禁魂。   作:カイバーマン。

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第六十訓 右腕に宿る秘めたる思い

 

ここはとある病院の一室。

上条当麻がここに来たのはある人物の見舞いに来る為であった。

 

「こんちは、えーと、坂本さん?」

「アハハハハ! よう来たのぉとんま!」

「相変わらずその人の名前を覚えない所とデカい笑い声から察するにやっぱ坂本さんか……」

 

全ての元凶とも呼ばれてもおかしくない人物、坂本辰馬。現在彼は病室のベッドの上でこれでもかと包帯を全身巻かれて横になっていた。顔の部分も巻かれているのでパッと見だと誰か気づかない。

 

「殺されなくてよかったなホント、その状態だとむしろ死んだほうが楽だったんじゃないかと思うけど」

「不吉なこと言うなぁ! こうしてまた会えた奇跡を喜ばんかぁ!」

「まあある意味奇跡と呼んでも過言ではない重症っぷりだけど、よく死ななかったなその体で……」

 

ベッド傍のイスに座りながら坂本の体にどれほどの惨劇があったのかと考えていると、背後から声が

 

「心配無用です、土御門が必死に止めてくれたおかげでギリギリ一命取り留めるぐらいには手加減しておきましたので」

「僕はもともと人を焼くことにはなれてるんでね、どれだけ焼けば死ぬか生き残れるかそういうギリギリの範囲で自由に魔術を行使できるんだ」

「あざーす」

 

上条より先にここに来ていたのか、イギリス清教の魔術師、神裂火織とステイルーマグヌスがキビキビとした態度で説明する。

どうにか彼を生かしてもらったことに上条は軽い感じで礼を言うが坂本は彼女達に身を乗り出して

 

「ふざけんなぁおまん等ぁ! わしがあの時どれほどの苦痛を味わっていたと思っちょるんじゃぁ! 走馬灯ガッツリ見てきたぞ! 三途の川クロールしてやっと現世に戻れたんじゃぞぉ!!」

「全てはあの子を放置したあなたが悪いんです、普通なら即刻殺してやってますよ」

「人の罪を責める前にまずは自分の罪を責めろ、しばらく病室のベッドで己の罪と向き合うんだな」

 

そもそも彼が彼女達にボコボコにされたのは全て彼が招いた結果である。

叫ぶ坂本を冷静に諭しながら神裂はクルリと踵を変えて

 

「では私達は彼女を探しに出かけていきます、見つけたら“一応”あなたには伝えておくので、それでは」

「我が心の友である上条、悪いが僕は行かなければ、連絡すればすぐに駆けつけるから」

「さっさと行きますよステイル、全く友人が出来たぐらいではしゃいで……」

 

名残惜しそうにこちらに手を振るステイルを神裂は後ろ襟を掴んでズルズルと引きずりながら病室を後にした。

 

「良かったみたいだな、許されて」

「許してくれちょるならこないな状態にさせんじゃろ普通。どういう教育受けてんじゃあの連中は」

 

腑に落ちない様子で坂本がブツブツと文句言っていると神裂達とは入れ違いでガララっと病室が開いた。

 

「おーい坂もっさん、見舞いに来てやったぜぃ」

「こんにちは、大丈夫ですか坂本さん?」

「おー土御門に眼鏡君! よう来てくれちょったばい!」

 

部屋にやってきたのは土御門元春と志村新八、なんだかんだで坂本が世話になった二人だ。

やってきて早々気楽に挨拶しながら上条がいることに気づく。

 

「カミやんも来てたのか、やっぱ俺と同じで補習サボる為かにゃー?」

「フッフッフ、小萌先生に連絡して友人の見舞いに行かなきゃいけないって言ったらすぐ許可してくれましたよ」

「いやあんた等それ酷過ぎじゃない? なんか僕までサボり目的で欠席したみたいな感じになってんじゃん……」

 

こうして坂本の見舞いに来たのも理由があったらしい。やはりどこか発想が悪どい土御門と上条に新八がジト目でツッコミを入れながら坂本の方へ振り返る。

 

「全く二人とも素直じゃないんだから、坂本さん大丈夫ですか、ていうか坂本さんですかあなた?」

「アハハハハ! そうじゃわしじゃ! どんな理由にせよ来てくれただけでわしは満足じゃぁ!!」

「包帯越しでも相変わらずデカイ声ですね……」

 

