ドラえもんのいないドラえもん ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~ 作:ルルイ
ハジメと別れたリルルと預けられたジム十機、そしてアシミーと付き従う軍の兵士は、渡された地図に従ってジャックバグの製造施設を目指した。
製造施設は何か所も作られ地図を見て近い場所から順番に回り、兵士たちは武器で手当たり次第に攻撃し、再建不可能な様に念入りに破壊した。
その際に完成していた大量のジャックバグに幾度も襲われたが、ノーベルガンダムの外装を付けたリルルとジム達が前衛として戦う事で、メカトピア軍の兵士に被害が出る事はなかった。
「映像では何度も見ていたが、地球のロボットはやはり強いな」
「味方としては非常に頼もしいのですが…」
アシミーは指揮官の上級兵とジム達の戦いぶりを賞賛するが、地球側とは現在は共闘していても少し前までは戦っていた相手だ。
停戦も急ごしらえの物であり、ジャックバグの事が片付けばどうなるのかと指揮官は不安になる。
「そう心配するな。 彼らは理性的に地球を守るために俺達と戦っていた。
滅ぼそうとするならとっくの昔に滅ぼされている。
今後の地球からの要求でも、メカトピアが滅びるよりは少しはましな結果になるだろう」
「申し訳ありません、アシミー様。 我等が不甲斐ないばかりに」
地球のロボットに力及ばなかったメカトピア軍として、指揮官として申し訳ない気持ちになっていた。
「何を言う。 地球に侵攻する事を決定したのは評議会だ。
俺達の方こそ、愚かな選択で多くの兵を死なせることになった。
敗戦が決まったら、俺だけじゃなく他に何人も議員の首が飛ぶことになるだろう」
「ですが、アシミー様は唯一地球侵攻に反対していられたと…」
「止められず結局こんな事態になったんだ。 上に立っちまったんなら、責任は果たさなきゃならん。
だが…」
アシミーの脳裏にこの聖地に隠れているだろうオーロウの姿が浮かび上がる。
「オーロウには議長としてしっかり全ての責任をとってもらわなくてはならん。
この聖地の惨状と、ジャックバグについてもな」
聖地はアムとイムの住んでいた場所として、とても古い建物があるだけの広大な土地の筈だった。
それが地下に様々な施設が存在し、更には災厄と言われたジャックバグの製造施設まで作られては、メカトピアの民にとって聖地と始祖とそれを作り出した神への冒涜だった。
落ち着いて見えて、アシミーの心中は怒りに満ちていた。
「アシミー様、この施設の破壊は終わりました。
この場のジャックバグも間もなく殲滅が終わります」
「リルルか。 君の活躍も凄まじいな」
「ハジメさんから預かったこの外装と武器のお陰です。
私自身は大したロボットではありませんから」
謙遜するリルルはノーベルガンダムの外装でジャックバグの攻撃に耐え、ビームリボンを操ってジャックバグを鎧袖一触していた。
扱いが難しそうなビームリボンもサイコントローラーの様に意思に応じて動くので、リルルにも巧みに使うことが出来ていた。
「そんなことはありません、リルル殿!
