうとするヘスティアに対し、これまでずっと静観を決め込んでいたルプスレギナがカツンとわざと足音を立てて歩み寄る。

 

 

 ――ベルが気を利かせるのをヘスティアが予期していたように、ヘスティアがこういった行動に出る事を予期していた者もいる、そして…その人物は今、メイドとしての表情で二人の傍らに立った。

 

 

「ヘスティア様、恐れながら私如きにベッドを御譲りする必要は御座いません。」

「なにっ、そうかい…? ならベル君、ボクと同じベッドで…」

「いえ、その必要も御座いません、私は雑魚寝をいたしますので」

 

「「………え?」」

 

 本日二回目のシンクロ。この発言はヘスティアのみならず、ベルも意外だったらしい。二人は慌てて此方を説得しに動く。

 

「いやいや、そんな必要は無いよ! ボクはベル君と二人で寝るから、君はベッドでもソファーでも好きな方を選んでくれたまえよ!」

「そ、そうですよ! …ぁいや、神様と一緒にだなんて恐れ多くて寝れないですけど、雑魚寝は僕がするので…」

 

「いえ、そういうわけにはまいりません」

 

 二人の説得を一言でバッサリと切り捨てる。ぽかんと口を開けて唖然とする二人に、ルプスレギナはにこりと微笑んだ。「ルプスレギナ君、ちょ、ちょっとこっちに…」なんてたまらずヘスティアはルプスレギナを部屋の隅に連れて行き

 

 

「る、ルプスレギナ君、さっきのはなんなんだい?」

「はっ、ヘスティア様のご意向に沿って、勝手ながらあのような行動に出させていただきました」

「………ぇ?」

 

 ドン、なんて自分を壁際に立たせて壁ドンをしたヘスティア…だが、30㎝という身長差はとてつもなく大きい。ルプスレギナの腕の真横に手を突き威嚇する様は、申し訳ないがただひたすらに可愛い。「邪魔しないでくれ」とはっきり口にしない辺りにヘスティアの優しさ(甘さ)を感じつつ、頭の中で黒笑を浮かべたルプスレギナは平然と告げた。その後の間抜けな呟きは、聞こえないふりをして。

 

 

「ベル君はまだ幼く、思春期真っただ中。そんな中で私”達”と同じ屋根の下で過ごすだけならともかく、同じ部屋で寝るというのは少々刺激が強すぎることと存じます。あの子には真っ直ぐ(馬鹿正直に)純情に(ウブなままの)奇麗な身体(童貞)で居てほしいというヘスティア様(母親)眷属(子供)を思う慈悲深さ、感服いたしました。」

 

「…ぇ…? …は…??」

 

「先ほどの、“神としては一見軽率すぎる行動”も、ヘスティア様の真意を理解したうえで、私が時には主にも意見することのできる従者であるという事を確認するためにわざとされたことなのでしょう?」

 

「…ぇ…えぇー…」

 

 そうなのでしょう?などとあくまでも確認するかのような物言いに、ヘスティアはすっかり否定する気力を無くしてしまう。ここで否定しようものならば、ルプスレギナがどんな行動に出るかが分からないからである。それに――

 

 深い笑みを浮かべるルプスレギナに、ヘスティアは幻視したのだ。高級そうなスーツを着た、微かに日に焼けた肌に黒髪の眼鏡を掛けた男が胡散臭い笑みを浮かべている姿を…

 

 

 

    ……いや誰だよ!?

 

 

 ヘスティアの脳内ツッコミに答える者はいなかった

 

 

……

 

 

「ささ、というわけで、ベルっちはどうぞソファーに寝るっすよ」

「あ、あの…やっぱり、雑魚寝は僕が…」

「いやいや、遠慮はなしっす。私は女である前に、一応ベルっちの後輩すからね」

「後輩…そ、それならなおのこと、先輩として僕が雑魚寝を「はいお休みっすー」トンッ

 

 ヘスティアを深読み(故意)によって丸めこみ、次はベルだったのだが、これがヘスティアよりも手強い。無理やりソファーに座らせるまでは出来たものの、それでもまだ自分に雑魚寝をさせまいとする。…面倒くさい。そんなほんの僅かに、ちょびっとだけ抱いてしまった考えは、ベルへの手刀という形で表われた。かなり力を抜いているのは評価すべきポイントだが、流石は駄犬と言わざるを得ない。

 

「ちょっ…!!?る、ルプスレギナ君…!?」

「大丈夫、これが《睡眠(スリープ)》の魔法っす」

「いやいや、ボク()に嘘は通用しないからね!?」

 

 こてん、と眠った(気絶した)ベルを寝かせてタオルケットを掛けたルプスレギナの背後で、ベッドからその様子を見ていたヘスティアが声を上げた。

しれっと嘘を吐くも、聞こえてきた抗議の言葉にへらへらと笑う事で強引に無視をする。

 

