ドラえもんのいないドラえもん ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~ 作:ルルイ
『メカトピア軍、前進せよ!』
『こちらもだ。 メカトピア軍に続け』
メカトピア軍の司令の号令が下ると、船に乗る隊長のハジメも命令を下した。
双方の準備を終えた両軍は、聖地に潜むジャックバグとヤドリを倒すために侵攻を開始した。
聖地は広大な土地を高い外壁で囲まれているが、防衛拠点としての機能はなく飛行すれば容易に飛び越えられる。
内側は
中央には大きな建物が建っており、そこがアムとイムの住んでいた場所と言われているが、所々の壁に穴が開いていて廃墟になっており何かがあるようには見えない。
地表には敵の拠点と思えるようなしっかりした建物はなく、本拠地は隠された入り口から入れる地下に存在していた。
その入り口を守るために防衛戦力として無数の飛翔するジャックバグと、それに操られたメカトピアのロボットが兵士や一般ロボットに関わらず待ち構えていた。
両軍を視認したジャックバグは取り付こうと一斉に飛び立ち、操られたロボット達は各々の方法で攻撃を始めた。
操られたロボット兵はフィンガレーザーなどの武器を保持しているが、一般ロボットは光線銃をもって地上から攻撃をしている。
一般ロボットは兵士ロボットと違いフィンガーレーザーのような内蔵武器を持っておらず、飛行機能も治安上の関係で搭載されていないのだ。
「全軍攻撃開始! 地下への侵入経路を切り開け」
「ダブルゼータ! 乱戦に入らないうちにザク部隊の一斉砲火で敵の数を削れ。
メカトピア軍の援護をしろ」
「了解、マイスター」
アシミーが軍への攻撃指示を出し、ハジメはダブルゼータを通して遠距離攻撃の指示を出す。
後方に控えさせていた指揮官機も参戦し、ハジメと共に行動している。
ヤドリ対策が用意できたことでファースト、ダブルゼータ、ウイングも戦場に参戦している。
代わりにドラ丸は船の中で待機中だ。
今回ハジメが危険を冒すのは自身の我儘であり、ヤドリに操られるとしたら危険なのは四次元ポケット(袴)を持つドラ丸だからだ。
故に今回はドラ丸の護衛は付いていない。
「全機コーティングはしているとはいえ、極力ヤドリの寄生には注意してくれ」
「「「了解です、マイスター」」」
「アシミーさん、指揮官クラスの兵へのコーティングは大丈夫ですか?」
「徹底させた。 出来ればすべての兵士に対策させたかったが、指揮官だけでもヤドリに操られずに済むなら僥倖だ」
ハジメ達はヤドリの寄生対策に、真空ソープのコーティングタイプの物をハツメイカーで再開発し、ヤドリが付着すればコーティングされた薬品が包み込んで寄生されると自然に剥がれ落ちてしまう仕組みになっている。
そこそこな数を用意してハジメ達や指揮官機だけでなく、アシミーにも提供してメカトピア軍の指揮官クラスにも回してヤドリの寄生対策を施した。
兵士クラスにはいきわたっていないが、これでヤドリによって指揮系統を乱されることはないだろう。
「そしてこのレンズを通してみれば、ヤドリがいるのかどうかわかるのだな」
「はい、僕らはセンサーの調整だけでヤドリを判別できる様になりましたから」
「武器まで提供してもらい、何から何までもうしわけない」
「そちらの兵士が操られれば倒すだけですが、全てこちらで対処してしまえば共闘しているのに不和を生みます。
ヤドリ対策を提供するだけで済むなら安い物です」
アシミーの片目にはモノクルのような物が付いており、そのレンズを通して見るとヤドリの特殊な波長が視認できるようになっている。
ハジメ達は機体の多少の調整で済んだので、メカトピア軍の一部に提供したのだ。
更には大量複製したソープ銃もヤドリ以外にはただの水鉄砲なので、気兼ねなく譲り渡している。
ヤドリに憑かれた者は見た目では判別出来ず、戦いになれば同士討ちにしか見えないが、操られたメカトピアロボットを地球側が攻撃すれば、即席の共闘に容易にひびが入るのは想像できる。
故にメカトピア側にもヤドリを認識出来るようにしておかなければ混乱すると、ヤドリ対策の武器を提供する事に躊躇わなかった。
「それで、敵の本拠地は地下にあるのだな」
「はい、一部の建物の中に入り口があったり、地面に偽装した大型の搬入口が各所に存在しています」
「オーロウめ! 聖地の管理を一体何だと思っている!
