世界が終わりなんて間違っている 第一章   作:showt

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第十二話  デパートへ

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 今日は明日の二次会に備えて生徒会の人や友達と買い出しにきていた。

 買い物をしていると不審者が現れ周りの客を襲いだした。

 私はみんなと逃げることにしたが、一緒に来た皆のうち何人かはぐれてしまった。

 店員さんが逃げるほうについていくと関係者専用のエレベーターがあり、関係者しかはいれない四階に繋がっているみたいだ。

 四階に着くとそこは、資材や在庫のストックが置かれた倉庫になっているみたいでその先に関係者の休憩室があった。

 私たちはその休憩室に避難して他の皆が来るのを待った。

 しばらくして何人か避難してきたが、はぐれた友達は見つからなかった。

 地元が近いためか何人か見覚えのある人がいた。

 中学で一緒のクラスだったやつ・最近イベントであったことのある子……。

 休憩室で警察や家族に電話をかけている人が多いが繋がらないみたいだ。

 私も家族や友達にかけてみたが繋がらない。

 店員さんを含む何人かが下の様子を見てくるといったきり戻ってこない。

 休憩室のテレビを誰かが点けたらしく今起こっていることが世界中で起こっていることが分かった。

 その日はやつらが来ないことを祈りつつみんなで固まって眠った。

 

 

3/2

 朝起きて周りを確認してみる。

 昨日避難してきた人の何人かは帰ることを試みたらしくまた人数が減っている。

 ふと周りを見ると泣いている子を見つけた。

 クリスマスの時比企谷と一緒にいた子で演劇の主役をしていた子だ。

 私は泣いていることが気になって近づいてみる。

 話しかけても最初は無視されたけど、クリスマスのことを話すと私のことを思い出したようで少しづつ事情を話してくれた。

 母親と買い物に来ていたけどはぐれてしまった。連絡もつかない……と。

 そうとう声を振り絞って出したのだろう。イベントの時聞いたはっきりとした声ではなく今はかすれた声しか出せていない。

 思い出してまた泣き出してしまったので抱きしめているといつの間にか眠ってしまっている。

 これからのことを考えようと今の状況を整理してみたがいい手は浮かばない。

 幸いこの階が休憩室・倉庫として使われていたので水と食べ物には困ってないがみんなのことが心配だ。

 今日は特に何もできずに夜になり、この子と千佳で固まって寝ることにした。

 

 

3/3

 朝起きてみて昨日いた他校の女子がいないことに気付く。

 周りの人に帰ったのかと聞いてみるが夜中トイレに行ったとしかわからなかった。

 その話をニヤニヤしながら聞いている人物がいた。

 中学時代の同級生であまり女性関係でよくないうわさが流れていた人物だ。

 私もよくデートに誘われていたが気乗りしなかったためすべて断っていた。

 私は嫌な予感がして生徒会長と千佳とここから逃げることにした。当然この子も置いてはいけず連れて逃げた。

 逃げる途中トイレの近くを通った時、異臭がすることに気付いた。

 千佳にこの子を任せ、会長とにおいのする方へ近づいてみるとそこにはいなくなった他校の女子が血を流して死んでいた。

 思わず顔を背けると何か書かれた紙が落ちていた。

 気になり読んでみるとこの女子の遺書だということが分かった。

 『トイレに行った帰りに男に襲われた。

 汚されてしまって彼氏に合わせる顔がない。

 ごめんなさい』といったものだった。

 会長と私はすぐに千佳たちのもとに戻りここから逃げた。

 嫌な予感があっていたのだ。

 多分犯人は……あの同級生だろう。

 

 それから一階で逃げる途中、周りをやつらに囲まれてしまった。

 私たちは一階の食品売り場のバックヤードに逃げ込んだがもうすぐそこまで来ているだろう。

 私たちはやつらが届かないように業務用冷蔵庫の上に逃げ込むことにした。

 しばらくしてやつらがバックヤードに入ってきたが冷蔵庫の上にいるとは気づかず出ていった。

 やつらが出て行った後会長が様子を見てくるとバックヤードから出ていった。

 バックヤードは外に近いらしく雨の音が聞こえてきた。

 その日会長が戻ってくることはなかった……。

 

