ドラえもんのいないドラえもん  ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~   作:ルルイ

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真・鉄人兵団14

 

 

 

 

 

 メカトピア聖地メルカディア。

 そこを目標に定めたと宣告したハジメ達地球軍は、数十キロ離れた地点から聖地を見据えており、聖地の前には宇宙から降下してきたメカトピア軍も再集結してにらみ合いが続いていた。

 宣告した猶予が尽きるまでもあまり時間はないが、ハジメ達は攻撃は行う事はせずメカトピア軍も交渉を視野に入れているという理由から議会から攻撃命令は出ておらず、ここ数日は戦闘は行われていなかった。

 ハジメ達も戦力のモビルソルジャーを展開しているが現在は威嚇的な意味が大きく、聖地の前に陣取るメカトピア軍をあまり気にせず、その向こうの聖地の中を情報部がタイムテレビを使って監視していた。

 

 奪われたゼータやヤドリの動きに注視していたが、猶予期限半日前になってついに動きがあった。

 

『ヤドリ達の動きが慌ただしくなった。

 奪われたゼータも動き出して屋内から出てこようとしている』

 

『ようやく動いたか。 このまま何もしてこないかと思った』

 

『せっかく配備した対ヤドリ装備を無駄にしたくはなかったからね』

 

『油断するなよ、隊長』

 

「わかってる。 全艦に警戒態勢を指示。

 それから潜入している僕とドラ丸に通信を開け。

 ヤドリが動き出したと知らせるんだ」

 

「了解しました、マイスター」

 

 オペレーターがハジメの指示に従い通信回線を繋ぐ。

 メカトピアの命運を決める大きな戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 こちらはシルビアが演説を行なっている舞台の裏側。

 潜入中のハジメは、そこで最後の演説に付き添ってこの場に来ていた。

 

「わかった、こっちも警戒しておく」

 

「何があったの?」

 

「ヤドリ達に動きがあったらしい。

 何をやろうとしてるのかわからないが、シルビアさんとアシミーさんにも伝えておきたい」

 

「わかったわ。 演説が終わったらシルビア様に言って、すぐに屋敷に戻ってもらいましょう」

 

 シルビアは今日最後の演説の最中だ。

 既に議会は地球軍と交渉を行う事を公表しているので演説の目的は達成されているのだが、予定していた演説に既に多くの人が集まっていたために中止には出来なかった。

 目的は達成してしまっているが今回の戦争の失敗を繰り返さない為に、何がいけなかったのかをこの場にいるロボット達に理解し憶えていてもらう様にシルビアは語った。

 

 そんなシルビアの演説がついに終わろうとしていた時に、一筋の閃光が走った。

 

――バシュン!―― 

 

 演説を聞いていた観客たちの中からレーザーが飛び、舞台の上にいたシルビアの側頭部に当たった。

 

ーーキャアアァァァァァ!!ーー

 

「シルビア様!?」

 

 シルビアが撃たれたことに気づいたリルルがその名を呼ぶと同時に、周囲から悲鳴が上がった。

 頭部から煙が上がり舞台に立っていたシルビアは、その場に横に倒れ込んでいく。

 リルルは慌てて駆け寄り、倒れ込むシルビアの体を支えた。

 

「シルビア様、しっかりしてください! シルビア様!!」

 

「うぅ……」

 

 ハジメとドラ丸も慌てて駆け寄り、周りからもこの演説に力を貸してくれていたシルビアの知り合いのロボットが集まってくる。

 

「リルル、シルビアさんの状態は!?」

 

「わからないわ! でも電子頭脳のある頭部に攻撃を受けたから危険よ!」

 

「くっ、ドラ丸、【メカ救急箱】と【タイムふろしき】はあるな!」

 

「あるでござる!」

 

 ドラ丸は袴からメカ救急箱とタイム風呂敷を取り出しながら答える。

 

「シルビアさんの治療は任せた。

 僕は下手人を捕まえる!」

 

「と、殿! 拙者は殿の護衛でござるよ!」

 

 ドラ丸の呼びかけをを振り切り、ハジメはレーザーが飛んできた観客の中に飛び込んだ。

 演説中でシルビアに注目が集まっていたとはいえ、観客の中からレーザーが放たれた瞬間を目撃した物は多数いた。

 それに気づいた観客が犯人その存在を指摘し、周りの観客が逃げようと離れたことで空白地帯が出来て犯人の姿を顕わにした。

 犯人はその指先からシルビアを撃ったと思われるフィンガーレーザーを舞台に向けており、フードを被った外装を纏う事で全身を隠していた。

 