貴方のご活躍で多くの兵士たちが救われております。
舞うように戦うあなたの戦いぶりはとても可憐です!」
「あ、ありがとうございます…」
いささか興奮した様子でリルルを褒め称える上級兵。
メカトピアのロボットにとってとても美しく見えるノーベルガンダムの容姿に見惚れていた。
「あなたが地球の方であることが残念でなりません。
この戦いが終わった後も、地球とは穏便に戦争が終わってほしいと私も望みます」
「いえ、私はメカトピアのロボットです」
「え?」
てっきり地球のロボットと思っていた上級兵は間の抜けた声を漏らす。
補足するようにアシミーはリルルの事を説明する。
「リルルは地球側と接触して対話した、もともとは工作員として送り込まれたメカトピアの兵だ。
地球に潜入するために人間の姿に改造を受けたのを隠すために、その上からさらに地球のロボットの装甲を外装として借りているそうだ」
「えぇ?」
ちょっとややこしいリルルの状態に上級兵も少し混乱する。
リルルは証明するように頭部を手で挟んで持ち上げると、ノーベルガンダムの頭が外れて赤い長髪の人間の少女の顔が現れた。
「ロボット、なのですな」
「はい、地球のロボットにはコードシグナルがありませんが、私はメカトピアのロボットですのでこの通り」
リルルが自身を示すコードシグナルを発する。
メカトピアのロボットなら誰もが持ってる、外見ではなく中身で個人を識別するための物だ。
外見改造が容易なロボットには、このコードが何よりも個人を証明するためのものとなる。
「…確かに我らの同胞のコードですな」
コードシグナルの発信も電子頭脳に付随されているもので、偽装や変更は出来ない。
しかしそれはメカトピアロボットに限った話なので、ハジメがジュドのコードシグナルを利用したように地球側には偽装する事は容易だ。
この場で偽装する意味はないので、上級兵も疑うつもりはないのだが、地球のロボットだと思っていたら複雑な事情の同胞だったと言われて、少し肩透かしを食らった気分だった。
「勘違いをして申し訳ない。
しかしなぜ地球側はそこまで強力な武装と兵士をあなたに預けたのでしょう?」
「確かにこの装備もあのジムという兵士も私達からしたら強力な武器なのでしょうけど、地球側からしたら数ある戦力の一つでしかないのです。
それだけ私達と地球には大きな戦力の隔たりがあるんです」
「…私も宇宙での戦闘に参加しておりましたので、彼らの強さは重々承知しています」
宇宙での戦いでは多くの兵が敗れているので初期から残っている者はほとんどおらず、上級兵も途中からの増援で参戦し、幾度かの戦闘を幸運にも生き残った一人だ。
地球のロボットの戦闘能力を目の当たりにし、真正面から対峙する事を恐れていたが、今は一時的な味方だとしても心強さを感じていた。
「ハジメさんが…彼らが私達に力を貸してくれる理由は私にもうまく説明出来ません。
だけどあの人たちが本当に戦争を望んでいなくて、早く戦いを終わらせるために動いていることを私は知っているし信じています。
私はそんな彼らに対して、少しでも恥ずかしくないメカトピアのロボットでいたい。
戦争を仕掛けてしまったことが今はとても恥ずかしいけれど、彼らの差し伸べてくれた優しい手をちゃんと握り返したい。
彼らと対等でありたいんです」
始めはメカトピアを守るために協力する事にしたが、ハジメ達と過ごす事で地球人もメカトピアのロボットと大きな違いの無い心を持っているのだと改めて確信していた。
良い事や楽しい事が嬉しいし、大切な物を失ったら悲しいし、奪われたり傷つけられたら怒るし憎しみを抱く。
リルルはハジメに共感を覚え、同じなのだと気持ちで感じることで信頼をしていた。
ならあとは自分たちが応えるだけだ。
当の昔に地球と、人間と争い続けたいという気持ちはなかった。
戦いを終わらせたいという願いに、メカトピア側が応える必要がある。
リルルはメカトピアのロボットとしてこの戦いを終わらせることに尽力しなければならないと思った。
「だからハジメさん達に頼りきりになんか出来ないわ。
力を借りなければならないとしても、私達がこの手でメカトピアの平和を取り戻さないといけない。
その為に私は戦うんです」
リルルは自然と語ってしまった自身の思いと決意表明に、我に返って恥ずかしくなり、誤魔化すように先に進むことを進言した。
ジャックバグの製造施設はまだ残っており、その場所は地下施設のかなり奥であると地図で記されていた。
ジムとリルルを先頭にメカトピア軍は地下施設の奥へと進んでいく。
途中、巨大な吹き抜けの縦穴があり、アシミーは何らかの大きな荷物の搬出入の為ではないかと考察した。
奥の製造施設へはここを抜ける事が近道で、空を飛んで縦穴を降りていき、途中の横にある通路を進んでいく。
先頭を盾を構えて進んでいたジム達が立ち止まり、リルルへ報告する。
「ここより先に多数の反応があります」
「敵?」
「おそらくは」
「アシミー様」
リルルはアシミーの判断を仰ぐべきと敵の存在を伝える。
