常盤台の終業式を終えた御坂美琴は一人、女子寮に帰る為にトボトボと帰路についていた。
あの後、終業式中にジャンプを読んでゲラゲラ笑っていた彼女は、レベル5の第三位とか関係なく周りの生徒から注目の的だったと彼女自身は知らない。
「黒子はジャッジメントで忙しそうだけど、私は相変わらず研究とか実験やる時以外は年中ヒマなのよねぇ……喉が渇いたしちょっとあそこ行こうかな……ん?」
そんな独り言をぼんやりと呟いていると背後からブロロローっといつものスクーターの音が聞こえて来た。
聞き慣れたその音に美琴は後ろに振り返ってみると
「くおら~やっと見つけたぞジャンプ泥棒」
「は? どうしたのアンタ?」
「どうしたのじゃねえよ」
案の定、天然パーマ教師の坂田銀時がスクーターに乗って路上を走って来た。
どうやら終業式が終わってから自分の事をずっと探しまわっていたらしい。
歩いている美琴の隣にピタッと止まると、銀時はスッと彼女に手を差しだす。
「ジャンプ」
「ん?」
「いやジャンプ、お前借りパクしてんじゃねえよ。俺読み終えてねえから返せよって言っただろうが」
「ああそうだっけ? てっきり貰ったモンかと思ってたわ」
「これだから女ってのはイヤなんだ、『借りる』を『貰った』にすぐテメーの頭の中だけで変換させやがる、お前等女はどれだけ男共を騙せば気が済むんだ、そんなに俺達を弄んで楽しいかお前等?」
「返せばいいんでしょ返せば、男ってのはホントケチ臭くて嫌になるわ」
耳元でネチネチしつこく言って来る銀時に美琴はダルそうな目をしたまま自分のカバンを開けて中から一冊のジャンプを取り出す。
「いい年なんだからいい加減ジャンプ卒業したら?」
「年を取っても俺の心は常に少年なんだよ」
「だからいつまで経っても頭ん中ガキなのね」
「悪いが今はお前のくっだらねえ挑発に付き合ってる余裕はねえんだ、こっちはまた学校に戻って教員会議受けなきゃいけねえんだ」
嘲笑を浮かべて取り出したジャンプを見せびらかす様に掲げている美琴から、さっさと学校にもどなければいけない銀時は手を伸ばしてジャンプを奪おうとする。
だがジャンプに手が届く寸での所で美琴はヒョイとジャンプを上にあげた。
銀時の手は虚しく空を切る。
「おいおいなんの真似だテメェ、こっちはヒマじゃねってんだろ」
「返して欲しいなら“条件”があるんだけど」
「は?」
「ちょっと昼ご飯に付き合ってくれる? このまま寮に帰っても暇なのよ」
「いや何言ってんのお前?」
随分と勝手な提案に銀時はバツの悪い表情を浮かべる。
「条件飲まないとジャンプは永久にアンタの下には戻らないわよ」
「いやそれ俺が自分の金で買ったジャンプだからね、なんでそれをお前から返してもらうのにお前の条件を飲まなきゃいけないの。つうか俺会議があるって言わなかった? 暇人のお前と違って社会人の銀さんは忙しいの、わかる?」
「会議つってもアンタどうせ寝てるだけでしょ、だったら私に付き合いなさい」
「寝るんじゃねえよ、シエスタ決め込むんだよ」
「同じ意味だろうが!」
乱暴な口調でツッコミを入れた後、美琴は銀時の背中をジャンプで叩き出す。
「じゃあ早速その辺の店に行きましょ、さっさとこのボロっちいスクーターを出しなさいよ」
「いてぇから叩くな、ざけんなクソガキ、昼飯ならチビと一緒に行けばいいだろ」
「黒子はジャッジメントだから忙しいのよ」
「俺だって忙しいわ」
「嘘付くんじゃないわよダメ教師」
嫌がる銀時を強制的に昼飯につき合わせようとする美琴。
ここまで強引な手を使うとは珍しい、何処か思う事でもあるのだろうか?
