禁魂。   作:カイバーマン。

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第五十七訓 とある商人の組織売買

ここはとあるスキルアウトが拠点としている廃団地。

深夜、今ここで一人の侍が一人の少女を連れて群がる攘夷浪士達を相手に大暴れしていた。

 

「はい次ぃ!!!」

「これしきの数でわたくし達に勝てると思ってますの!!」

 

銀髪天然パーマをなびかせ瞬間転移の能力を持つツインテールの少女と共に、一本の木刀で次々と浪士達をぶっ飛ばしていく。

 

「私も負けてられないって訳よ!! ジャスタウェイグレネード!!!」

 

攘夷浪士相手に戦っているのは彼等だけではない。

金髪碧眼の少女がスカートの下から奇妙な人形を大量に取り出して浪士達にぶん投げる。

その人形が彼らの足元に落ちた途端強烈な爆発と共に周囲を吹き飛ばす。

 

「へ~い……が、がんばれみんな~……」

 

そしてこそこそと物陰に隠れているガラの悪そうな少年が一人。

こっちは別に戦ってもいない、ただ隠れて事の終わりをひたすら祈り続けている。

 

たった3名で刀を持った連中を根こそぎ食らうかの如く潰していく様は、これまた恐ろしい光景だった。

 

そしてそこに彼はいた。

 

「ひぃぃぃぃぃぃ!!! なんでなん! なんでボクこんな所におるん!?」

 

土御門や上条達と離れて銀髪シスター探しの為にたった一人のチームで危険エリアに来ていた青髪ピアスだ。

 

今は少し離れた場所から怯えながら身を隠している。

 

「色々な所探し回っていたらすっかり夜になってたから帰ろうと思うてたのに! いつの間にかスキルアウトと攘夷浪士の戦いに巻き込まれてしもうたぁ!!!」

 

事の経緯をざっくりまとめた説明口調で叫んでいるとそれに気づいた複数の攘夷浪士が一斉に彼のほうへ振り返る。

 

「なに! まだ奴等の仲間が隠れていたのか!」

「小癪め! この場で天誅を下してやる!」

「ひぃぃぃぃぃ! 違いますー! ボクはただの一般人ですー!!」

「戯言を! こんな所をウロつく一般人などどこにおる!」

「ここにおるんですー!」

 

必死に否定する青髪だが浪士の連中は話も聞いてくれない。

血気盛んな彼等は刀を抜いて一斉に襲い掛かってきた。

 

「死ねー!!!」

「いやぁぁぁぁぁ!! やっぱ無理やって断っとけば良かったー!! 化けて出たるでツッチー!!!」

 

青髪に彼等は同時に斬りかかる。こんな所で自分はあっけなく死ぬのかと青髪は泣きながら叫んでいたその時

 

「ジャスタウェイランチャー!!」

 

あの金髪少女の声が戦場に響き渡る。その瞬間、青髪に襲い掛かっていた攘夷浪士達の背後に奇妙な顔をした人形型の弾頭が突っ込んで

 

「「「ギャァァァァァァ!!!」」」

 

大爆発。

 

直撃を食らった浪士達はその場でピクピクと痙攣しながら倒れた。

青髪は目の前の光景を見て呆然と固まる。

 

「た、助かった……あの子のおかげで……は! これはライトノベルでよくある強いヒロインに助けられた主人公というシチュエーション!」

 

名も知らぬ少女に助けられた事に気づき、青髪はまだ恐怖でビクついている足で何とか立ち上がると、まだ戦っている少女をキッと見据えた後。

 

「お嬢ちゃ~ん助けてくれてありがと~! 助けてくれたお礼にお茶驕りま~す! その後あわよくば付き合ってくださ~い!!」

 

すっかり舞い上がった様子で両手上げたまま彼女の下へ猛ダッシュする青髪。しかし

 

足元でカチッと鳴る音が彼の足を止めた。

 

「へ?」

 

違和感を覚えて足元を見るとそこには地面に埋められた奇妙な顔した物体が……青髪の足はちょうどその物体の頭の上……

 