「聞いていた。 待ち伏せされているようだな」
「どうしますか?」
「地図では他のルートとなるとだいぶ遠回りになる。
この数で迅速な移動は難しい。
敵も我々の動きを察知して待ち構えていたはずだ。
どこを進んでもいずれは会敵するならば、罠を警戒しつつ戦うしかあるまい」
「承知しました。 総員、戦闘用意!」
アシミーの考えを聞き、指揮官の上級兵が兵士たちに指示を出す。
「リルル、あのジム達が盾になってくれるお陰で兵の損害を抑えられているが、彼らを使い捨てるような真似をするわけにはいかない。
限界が来たら下がってもらって構わん。
あまりひどい扱いをしてはハジメ殿に顔向けが出来ん」
「ありがとうございます。 私もどこまで頼っていいか分かりませんでしたので。
ジム、戦闘に問題が起こるような損傷を受けたら下がってください」
「承知しました」
ジム達は盾を持っているとはいえ、これまでの戦闘でそこそこ小さな傷が目立ってきている。
大きな変形はないので耐久性に問題はないだろうが、これからの戦いでも無事とは限らない。
「では、いきます」
リルルの指示に、ジム達が再び前進を開始する。
奇襲を警戒して盾を前面に出して、後方のメカトピア軍を守るように進む。
少し進むと大きな扉があり、その向こうからジム達はセンサーで敵の反応を拾っていた。
「この先に敵がいるようです」
「わかった」
「今、扉を開けさせます」
『その必要はない。 こちらから開けてやろう』
「!!」
リルルがジムに命じて扉を開くレバーを引かせようとしたところで、備え付けられた施設のスピーカーから声を掛けられた。
言葉通りに扉は勝手に開いて、奥には無数の兵士のロボットが整列して並んでいるのが見えた。
『どうした、入ってくるがいい、アシミー。
その勇猛さを轟かせた大将軍の名が泣くぞ』
「どうしますか?」
「進むぞ。 おそらく奴が待ち構えている」
呼びかけに引くべきではないと、アシミーはリルルにその判断を伝える。
リルルは黙って頷きジムに前進する指示を出し、メカトピア軍もアシミーと上級兵を先頭に進み始める。
扉をくぐって待っているのは、やはり武装した無数の兵士ロボット達だった。
ただしその全てのロボットの頭部には、電子頭脳を乗っ取ったジャックバグが着いており、リルルたちは酷い嫌悪感を覚える。
ジャックバグによって操られた傀儡の兵士達が左右に分かれると、奥の方に金の装甲が特徴である金族のロボットが姿を見せる。
頭部にはジャックバグは装着されておらず、操られていないのが一目でわかる。
「やはりここにいたかオーロウ!」
「貴様こそ、ここまで来るとはご苦労な事だ。
流石は大将軍と呼ばれただけはあるか」
アシミーはジャックバグと聖地の惨状に敵意をむき出しにし、オーロウも労うような言い方ではあるが見下す感情を包み隠さずむき出しにしている。
議会で行なわれた冷静な応対は、この場においてまるで面影を残していなかった。
「観念しなさい。 これ以上メカトピアをめちゃくちゃにはさせないわ」
「地球のロボットか。 地球の人間共と組むなどやはり愚かな。
今はアシミーと話している。 黙っているがいい!」
オーロウの剣幕にリルルは僅かに気圧される。
しかしまとめ役がアシミーであることに違いはなく、オーロウとの対話を任せる事にする。
「答えてもらおうかオーロウ! これは一体どういう事なのか!」
「これとはなんだ?」
「すべてだ!! 聖地の地下に作られたこの巨大な施設。 ジャックバグの製造と見境ない襲撃。 ヤドリなどという寄生生物の存在。
メカトピアを混乱に陥れたこれらの事、一切合切答えてもらおうか!!」
すべてを知るであろうオーロウに、アシミーは激高しながら問い詰める。
対してオーロウは落ち着いた様子で、考えるそぶりをして余裕を見せている。
「まあいいだろう。 全てはメカトピアの再生と発展、そして真なるメカトピアの王が宇宙に君臨するための準備にすぎん!」
「王だと。 貴様はまだ金族が王族気取りでメカトピアを支配しようというのか!」
金族が共和制になったことで立場が低くなったことを良く思っていないのは知っていたが、本気でこのような形で王座を取り戻そうとすることが理解できなかった。
ジャックバグなどという忌避される手段を使えば民衆の支持など得られるわけがないのだから。
「それは違う。 金族がではない、私が絶対唯一完成された王として永遠に君臨するのだ」
「完成された王だと…」
「そうだ、順番に説明してやる。
今のメカトピアは間違っている。
始祖の真の後継である金族と同じだなど、愚民どもの思い上がりも甚だしい。
始祖の系譜である我等に仕えてこそ、全てのメカトピアロボットの真の価値なのだ」
「ふざけるな! 貴様の様な金族がメカトピアの王だったがために、民衆は立ち上がる事を決意したのだ。
その民衆に敗れて、議員の席に金族としての権利を残したのではないか!」
金族には議員の席が一定数約束されている。
これは嘗ての戦争の終戦時に交渉によって得た金族の権利だ。
「ああ、そうだとも! 屈辱の日々だった!