見舞いに来てくれて上機嫌な様子の坂本に新八が苦笑していると再び病室のドアが勢い良く開き

 

「上条当麻!!」

「げぇー吹寄!」

 

今度は先日上条と一緒にシスター探しを手伝ってくれた吹寄制理だった。

部屋に殴りこみに来たかのように入ってくるとズンズンと坂本ではなく上条の方へ歩み寄り

 

「先生から聞いたわよ、友人が入院したから見舞いに行かなきゃならないって言ったらしいわね」

「ええ! 別に嘘は突いてないですしちゃんとこうして見舞いに来てるだろ! 今回は何も悪くないぞ俺は!!」

「は? わかってるわよそれぐらい」

「へ?」

 

てっきり補習サボったからぶん殴られると思っていた上条だが以外にもあっさりとした感じで吹寄は頷いた。

 

「補習休んで友人の見舞いに行く事で私が怒ると思ったの? 私だっていちいち貴様に怒ってたらそれこそキリがないでしょ」

「いやぁ昔から結構理不尽に怒られてるような気がするんですが……」

「いつ私が理不尽な理由で貴様に怒ったのよ」

「なんでもありません……」

 

小声で反論する上条だがすぐに吹寄の纏うオーラに萎縮して引っ込んだ。

そして吹寄は今初めて土御門と新八の存在に気づいたかのように

 

「それで二人もお見舞いに? 一体誰の見舞いに来てるの? もしかして私達のクラスメイト?」

「いやいや坂もっさんの見舞いぜよ」

「あれ? もしかしてやっぱり気付きませんか?」

「坂もっさん? ああ、土御門の知り合いだとか言ってたあの坂本さんの事ね」

 

二人に聞いて初めて坂本が入院している事を知った吹寄はベッドに横たわる包帯男に目をやる。

 

「……コレの事かしら?」

「そうです、わしが坂本辰馬です」

「全身ミイラになってると余計に怪しく見えるわね……」

「アハハハハ! きっついのぉお嬢ちゃん!」

 

もともと怪しんでいたのに更に怪しむ視線で見てくる吹寄に坂本がヘラヘラ笑うと、彼女はすぐに上条のほうへ向き直り

 

「上条、どうしてこの人こんな重症なのよ」

「怖い外国人に絡まられたんだとよ」

「全く、これだからかぶき町は危ないから無暗に行くところじゃないのよ。貴様も行こうとか考えるんじゃないわよ」

「だから何でいつも俺だけ注意されるんだよ……土御門や青髪にも、ん? 青髪?」

 

上条はずっと忘れていたモノを思い出したかのように目を見開いた。

 

「そういや青髪から連絡来たか?」

「ああそういえば忘れてたぜぃ」

「確か一人で探索に行ったんだよね」

「心底どうでもいいわね、話を有耶無耶にしおうとしてるんじゃないわよ上条、私の目が光ってる内は絶対にかぶき町に行かせないんだからね」

 

上条に言われて初めて気付いた一同。吹寄に至っては軽く一蹴した。

するとまたもや病室のドアが弱々しく開いて……

 

「みんな……まだボクの事覚えていてくれたんやね……」

「青髪!」

「青ピ!」

「青髪くん!」

「……誰だったかしら?」

 

ドアを開けて病室に入ってきたのはなんとあれから一向に連絡が来なくなった青髪ピアスだった。病院服を着て覇気のない声を出しながら微かに笑う青髪の登場に一同は驚く、吹寄は忘れていた。

 

「いつまで経ってもボクの所に見舞いに来へんからてっきりみんなボクという存在を忘れたのかと……」

「いや忘れていたのは事実だけど……」

「お前入院してたのか、本当はどうでもいいが一応聞いておくぜぃ、何があったんだにゃー」

「どうせ女の子のスカート覗こうとして制裁食らったとかそんなオチでしょ」

「うん君等やっぱ友達じゃないわ、退院したら覚えとけよ」

 

素直に忘れたという上条、どうでもよさそうにヘラヘラ笑いながら尋ねてくる土御門。

軽蔑の眼差しを向けてくる新八、そんな3人に青髪は笑顔でぶっ飛ばす宣言。

 

