笑顔仮面のサディストがダンジョンに潜るのは間違ってるっすか?   作:ジェイソン@何某

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 投稿時間設定して予約したつもりがそのまんま投稿しちゃったでござる←



第27話『ヤケ酒っす』

 

 

……

………

…………

 

 

 結局、あの後も3人はダンジョンの7階層に留まり続けることになった。漸く今日のダンジョン探索は終了となった頃には既に大分夕日が沈みかけていて、もう30分もすれば辺りが暗くなり始めることだろう。

 

「いや~いやいや…お疲れっすよ2人とも」

「はい、お疲れ様です」

「……お疲れ様です」

 

 あの後も、出てくるモンスターはすべてベルが1人で相手をし、ルプスレギナはリリルカの隣で周囲の警戒に当たるというのを徹底していた。流石に疲労の色を見せているベルと比べてまだまだ体力的に余裕のありそうなルプスレギナではあるが、リリルカの中ではそんな彼女に対し1つの疑念が浮かんでいる。

 

 …もしかして、装備と治癒魔法が凄いだけで直接の戦闘能力は低いのでは、というものだ。

 

 無論、そんな何の根拠もない推測を当てにするほどリリルカは愚かではない。しかし、もしもそうだとしたら…隙さえ何とか見つけられれば、メイド服や聖杖とまではいかずとも、彼女が指に嵌めている指輪の1つくらいは盗めるかもしれない。

 

 

「…今日は遅いですし、上の換金所を使いますか?」

「そっすね、それじゃあ早速行くっすか」

「…えっ、あっ…お2人とも、リリを置いていかないでくださいよ~!」

 

 ほんの僅かにほくそ笑んでいたその間に、2人は『ギルド』ではなくバベル内の換金所に行こうとした為、リリルカは慌ててその後ろを追いかけていく。

 

 

……

 

 

「お疲れさん、新入り」

「はぁ~い…お疲れ様です~…」

 

 制服から私服に着替えたヘスティアは、カウンターに座っている店主に挨拶を返すとフラフラとした足取りで店を後にした。

 

 本日の【ヘファイストス・ファミリア】でのバイトも無事終了…2日連続での長時間勤務にヘトヘトになったヘスティアを見た店長が、気を利かせて『明日は休んでいい』と言ってくれたのだが、裏を返せば2日後にはまた今日と同じか、下手をしたらそれ以上の重労働を課されるのかもしれないと考えると素直に喜んでいいのかどうかとなんとも複雑だった。

 

 昇降設備(エレベーター)で一気に外まで出たヘスティアは、そのまま重たい足を引きずるようにして本拠(ホーム)のある西のメインストリートに向かう。

 

「あぁ~…ヘファイストスめぇ…ボクがインドア派なのを知ってるくせに、容赦がなさすぎだよぉ…」

 

 ぶつぶつと零した恨み言は己の神友へ。自らが選んだ道とはいえ、まさかここまで容赦なく扱き使われるとは思ってもみなかった。先日、己の眷属(こども)の1人であるルプスレギナが来店したことで多少は大目に見てくれるかも、なんて密かに抱いていた期待は何だったのか。

 

「ルプー君に…ベル君に早く会いたい…っ! 2人に『お帰りなさい、神様!』…って感じで出迎えてほしいっ! ベル君には頭を撫でてもらって、ルプー君には膝枕をしてほしいぃぃぃ…」

 

 ルプスレギナの姿に続き、脳裏に浮かぶはもう1人の眷属であるベル。疲労困憊のヘスティアを、教会の前で2人が温かく出迎えてくれて。ベルが…そう、ベルが(ここ重要)晩御飯の料理をしている間は、ルプスレギナに膝枕で疲れを癒してもらう…

 

 疲れ切ったその表情が、あらぬ妄想で緩んでいく。知り合いの神々に見られなかったのは本当に幸運である。

 

 

『……さぁ、鑑定結果をどうぞっす!』

「……うん?」

 

 ふと、特徴的な口調と声が耳に届き、反射的に顔を上げ振り向く。

 ただでさえ背丈が低いうえにストリートはダンジョン帰りの冒険者でごった返していたが、そんな人垣の向こう側に特徴的な白い頭と大きな聖杖が確認できると、ヘスティアはパァッと喜色を浮かべ、幾分も軽くなった足取りで人ごみを掻き分けていく。

 

 

「はいっ! なんと……31000ヴァリスです!」

「………や…やぁぁーーーっっ!!」

「いやったーーっす! よっしゃっす!!」

 

 予想通り、道の隅に設置されている丸テーブルを囲むようにして、ルプスレギナとベルが立っていた。今日の成果が良かったのか、耳に届いた歓喜の叫びにヘスティアもまた嬉しそうにはにかみながらも、疲れなど吹き飛んだかのようにそちらに駆け寄ろうとしたが…ふと、気付く。

 

 ルプスレギナの前に叫んだのは、誰だ…?

