世界が終わりなんて間違っている 第一章   作:showt

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第十一話  八幡の危機

雪 乃「さて……どういうことか教えていただける?」

 

 

 俺は今、生徒指導室の床に座らせられ周りを他のメンバーに囲まれている。

 本来なら物資調達から学校に帰ってきて四階に戻れば、一息つけたはずなのに……今の状況は俺にとってかなり分の悪い状況だ。居残り組である雪ノ下が知っているということは、あのバスの中での出来事を先に四階に戻った女性陣の誰かから広がってしまったのであろう。

 

 

結 衣「ヒッキー! 学校戻ったら話すって言ってたじゃん」

 

いろは「そうですよ! 川崎先輩だけ呼び捨てってずるいです!」

 

 

 雪ノ下の問いに被せるように女性陣が続いてくる。

 

 

雪 乃「そうね……人数も増えて同じ名字で紛らわしくなって何か行動を起こすとき不備が出てしまうかもしれないわね。この際、呼び方を決めておけば何かあった時に混乱しなくて済むからその話し合いをしましょうか? ね……比企谷君」

 

 

 雪ノ下は俺らが四階に戻ってきた時のように笑顔で語りかけてきたが……その言葉と表情には有無も言わせない迫力が垣間見える。

 

 

八 幡「む、無理に変えなくてもいいんじゃないか?」

 

 

 迫力に押されながらも抵抗してみるが

 

 

雪 乃「比企谷君。却下します」

 

 

 出した提案も即棄却されてしまう。従うしかないかとあきらめてかけていた時、意外なところから援護射撃が飛んできた。

 

 

三 浦「つーかさぁ雪ノ下さんさぁ。無理に変えなくてよくない?どっちか認識できればいいだけじゃん」

 

 

 あーしさんの一言で、雪ノ下の視線が俺からあーしさんに変わる。そのまま、あーしさんは俺の方指さし

 

 

三 浦「あーしは、こいつのことこれからもヒキオって呼ぶし、ヒキオの妹を名前で呼べば区別できんじゃん」

 

八 幡「! そうだな。どっちかわかればいいだけなんだから……かわs……沙希の方はどっちも女だから川崎さんで紛らわしくなるからだし。俺と小町は性別違うからどっちも君づけにならないからな。それに無理に変えるほうが混乱するんじゃないか!」

 

 

 あーさんの言葉に同調してこのピンチから逃げれるよう賛成に投じてみた。途中、前の癖で名字読みで話そうとしたためにらまれてしまったが……

 

 

八 幡「呼び方を変えるにしても追々でいいんじゃないか……希望があればその時変更ってことで」

 

雪 乃「はぁ……仕方ないわね。じゃあ各自で区別できるよう話し合ってください」

 

 

 正論だと思ったのかすぐに折れてくれたのは助かったが

 

 

結 衣「じゃあヒッキーはヒッキーね! わ、私のことは結衣ってよんでほしいなぁ」

 

いろは「結衣先輩ずるいですよぉ。せんぱい! せんぱいの事今まで通りせんぱいって呼びますけど、私のことはいろはって呼んでくだいね」

 

 

 名前呼びを強要して来る女性陣ばかりで結局、女性陣のほとんどを名前呼びになった。ほとんどが俺のことをそのままなのに解せん。

 

 呼び方の話し合いもひと段落すると

 

 

めぐり「これくらいかな……で、人も多くなってきたから役割分担とか決めた方が効率いいんじゃないかな?」

 

葉 山「そうだな。今日みたいに調達班・居残り組でも校舎内でできる役割とかあると思うし……」

 

 

 めぐり先輩が次の議題を出すと、葉山が賛同する。

 

 

平 塚「確かに、何か役割を持っていた方がいいがどのように分ける?」

 

八 幡「今必要なのは、調達班・防衛施設作成・見張り防衛・それに戦闘に不向きな人にもできそうな屋上で菜園係・調理・武器作成や生活用品作成ってところか?」

 

雪 乃「そのくらいでしょうね」

 

葉 山「調達班は外に出ないときは、安全地域の確保みたいに校内でもできる作業に振り分けるといいだろうね」

 

八 幡「調達班は必然的に先生と男子・ある程度運動神経のある女子ってことになるな。でも校舎の防衛に男子を残したいから……手先の器用な戸塚と武器に詳しそうな材木座に武器作成と同時に校舎の防衛を任せたいんだが……」

 

彩 加「うん! 大丈夫だよ」

 

八 幡「あと、調理班や生活用品・菜園といった校舎の残る人たちには昼間だけでもいいから交代で屋上からの見張りも頼みたいんだが……」

 