「ボクはね、君等に無理やり行かされたスキルアウトの溜まり場で大変なことになったんやで! スキルアウトと攘夷浪士の乱戦に巻き込まれて! 超可愛い女の子に助けられたと思ったら仕掛けてあった地雷を踏んでドカン! 死ぬかと思ったんやホント!」

「無理矢理ってお前、自分の意思で言ったよな確か」

「俺達は悪くないぜよ」

「うるせぇクソ虫共! 三バカデルタフォースは解散やぁ! 人を上手いこと乗せて連れて行かせたのはどこのどいつやぁ!」

 

クラスではよく上条・土御門・青髪の3人で三バカトリオだと言われていたが青髪も彼等の薄情っぷりに嫌気が差して一体誰のせいだと叫ぶが、土御門は冷静に坂本を指差し

 

「そりゃ坂もっさんだろぃ」

「おお! わしか!」

 

自分のせいだと言われてるのになぜか嬉しそうに叫ぶ坂本。

 

「アハハハハ! すまんのぉ! まさかおまんがそないな事に巻き込まれておったなんてわからんかったわ!」

「笑い事じゃ済まさへんで坂本さん! ボクはもう体と心に深い傷を負ってしまったんや! どう落とし前付けてくれんねん!」

「いやいやホントすまんかった!」

 

烈火の如く怒っている青髪に坂本は包帯越しでもわかるぐらい笑みを浮かべながら

 

「お詫びに今度かぶき町に連れて行ってあげるばい! それで許してくれんかの!」

「うん許します」

「速攻許した! どんだけかぶき町行きたいんだよ!」

 

今までの怒りはなんだったのかと思うぐらいあっさりと許す青髪に新八がツッコミを入れた。

ようはかぶき町に行ければそれでいいのである。

 

「ねぇ坂本さ~ん、ボク大人にさせてくれるエッロいお姉さんのお店生きたいんやけど~?」

「アハハハハ! それぐらいお安い御用じゃ! そらもうボンッキュボンな姉ちゃんが仰山おるお店に連れてってやるきん!」

「ツッチーボクこの人大好き!」

「おう良かったな青ピ」

 

年頃の高校生にはとてもありがたい出来事に思わず咽び泣きながら感激する青髪に土御門は優しく答えていると、坂本は青髪の肩を叩きながら呟く。

 

「それにしても攘夷浪士のいざこざに巻き込まれたんかぁ、懐かしいのぉ」

「え、なんで坂本さんが懐かしく思うのん?」

「そりゃわしは昔」

 

疑問に思う青髪に坂本は自分を親指で指差す。

 

「攘夷志士として攘夷戦争に参加してたんじゃ!」

「「「「!」」」」

 

その場にいた土御門以外の人々は目を見開いて驚く。

それはそうであろう、攘夷志士と攘夷戦争など誰もが知る言葉だ。

 

「え~坂本さん教科書に載っとるあの大戦争に参加してたん!?」

「そ、それって本当ですか坂本さん!? 攘夷戦争って確か侍と天人が何十年も戦い続けたとんでもない戦争の事ですよ!」

「何普通に信じてるのよ! デタラメに決まってるでしょ! 坂本さんも変な事言わないでください! 戦争に参加したとかそんな冗談全然笑えませんから!」

「いや本当のことじゃぞ、アハハハハ! 懐かしいのぉ」

 

驚いている青髪と新八を怒鳴りながらこちらにも怒った様子の吹寄に坂本はゲラゲラ笑いながら本当の事だと断言した。

 

「まあわしの場合戦争には参加したんじゃが終わる前に敵に腕やられて前線から離脱。そのまま静かに脱落したんじゃ、ほれ、これがそん時の」

 

そう言って坂本は右腕の包帯をめくると彼等に見せる。

彼の腕には鋭く伸びた刀によって出来た古傷が痛々しく残っていた。

こんなもの日常生活の中で出来る傷ではない。さすがにこんなもの見せられたら吹寄も信じるしかない。

 

「……本当に参加してたんですね」

「凄いですね坂本さん、あんたただのバカじゃなかったんだ」

「さすが坂本さんや! バカなのにとんでもない過去持ってたんやな!」

「アハハハハ! 泣いていい?」

 