「お前か!」

 

「………」

 

 その指摘に返事はせず、犯人と思われるロボットは指先をハジメに向ける事で答えた。

 指先を向けられたことでフィンガーレーザーが来ると判断したハジメは、咄嗟に腕で頭部と胸部をガードしながら突き進むことを選んだ。

 メカトピアのロボットと違い重要なのはハジメの乗り込んでいる胸部だが、とっさの判断から人間として気を付けないといけない頭部も守ろうとした。

 

――バシュ!バシュ!バシュン!――

 

「効くかぁ!」

 

 ゴッドガンダムの装甲も戦争で戦っているファースト達と同等の装甲強度を持たせている。

 今更フィンガーレーザー程度では装甲が全て弾いてしまう。

 攻撃に容易に耐えながら接近したハジメは、レーザーを無力化するべくレーザーを放つ相手の手首を掴み取った。

 

「【ゴッドフィンガー】!!」

 

 掴んだ手に搭載された熱エネルギー発生機能が起動し、掴んだ敵の手首を半融解させてレーザーをを使えなくする。

 そしてもう片方の手で上腕部も掴むと、力ずくで振り回して無理矢理の背負い投げで相手を地面にたたきつけた。

 こんな動きを武術の訓練をしていないハジメは出来ないが、サイコントローラーが動きを補正してくれるのでイメージ通りにゴッドガンダムを戦わせることが出来るのだ。

 

 地面に叩きつけられた相手は悲鳴を上げる事もせず、それでもダメージは受けた事で動きがガタつきながらも倒れたままでもう片方の手のフィンガーレーザーをハジメに向けようとする。

 そんな遅い動きにサイコントローラーのお陰で素早く反応できるハジメは、もう片方の手も即座にゴッドフィンガーで融解して破壊した。

 

「念の為だ」

 

 無力化した相手のローブをはぎ取ろうとしたが、可能性としてヤドリがついている事を考え、持っていた真空ソープを隠れた相手の顔面に掛けておく。

 こちらに乗り移ってきたら拙いと気づき、不用意に近づくのはうかつだったと反省する。

 そして改めて姿を覆い隠している相手のローブを引き剥がした。

 

「なんだこいつは?」

 

 ローブに隠されていたロボットの姿は、戦場で戦っている兵士のロボットと似通ったタイプだった。

 フィンガーレーザーも持っていたので戦闘機能があるのだろうが、兵士より若干スリムな感じのする装甲が薄く動きが軽い感じのする体格だ。

 頭部も兵士達と似ているが、頭の上に虫を思わせるような三対六本足の機械がくっついている。

 メカトピアのロボットの姿は多種多様だが、この頭の部分だけは飾りではなく後付けされた別物の様に違和感を感じた。

 更に相手の姿が顕わになったと同時に、様子を窺っていた周囲の観客が更に騒めく。

 

「おい、あれってまさか!」 

 

「ああ、忘れもしねえ! ジャックバグだ!」

 

「ジャックバグ? 確かリルルの言ってたロボットを操る最悪の兵器」

 

 ジャックバグの名前が出ると周囲のロボット達が更に騒めき混乱状態になる。

 

「うわあぁぁぁ!」

 

「こっちにもいたぞ」

 

「こっちもだ!」

 

 周囲から悲鳴が上がり、つい先ほどまで演説を聞いていた場所は完全にパニック状態になった。

 ハジメがジャックバグに憑かれたロボットを暴いた事を皮切りに、隠れていた他のロボット達が無差別に攻撃を始めてパニックに貶めた。

 

「一体だけじゃなかったか!

 確かにそうとは限らないよな」

 

「殿、無事でござるか!」

 

「ドラ丸!」

 

 パニックになった観客の間を潜り抜けて、ドラ丸がハジメの元にたどり着く。

 

「シルビアさんは?」

 

「リルル殿に道具を預けて任せてきたでござる。

 拙者は殿の護衛、何よりも殿を守る事が優先でござる。

 置いて行かれては困るのでござる」

 

「悪かった。 ともかくまずは周りで暴れてるロボットを止めよう」

 

「承知でござる」

 

「ジャックバグに操られてるらしいから完全に破壊していいのかわからない。

 一応手足を壊す事で無力化するだけに留めよう」

 

「御意」

 