「え、なにこれ、ちょ……」

 

青髪がそれの正体に気付くか気付かない間に

 

彼は凄まじい閃光と爆発音と共に宙を舞うのであった。

 

「ん?」

 

自慢のジャスタウェイ地雷にハマったのかと少女は空中を飛ぶ少年に目をやる。

 

「……誰? まあいいや」

 

一瞬そう考えた後、彼女は再び浪士達を相手に戦いを再開するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キャバクラすまいるはかぶき町にあるお店の一つだ。

売上は他のキャバクラと比べるとどっこいどっこいの差。つまりそれほど儲けてる店でもなくかといって閑古鳥が鳴いている訳でもなく日によって黒字になったり赤字になったり、つまりなんの変哲もないただのキャバクラだ。

何か一つ変わっている者があるとしたら

 

「ギャァァァァァァァ!!! お妙さんギブ! お妙さんこのままじゃ裂けちゃいますぅぅぅぅぅぅ!!!」

「いい加減にしろやこのゴリラストーカァァァァァァ!!! なんべん店来るなって言えばわかんだテメェはァァァァァァァ!!!」

 

物凄い腕っぷしの強いとあるキャバ嬢が働いている事である。

 

「姉上、まだあのストーカーに狙われてるんだ。もういっその事麦野さんに頼んでみるのもアリかな、あの人どうせヒマそうだし」

「あれがぱっつぁんの姉ちゃんか、狙われてるというより逆に命狙ってる勢いでゴリラにタワーブリッジかけてるように見えるんだが?」

「ダメダメ、あれだけ痛めつけても全然ヘコたれないからあの人」

 

志村新八の姉である志村妙はこの店で働くキャバ嬢にして用心棒。現在は自分に何かと求愛行動してはストーカーを繰り返してくる男、真撰組の局長近藤勲に制裁を咥えている真っ最中だった。

 

「諦めきれずただ一途に愛を求めるってのは俺は嫌いじゃないが、ああまで拒絶されたら普通冷めるだろうに。なぁねーちん」

「いや知りませんから」

 

お妙に同体引き裂かれそうになっている近藤を眺めながら土御門元春は唐突に向かいに座っている女性に話しかけた。

神裂火織は不機嫌そうに席に座りながら素っ気ない返事。

 

「とっておきの店だと言っておきながら、結局こういうお店じゃないですか」

「すんませーん! おりょうちゃん指名したいんじゃけどー!!」

「聞いてないですし……」

 

隣に座っている坂本辰馬をふと見るが彼はそっちのけで男性店員に向かってお気に入りの女性でもいるのか指名しようとしていた。しかし

 

「すみませんお客様、今日はおりょうちゃんお休みなんですよ。なんでも最近グラサン掛けたモジャモジャ頭のやたらと声のデカい男に付きまとわれて体調崩したとかで」

「なんじゃとぉ! ったくとんでもない野郎がいたもんじゃ! ワシのおりょうちゃんに付きまうたぁ風上に置けん! その野郎が来たらすぐにわしを呼ぶようにとおりょうちゃんに伝えておいてくれんかの! わしが天誅を下しちゃる!」

「お客様ツッコんでよろしいので?」

 

どうやら目当てのキャバ嬢は休みだったらしく、坂本はハァ~とため息を突いて隣の神裂をチラリと見ると

 

「あ~……まあコレでええか」

「オイ……今テメェ私の顔見ながらなんて呟いた……!」

「ねーちん口調口調」

 

女性に対してこの上ない失礼な態度に思わずキレ気味になる神裂を土御門がなだめる。

 

「しかしキャバクラかぁ、綺麗な女の子がこんなにいる空間ってのはまるで別の世界に迷い込んだ気分だぜぃ、青ピが聞いたら羨ましがるだろうよ」

「普通は学生入っちゃいけないんだけどね、なんかこの店はその辺ゆるいみたいでさ。なんでも常盤台のお嬢様を連れて来た銀髪の教師がいるとかって話し出し」

「そりゃまた随分とチャレンジャーだな」

 