尊敬しているのか馬鹿にしているのかよくわからない賞賛に坂本はちょっと涙目に。

 

そんな彼等を上条と土御門は少し離れた所から眺める。

 

「あの人そんな凄い人だったのかよ、お前は知ってたのか土御門?」

「まあな、俺も最初は疑ったがすぐに信じた」

 

上条に尋ねられて土御門は笑いながら答えた。

 

「何せ暗殺するために組織に忍び込んだ俺を殺さずに生かすどころか仲間にしてしまうような男だ。そんな器のデカい男なら戦争に参加してたと聞いてもそら信じるぜぃ」

「……お前何モンなの?」

「ハハハハ! トップシークレットぜよ!」

「坂本さんみたいな笑いで誤魔化すなよ、まあ別にいいけど」

 

土御門の正体が何者であろうが上条はどうでも良かった。少なくともこうしてバカやり合える所からして今の彼に不満な部分はない、シスコン気味なのがたまにキズだがいい悪友として良く思っているのは確かだ。

 

「それにしても攘夷戦争か、想像できねぇな戦争の事なんか」

「そんなに昔の事でもないがな、俺達が小さなガキだった頃に終わった出来事だ。カミやんは知らなくても親なら当たり前のように覚えてるはずだぜぃ」

「て言っても戦争の話なんかを親とする気なんかこれっぽっちも……」

 

 

 

 

 

 

土御門と他愛もない話をしているはずだった。

 

 

 

 

戦争について自分は何も知らないと

 

 

 

なのに何故か、上条の目に一瞬だけ何かの光景がフラッシュバックするように鮮明に映し出された。

 

血生臭い戦場

 

無数に横たわるおびだたしい死体

 

それに群がり死肉を食らう大量の鴉。

 

そしてその戦場の中心にいるのは

 

 

 

 

大量の骸から一心不乱に何かを剥ぎ取るまだ年端もいかない

 

 

 

銀髪の少年

 

 

 

 

「!」

「ん? カミやんどうした?」

 

上条は突然フラッと立ちくらみを感じた。あの時と一緒だ、あの今井信女という女性と顔を合わせた時と同じ感覚。

 

汗ばんだ顔を押さえながら首を垂れる上条に土御門が尋ねていると吹寄がそれに気づいて

 

「上条がどうかした?」

「いや、なんか急にフラッとイスから転げ落ちそうになったんだぜぃ」

「悪ぃ土御門、もう大丈夫だ……」

 

彼女に説明している土御門に上条はゆっくりと顔を上げる。

 

「ただちょっと変な立ちくらみがな……」

「夏バテかしら? なんならお医者さんに診て……上条、その腕どうかしたの?」

「腕?」

「右腕よ」

 

吹寄に突如右手をガシッと掴まれ混乱する上条。

しかし彼女に掴まれたその右腕は

 

何かに共鳴するかのように小刻みにカタカタと痙攣していたのだ。

 

「……なんだコレ? どうして俺の右腕震えてんだ?」

「そんなのこっちが聞きたいわよ……ほら立って良く見せなさい」

 

吹寄に促されるまま上条は勢いよく椅子から立ち上がらされる。

 

しばらく彼女はジーッと彼の震える右腕を見ていたが。

それが数秒程続いた後、振動は止まった。

 

「……収まったみたいね、貴様は持病とか無かったわよね確か」

「ああ、でも最近こんな事があったような気がするんだよな……」

「……お医者さんに診てもらった方がいいんじゃないの?」

「いやいやこんな事で診てもらう必要ねぇって」

 

こんな風に彼女に心配そうに上目遣いで覗き込まれると、何か調子が狂うなと感じながら上条は彼女の提案を断る。

 

「どうせ朧さんの時の鍛錬で酷使し過ぎて筋肉が悲鳴上げてるだけだろ。立ちくらみもきっとそのせいだ」

「朧さん?」

「俺が小さい頃から世話になってる人だよ」

「……貴様とは中学の頃から知り合いだけど、私そんな人知らないわよ」

「そりゃそうだろ、あの人が来るのは大体俺の家だし、お前俺の家に来た事無いだろ?」

「……そうね、わかったわ」

 

上条当麻が自分の知らない誰かと鍛錬などという事をしていると初めて知った吹寄。

少々腑に落ちない表情を浮かべながらパッと彼の右腕から手を放す。

 