 

 

「うっはぁー!! まさかの3万越えっすか!!」

「やりましたね、ルプーさんっ! …()()ッ!」

「はいっ! 本当に凄いですっ! ドロップアイテムはあまり出ませんでしたけど、まさかここまで稼がれるなんてっ!」

 

 背の高いルプスレギナの向こう側ですっぽり隠れて()()は見えないが、ありえないほどの大きなバックパックがぴょんぴょんと跳ねていた。

 

 そして、ヘスティアの耳に届いたのは明らかに可愛らしい女性の声。声の主がテーブルを挟んで向かい合っていたベルに走り寄り、2人で両手を合わせて喜び合ったことでようやく確認できたのは、ローブのせいで外見だけでは性別が判断できなかったが、その体つきは間違いなく少女――否、“女性”――であった。

 

 

「なっ……!!?」

 

 真っ白に固まったヘスティアをよそに、3人は酒にでも酔っているのではと思えるほどに騒いでは笑いあっていた。特にベルと謎の少女は――ヘスティアの目から見て――異常に距離感が近い。

 

 お互いに手を握りながらぴょんぴょんと跳ねている姿は、冷静に見れば何とも微笑ましいものだったのだろうが、生憎と今のヘスティアには“男女”が仲睦まじくイチャコラしているようにしか見えていない。その片割れが、彼女の愛する男だったならば余計にその光景はヘスティアにとって都合悪く捉えられてしまう。

 

「……はっ!?」

 

 ギリギリと悔しそうに歯軋りし、思わず背中を向けて逃げ出してしまいそうになったその時、何者かの視線を感じたヘスティアはそこでバッチリ…ルプスレギナと目が合った。

 

 

《……なにやってんすか、ヘスちゃん》

 

 やがて、ヘスティアの脳裏に直接語り掛けてくるように、ルプスレギナの声が響く。一瞬驚いて肩を跳ね上げるも《伝言(メッセージ)》の魔法であると気付いたヘスティアは慌ててかぶりを振り、ベルに見つからないように魔石灯の陰に隠れ、こっそり顔を出して。

 

《ルプー君!! ベ、ベル君に引っ付いてる子はいったい……いや、こっちに来るんだ!! 今すぐ! ハリーハリー!!》

《……ハァ…》

 

 此方を…正確にはリリルカを恨めし気に睨みながらもツインテールをヒュンヒュンと唸らせているヘスティアを見て『星 明子にはなれそうにないなー』などとどうでもいい事を考えていたルプスレギナであったが、《伝言》でのヘスティアからの()()()()に思わず溜息を零してしまった。……ヘスティアに気付いて見つめていたのは失敗だった。

 

 

「……えー、と…あ、あぁー! あはーはーはぁんっ!! いっけね、忘れてたー!」

「えっ…え、どうしました?」

「……はぁん…?」

「ごめんっす2人とも! 私ったらちょっと大事な用を思い出しちゃったっす!! ベルっち、後は任せたっすよ!! それじゃ!!」

 

 それでも、主神の命令とあらば拒否する権限などは無い。幸いにも()()()()()()を持っていたお陰様で2人にはほんの少し驚かれた程度で、怪しまれてはいないはずだ。

 流石のリリルカだって、こんなに人目の多い場所では下手な行動も出来ないだろうと考えて、ルプスレギナは2人の返事も待たずにさっさと走り去ってしまうのであった。

 

「「………変なの」」

 

 図らずも、ベルとリリルカはちょっとだけ心の距離が近づいた。

 

 

……

 

 

「――…で! 早速、聞かせてもらおうじゃないか!!」

 

 ベル達の元を離れてヘスティアに近付くや否や腕を絡み取られたルプスレギナは、そのままメインストリートを離れて路地裏へと連行された。そして今、木箱の上に腕を組んで仁王立ちするヘスティアに詰問されている。

 