 因みに、自分が眠るのはベルが寝ているソファーと、ヘスティアが寝るベッドの間の床だ。ヘスティアが懸命にせめて違う場所で寝させようとしたが、無論「万が一、億が一、兆が一にも間違いが起きないよう私がヘスティア様とベル様をお守りします」と誠実(笑)な瞳で訴えて丸めこんだ。

 

「頼むから、ベル君に怪我だけはさせないでくれよ?」

「はっはっは、私は回復職(ヒーラー)っすよ? それに、力の抑え方くらい弁えてるっす(…多分)」

 

「…なんか、今最後に物凄い不穏な言葉を付け足さなかったかい?」

「んー、どうっすかね?」

 

 嘘と見抜かれないように言葉を濁しつつ、半目のヘスティアにへらへらとした笑みを浮かべる。ころころと表情を変えるルプスレギナにどうにも拭えぬ不安と……ベルと一緒に寝れないという少しの(・・・)不満を抱きつつも、ヘスティアはやがて布団を被るのであった。

 

 

……

 

 

「…」

「…」

「……(ちらっ」

「……(ニコニコ」

「………(ちらっちらっ」

「………(ニッコニッコ」

 

「……ルプスレギナ君…?」

「はいっす」

「君は、寝ないのかい…?」

「いやだなぁ、ちゃんと寝るっすよ? ヘスちゃんが寝たら(・・・・・・・・・)

「ぬぐぐ…」

 

 部屋の明かりはすでに消え、先に気絶…もとい、眠っているベルの寝息だけが聞こえている。では、同じく寝ているはずの二人はどうしているかというと、この通り未だに攻防を続けていた。

 

 片やベルとルプスレギナに背中を向け、僅かに体を丸める形になりつつも、時折寝返りを打つ振りをして此方の様子を窺う女神。片やそれを既に予測してましたと言わんばかりにベッドの傍らに立ち、にこにこと笑顔を張り付けているメイド。

 

 ルプスレギナが寝静まっている間にこっそりベルのソファーに潜りこもうという算段は、敢え無く失敗に終わった。

 

 

……

………

…………

 

 

 時計を見れば既に深夜を回ったぐらいの時間になり、ヘスティアも完全に眠っているのを確認したルプスレギナは「あー楽しかった」と言わんばかりに満足げな笑みを浮かべ、部屋を一旦後にする。

外へと通じる階段などは灯りが無いので完全に真っ暗闇ではあるが、人狼(ワーウルフ)の保有する闇視(ダークヴィジョン)常時発動型特殊技能(パッシブスキル)があるルプスレギナには関係なかった。

 

「(アインズ様やナーちゃんが保有してたけど…やっぱワーウルフも持ってるのね…)」

 

 もうごく自然に敬称を付けたり、(ルプスレギナ)と同じ戦闘メイド(プレアデス)の一人であるナーベラル・ガンマをあだ名で呼んでいる事に違和感なんてない。

 

 教会を出たルプスレギナは、意識を集中しダークヴィジョンのスキルを切ると、頭上に広がる満天の星空を見上げる。

 

「おぉー…こりゃ凄いっすね…」

 

 『オーバーロード』での現実世界は2130年ちょいくらいの設定で、そこは大気汚染、水質汚染、土壌汚染、あらゆるが進んだ最悪の自然に環境になっていた。昼も夜もスモッグに覆われ、こんな星空なんてゲームの世界以外で見た事の無かったモモンガことアインズはかなりの感動をしていたが――まぁ、自分の抱いている感動は彼に比べれば弱いだろう。

なんせ自分の現実世界は2016年…勿論、住んでいるのが都心なのでここまで奇麗な星空は滅多に見れないが、それよりも自分がファンタジーな世界でファンタジーな存在になっているという事の方が驚愕だし感動ものだった。

 

 とはいうものの、頬を撫ぜる心地の良い風は自然と気持ちをリラックスさせ、ルプスレギナはアインズがやったことを自分もやろうと考えた。

 

「《飛行(フライ)》」

 

 魔法を詠唱し、ルプスレギナの足は地面から離れる。跳んだわけではなく、飛んだのだ。翼を生やしたとかではなくて、これも魔法の一種である。まさかこの《飛行》の魔法までもがこの世界じゃ貴重なのだと、今の彼女は知らない。

 

 

……

 

 

「うっひょー!!これは、最高っすねぇー!!」

 

 現実世界じゃまず体験出来ぬだろう、生身の体での飛行。やはりこの体は頑丈なもので、或る程度の高度まで上がっても寒さを感じない。まぁ、万に一つの可能性を考えて、雲よりも少し上くらいの位置で止めておくが。

 