「それにね、私だってホントはアンタなんかと一緒に昼飯とか食いたくないわよ、ただ……」
「うん?」
さっきまでの笑みから一転して急に沈んだ表情を浮かべる美琴に銀時が首を傾げると。
彼女は彼に向かってそっと口を開いた。
「この年の少女が一人ファミレスでご飯食べるのって……なんかアレでしょ」
「……お前いつも一人で食ってたじゃん」
「う……!」
「ていうか俺とあのチビ以外とじゃ飯食わねえじゃんお前」
「うっさい! だから少しだけでいいから付き合ってよ! 一人でファミレスにいると店員さんが哀れみの視線送ってくるの! 痛いのよその視線がほんと!」
「じゃあファミレスで食うなよ」
恥ずかしい体験を思い出し顔を赤らめ叫ぶ美琴に冷静にツッコミを入れた後銀時は仕方なさそうにため息を突いた。
「はぁ~あ……ちょっとだけだからな」
「フフフ、わかればいいのよわかれば」
「んじゃさっさと後ろ乗れ」
「ヘルメットは?」
「……俺のドライビングテクニックを信じろ」
「アンタが被ってるの貸して」
「え? じゃあ俺のは?」
「アンタのドライビングテクニックを信じなさいよ、それと喉渇いたからちょっと寄りたい所あるんだけど」
「あ?」
「いい場所知ってんのよーふふふ」
第二訓 教師、少女と昼食を喰らう
「あ~やっぱこの時期はクーラーのある場所が一番だわ、俺も家にクーラー付けようかな、あ、金がねえんだった」
数十分後、銀時は彼女を連れてとあるファーストフード店へやってきた。美琴行きつけのファミレスではなく銀時によって強引にここに来る事になったからだ。
外が極暑の中、店内に付いている冷房の風は正に神の息吹と言えよう。
だが残念な事に飲食店の中は多くの学生がわんさかと・・・・・・
「やっぱ昼飯の時間帯だから混んでんなぁ」
「アンタねぇ、ここは学生がたむろする場には格好のファーストフード店よ? ただでさえ昼ごろの飲食店は混むのにこんな店だったら余計に混むに決まってんじゃない、なんでここ選んだのよ」
「安いからに決まってんだろ、今どきのファミレスとかいくらすると思ってんの?」
「え、“そんぐらい”奢ってあげてもいいわよ“先生”?」
「お前さ、そういう庶民をバカにした態度を取る小娘が一番ムカつくんだよ? あーやだなー、親は一体どういう教育したのかねー」
ニヤついてここぞとばかりに金持ちアピールをしてくる美琴からそっぽを向いて銀時は恨めしい言葉をブツブツと呟く。
だが美琴はこちらに背を向けた彼を鼻で笑い飛ばし
「こう見えてお金はたんまり持ってるのよね。レベル5ナメんじゃないわよ」
「いいねぇ超凄い能力者さんは。俺等貧乏人とはえれぇ違いだ」
長い行列に並び始めてそんな事を言う銀時を美琴は再びフフンと鼻で笑ってやる。
「なんならこの店丸ごと買い取ってやってもいいわよ。そうすりゃ貸し切りし放題だし」
「金は持っててもその残念な発想力はどうにかなんねぇの?」
「な、何よそれ!」
「そういうバカな事考えてばっかだから”ババァ”にサイフ握られてんだよ」
「ど、どうしてそれ知ってんのよ!」
「さあね」
「ぐぅ……」
美琴は悔しそうに唇を噛む。
もう一年以上の付き合いになるがどうにもこの男の真意はよく読み取れない。
まるで雲の様にフワフワしていて掴み所が無いのだ。
「……私の分も適当に頼んでおいて。席取ってくるから」
「喫煙席だぞ」
「今の時間帯は全席禁煙よバカ」
「さっき言ってたレベル5の権限ってもんを見せてやれよ」
「その程度の事で使いたくないわよ」
列に並んでいる銀時に冷たく返事した後踵を返して美琴は席を探しに行く。
この時間帯だ、座られていない席を探すのは至難の業だ。
「何処もかしこも学生で一杯か……それにしても一般人より学生が多い都市とか、今更だけど変な所よねここ」
そんなぼやきを吐きながら美琴は辺りを5分ほどくまなく詮索していると、運良く丁度4人用の席から立ち上って帰ろうとする数人の学生を見つけた。
(あの子達が帰れば座れるわね、さすがにこんなクソ暑い中を外で食べるのは勘弁よ)
そこにいた学生たちが仲良くおしゃべりをしながら去った後、美琴はすぐさまその席に滑り込む様に座った。
仲良く会話しながら去っていく女子グループを羨ましそうに眺めた後、彼女はどっと深いため息を突く。
「はぁ……4人か、今どきの子って大体あれぐらいの人数で遊ぶのかしら……ん?」
ようやく座れた事で美琴が安堵の表情を浮かべていると、自分が座った所から向かいにいる二人の男女が目に止まる。
この辺では全く見かけない服装、どうみても学生の格好では無い。
「”禁書目録”が何処に行ったのか見当つきましたか」
「いや、この街は無駄に大き過ぎるからね。だがその代わりに僕はこの店でとんでもないモノを発見した」
(この辺では見かけない顔ね・・・・・・赤髪の方は外国人よね?)