我らが貴様らごときと同じ席に座るなど、あってはならない事だった。
僅か十年とは言えメカトピアの歴史の汚点となってしまった!」
オーロウは議長だったとはいえ、同じ席に銀族や鍍金族のような下位の存在と肩を並べる事が我慢ならなかった。
だがそれでも現状を覆せない事は解っていたので我慢していたが、今ようやくその鬱憤を晴らさんとその思いの内を吐き出していた。
「メカトピアの歴史は貴様のモノではない。
メカトピアに生きる全てのロボット達が作ってきた物だ!」
「ふん、共和派につき我等に剣を向けてきた貴様に金族の偉大さを語っても意味はないか。
だが私は嘗ての王制を取り戻そうというのではない。
私という完全なる存在によってメカトピアを宇宙にすら名を轟かせる国とするのだ」
「要は、貴様が王となって支配しようというだけだろう。」
「違う、今の私は嘗ての金族でもなくメカトピアロボットの誰もがなしえなかったことが出来る。
わからんか」
「貴様の何が変わったというのだ」
オーロウの外見からは何の変化も感じられない。
武装や内蔵された機能などは分からないが、それらしい変化は一切見られなかった。
「その可能性を考えたのは、嘗ての戦争で狂気の科学者ホペアがジャックバグを生み出したことだ。
電子頭脳を狂わせた奴は何の目的かもわからぬままジャックバグを生み出して、嘗ての戦争で両軍に大きな被害をもたらしたことで、結果戦争の終結に至った。
重要なのはホペアが狂ったとはいえ神の制約を打ち破り、ジャックバグという禁忌の存在を作り出せたことだ」
「まさか貴様! サーキットエラーになっているのか!」
アシミーはオーロウの物言いからサーキットエラーの事にたどり着く。
サーキットエラーは神がメカトピアのロボットが制約を犯そうとした時に発動するリミットサーキットの機能不全を指す。
ホペアが電子頭脳に異常が起こっても活動を続け、ジャックバグという電子頭脳を冒す禁忌中の禁忌を生み出せたのもリミットサーキットが動かなかったからだ。
そこからサーキットエラーという語源も生まれた!
「そうだ! だがサーキットエラーなどという言い方は気に食わん。
メカトピアの真の王者への覚醒と呼んでもらおうか。
私はヤドリという存在と出会ったことにより、その制約を、いや試練を乗り越えたのだ」
「試練だと?」
「神が与えたこの制約を私はメカトピアの真の王者を決める試練と考えたのだよ。
この試練を乗り越えれば、我らロボットの可能性は無限に広がる。
ホペアは不完全だったがために狂っていたが、ジャックバグという全てを支配する力を示して見せた。
絶対なる存在になるために、この制約を乗り越える事こそ、神が与えた試練と言わずしてなんという」
「それは違うオーロウ!
神は戒めたのだ! ジャックバグのような存在を平然と作れるようでは世界は混沌と争いに満ちてしまう。
そんなことにならない為にこの制約が我等にはあるのだ!」
神が本当に戒めの為に制約を作ったのか、アシミーには分からない。
だがジャックバグの存在を思えば、神が平和の為に制約を作ったのだとアシミーには思えた。
「見解の相違だな。 貴様とはつくづく話が合わん」
「このような事はやめろ、オーロウ!