いや、それほどの施設を作るのであれば、奴一人ではなく金族総出で隠してきた可能性が高いか」
「失礼します!」
兵士の一人がアシミーの前に現れた。
「報告します、ご指示通りの場所に地下への通路を発見しました。
現在入り口付近の敵を掃討し終え、侵入経路を確保いたします」
「わかった、地下へは我々も共に侵入する。
接近する敵を排除して出入り口の確保を維持せよ」
「了解」
アシミーの指示を聞いて兵士は持ち場へ戻っていく。
「ハジメ殿、では我々も…」
「ええ」
解放された出入り口から中に入ると、広い格納庫を思わせる空間が広がっていた。
高さも十メートル以上のスペースが広がっており、床には戦闘で排除されたジャックバグや破壊された敵味方のロボットの残骸が転がっている。
道は奥へと続いており広大な地下空間が広がっているのが予想できた。
「これほどの空間が聖地に作られていただと。
施設の劣化から見て、ここ数年で出来たものではない。
相当昔にこの地下空間は作られている」
「何の目的で作られたのかは知りませんが、ヤドリがこの施設の建設に関わったという事はないでしょうね。
ヤドリの性質は人間などに寄生しようとする習性があります。
操ることが出来てもエネルギーを得られないロボットではここに居続ける理由がありませんから、このような大きな施設を作る理由もないでしょう」
「ではやはり金族が昔から聖地の下に施設を建造していたという事か。
一体何のためにこのような大型の施設を…」
「それはアシミーさんで調べてください。
僕らは奪われたゼータとヤドリの殲滅を優先します」
「我々はジャックバグの製造施設と制御装置の破壊だ。
そこを破壊せねばメカトピアの民は安心することが出来ん」
「では先ほど渡した地図を参考にジャックバグの製造施設に向かってください」
「うむ、だが…」
アシミーはハジメに渡された地下施設の地図に釈然としない思いを感じる。
「どうやってこの施設の内部構造を知ったのだ?
いや、君を疑っているわけではないのだが…」
地球の人間であるハジメがこの施設の詳しい場を知っていることにアシミーは不思議がる。
金族と繋がっているわけがないのは当然だが、どうやってこの情報を得たのか気になってしまったのだ。
「すいませんがそれはこちらの極秘技術ですので…」
「まあ、そうだろうな。 不躾な事を言ってしまって申し訳ない」
タイムテレビで情報を集めただけだが、メカトピア側にすればどこでも覗き放題なのは知らない方がいい事だろう。
「僕らとアシミーさんは別行動になるが、リルルはどうする?」
「…アシミー様についていくわ。 ヤドリも厄介だけど、ジャックバグはメカトピアにはあってはならないもの。
何としても製造工場を破壊しないと」
今なおノーベルガンダムの外装を纏っているリルルは、アシミーと共にジャックバグを止める事を優先する事を選ぶ。
「わかった、リルルも気を付けて。
そうだ、リルルにジムを十機ほど指揮権を預けるから使ってくれ」
「え、ジムってあの白い兵士のロボットよね。
私に預けるって本気?」
「僕らのモビルソルジャー達にはジャックバグの攻撃は効かないから、もしもの時の盾にでもしてくれ。
だけどヤドリの寄生までは防ぎきれないから、ソープ銃で対処するように」
「そうじゃなくって、私はメカトピアのロボットなのよ。
今は共闘していても私に戦力を預けるなんて…」
リルルはハジメのジムを貸すという提案に戸惑いを覚える。
「なんだそんなこと。 ジムを少し貸すくらいわけないよ。
ジムがたくさんいることくらい、リルルももう知ってるだろう」
「ええ、まあ…」
戦場でジムは主要量産機として大量の数が展開されているのをリルルは見ている。
十機のジムなど全体で見ればごく僅かだ。
「それよりそのノーベルガンダムの外装はファースト達のような主力機のモビルソルジャーの装甲と同じ物だ。
渡した武器のビームリボンを使えば攻撃力と防御力は主力機そのものだぞ」
「これ、そんなにすごい物だったの!?」
リルルからすれば量産機の性能も高いが、主力機のファースト達は別格の戦闘能力を備えている。
そんなものと同じだったと知らされて、今の自分の装備に驚いていた。
「メカトピアのロボットの装甲より丈夫なだけだ。
ゼータが操られたみたいに何もかも完璧というわけじゃない」
「でもいいのかしら…」
メカトピアの兵士として大したことが出来ていないと思っているリルルは、自分だけこんな強力な武器を持っていることにアシミー達を見ながら後ろめたい思いを感じていた。
「それ等の装備はここまで来たら今更だよ。
それに…リルルには死んでほしくないと思っている」