葉 山「見張りかぁ。情報は大事だからな……学校の周囲に何かあればすぐ対応できるようにできれば対策とりやすいからな」

 

八 幡「そういうことだ」

 

いろは「せんぱい。調達班って今日みたいにバスの中で注意の確認とかいないといけないんですよね。それならあと二、三人必要ってことじゃないんですか?」

 

八 幡「男子が調達中、先生一人がバスの中ってのは危ないかもしれないし何人かは必要だな。取り敢えず希望とかあれば優先的にそっちに回ってもらおうとして……」

 

 

 そう告げると希望を取っていく。

 

 調達時

 ◎調達班……先生・八幡・葉山・戸部・雪乃・結衣・沙希

 ◎調達班外出時校内防衛・見張り……その他

        生徒指導室待機……めぐり・いろは

 

 

 通常時(メインになる人)

 ◎物資在庫管理・生徒指導室待機……先生・めぐり・雪乃

 ◎防衛拠点作成……八幡・葉山・戸部・いろは・三浦

 ◎武器生活品作成……材木座・戸塚・沙希・海老名

 ◎調理担当……雪乃・小町・いろは・沙希など料理のできる人のローテーション

 ◎菜園・ペットの世話担当……結衣・小町・結衣母・相模・けーちゃん

 ◎癒し担当……けーちゃん・カマクラ・サブレ

 通常時自分の作業がない場合遊撃で応援に回る。

 

 

 

 大体の役割分担が決まったところで誰かのお腹の声が聞こえてきた。

 音がした方を見ると

 

 

京 華「はーちゃん。おなかすいたーっ!」

 

 

 自分のお腹を押さえながら訴えかけてくる。その姿になごみつつ、みんなを見わたして

 

 

八 幡「そろそろ、夕ご飯の準備たのむ。準備している間、明日も調達班は外に出るから打ち合わせしときたいんだけど……」

 

結衣母「じゃあ私が食事の準備しますね~。あと誰か手伝ってくれると助かるんだけど~」

 

小 町「小町明日調達班じゃないから手伝いますよ~」

 

八 幡「小町なら大丈夫だろ。それで他の皆は今日調達してきた物資の仕分けをしてほしいんだけど……物資の管理をすることになっためぐり先輩を中心にお願いしてもいいですか?」

 

めぐり「大丈夫だよ。男手もほしいから戸塚君と材木君も手伝ってくれるかな?」

 

彩 加「わかりました! そういや、八幡……使用済みのペットボトルを昨日集めておいてくれって言ってたけどそれはどうするの?」

 

材木座「……あの~われの名は材木座なんですが……」

 

 

 女性に慣れてないこともありたどたどしく訂正を求めてくるがみんなスルーしている様で話は続いていく……すまんな材木座。早めに片づけ終わらせたいから……。

 

 

八 幡「使用済みのペットボトルは、あいている人でいいから洗って水を入れておいてほしいんだけど……」

 

雪 乃「……もし水道が止まった時の対策かしら?」

 

八 幡「そうだな……できれば一度白湯にした状態で保存しておくのがいいけど、とりあえず今はただの水を入れておいて使用するときに沸騰させればいいかな……」

 

彩 加「了解!」

 

 

 そういうと戸塚とめぐり先輩は、とりあえず生徒指導室の外に出していた物資の片づけに向かった。そして調達班の皆が集まってきたところで

 

 

八 幡「で……明日は今日いけなかったデパートに足を延ばしたいと思っているんだけど、明日はできれば食料品……日持ちがするものは当然だが今のうちに米・生鮮類・肉を調達しておきたい」

 

葉 山「ちょっと待ってくれ比企谷! 米はわかるけど肉って」

 

八 幡「まぁ保存に向かないから疑問に思うのは当然だけど……今日ホームセンターで燻製機を入手してきたからそれを使いたいんだ」

 

雪 乃「なるほど……燻製にして保存しやすくするのね」

 

八 幡「それと冷凍しておけば保存もきく。特別棟の調理室には大きな冷蔵庫があっただろ? そこの冷凍室に入れて入らない分を燻製や早めに使えば問題ない。この辺りは海が近いから魚はいざとなったら海に釣りに行くという手もあるが、この辺りで牛や豚を育てているところないからな」

 

葉 山「分かったけど……肉や米って重くならないか? 一気に持ってくるのは難しいだろうし……」

 

八 幡「肉で持ってこれない分はその店の冷凍庫にでも入れておけばいいんじゃないか?電気が停まるまでは保存できるだろうし……あと生鮮類を店の中にずっと陳列してある状態で放置しておくと衛生的に悪くなるだろうし」