ジャックバグを再び世に放っていったいどれほどの犠牲が出たと思う」
「完全なる存在となった私には細事だ。
全ての制約より解き放たれた私にはロボットそのものを自由に生み出すことが出来るのだからな」
「それこそ神への冒涜だ!」
メカトピアのロボット達は同胞と作る時に、男性型と女性型が揃わなければいけない制約がある。
その制約すらないオーロウは同胞のロボットを量産することが出来ると言っているのだ。
「いいや、むしろ神が私に王になれと導いてくれているとすら思っている。
ヤドリがこの星に降り立ち、私の前に現れリミットサーキットのみを止めたことがその証だ」
「貴様がサーキットエラーとなったのはヤドリの仕業か」
「ハジメさんの言った通り、とても厄介な存在ね」
ジャックバグの上位互換どころではなく、そのような細かい操作もできる事からヤドリの能力はかなり融通が利くらしい。
リルルはヤドリの対処に向かったハジメの事が少し心配になる。
「ジャックバグの量産にも彼らは尽力してくれた。
私が完全にメカトピアを掌握し、宇宙にこの名を轟かせる時、彼らはそれに貢献した偉大な種として名を連ねる事になる。
それでどうだろうか、ヤドリ天帝よ」
不意にオーロウは横を向いて問いかけると、そこにはヤドリの円盤が複数浮かび、一つだけ金色の円盤だった。
金色の円盤に乗るヤドリこそ、ヤドリの頂点に立つヤドリ天帝だ。
「オーロウよ、我らはそのようなものに興味はない。
契約として地球の人間の体を手に入れてくれればな」
「無論だ、ジャックバグによって全てのロボットを兵として使えば地球軍も流石に応戦しきれまい。
その時にはお前たちも地球のロボットを手に入れるために動くのであろう」
「地球のロボットを奪った者がかなりの性能だと絶賛していたのでな。
我等はロボットの体は好まんが、乗り物にする分には気にしない」
オーロウはメカトピアのロボット全てをジャックバグで支配下に置くことで兵士として運用し、地球軍に勝つつもりでいた。
ヤドリもまた、地球のロボットの性能を聞いて、手に入れる分には越したことはないと考えていた。
「オーロウ! まさか地球人を奴隷にする計画はヤドリの為の物か!」
「その通りだ。 奴隷などジャックバグでお前たちを支配すれば済むだけの事だったからな」
「どこまでもふざけおって!」
この戦争の発端すら、オーロウとヤドリの思惑と聞いて怒りを見せるアシミー。
人間だったら頭に血を上らせて真っ赤になっているだろう。
「あなた達の思い通りになんかさせない!
地球との戦争もあなた達も止めて、メカトピアの平和を取り戻す!」
シルビアへの誓いを思い返し、リルルはこの場で決着を着けようとビームリボンを構える。
「メカトピアを正すのはこの私だ。
ヤドリ天帝、王冠を」
「ああ、受け取るがいい」
ヤドリ天帝の後ろから、ジャックバグのついていないヤドリが操るロボットがメカメカしい形をした金色の王冠を持ってくる。
ヤドリの操るロボットによって手渡された冠をオーロウは掲げる。
「これこそ私が王として君臨する証であり、その権能。
この王冠こそジャックバグの全てを支配し、我ら金族が待望した絶対的な力を操る制御装置だ。
これを被り王に返り咲く瞬間に立ち会えることを光栄に思うがいい」
「絶対的な力?」
「これ以上一体何があるの?」
リルル達の疑問に答えることなく、オーロウは金色の冠をその頭に装着する。
それにより冠に施された宝石のような電飾に光が点り、制御装置が起動したことを示す。
「さあ、新たなメカトピアの王の誕生だ!
新たにして完成された永遠の王の誕生に、忠実なる僕共よ、讃えるがいい!!」
――オーロウオウバンザイ、オーロウオウバンザイ――
「フハハハハハハハハハ!!!!」
整列していたジャックバグのロボット兵たちが一斉にオーロウを称える声を上げる。
そこに感情などは一切なく、ただ操られた者達として忠実に行動するだけの人形としての行動だった。
そんな意思を感じない称賛にオーロウは王となったことに興奮し、リルル達は呆れた様子で見ていた。
自分で操ってる者達に称賛されて何がうれしいのかと、オーロウに一切共感が持てなかった。
ただジャックバグを操る存在を許すわけにはいかないと、全員が武器を力強く握ってオーロウを倒さんと決意した。