 

≪???≫の記憶より

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 発生から三度目の朝を迎えた。相変わらず人工音が聞こえてくることはない。あったとしても聞こえてないだけかもしれないが……

 

 

 

 

 

葉 山「そろそろ出発の時間だが大丈夫か?」

 

 

 食事を終え準備に取り掛かっていた調達班の面々に葉山が問いかける。昨日調達した服に着替え終えた後、皆周りを見わたし全員準備ができたことを確認し、四階から保健室前に停めてあるバスへ移動を開始した。昨日の体育館に閉じ込め作戦が効いていたのだろう。バスまでゾンビと遭遇することはなかった。バスに乗り込むと昨日と同じように車用出入口から出て目的地に向かう。

 

 今日は昨日とは違い北西方面に移動しデパートで調達する。今までコンビニやホームセンター・服屋で調達してはいるもののデパートとなると今まで行った店とは規模が違ってくる。広さ・商品の数・そしてゾンビ発生時にいたであろう客数……。客がたくさんいたということは生き残っている人のいる可能性もある。友好的に済めばいいが、あちらからすれば自分たちの縄張りから物を取っていく略奪者として扱われてしまうかもしれない。なるべく敵対行動は取りたくないが……もし自分たちが調達中にバスが襲われ残っていた女性陣が捕まってしまったら……そう最悪の状況まで考えつつバスに揺られていると釣具店が見えてきた。

 

 

八 幡「先生。釣具店に寄ってもらえませんか? 今日、肉とか調達するならクーラーボックスを確保しときたいです。それにもしバスに襲撃者が来た時バリケードとまではいかないですが防具に使えるかも……それにできれば釣り用品も確保しておきたい。誘導に使えたり、のちのち魚を獲りに行くときに使えますし……」

 

平 塚「うむ。確かに確保しておいた方がいいだろう。だが、早く戻って来いよ。朝早く出た意味がなくなるからな……」

 

八 幡「分かってます。葉山、戸部あそこの釣具屋でクーラーボックスや釣り具を回収しておきたい。釣り具は後でまた来て回収すればいいから今回はクーラーボックスの確保だ。今日、肉の調達しに行くからあったほうがいいだろう」

 

葉 山「肉の鮮度がなるべく落ちないようにか……よし行こう」

 

 

 葉山も賛同してくれたところで、バスが左折し釣具屋の駐車場に入る。車が数台あるところを見るとゾンビ発生時に客がいた可能性が高い。クーラーボックスの回収して移動する際音がなるべく出ないように気を付けなければ……店内にいるかもしれないゾンビを呼び寄せてしまう。広いデパート内でクーラーボックスを探すよりはマシだろうが動きも制限された状況での遭遇だけは避けたい。

 

 バスから店内に移動し入るとゾンビがいるのか奥の方から呻き声が聞こえる。偶然にもクーラーボックスを店内入口で発見し、ついでに近くにあったロッド数本と保冷用に置いてあったらしい氷も回収して足早に立ち去ることにした。あまりに順調すぎて怖いぐらいだ。デパートでもこの調子で行けばいいのだが……。

 

 

平 塚「もう終わったのか? やけに早かったな……」

 

八 幡「なんかその言葉だけ聞くとあれですが……クーラーボックスが入口近くにあったのですぐ回収できました。あと店内奥の方から多分ゾンビの呻き声が聞こえたので次に来るときも注意しておいたほうがいいかも」

 

葉 山「とりあえず目的のものは調達してきたんだから結果オーライだろ。さぁ次もこの調子で終わらせよう!」

 

戸 部「おうよ。やってやるぜー!」

 

 