「…いや、あの…聞かせてもらおうって、具体的には何をっすか…?」

「あの大きなバックパックを背負ってたオンナの事に決まってるじゃないか!」

「ですかー、ですよねー」

 

 蛇のようにウネウネと動くあのツインテールは一体どうなってるんだと逆に聞きたくなるものの、ヘスティアの纏う雰囲気がそんなふざけた発言を許してくれそうにない。

 とはいえ、リリルカとの出会いやベルとの関係について、それ自体には大してやましいことはない。リリルカの背後事情さえ知れれば、もっとはっきりと断言も出来たのだろうけど。

 

「あの子はベルっちと私が雇ったサポーターちゃんっすよ。今日出会ったばっかの」

「……嘘じゃないみたいだね。それで、ベル君との関係は?」

「ヘスちゃんが心配してるみたいな男女の関係は無いっすよ……今のところは…」

 

 神であるヘスティアには、下界の住人――ルプスレギナはかなり特異の存在だが――の嘘を見抜くことが出来る。難しそうに眉間に皴を寄せながらも頷いているのは、ルプスレギナの言葉が真実だからだと理解したからだろう。

 しかし、恋する女神(おとめ)の地獄耳を侮った。メインストリートから聞こえてくる、とある男女の会話を彼女の耳がバッチリ捉えたのだ。

 

「むむっ…!!」

「おぉっ? ヘ、ヘスちゃん?」

 

 急に走り出したヘスティアを、ルプスレギナは慌てて追いかける。建物の陰からメインストリートを覗き込んでいるヘスティアに続き、彼女もこっそり顔を出してみれば…

 

 

「それじゃあ、普段も中央広場で冒険者に雇われるのを待ってるんだ?」

「はいっ! なので、よろしければ今後もベル様とルプス様に、贔屓にしていただければリリも嬉しいですっ!」

 

 手を繋ぎ、手を繋ぎ、 手 を 繋 ぎ ながら、楽しそうに会話をしている白髪の少年(ベル)サポーターの少女(リリルカ)が、彼女たちの前を素通りしていった。

 

 

「「………」」

 

 

 気まずい、沈黙。

 

 

「………お」

「…ヘスちゃん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

怨怨怨怨(オオオオ)ォォォーーンッッッ!!!!」

「ギャーっす!!? ヘスちゃんッ!? ヘスちゃんが、邪神になっちまうっすーー!!?」

 

 狼の遠吠えよりも遥かに禍々しいヘスティアの嫉妬の叫びは、辛うじてベル達の耳に届くことはなかった。

 

 

「…これこれ、ヘスティア。そんなに大声叫んだら、近所迷惑だぞ」

 

「「……あっ」」

 

 叫ぶヘスティアに狼狽えるルプスレギナ――何故か半笑い――、たった1人と1柱によって形成されつつあるカオスな空間に、靴音と共に響くバリトンボイス。パッと元の状態に戻ったヘスティアは、声につられて振り向いたルプスレギナと共に声を上げる。

 そこには、ヘスティアの神友の1柱である男神・ミアハが、紙袋を片手にどことなく呆れた顔で佇んでいた。

 

「ミ、ミアハ…」

「こんばんはっすよ、ミアハ様。お騒がせしちゃって申し訳ないっす」

「うむ、こんばんはだな。元気そうで何よりだ。……して、ヘスティアはいったい何をしていたのだ?」

 

 そういえば、この路地裏を進んだ先に【ミアハ・ファミリア】の本拠(ホーム)である『青の薬舗(やくほ)』があるとベルが言っていたか。背後で燃え上がっていた赤黒い炎を消し、呆然とミアハの名前を呟くヘスティアに代わり、ルプスレギナは口調はいつも通りながらもしっかりと頭を下げ、謝罪する。

 ご尤もな質問に答えるべく口を開いたその刹那、ルプスレギナの真横を凄まじい速さで通り抜け、ヘスティアはミアハの腰にしがみ付く。

 

「ミアハぁぁ~~っっ!!! 聞いとくれよぉぉぉ~~…」

「ちょ、ヘスちゃん…」

「…ふむ、良くは分からんが、相当参ったことがあったようだな。どれ、よければ話を…」

 

 背丈の違いのせいで、ミアハの腰に抱き着きぐりぐりと頭を押し付けるヘスティアというこの絵面はちょっぴり危ない。しかし、ミアハは持ち前の寛容さとある意味いつも通りともいえる神友の行動に狼狽えることはなく、親身に話を聞こうとする、が。

 

 