「え?」
「僕らにとってロボットは余程損傷がひどくなければ直せる存在だ。
だけどメカトピアのロボットは死ねば元に戻せない。
なら出来るだけ死なないように準備するのは当然だ」
ハジメは死んでいったシルビアの事が脳裏に浮かぶ。
ここまでそれなりの付き合いをしてきたリルルがシルビアと同じように動かなくなってしまうのをハジメは想像もしたくなかった。
僅かな付き合いで入れ込んでしまったシルビア以上に思い入れのあるリルルが死ぬのは、ハジメははっきりと嫌と言えた。
「だから無理はしないで、最後まで生き残ってくれ」
「う、うん…」
「ファーストはジム部隊を連れて僕と共に進軍。
ダブルゼータとウイングは外と出入り口付近の敵の排除するメカトピア軍に手を貸してやってくれ」
「「「了解」」」
「では、進軍開始」
ハジメはジムを先行させ、ファーストと並んで地下施設の奥に進んでいった。
「…ハジメさんも気を付けて」
どこか気恥ずかしげに、リルルもハジメの無事を祈った。
自身の安全を確保するためにジムを先行させながら、地下施設を進んでいくハジメ。
途中にはジャックバグに操られたメカトピアのロボットが隠れ潜んで攻撃を仕掛けてくるが、戦場のような強力な武器で攻撃を仕掛けてくる者はおらず、即座に排除して奥へと進んでいく。
地下施設は横に広がるだけでなく縦にも広がっており、吹き抜けの縦穴のようなところまであった。
タイムテレビで内部構造をハジメは把握していたが、かなりの広さだと改めて理解した。
「ヤドリの活動拠点はこの先だ。
ファースト、対ヤドリ用の武器の使用準備は出来ているか」
「いつでも用意出来ております」
「よし」
ファーストの返事を聞き準備万端であると判断してからさらに進むと、大きな部屋の扉の前にたどり着いた。
タイムテレビではこの先がヤドリの活動拠点として使われている区画だった。
「周囲に警戒しろ。 透視で中の様子を確認する」
「了解」
指示に従いファーストはジムを使って周囲を警戒する。
ハジメは透視能力で扉の向こう側を確認すると、空中には無数のヤドリの円盤が浮かんでおり床にはジャックバグの憑いていない、おそらくは全てヤドリに操られたメカトピア兵が武装して待ち構えている。
その中にはゼータも含まれており、ハジメ達が入ってくるのを待ち構えている様子だった。
「中で大勢力で待ち構えている」
「どうなさいます?」
「ゼータを取り戻しに来たんだ。
待っていてくれたなら、素直に出迎えに応えてやらないと」
暗に正面から押し入るというハジメの意志を理解し、ファーストは戦闘準備に入る。
「そうだ、確か技術班が用意したヤドリ用の武器の中に、真空ソープをまき散らす爆弾があったな」
「はい、持ってきております」
「五・六個渡してくれ」
「承知しました…どうぞ」
手榴弾型の真空ソープ爆弾をハジメは両手でまとめて持つ。
「これを扉の向こうにアポートで送って爆発させる。
それを合図にビームサーベルで扉を切り開いて、ヤドリ用の武器で一斉攻撃を開始しろ」
超能力を使った悪戯染みた思い付きで、先制攻撃を仕掛けようとハジメは考えた。
「大量に円盤が飛び回ってるから、どこに撃っても当たる。
手当たり次第に撃ちまくれ」
「わかりました」
「ゼータは当然ジムでは押さえられない。
向かってきたら僕とファーストで対処する」
「マイスターがゼータと戦われるのですか? 危険では?」
「承知の上だ。 機体の基本スペックは武装以外はそれほど差はないんだ。
僕には超能力もある。 ファーストと二人掛かりなら十分にゼータを抑えられるだろ」
「了解です」
強化された超能力の念力なら相当な重量物を持ち上げられたり、周囲の物を纏めて一気に吹き飛ばす事も出来る。
シルビアの演説の場に現れた無数のジャックバグと戦った時に、念力を使っていればまとめて楽に倒せたのではないかと、地球から様子を窺っているオリジナル達に船に戻ったときに言われた。
超能力も自分の武器であると念頭に入れて、ハジメはここまで来ていた。
「じゃあ行くぞ」
透視能力でヤドリの待ち構える部屋の中心、ゼータのいる場所をしっかり見る事で目標を定める。
そして瞬間移動の力を手元の爆弾に込めて目標に送り出す
「アポート」
――パパパパパアァァァン!!――
ハジメの手元の手榴弾が消失すると同時に、部屋の中でいくつもの炸裂音が鳴り響く。
「突撃!」
ファーストの号令と共に、ジム達がビームサーベルで巨大な扉を切り裂いた。
今回はリルルに少しヒロイン感を出せました。
こういうのがよくかけたら物語の面白みが増すんですけどね。
うまく書けないのは自分の実力不足です。