 こうやって見るとやはりこの二人はまぶしく見えてくる。だがこいつらが光れば光るほど俺は陰に徹することができる。もし生き残りの敵対者が出た場合、こいつらに注目させることができれば俺が裏側に回りみんなで生き残ることも可能かもしれないな……と二人を見ながらバスの座席に座った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バスでの移動の間、体を休め次の行動に備える。次に行くデパートはららぽーとの次にここらへんで大きいショッピングセンターとなっている。

 小さいころからよく行っていたため今回の目的の売り場はだいたい把握できてはいる。今回調達予定の食料品・飲食店のテナントは一階に集中している。

 そのためゾンビ発生の時間帯が学校とだいたい同じ時間なら買い物に来ていた主婦など多くいたはずだ。そして昨日の雨も気になる。雨を避けるため店内に入り込んでしまっているゾンビがそのままという可能性も……最悪の場合なにも回収できないまま撤退することにもなるかも……。

 

 

結 衣「あっ! 見えてきたよ!」

 

 

 結衣の声に気付き前方を見わたすと見慣れた建物が見えてくる。準備の確認を始めることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 デパートに来てまず最初に思ったのが、やはり車の数が多い。最低でもこの車の数と店員は発生時いたことになる。葉山も気づいているのか苦笑いをしている。戸部はいつも通りだが……

 

 

八 幡「気付いていると思うがこの車の数だ。中にゾンビが沢山いる可能性が高い。目的地を絞ってそこだけ行くのがいいかもしれない」

 

葉 山「じゃあ肉の売り場の方だけってことか?」

 

八 幡「それがいいだろうな。米の場合は袋から出してない状態ならなんとかなるが肉は違うからな。それと昨日話した装備はちゃんとしてるよな?」

 

葉 山「あぁこの通り大丈夫だ」

 

 

 葉山は左腕を上げながらこっちを見て返してくる。

 

 

八 幡「なら大丈夫だな。もし危なくなったら最終的に使ってくれ。戸部も大丈夫だな?」

 

戸 部「ん? あぁ昨日のやつね」

 

 

 戸部も葉山と同じように左腕を上げてくる。その様子を確認すると

 

 

八 幡「ならいい。じゃ行きますか……先生もしもの場合はお願いしますね」

 

平 塚「分かってるからちゃんと戻って来いよ!」

 

沙 希「けーちゃんが帰りまってんだから戻ってこないと承知しないよ」

 

雪 乃「そうね……戻ってこないと小町さんが悲しむわ。……私もだけど」

 

結 衣「そうだよ。ちゃんと戻ってきて昨日の続きやるんだからね!」

 

雪 乃「ち、ちょっと由比ヶ浜さん。昨日の続きって……なんのことかしら?」

 

結 衣「ちょっとゆきのん! 昨日これからは結衣って呼んでって言ったじゃん!」

 

雪 乃「そのことは……って結局昨日なにしたのかしら比企谷君!」

 

沙 希「私もききたいね」

 

 

 結衣の言葉に雪乃と沙希が俺の方を睨みながら問いかけてくる。

 流石に言うわけにいかず 

 

 

八 幡「……じゃあ行くぞ! 葉山、戸部! バスに残る四人は全方向見張って何かあれば先生に伝えて判断すること!」

 

 

 そう言って俺は逃げることにした。 葉山と戸部はにやつきながらついてくる。それでも俺が周りを警戒し進み始めると、二人もバスからデパート入り口まで途中の車や物陰に注意しつつ向かう。入口は壊されており予想していた通り中にはゾンビ達の呻き声が聞こえてくる。

 

 棚や壁をうまく利用して食料品売り場に着くと、まず確認したのが売り場の冷蔵が機能しているかであった。ゾンビ達がいる以上何らかの形で壊されている可能性もあったからひとまずは故障も停電もなっていないようだ。