「よし、行こうっ!!!」

「ぬおっ!?」

「ちょぉっ!? ヘスちゃん!!?」

 

 

 どうやらヘスティアはこの場で愚痴を零すつもりなど微塵もなかったようだ。

 突然腕を掴まれて走ることになったミアハは、身長差のせいで前かがみに走らざるを得なくなっており、紙袋の中身を落とさぬようにと気を付けながら追従し、ルプスレギナは先ほども似たような感じになっていたので、早々に慣れつつあった。

 

 

 

 

 そして……

 

 

 

 

「――うぅぅ…それで、それでぇっ…ヴェ…ベェル君が…うわ、浮気をぉぉぉ……」

 

 

 場所は、それほど離れていない路地に建つ小さな酒場。『豊饒の女主人』と比べると幾分も粗末な装備を身に着けた冒険者たちでごった返す店内を避け、出入り口横に小さなテーブルを置いてもらって、2柱はテーブルをはさみ向かい合う形で座っていた。

 

 樽ジョッキを片手にテーブルに突っ伏すヘスティアは、偶然前を通りがかった通行人や、先程注文していた野菜スティックを持ってきたウェイトレスから向けられる視線に気付くこともなく、つい先ほど自分が見た光景を吐き出してオイオイと大声をあげて泣き始める。

 

 

「……ふむ。…して、実際は?」

「私とベルっちで雇ったサポーターっす」

 

 そんなヘスティアを、ミアハは野菜スティックをポリポリと齧りながらも暫しの間見つめ、やがて思案するように顎に手を置いた後に現時点ではヘスティアよりもずっと信用できるだろう彼女の眷属(こども)に事実確認をした。

 ヘスティアの斜め後ろに控えていたルプスレギナが間髪入れずに正しい説明をすると、ミアハはやはり呆れたように溜息を零したのであった。

 

「いーや違うねっ! アレは下心をもってベル君に近付いたに決まってるさ! ベル君はボクのものなのにぃ~…」

「これ、ヘスティアよ。その言い方は聊か横暴だぞ。ベルは誰のモノでもない」

「勿論それは分かってるさ! でも、でもぉっ……ング、ング…ぷはぁーっ!! ルプー君、おかわり!!」

「いや、それは店員さんに言って…いや、まぁいっすけど…」

 

 今朝がた摩天楼(バベル)に入ってからは認識阻害の魔法を使用していないルプスレギナの姿は嫌でも周囲の目を引いている。それ以上にリアルタイムで醜態をさらしている女神(ヘスティア)の方が注目度が高く、ほとんどの冒険者は既に興味を失っていた。

 

 店の中に顔を覗かせ、店内を世話しなく動き回っていたウェイトレスに蜂蜜酒(ミード)のおかわりを注文すると、背後から…というか、ヘスティア達のテーブルから特大の号泣が飛び込んできて、慌てて振り返る。

 

 

「うわぁぁぁぁぁんっっ!!! ベル君愛してるよーーっっっ!!! お願いだから僕の前から居なくならないでおくれーーーっっ!!!」

「こ、これこれヘスティアッ!? だから、あまり大声を出すと近所迷惑だと…っ!!」

 

「あらら……」

 

 滝のように涙を流しながら、酒の勢いに任せてベルへの愛を叫ぶヘスティア。基本的に冷静なミアハも流石に驚き狼狽するのを見て、つい最近知り合った彼の()()()()()が居たら面白かったのにと考えてしまった。

 

 さすがに騒がしすぎると注意しようと出てきたウェイトレスに無言で100ヴァリスを握らせ店内に戻し、ルプスレギナはヘスティア達の位置からやや離れたその場所で2柱の様子を傍観しながら楽しそうに目を細める。

 

 

「あーもう、ヘスちゃんもミアハ様も可愛いんっすから」

 

 

 

 

 最近、サディストというかなんというか……“いい性格”に磨きが掛かってきたルプスレギナ(鈴木実)なのであった。

 

 

……

 

 

「いやはや、申し訳ないっすね。ヘスちゃんの自棄酒(やけざけ)に付き合ってもらっただけでなく、お勘定まで…」

 

 

 結局、あの後も浴びるように酒を飲んだヘスティアは叫び疲れたというのもあってか意識が半分以上睡眠状態にある。

 