ようやく座れた事で美琴が安堵の表情を浮かべていると、自分が座った所から向かいにいる二人の男女が目に止まる。
この辺では全く見かけない服装、どうみても学生の格好では無い。
「この店は一見、薄っぺらい牛肉を使ったハンバーガーと冷めたらマズ過ぎて食えやしないポテトが売りの店だと思っていた。だが違う、この店の最強の商品は一応飲み物として分類されているこのシェイクだったんだ」
「あなたはわざわざこの鎖国状態の街でなに変な事に時間を割いているんですか? そんなもの発見してないで彼女を発見する事に時間を割いて下さい」
「特にバニラが至高だ、コイツは僕の14年の人生の中でニコチンの次に美味と認定された、甘い物も馬鹿には出来ないモノだね神裂」
「ステイル、あなたもうイギリスに帰っていいですから」
「イギリスに帰ったら食べれないだろ、馬鹿にしてるのかい?」
「してますがなにか?」
(変な奴等、ああ暑いからそういうおかしな人が増える時期なのね)
二人の会話を何処か遠い目で眺めながら聞いている美琴。だがそこに
「おいコラなぁにボーっとしてんだ。せっかくこっちが持ってきてやったのに」
「あら意外に早かったわね」
相変わらず生気を全く感じない目をしたまま、銀時が両手に昼飯が置かれたトレイを持ってやってきた。
銀時はすぐさま美琴の向かいになる様に席に座る。
「あっちい外で食うハメにならなくて良かったわ、ほれお前の分」
「はいありがと、へ~ちゃんと私が好きなモンわかってるじゃない」
自分の分のトレイを受け取ってそこに置かれた商品を見て美琴は感心したように頷くと銀時はだるそうな表情でポテトを食べ始める。
「お前と何回ここに来てると思ってんだよ、それぐらい熟知してらぁ」
「まあ結構な付き合いだもんね、アンタとは」
嫌な事を思い出す様に美琴がしかめっ面を浮かべながらチキンナゲットをつまんでいる姿を見て、銀時はバニラシェイクを片手に持ちながらけだるい口調で呟いた。
「めんどくさかったけどババァの命令だったしな、仕方なくだよ仕方なく」
「はいはいツンデレツンデレ」
けだるそうにぼやく彼に何も塗っていないチキンナゲットを口に入れながら美琴はうんうんと頷く。
「ところでこのまま延々と食べ続けても暇でしょ、なんか会話のきっかけになる話題ないの?」
「あ? じゃあお前の恋愛相談でも聞いてやろうか?」
「アンタにそんな相談するわけないでしょ……」
「じゃあ俺がしていい? いやぁ最近ホントモテなくてさぁ困ってんだよ、つうか周りの女がロクな奴がいねぇんだよ」
「相談する前にまず己を見返してみたらどうでしょうか?」
「先生、結論が早すぎです。少しは銀さんの事を考えてください」
「考えたうえでの結果ですがなにか?」
いきなり生徒相手に相談を持ち掛けるダメ教師に呆れた様子でわざとらしい敬語で結論を出す美琴。正直彼の恋愛事情など宇宙の果てに何があるかよりもどうでもいい。
「大体そんな恋愛なんてできるタマじゃないでしょアンタ、どうせドロドロのただれた恋愛しか出来ないわね」
「うるせぇよ、恋愛のれの一画目さえ知らないお前に俺のなにがわかるんだよ。てかお前の場合恋愛以前に友達作れ。あの変態以外に」
「な! 言っちゃいけない事言ったわねコイツッ!」
けだるそうに食事しながら痛い所をついて来た銀時に美琴が胸倉を掴もうと身を乗り上げる。すると
「さっきからうるさいな……おい、そこの額に青筋浮かべた顔真っ赤の娘」
「なによ!」
不意に背後から話かけられて美琴はすぐ様ばっと振り返る。
すると先ほどシェイクについて熱く語っていた赤髪の外人が不機嫌そうな態度で立っていた。
「さっきから騒がしいんだよね、悪いけど空気を読んで場所を変えてくれないか? 食事の邪魔だ」
「はぁ!? この真夏に暑っ苦しい服装してる奴に空気読めとか言われたくないんだけど!? 」