「はぁー…これがアインズ様の見てた景色…こりゃあ“世界征服”とかうっかり溢しちゃうのも分かるっすね」

 

 まぁ、その結果として随伴していた最上位悪魔が本気に受け取って大変なことになるわけだが。

 

 

 辺り一面に広がる夜空や、雲の下にある都市を一通り眺めて堪能した後、視線はダンジョンの真上に聳える摩天楼施設(バベル)へと移る。

雲を抜けた場所まで上がったにもかかわらず、バベルのてっぺんはまだ自分よりも高い位置にあった。まぁ、この距離なら《闇視》と一緒に《千里眼(クレアボヤンス)》を発動させれば難なく最上階まで覗き見ることも出来るだろう。

 

「……にしても、あの塔ほんとに50階建てなんすかね? 50階って、こんな高いもん…――」

 

 

 そうして目を凝らした時、ルプスレギナは確かに見た

 

 

 

    此方を嘗める様に見つめ返す(・・・・・)、アメジスト色の双眸を――

 

 

 

「――…ッッ!!?」

 

 ほんの一瞬だけだったが、確かに視線がぶつかったのを感じ己の本能が鳴らした警鐘に従ってルプスレギナは迷わず背を向け急降下する。既に背中に視線は感じないが、それでも一切減速すること無く耐久度の不安な教会の屋根の上に降り立つとバベルから身を隠すように尖塔の陰へと隠れる。

そっと顔を出してはまたひっこめを数度繰り返し、完全に視線を感じないのを数分掛けて確信したところで、漸くルプスレギナはずるずるとへたり込んだ。

 

「はぁ…はぁー、全く…私ってば馬鹿じゃないすか…?」

 

 全身にびっしょりと掻いた汗を《洗浄》で奇麗にし、ぱたぱたと右手で顔を扇ぐ。未だにこの世界の情報が欠落している状況下での杖も持たずに迂闊に出歩くという自身の行動があまりにも軽率であった事を漸く理解し、膝を抱えて顔を埋める。うーうーと暫し呻いて気分を紛わせ、漸く顔を上げたルプスレギナは自身の両手へと視線を落とした。

 

「そうだ、アイテム…今引き継いでるアイテムの性能を確認しておこう…」

 

 両手には、左右の人差し指と中指にそれぞれ2つずつ、計四つの指輪が嵌まっている。記憶が確かなら、『ユグドラシル』において無課金の状態だと装備できる指輪は左右に一つずつだったはず。もしもその法則がNPCにも当て嵌まるのなら、ルプスレギナが指輪を四つ装備するためには課金が必要になる。

 

「創造主様に愛されてるっすねぇ…」

 

 細かい値段は知らないが、指輪の効果が便利なものばかりである事を知っている為、決して安くは無いはずだ。まぁ左右合わせて10個付けれるアインズよりは圧倒的に少ないが、十分に心強い。

幸いにも、指輪の効果自体は鑑定の魔法を使うまでもなく、注視すれば勝手に理解できた。一つは行動阻害に対する完全耐性、一つは各状態異常への完全耐性または超耐性、一つは魔力探知妨害と、最後は…維持する指輪(リング・オブ・サステナンス)…飲食睡眠を不要にする指輪であった。

 

「あぁー…やっぱこれも持ってたんすねぇ…」

 

 原作でのルプスレギナ・ベータは、基本的に食欲旺盛でしかもメイドとしての仕事の時間外はごろごろと惰眠を貪るのが好きだという、ちょっと(?)残念な部分のあるキャラクターである。というか、一般的には残念な部分の方が圧倒的に多いが。

しかし、この維持する指輪(リング・オブ・サステナンス)はレベル100の階層守護者からメイドに至るまで広く普及されているという設定だったから、ルプスレギナはこの指輪を装備していた上で飯食って昼寝していたわけか…飯に関しては別に不思議でも無いが。

 

 

……

 

 

「ふぅーむ…まさか、アイテムボックスが開けるなんて意外っすね…」

 

 小説ではルプスレギナがアイテムボックスを開くような描写はなかったはずだが、今彼女の右手は虚空の中に消えていた。その先にあるのがアイテムボックスなのだと自然と理解すれば、中に何が入っているのかを探ってみる。

どうやら、『ユグドラシル』のプレイヤーがごく一般に使用している無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)--といっても容量制限は500kgまでという名前負けアイテムボックス――ではなく、容量は重さに関係なく20個までというごく一般的な物のようだ。

 

 そして肝心の中身だが、まずハイポーション3つ…これはわかる。次に、デスペナルティ無しで死者を蘇生させられる『蘇生の短杖(ワンド・オブ・リザレクション)』が2本…これもまぁ、まだ分かる。