 その瞬間は、まるで糸の切れた人形のように何の前触れもなく突然テーブルに突っ伏すという形だったものだから、それまでニマニマと見ていたルプスレギナが血相を変えて駆け寄り、無駄に大ごとになりかけるという事もあったのだが…今は、ルプスレギナに横抱き――つまりはお姫様抱っこ――されていた。

 

 

 因みに最初は背中の聖杖の関係でおんぶが出来ないため俵担ぎで運ぶつもりだったのだが、『今お腹が圧迫されるとやばい』という呻き声により横抱きになるという経緯があった。

 

 

「なに、気にすることはない。ヘスティアは20ヴァリスしか持っておらなんだし、いくらそやつの眷属()といえど、そなたのような美しい女子に金を支払わせるなど出来るはずもない」

 

 初めて会った時もそうだが、どうやら彼はド天然のスケコマシらしい。無自覚に女性を誑かすあの悪癖は何とかしてほしいと、彼の眷属に()()()()()()愚痴られたのは良い思い出だ。

 

 ……内心、ミアハの言葉にときめいてしまった事もあったルプスレギナとしては、乾いた笑みしか出せなかったが。

 

 

「ではな、ヘスティアよ。ルプスも、そやつを頼んだぞ」

「はいっす。失礼いたしますっすよ」

「おぉ~い、ミアハぁ~……ボクとベル君の為に惚れ薬を作っとくれぃ~……」

「うむ。私は何も聞いていないぞ」

「私も何も聞いてないっす」

 

 自分でも何を言っているのか正しく理解はしていないのだろう、ルプスレギナの胸の中でもぞもぞと動くヘスティアを仲良くスルーし、立ち去っていくミアハを見送る。頭を下げることは出来なかったが、彼の男神の性格を考えれば無礼と受け取ることもなく寛容に許してくれるだろう。

 

 

「はぁ~……んじゃ、帰るっすよヘスちゃん」

 

 ミアハの事を見送ったところで、ルプスレギナも歩き出す。

 

 と、先程までダランと脱力した状態のまま大人しく横抱きをされていたヘスティアが、ルプスレギナの首に両手を回して本格的(?)なお姫様抱っこスタイルになり、胸元にぐりぐりと顔を押し付けてくる。

 

「うへへへぇ~…ルプー君、いい香りがするぅ~…」

「っとと、もう……普通にセクハラっすよ、それ」

「いいじゃないかぁ~…ちょっとしたスキンシップだよぉ…」

 

 三つ編みにしている己の髪に顔を近づけ、スンスンと鼻を鳴らしては幸せそうに声を漏らすヘスティアに、つい苦笑してしまう。本当に、自分なんかよりも遥かに長い時を生きてきた女神さまだとは思えない。無論、基本的には良い意味で。

 

 

 

 

 ちなみに、そんな様子を道の隅っこで見ていた男神たちは

 

「つづけて」

「どうぞ」

 

 いつも通りだった。

 

 

 

 

「あぁ~…ベル君にもこうやって、クンカクンカしたいよぉ~…」

「……ホンット、ベルっちが此処に居なくて良かったっすねぇ…」

 

 彼女とは犬猿の仲らしいどこぞの悪戯神を彷彿させる己の欲望丸だしなセクハラ発言にちょっぴり引きながらも、1柱を抱いたメイドは本拠(ホーム)を目指し、人ごみの中へと消えていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルプーくぅん…ミアハに頼んで、惚れ薬をぉ~…」

「聞こえない聞こえな~い」

 

 

 




ロキ「…そういうのはウチの役目や!!」




 最後の方、もしかしてGLに該当しちゃいますかね。念のために警告タグ追加しておきます……無暗にタグ編集するのは良くないですかね。


【料理はベル担当】
 その間、隙を見つけては台所に立とうとするルプスレギナの注意を逸らしたり阻止するのがヘスティアの仕事。


【31000ヴァリス】
 1日こもった結果、原作よりも稼ぎが増えました。基本戦ったのはベルだけなんですけどね。

【邪神ヘスティア】
 表情のモデルは『金色のガッシュ』のティオ。
 「怨怒霊(おんどれ)--ッッ!!」って、彼女の台詞でしたっけ?

【店員にチップを渡すルプスレギナ】
 ヘスティアが知ったら、チップとして100ヴァリスは高いと憤慨すること間違いなし。

【神々の痴態を眺めるルプスレギナ】
 直接騒動に参加せず、一歩引いた位置からニヤニヤと眺めるのがルプーっぽいと思うんです。


※烏瑠様、誤字報告ありがとうございますosz

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