キャバクラ初体験の土御門に新八が説明していると彼の隣に先程近藤を討伐していたお妙がやってきた。

 

「新ちゃん、そちらの子は新ちゃんのお友達?」

「お疲れ様です姉上、この人はまあ、今日一日かぶき町中を練り歩いた仲です」

「ぱっつぁんのクラスメイトの土御門元春でーす、お手柔らかに頼みますにゃー」

「まあ新ちゃんが学校の子を連れて来るなんて珍しい」

「そりゃそうですよ、ここかぶき町ですよ? 普通の学生は入れないじゃないですか」

 

お妙は行儀よく営業スマイルを浮かべながら土御門に軽く会釈。

 

「妙です、ウチの弟がお世話になっています」

「いやいや、今日むしろこっちがおたくの弟に随分とお世話になりましたぜぃ、かぶき町の中を随分と案内してもらいましたんで」

「あらそうなの、もしかしてそちらのお二方も新ちゃんが案内を?」

「ああまあ、坂もっさんの方は確かにそうだが、ねーちんの方は成り行きでいつの間にかそうなってまいしたってな感じで」

 

そう言いながら土御門がチラッと見ると神裂はまだ不機嫌そうに坂本を睨んでいる。

 

「前の店で思い切り吐いたくせにまだ飲むんですかあなたは……」

「アハハハハハ! むしろ胃の中がすっきりして何杯でも呑めるぜよ!! 店員さんもんじゃ一つー!! それとハイボール下さーい!」

「あなたのバカさ加減の底が見えません」

 

先ほど散々吐いたにも関わらずすっかり回復した様子で顔で酒とつまみを注文する坂本。

そんな彼に神裂が呆れている中、坂本の隣に一人の女性が行儀よく座った。

金髪をフワフワとなびかせて派手なドレスを着飾り、お妙と同じく十代ぐらいであろう少女だった。

 

「今日は随分と若い人達連れてきてお飲みになってるのね坂本さん」

「おお! これまたとんでもない子がお隣に来たのぉ! じゃがわしはおまんの事指名しておらんぞ!」

「んー私はお客さんに選ばれるよりお客さんを選ぶほうが多いのよ。ここに座ったのも単なる気まぐれだから」

「アハハハハ! つう事はわしは幸運にもナンバー1キャバ嬢に選ばれたという訳なんか!!」

 

上機嫌でおっさんくさいリアクションをする坂本。

彼の隣に座った少女を見て新八はお妙に尋ねる。

 

「ナンバー1って、あの子がこの店で一番人気のあるキャバ嬢なんですか?」

「そうよ、心理定規ちゃんって言うんだけどウチはおろか他の店からも一目置かれている花形なの。指名する事が出来るのもほんの一握りで席に座ってもらえるだけで一生で一番の幸せだって言うお客さんもいるぐらいなんだから」

「そうなんですか、確かに僕等とそんな年も変わらないのに凄い綺麗ですよね」

「そうよね、女の私でも惚れ惚れするほど綺麗な子だわ」

 

自慢の同僚だという風にお妙は満足そうに笑みを浮かべる

 

「一体どこの病院でいじってきたのかしらね」

「ちょっと姉上ぇ!」

「あらお妙いたの?」

 

と思いきやブスリと刺すような憎まれ口。

それが聞こえたのかナンバー1キャバ嬢こと心理定規が煌びやかな笑顔を浮かべ

 

「てっきりまな板が立てかけてあったのかと思ったわ」

「ええ! こっちもぉ!」

「ところであなた、あのゴリラさんはどうしたの? あなたを指名してくれる人なんてあの人ぐらいなんだから大事にしたら? むしろここ辞めて嫁いできたら?」

「いいえ私はまだまだここに勤めさせていただくわ、金持ちの男共に上手いこと乗せられてすっかり舞い上がっているバカな同僚の自慢の鼻をへし折らないといけないし」

「すげぇ笑顔で毒吐き合ってる! なんかOL同士の抗争みたいなのが始まってんですけど!」

 