 持ってきたバックの内部はコンビニで回収した大き目のビニール袋を入れてあり、まずはベーコン・ハム・ウインナーなどの加工品を入れていく。

 次に牛肉や豚肉のなるべく塊を探していく。やはり買い物の時間にゾンビが発生したのか売り場に並んでいるのは少なかったが……

 とりあえず予想より少なかったのでまだ持ってきたバックにかなり余裕がある。葉山と戸部に提案して肉を店内で加工するための従業員用バックヤードに行くことにした。

 

 

 バックヤードに向かっていると前方にゾンビがいるのに気付く。やつの目もこちらを見ている。

 しかしその場から動こうとせずひたすら手だけを動かしている。結構近くまで来ているので視認できていないということはないはずだ。もしかして生前の視力にも関係しているのか? と考えてみたが確証はない。

 そこで俺はポケットの中に手を突っ込み財布を取り出すと中にあった十円玉をやつの近くに転がしてみたが追う様子もなくひたすら手だけ動かしている。その手の動きに見覚えがある気がしたがよく思い出せない。

 ある結論に達し、葉山たちに動かないよう指示を出すとやつの前を通り過ぎバックヤードに入れた。葉山と戸部は驚いた表情で見ていたが手招きすると続いてやってきた。その間そのゾンビは手を動かす以外の行動を取ることはなかった。

 

 

葉 山「比企谷……どういうことだ? あのゾンビなんで動かなかったんだ? ひたすら手を動かすだけで俺たちを襲うことはなかった」

 

八 幡「多分だが……変異種ってところじゃないか? 生前もっとも行っていた行動をずっとしているとか? 俺たちに興味を持つより生前の行動を優先させたとか?」

 

葉 山「まぁ襲ってこないなら……いいけど警戒はしとこうな」

 

戸 部「うーん。考えてもしょうがないべ。いつものように襲ってきたら倒せばいいだけなー」

 

八 幡「そうだな……それで肉が保存してあるのはこの冷蔵庫か?」

 

葉 山「分からないけど、開けて確かめればいいんじゃないか? 一応中は確認してから入れよ」

 

 

 葉山に忠告を受けて業務用の冷蔵室(スーパーとかにある中に人が入れるくらい大きいやつ)をゆっくり開けると中からではなく、上から音が聞こえた。

 二人に合図を出すと近くにあった台に乗り上の様子を伺った。

 

 

八 幡「……何やってんのこんなところで?」

 

 

 冷蔵室の上を覗いて見えたのは中学時代の同級生である折本かおりが横になっていた。

 目はつぶっていて死んでいるのかと思ったが、寝息が聞こえてくるため多分寝ているのだろう。

 

 

八 幡「……折本……折本」

 

 

 なんでここで寝ているかがわからずとりあえず起こそうと肩を揺すりながら声をかけてみるが起きない。あまりにも起きないので折本の肩を軽くたたくように起こそうと再度呼び掛けてみるが

 

 

折 本「んー。うるさいなぁ……まだ眠いんだからあと三時間……」

 

 

今度は嫌がったのかこちらを向いて横になっていた状態からあおむけになってしまいこちら側の胸をポンポンと叩いてしまった。おもわず手を引きながら

 

 

八 幡「すまん!」

 

 

 と声を出すと、折本の向こうで何かが起き上がりこちらを向くと

 

 

???「!!! かおり! かおり! 起きてやつらがきた!」

 

 

 少し大きな声で折本を起こそうとしている。顔を見て気づいたが見たことある顔だ。

 

 

八 幡「あの~」

 

 

 彼女の声に起きたのか折本が伸びをしながらこっちを見る。

 

 

折 本「千佳煩いなぁ……な~んだ。比企谷じゃん。おやすみ……ZZZ……」

 

???「ん~八幡?夢か……おやすみ……」

 

 

 そういうとまた眠ってしまった。なんでかルミルミまでいる。

 

 

???「え……比企谷って……やつらじゃないの?」

 

八 幡「確か……仲町さんだっけ?なんでこんなところで寝てるの?」


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