 

平 塚「腐らせるよりはマシか……」

 

八 幡「ですね。今日ホームセンターでとかで生活用に使うものはほとんど確保できたはずです。だから明日は食料品をということで、時間があって回れるなら近くのスーパーとかも回ってみましょう」

 

平 塚「それでいいと思うぞ……あと比企谷。今日戸部と三人で話したことやはり皆にも伝えといたほうがよくないか?」

 

戸 部「そおっすね。知らないと対応できなくなるっしょ」

 

八 幡「……知ってもらっていて対策立てるほうがいいか。食事が終わったら話してみようか。ほら、もう食事の準備できたみたいだし」

 

 

 視界の隅に並べられていく食事に目がいき、みんなに分かるよう指をさした。

 それから食事を始めるため物資の仕分けをしている戸塚達を呼びに行き、みんな集まったところで食事を開始することにした。

 

 

 

 食事が終わり朝先生たちに話したことを伝えると最初は半信半疑だったが、例を出して話すと女性陣は怖くなったのか動揺している。

 取り敢えずの対策として人が少ない場所に行くときは最低二人以上で行動すること、もし他の避難してきた人を受け入れるとしてその人が襲ってきた時の為に防犯ブザーなどの防犯グッズを持っておくこと(防犯ブザーは校舎内でゾンビ達が来ないところに限るが)などを対応策に挙げた。雪乃がポケットの中からスタンガンを出してきた時はみんな驚いていた。

 

 今日も見張りを立てて寝ようという話になり順番を決めようとすると

 

 

彩 加「ねぇ、見張りについてんなんだけど明日調達に出かける人はゆっくり休んだ方がいいんじゃない?」

 

いろは「そうですね。二日連続って人もいますし、それにゾンビ達が生前行動で出てくる前に目的地に行くほうがいいんじゃないですか?」

 

八 幡「でもそれだと両側警戒するのに手薄なところできないか?」

 

彩 加「だからいっそのこと職員室側の扉は職員室の机で封鎖しちゃったらどうかな? そうすれば片方だけで済むわけだし」

 

葉 山「ちょっと待ってくれ。俺は今日調達に行ったわけじゃないから最初か最後ならできるんじゃないか?」

 

八 幡「調達班とけーちゃん抜かすと男子三人に女子七人か……それなら相模も抜かして男一人女子二人を三組三時間交代にすればいいんじゃないか?」

 

相 模「ちょ、ちょっと待って。なんでうち外されてんの?」

 

八 幡「だってお前あそこにずっといたんだからろくに寝れてないだろ? とりあえず今日は休ませてもらった方がいいぞ」

 

 

 事情を知っている戸部がそのあと賛同すると相模は赤くなりながら俯いてありがとっとつぶやいたように見えた。

 

 (戸塚・いろは・めぐり)→(材木座・小町・結衣母)→(葉山・三浦・海老名)という順番で見張りをすることに決まったようだ。

 決める間、俺と戸部が中心となり残りのメンバーで職員室側の扉を塞いでいく。

 職員室の封鎖が終わり生徒指導室に戻ると

 

 

京 華「はーちゃん。はーちゃん。あそぼ!」

 

 

 コンビニで回収した物の中に食玩があったらしくそれを手にこちらにやって来る。

 話し合いも終わったらしくみんな今から見張りや睡眠をとりに行くらしい。沙希にけーちゃんと遊んでやってほしいと頼まれ少しの間遊ぶことにしたのだが……

 

 

 けーちゃんが遊び疲れ、ソファーの上でだきつかれた状態で寝てしまった。

 その後、昼間の疲れもあってか俺もつられるようにいつの間にか寝てしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     ~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「んっ、んむっ、ちゅっ、ヒッキーっ、ヒッキーっ」

 

 

 まどろみの中、遠いようで近いようなところから聞こえてくる自分を呼ぶ声。それに伴い胸元から首筋・頬と上ってくる感触。そして次に聞こえてきたのは

 

 

???「ヒッキー……いいよね。いろはちゃんが言う通りヒッキー次第でみんな愛してもらえることできるんだよね。だから……んっ」

 

 

 言葉が消えた後に唇から伝わる柔らかい感触。そして体の方にも何かこすりつけてくる柔らかな感触。

 ここまでくると次第に覚醒し、状況の判断をし始める。

 ここはどこか? ……生徒指導室。

 目の前にいるのは? ……特徴的なお団子のピンク頭ということは結衣。

 なにをされている? ……。

 