お客そっちのけで戦いを始めるお妙と心理定規。顔は笑っているのだが……

 

「お妙って凄いわよね、タチの悪いお客さんを殴りつけて大人しくさせたりそういう用心棒まがいのことも出来るなんて、女性として微塵も尊敬できないけど」

「こんなの全然大した事ないわよ、心理定規ちゃんなんか自分の能力を駆使してお客の金を全て搾り取る事なんて出来ちゃうんでしょ、いつもあなたを指名するあのホストさんからはいくら搾り取ったのかしら」

「能力なんて使ってないわよ私、私の居場所は全部実力で手に入れた場所だから、ごめんなさいね私がズルして勝ってるっていう惨めな言い訳が出来なくなっちゃって」

「いいのよ別に、本人が言ったことなんてアテにならないから。わたしはちゃんとわかってあげてるから、じゃないとあなたみたいな並レベルの接客しか出来ないボンクラがのうのうとナンバー1の地位に辿り着けるとかあり得ないわ」

「おいいい加減にしろテメェ等! そういうのは裏側でやれよ! 客がいる目の前でなにドロドロした罵り合いしてんだよ!!」

 

後半からもう思い切り相手を罵倒し合っているお妙と心理定規。

新八が止めようと躍起になっていると、彼の隣に座る土御門が神裂にヘラヘラ笑いかける。

 

「ねーちんこうなっちまったら男の俺達じゃ止められねぇ、女の出番だ、頼む」

「同じ職場でも天草式は女同士でも仲良かった筈なのですが……かぶき町の女性は皆こうなのですか?」

「いやいや女とはこういう生き物ですたい、天草式の女共だってねーちんいない時はきっと陰口叩いてるだろうぃ「あの痴女生意気じゃね?」とか「マジ調子こいてるわあの痴女」とか」

「どんだけはしたない女だと思われてんですか私は! 違います! 五和も対馬も良い子です! そういう女性に対する偏見を持つ器の狭い男こそ私はどうかと思いますが!」

 

そう反論すると、女とは何も皆がこのような醜い争いをするのではないと彼等に教える為に、神裂はお妙と心理定規の方へ顔をあげて。

 

「恥ずかしくないのですかお二方、大衆の面前でそのような醜態を晒すなどとそれでも

女ですか」

「あら嫌だ私ったらついうっかりお客さんの目の前で、ごめんなさい、それと心理定規ちゃんも」

「いいえ私も熱くなってついつまらない意地張っちゃってたわ、全く私もまだまだだわ。あなた達も気を悪くさせたみたいでごめんなさい」

 

注意されたらすぐに切り替える辺り接客業のプロといった所か。

すぐに反省して神裂に頭を下げるお妙と心理定規。

しかし二人が顔を上げるとそこには

 

そんじゃそこらの努力じゃ手に入らない、生まれもって作られた神裂の中々に実ってある胸が……。

 

「……大きいわね」

「……そうね」

「え、何ですか急に?」

「……作り物かしら?」

「……あの張り具合からしてそれはないわね、天然物よ天然物」

「いや作り物だとか、張り具合とか天然とか一体何のことを……」

 

和解した二人がヒソヒソと小声で会話しながらこちらをチラチラ見ている事に神裂が不審に思っていると、彼女たちは先ほど同様の営業スマイルを浮かべて

 

「あらやだとぼけちゃって、そのやたらと強調している巨大な乳の事ですよ、ねぇ心理定規ちゃん」

「ほんとびっくりねお妙、今時あんなおおっぴろげに自分は巨乳ですアピールしている女の人がまだいたなんて」

「最悪の相性が最悪のコンビになって彼女に矛先向けてきたぁぁぁぁぁぁ!!」

 

標準を変えて再び戦闘態勢に入るキャバ嬢二人。狙いを神裂に定めて挨拶代わりに一撃かましてくる彼女達に新八が叫ぶ中、当の本人の神裂は気恥ずかしそうに咳き込むと

 