「無理な運動は控える様にしなさい、過剰に肉体を動かすのは逆効果よ」

「それは出来れば朧さんに直接言ってほしいんですが……」

「それぐらい貴様自身で言いなさいよ……この馬鹿」

「?」

 

いつもよりも不機嫌な様子を見せる吹寄に上条は不思議に後頭部を掻きながらふと

 

「お前等なんでこっちジッと見てるの?」

「いやなんかムカついただけだぜぃ」

「人前で手取り合ってイチャイチャと、やっぱカミやん死んでくれへんかなホンマ?」

「……なんか邪魔するのもアレかなと思って」

「アハハハハハ! 若いモンはいいのぉ!!」

 

変に誤解している野郎共、そして新八が苦笑して坂本は大笑いしている中、土御門と青髪からはほのかな殺気……

 

「せっかくこっちが心配してやったのにラブコメなんてやってんじゃねぇぜぃ」

「カミやんあんがと、カミやんに見せつけられたおかげで今の僕は憎しみと嫉妬で体力満タンや……」

「おい! なんか勘違いしてねぇかお前等! なんで拳振り上げんてんでせう!? 俺はただ吹寄に右腕見せてただけで!」

「問答無用だにゃー!」

「リア充は死ねー!」

「ぎゃぁぁぁぁぁ!! 不幸だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

土御門と青髪が突如飛び掛かって襲いかかられ、上条は病室内に響き渡る声で大きく叫んだ。

三バカデルタフォースのそんないつものアホらしい姿を眺めながら吹寄ははぁ~とため息。

 

「……ホント馬鹿ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

コレは今から数分前の出来事で、上条当麻ではなく別の男の話。

 

「ったく隣の部屋がうるさくてしゃあねぇ、病院をなんだと思ってやがる」

「病院内で浮かれてはしゃぐ者がいるとは、ここはジャッジメントとして注意しに行った方がよろしいですわね」

「ほっとけよ、こちとらアホの金髪娘のおかげで入院するハメになってんだ。怪我人なら怪我人らしく大人しくしとこうや」

 

その男は少女を連れて丁度坂本の病室の前を横切ろうとしていた。

しかし

 

「アハハハハハ!!」

「……?」

 

部屋の中で坂本が大笑いしているのだろう。それを聞いて男は顔をしかめて部屋の前に近づく。

 

「この笑い声……」

「どうかしましたの?」

「いやちょっと知り合いに似てると思っただけだ」

 

ちょっとドアを開けて中を覗き込もうと思ったが、少女に呼ばれて男は出した手を引っ込めた。

 

「まさかいるわけねぇか、今頃奴は宇宙を飛び回っているだろうし」

 

男はしばしその病室をジッと眺めていたが、しばらくして踵を返して少女と共にその場を後にした。

 

「もう一個どこかで感じたような気配があったが……気のせいか」

「変な事言ってないでさっさと診察室に行きますわよ」

「へいへい」

 

毛根からねじ曲がっているような銀髪の天然パーマを僅かに揺らしながら

 

 

上条は知らなかった。

 

己が立ちくらみした時と右腕が震え出した時に

 

丁度その男が部屋の前に立っていた事を

 

 

 

 

おまけ

教えて銀八先生

 

「はい今回もちゃっちゃっとやっていきま~す、ハンドルネーム「八条」さんからの質問」

 

『朧は料理が出来るみたいですが奈落の現首領という忙しい身であるのにどのようにして料理が出来る事が出来るのですか?』

 

「偉い奴ってのは大抵時間の割き方も上手くやれるんですよ、だから朧も仕事は仕事、鍛錬は鍛錬、料理は料理とハッキリとスケジュールの計算をしながらそつなくこなせるんです」

 

「要するにただ偉くなって威張り散らすんじゃなくてそういう自分や他人の時間の管理をキッチリ出来ていないとダメって事ですね、そんじゃまた」

 




あとがき
これにて上条編の第一章は終わりです。
次章は珍しく比較的平和な回をやって行こうと思います。
次の投稿にはこちらの都合の為二週間ほどかかると思いますがご了承下さい。

それでは

PS
白髪のもやし頭? 知らない子ですねぇ

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