 

 そこまで考えた時、完全に目が覚め結衣にのしかかられキスされていることが分かった。

 抵抗もできず成すがままになっていると、満足したのか唇が離れていく。そして目をつぶっていた結衣の目が開くと……

 

 

結 衣「ひ、ヒッキー起きてたの?」

 

 

 俺の目があいていることに初めて気づいたのか顔を赤くさせながら驚いている。

 

 

八 幡「……」

 

 

 結衣の言葉に何も言えないでいると

 

 

結 衣「ごめんね。ヒッキー。ヒッキーのこと好きだからキス……我慢できなくなっちゃった」

 

 

 目が覚めてからずっとだが俺を押し倒した状態で、俺のことを見下ろしてくる。

 

 

結 衣「いろはちゃんから聞いたんだ。法律ってもう関係なくなってるからヒッキーのこと好きならみんなで愛してもらおうって。だから私もいいかな?」

 

 

 そういうと抱き着いていた体をさらに密着させてくる。

 

 

結 衣「もし……ヒッキーがいいならこの先も……」

 

八 幡「いやいやいや流石に今は無理でしょ。みんな同じ階にいるんだし」

 

結 衣「できるだけ声出さないようにするから……もしかして私じゃだめ?」

 

 

 誘ってくる結衣に今の状況では無理だと伝えても、さらに体を寄せてくる。

 

 

八 幡「だめじゃないけど……だってアレ無いから……」

 

結 衣「大丈夫。ちゃんとあるから……」

 

八 幡「あるって……何のことかわかってんのか?」

 

 

 誤魔化そうとしても結衣はグイグイ攻めてくる。胸元から四角い袋を取り出すと

 

 

結 衣「コレ、でしょ?」

 

八 幡「何で持ってんの? もしかして本当にビチヶ浜だったの?」

 

結 衣「ビッチじゃないし……私まだ……だし」

 

 

 またも誤魔化そうとしてした言葉に、結衣は顔を赤く染め声を段々小さくさせながら話してくる。

 

 

結 衣「そんなに言うならホントにビッチか……か確かめて」

 

 

 俺の手を自身の胸に誘い込みながら、顔を寄せてくる。

 もう流されてもいいかなと思い始める丁度その時

 

 

いろは「結衣先輩! そこまでです。それ以上の抜け駆けは流石に止めますよ!」

 

 

 生徒指導室のドアが開きいろはが中に入ってきた。そのことで正気を取り戻した俺の頭が回転を始める。

 

 

結 衣「もぉーいろはちゃん! 今いい所だったのに……」

 

いろは「いい所……じゃありません。確かに思いを伝えるのは応援しましたけど流石にそこまでは見逃せません」

 

 

 俺を蚊帳の外にして二人で言い争っている。頭の回転が通常に戻ったことで今更だけど気づいたことがあり

 

 

八 幡「えっと……まず結衣は何でここにいたの? あとけーちゃんは?」

 

結 衣「あんまり遅いんで沙希と一緒にけーちゃんを迎えに来たんだ。そしたら二人して寝てたから沙希はけーちゃん連れて戻ったんだけど……ヒッキー見てたら我慢できなくなって」

 

 

 俺の問いに結衣が答えてくれたが

 

 

いろは「だからって暴走しすぎです。それにせんぱいたち明日早いんですからもう各自の部屋で寝てくださいよ」

 

 

 いろはに早く寝るようせかされ生徒指導室を出ると、見張りをしていたであろう二人と顔があった。戸塚とめぐり先輩が見なかったことにするかのように顔を背けている。多分全部聞かれていたのだろう。こちらも恥ずかしくなったので何も言わずに部屋に戻ることにした。その途中で

 

 

結 衣「ヒッキー。明日無事に戻っt」

 

八 幡「ストップ! 結衣それ以上言うな! それは死亡フラグだ!」

 

 

 こうして三日目の夜が過ぎていくのであった。

 

 

 




呼び方の話し合い以降呼び方が変わっている人がいます。
八幡から男性陣に対してはそのままですが、八幡から女性陣はほとんど名前です。
例外は今のところ三浦・海老名さん・先生・相模・結衣のお母さんくらいですかね。(相模は名前で呼ばれるのが恥ずかしかったということで今は名字呼びです)
女性陣から八幡への呼び方は変動なし(小町の方を区別できるよう呼ぶことで回避)

役割分担で調達班の女子を運動神経がよさそうで三人選ぶと雪乃・沙希・あーしさんになってしまうんですが、あーしさんと二人は相性悪いので間を取りなすことができる結衣にしてます。

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