「別に私の胸なんてどうって事ないじゃないですか、こんな物が大きかろうが小さかろうが人そのものを測ることは出来ないんですから……」

「聞いた心理定規ちゃん」

「ええ聞いたわ、私のおっぱいがデケェか小せぇかテメェ等には関係ねぇだろうが乳なし共と言ったわこの人」

「どんな耳してればそういう風に聞き取れるんですか!?」

 

勝手に自分の言葉を脳内で捻じ曲げる二人に神裂は顔を赤らめながら弁明する。

 

「そもそも胸なんて、あったらあったらで肩が凝るし戦いの中でも邪魔になるものですから……そのあまり気にしなくても……」

「あら本当にいたんだ、胸が大きいと肩凝って大変って言う人、それって結局自分は巨乳だって言ってるようなもんですよね? 悩んでるフリして結局自慢したいだけなんですよね? しかも気にするなだって、どういう意味かしらね心理定規ちゃん」

「別に私たち胸の事でコンプレックス抱いてるとか一言も言ってないわよ、なに? もしかして「この胸の谷間も出来ない人達は私の巨乳に嫉妬しているんだそうに違いない」とか考えてるのかしら?」

「いやそんな事……」

「そうよ絶対にそうだわ、ああして胸だけでなく自分の生足やおへそも強調している人ですもの、この店に来たのも私達キャバ嬢に自分のスタイルを見せびらかしに来たんだわ」

「あれって絶対営業妨害よね、周りのお客さんもチラチラこの人見てるしこれじゃあ私達商売上がったりだわ」

「……」

 

くどくどと精神に的確に急所を狙いに来るスタイル。お妙と心理定規の“タッグ口撃”に神裂はしばし頭を垂れると……

 

「すみませんもう勘弁してください……」

「負けたぁぁぁぁぁぁぁ!! 僕等が苦労して何度も逃げきろうとしても逃げ切れなかった追跡者をキャバ嬢コンビがものの数分で制したぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

深々と頭を下げて見逃してくれと負けを認める神裂に新八が驚いてるのも束の間。こちらに向かって頭を下げた彼女を見てお妙が「あらイヤだ」と呟くと

 

「この人よく見たら私と同じポニーテールじゃない、すみませんそれだとちょっと私とキャラが被るんで止めてくれませんか?」

「姉上ぇぇぇぇぇ!? それもうただの当て付けですから!! ポニーテールのキャラなんて一杯いますから!!」

 

そして今度は心理定規が「あらイヤだ」と呟き

 

「この人よく見たら私と同じ原作出身じゃないの」

「オイィィィィィィ!! もうなりふり構わずってレベルじゃねぇよ! キャラが被るどうこう以前の問題に難癖つけてきやがったよ!」

「ごめんなさいそれだとちょっと私と被るっていうか……あの、原作名変えてもらえないかしら?」

「いや無理だから! 髪型変えるレベルで言われても絶対無理だから!!」

 

もはやただの嫌がらせでしかない要求に、神裂は頭を下げたまま

 

「すみません今後はキャラが被らないようモヒカンにします……それと原作出身地をドラえもんに変更します……」

「止めろぉぉぉぉぉ!! つうか出来る訳ねぇだろうが!! 自分を保て!! こんな奴等に屈するんじゃねぇ!!!」

「いいんですよ私なんて……学園都市に来てからずっとこんな扱いでしたし慣れっこです」

 

学園都市に来てから“銀髪天然パーマの男と短髪の女子中学生”から始まり散々馬鹿にされ続けた神裂はもうすっかり疲れきったご様子。明らかに命を賭して戦う雰囲気ではないと察した彼女は坂本のほうに顔を上げて。

 

「……今回は一旦退きます、興が冷めました」

「アハハハハ!! いつでも待っちょるばい!! わしはまだおまんに誤解されてるみたいじゃしの!!」

 

すっかり酒で出来上がっている様子の坂本、そんな彼を一瞥すると彼女は席から立ち上がり

 

「……誤解なんてしてませんよ、あなたがどうしてイギリス清教からあの子を奪ったかなんて、私とステイルはちゃんと理解しています」

 