「いや無知な君にはわかるまいがこれはちゃんとした礼装……」
「ていうかなんで顔にバーコード付けてんのよ! オシャレなの!? オシャレで顔にバーコード貼り付けてんの!? ハハハ! カッコいいカッコいい! カッコいいわねホント!」
「だ、だからこれも……」
「指輪じゃらじゃら付けてるみたいだけどなんなの!? もしかしてアレですか!? 指輪とか十字架じゃらじゃら付けてれば未知なる力を発揮できるとか思ってるアレな類の奴ですか!? 学園都市でそんなオカルト装備してるとかチョーウケるんですけどー!」
「……」
注意した矢先に急にこちらに矛先を向けて笑みを浮かべながらあれよあれよと攻める美琴。
どうも先程の銀時のおかげで機嫌が大分悪くなってしまっているようだ。
そして半ばとばっちりを食らってしまった赤髪の男はフラリと体を傾け。
「心折れた……イギリスに帰りたい……」
「ステイル!」
心無い罵詈雑言に本気でダメージを受けた様子でぐったりしている男に、先ほど話していた知り合いであろう女性が慌てて立ち上がって駆け寄る。
「何をやってるのですか! あなたはまだ己の責務を果たしていません!」
「いやもう無理、責務とか知らないし……僕はもうイギリスに帰る……イギリスに帰ってそこでシェイク屋を作るんだ……」
「意味わからないこと言って現実逃避しないでください!」
テーブルに顔を擦り付けながら意味不明なことを口走る男を厳しくたしなめる女性。
そんな彼女をふと銀時はジーット見てハッとある事に気付いた表情を浮かべるやいなやそっと近づき
「あ、あのうすみません……」
「なんですか全く、大人であるのにあなたは一体その娘にどんな教育を……」
近づいてくる銀時に女性はキッと敵意をあらわにする目で睨み付けるが銀時の方はというとそんな彼女の態度を気にも留めずにそっと近づき耳元で
「……ジーパンめっちゃ破けてますよ……」
「え? いやあの……は?」
「今なら誰にもバレてないようだからこっそり店でた方がいいですよ……あとシャツもめっちゃめくれてますよ、もう露出狂みたいな恰好になってますから……」
優しく耳元で助言してくる銀時に女性の方はやや戸惑っている様子。一応彼女なりにこの格好がベストな様子だが……
「あの……善意で注意してくれるのはありがたいのですがこの服装は元々これで合っていまして……」
「え? 知った上でそんな格好してるの? どうしてそんな格好してるの? おかしいよね? 絶対変だよねその恰好?」
「いやそれはその……この服装の真意は言えませんけど本当にこれで良くて……」
真顔で冷静に追及してくる銀時に困惑する女性、すると黙ってられるかと言わんばかりに食事していた美琴が立ち上がった。
「あんたさぁ知らないの? これだからおっさんは……今時はジーンズをわざと傷つけて履くファッションがあるのよ、ダメージジーンズって奴」
「いやどんだけダメージ付けてるんだよ。傷つけたレベルじゃねぇよ、重傷だよコレ?」
「それはアレよ、切りすぎて収集つかなくなっちゃったけど「これが逆に凄くない?」とか思いこんじゃってるのよきっと……若気の至りよ」
「なんだよそれ、頭の方にまでダメージいっちゃってるじゃねぇか」
こちらの事情など露知れず、勝手に二人でひそひそと話を進めている銀時と美琴に。
女性の方はプルプルと肩を震わせ彼等の言葉に耐えるのみ。
「あの……本当になんでもないですから……気にしてないでください……」
「バカ、お前の案は当てにならねぇよ、よく見ろ。髪結いも普通の紐だし上半身もシャツ一枚だし……廃刀令のご時世で刀持ってる所からして職に困った貧しい浪人なんだよ」
「あー確かによく見るとみずぼらしい格好してるのね……あんな美人なのにこんな不景気じゃ誰も雇ってくれないもんなの?」
「いや浪人でもなんでもないです! それに私職についてますから!」