次に、動物を召還するマジックアイテムである『動物の像(スタチュー・オブ・アニマル)』だが…ルプスレギナって狼に変身できるくせにこれは必要なのだろうか。

そして次が、予備のメイド服一式と聖杖。いざ装備してみなければわからないが、見る限りだと今の装備と性能に大きな差はなさそうだ。この時点でアイテムボックスの半分は埋まっているが、あと入っているのは1つだけだ。

 

「…何っすかね、これ」

 

 虚空から手を引き、取り出したのは自身の顔を覆える面のようなものだった。ただ、表面に目や口用の穴はなく、鏡のようになっている。裏面は白磁の陶器のような物になっており、魔法的な力は感じるが肝心の使い方が…あ、今頭の中に流れ込んできた。

 

「なるほど…」

 

 頭に流れ込んできた情報を確認するため、鏡になっている面に自身の顔を映す。するとどうだろうか、面は形を変え、自身の顔へと変化を遂げた。そのまま面を付け少し弄ってみると、また違う顔に変化したのを感じる…多分、どこの誰でもない適当な人の顔に。

 

 

 間違いない…これは、”Web版のルプスレギナ”がアインズから下賜された、顔を変える面だ。名前は確か『千変の仮面(カメレオン・マスク)

 

 確か、元々は『ナザリック地下大墳墓』に侵入してきたワーカーの1人、パルパトラが持っていたもので、その後ルプスレギナがエンリ・エモットという村娘に変装する時に使った物だったか。

 

 こういう作りだとは思わなかった。確か幻術の類だったはずだが、果たしてこれはこの世界でどの程度有効なのだろうか。神様がごろごろと存在しているこの世界で、この面で他人になりきるのは少し勇気がいる。要実験だろう。

 

 

 魔法に関しては『ギルド』に居た時に殆ど確認していた為、全部把握するのに時間は掛からなかった。分かってはいたがルプスレギナの習得している魔法は回復系や補助系が多く、攻撃系や状態異常系の魔法が少ない。それでもこの世界の人々はヒューマンは勿論のこと魔法の扱いに長けたエルフでさえも最大でも三つまでしか魔法を覚えられないらしいから、あるだけマシだと思うが。

 

「あとは、私の強さがこの世界でどの程度のものなのか、っすよねぇ…」

 

 魔導士としては破格の存在だ、それは間違いないだろう。では、魔法が使えない状態で、身体能力のみで戦えとなったときは? 普通魔導士というものは直接戦闘力は低いはずだが、そこは我らがルプスちゃん、妖巨人(トロール)の全力パンチも片手で難なく受け止め、一瞬でミンチにするだけの力はある。ただ、もしもそれが当たり前の世界だったなら、それは大した凄味にはならない。とはいえ、だ

 

「(私はこの世界では“レベル1”…それに、この世界での【ステイタス】は、ステータスに加算される…これ、かなりチートよね…?)」

 

 さっきこの世界を舐め腐って痛い目を見たばかりだというのに、もうこの考えようである。これはルプスレギナが駄犬というだけでなく、鈴木実そのものが能天気過ぎるからなのではなかろうか。

 

 

 結論、油断せずにいこう。そうすりゃなんくるないさ~。

 

 

……

 

 

「……ん?」

 

 もう夜中の3時を回った時間。リング・オブ・サステナンスのお陰で眠る必要が無いとはいえ、まさか初日から一睡もせずにベルたちが起きるのを待つわけにもいくまい。

 

 

 そんなわけで足音を立てぬように抜き足差し足で隠し部屋へと戻ってみれば…

 

 

「…いつの間に…」

 

 ベルのソファーに潜りこんで寝ているヘスティアを見ながらも、呆れたような、しかしどこか可笑しそうに呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    あ、因みに空いたベッドはありがたく使わせてもらった。

 

 

 




Q.《クリーン/洗浄》の魔法とか、これ生活魔法じゃね?
A.細かいこたぁいいんd…ごめんなさい、今後幾つかネタにしたいのでこの魔法に関してはセーフということでオナシャスosz

Q.ベル君に手ぇ出しちゃうのはやり過ぎじゃね?
A.ゴメーヌ。今後の反響次第で考え直します。

Q.深読みが浅い。
A.ゴメーヌ。

Q.指輪4つはやりすぎじゃない?
A.仮に自分がルプーの創造主だった場合、ルプーが唯一の自作NPCだったらレベルに関係なくいい装備とかつけてあげたいと思うのです。でも10個とかはやり過ぎだと思ったから、取り敢えず4つにしました。ほかになんかよさげな指輪とか思いついたら増やします←

Q.顔を変える面ってなんじゃらほい
A.Web版オーバーロードの『大虐殺-2』と、あとほんの少しだけ『舞踏会-5』で言及されています。一応仮面蟲とは別物扱いにしてます。

他何かご指摘等ございましたらどしどしお願いいたしますosz


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