思わぬ告白に坂本も思わず「おお?」とグラサンの下から意外そうな反応を見せる。

 

「なんだ気づいちょったんか?」

「私達はあなたよりもずっと前から、あの子の事を気にかけていましたから。あなたの考えも読めてます」

 

坂本に背を向けながら神裂は呟く。

 

「ですが私達にも立場があります、イギリス清教に与する限り私達は枷を付けられたようなもの、彼女を自由にする事など、あの女が絶対に許さないでしょう」

「……」

「私たちを裏切ったあなたは敵です、次に会うときはあなたを全力で殺しにかかります」

 

そう言って店から出て行こうとする神裂。だが

 

「ちょい待ってくれ」

 

坂本が彼女の肩にポンと手を置く。

 

「気ぃ変わった、悪いがこのまま行かせるわけにはいかん、行かしたらもうおまんとわしは敵同士になってしまうきん。志が同じであるおまんとわしは戦いたくなか」

「……ではどうしろと」

「本当はここで話したいが、おまんとだけじゃ駄目じゃ、あのニイちゃんとも話しもつけとかなあかんようじゃからの。そしていずれはあの女狐殿ともな」

「ここまで来て一体何を話す気なんですか」

「商談じゃ」

 

神裂が振り向くと坂本は笑みを見せていた。

 

「あのお嬢ちゃんだけを買い取ればそれで終わりじゃと思ってたんじゃが、どうやらもっとデカイ買い物せんといかんようじゃけんの、陸奥には怒られるじゃろうが覚悟の上じゃて」

「……あなたまさか」

 

一体何を考えているのか神裂は読めたような気がした。

しかしそれはあまりにも無茶でデタラメで、常識外れにも程がある……

 

そして坂本はこちらに目を見開いて凝視する神裂に口元の笑みを更に広げた。

 

「決めたぜよ」

 

 

 

 

 

 

「おまん等とおまん等が属するイギリス清教ごと」

 

 

 

 

 

 

「この坂本辰馬が買うた」

 

一つの宗教組織を買う、あまりにもデタラメで無謀すぎる買い物。

一介の商人でしかない彼ではそんな事簡単に行くはずもない。

しかし彼は必ずやってやるという確信めいた目で言った。

 

坂本辰馬と魔術サイドの戦いが今始まる。

 

 

 

おまけ 

教えて銀八先生

 

「えーそれでは第一通目、ハンドルネーム「八条」さんからのお便りから~」

 

『垣根はもんじゃ焼き、ホストナンバーワンの狂死郎はお好み焼きと得意な料理があるみたいですが二人の料理品の旨さはどのくらい凄いのですか?鉄板焼きのお店を出してもいいぐらいの旨さですか?』

 

「ぶっちゃけかなり美味いのは確かなようです、それ目当てで来る客もいるとか。ただ垣根の方はぶっちゃけ見た目がアレなんでね、頼み辛いって所もあるのでやっぱナンバーワンの方が分があります。ただ煙たくなるので大量注文はお控えに、調子乗らせたら二人共バンバン焼き上げようとするので」

 

 

「それでは二通目ハンドルネーム「永遠の彼方」さんからの質問」

 

『この小説では「とあるシリーズ」と「銀魂」の長編はどのように扱ってくのでしょうか?』

 

「あーここん所はホント難しいんですよね、なにせ長編とか原作の話そのままやると台詞やら描写やら原作と被りやすくなっちゃうじゃないですか。それならもういっそ原作読んだ方がいいでしょ? そういう所を踏まえてこの作品は基本オリジナルでやってるんですよ、でもちゃんと原作をリスペクトした描写もあるんですがね、特に序盤の美琴と長谷川の駆け引きとか終盤の黒子VS結標の中の会話とかそれぞれの原作を意識した書き方になってたりします。他にも多くあるんで探してみてください」

 

「ということで原作の長編は遠まわしに意識してるけど基本はやらないよというスタイルで今後もお送りしまーす」

 

 

 


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