「ああもういいからそういう見栄はいいって、悪かったよ傷口えぐるような真似して」
「ごめんなさい、そのダメージジーンズって見た目だけじゃなく着ている人自身のダメージも表していたんですね……」
「哀れみの視線を送らないで下さい! 泣きそうになります!」
男の方よりも女性の方に対して謝罪する銀時と美琴。二人に対して女性が懇願するように叫んでいると
「……”お姉様”」
「「え?」」
背後から飛んできた聞き慣れた声に、、銀時と美琴は同時に後ろに振り替える。
「なにやってますの?」
「う、黒子……! ジャ、ジャッジメントの仕事はどうしたの……」
「現在進行形でバリバリ仕事しておりますがなにか?」
そこに立っていたのは美琴にとっては一年後輩ルームメイト、銀時にとっては担任を請け負っているクラスの生徒である白井黒子であった。
ジト目でこちらを睨み付けて来る彼女に美琴はバツの悪そうな顔を浮かべる。
「実はついさっき通報があったんです、お店にやかましい客が人目も気にせず叫んでいると。ええそらもう年端の少女は思えないぐらいみっともない姿を晒してると」
「へ、へ~……大変ねアンタも、そんな事でいちいち通報されるなんて……」
「まあコイツには俺が後でキツく言っておくから、それで勘弁してくれや」
「アンタのせいでもあるでしょうが!」
悪びれもせずにすぐに自分の非をなすりつけてくる銀時に美琴がムカッとした様子で叫ぶとその様子に黒子は一層顔をしかめる。
「それとお姉様とそこの銀髪に聞きたい事がほかにありまして」
「なによ! もしかしてこの程度の事で捕まえる気!? 私は悪くないわよ! 悪いのは全て全部中二ロンゲと露出ジーンズだから!!」
「いやこの二人は完全に被害者ですので、あとなんですのその呼称?」
責任を全て押し付けようとする美琴をめんどくさそうに制止しつつ、黒子は早速本題に入った。
「今からほんの数十分前にあった事なんですけど、第七学区の公園にある自動販売機に蹴りを入れて中に入ってる飲料物を無償で取る二人組がいたって目撃がありましてたの」
「うん?……はッ!」
「あ……」
起きた事件の話を聞いて何故か御坂が素っ頓狂な声を上げる。そして銀時の方もバツの悪そうな顔をしている。なぜなら……
『ちぇいさー! ほら出てきた』
『おいおいマジで出たぞコレ、これ凄くね?』
『何が出るかわからないのが欠点だけどね、アンタもやってみれば』
『蹴り入れてジュース一本貰えるとかこの街も案外アナログだねぇ、おいどの辺蹴ればいいんだ?』
『ここよここ、オラ! もっと出せコラ!」
『おお出た出た、よし俺も。せぇい! 甘くて冷たいもん出せコラァ!」
『あ、いちごおでん出てきた、ハズレね、アハハハ』
『あ~あ畜生……あ、これ結構いけんじゃね?』
『飲むんかい!』
ここに来る前にやってきた自分達の行いを振り返る二人。
クーラーの効いた店内で変な汗をかく二人を黒子はジーっと見つめる。
「それとその二人組の特徴はというと、一人がショートカットの常盤台の生徒でもう一人は銀髪天然パーマで白衣を着た男らしいですわ」
「へ、へ~そうなんだ~あ、そういえばそんな特徴の奴この店にいたかも……」
「ちょ、ちょっと前に行っちゃったかもしれないわね~黒子、探して来ようか?」
「いやいや探す必要ありませんわ、お姉様」
冷や汗をダラダラ流しながらあくまでシラを切る様子の二人に
黒子はニコリと優しく微笑みかけた。
「さあお姉様、そこの逃げようとしているアホ銀髪を連れてわたくしと共に参りましょうか」
「「……」」
「言っておきますが逃げたらもっとマズイ事になりますので」
微笑む彼女を前に二人はただ従うしかなかった。
『ジャッジメント』
学生だけで構成された組織とはいえ相手が例え名門の生徒だろうが教師だろうがアンチスキル・真撰組同様に問答無用で容赦なく捕まえるれっきとした警察組織である。