 ハジメはゴッドガンダム用のビームサーベル【ゴッドスラッシュ】を抜き、ドラ丸も猫又丸を鞘から抜いて暴れているロボットの鎮圧に向かった。

 途中から演説を聞く観客の交通整理を行なっていた憲兵も参加し、ジャックバグに操られて暴れていたロボット達は全て鎮圧された。

 

 ハジメ達は無力化するように加減をしていたが、ジャックバグに操られたロボットは電子頭脳をやられているので助かりようがないのだと憲兵に教えられた。

 ジャックバグの対処は憑りついた虫型の本体を破壊する事で、それを破壊しないと憑りついていたロボットが動かなくなれば自立して飛び回り別のロボットにまた取り付く。

 無力化したロボットからも離れて飛び上がり、ハジメとドラ丸に憑りつこうと飛んできたがあっけなく切り捨てられた。

 ジャックバグに大した戦闘能力はなく、憑りつく時に電子頭脳に干渉する為に穴を開けるレーザーニードルが唯一の攻撃だ。

 

「もういない様でござるな」

 

「シルビアさんは」

 

 大した強さではなかったのですぐに戦いは終わったが、攻撃を受けたシルビアが気がかりでハジメは舞台上まですぐに戻る。

 舞台ではシルビアが横になり、リルルがメカ救急箱で治療を施していたが顔色が優れなかった。

 

「リルル、シルビアさんの様子は」

 

「ダメ、リミットサーキットが起動してしまってるそうよ」

 

「それは…」

 

 リミットサーキットについてはハジメもよく理解していた。

 神の定めたルールを破ったときに起動し電子頭脳を破壊する懲罰機構。

 同時に電子頭脳が限界を迎えた時に疑似的な寿命として自死を行なう終末機構でもある。

 シルビアは先ほどの攻撃で電子頭脳に大きなエラーが発生し、限界であると判断されリミットサーキットが起動したのだ。

 稼働限界によるリミットサーキットの稼働は急な自死を迎えるものではなく、自身が停止する事を告知して同胞に別れを告げる時間を与えられるのだ。

 

「確かにそれじゃあメカ救急箱でも直す事は無理だ。

 だけどタイムふろしきを使えばリミットサーキットが起動する前に戻せるはずだ。

 そっちを試してみてくれ」

 

「でもシルビア様が…」

 

 メカ救急箱は使っていたが、一緒に渡してあったタイムふろしきをリルルは使っていなかった。

 使うように言うがリルルは顔を俯かせるばかりで…

 

「いいのよ、ハジメさん…」

 

「シルビアさん?」

 

 メカ救急箱で応急処置されている負傷した頭部をハジメに向ける。

 その動きは鈍く、まるで重病人のような弱った命を感じる。

 

「リミットサーキットの起動はメカトピアのロボットの天命よ。

 神の定めた終わりからは決して逃れられない………いえ、逃れてはならないのよ。

 きっと人間のハジメさんならリミットサーキットも止める事は出来るのだろうけど、私はこの天命を受け入れるわ」

 

「そんな…」

 

「フフ、それに私もやっぱり年だったのよ。

 昔だったらあれくらいの不意打ち、ちゃんと避ける事は出来ていたわ。

 さっきも避けようと思ったけど、体がすぐに動かなくて直撃を防ぐので精一杯だったわ」

 

「完全に当たってましたよ、シルビア様ぁ」

 

 リルルは泣きそうになりながら無茶苦茶を言うシルビアに突っ込む。

 

「この程度のケガ、昔の戦争だったらかすり傷扱いですよ。

 攻撃は私の頭の中心を狙われていました。

 直撃だったらリミットサーキットも起動することなく電子頭脳が破壊されていましたよ」

 

「すごい事言いますね。

 でも、本当にそれでいいんですか?

 今はまだ戦争が続いています。

 ヤドリの事もあってメカトピアは大変な時です。

 直すことが出来るのにこのまま終わってしまっていいんですか?」

 

 シルビアを撃った敵の黒幕はまだ分かっていないが、まず間違いなく聖地にいるヤドリと金族の関係だろう。

 そんな確信があり、奴らによってシルビアを死なせてしまうのはハジメには忍びなかった。

 

「大丈夫ですよ。 私がいなくなっても貴方たちがいます。

 アシミーだってもう少しくらい頑張ってくれるでしょう。

 それだけじゃない。 メカトピアを愛してる人たちがこの国にはたくさんいます。

 だから私は安心して後の事を任せられるのです」

 

「そんなことを言わないでくださいシルビア様!

 私はシルビア様に死んでほしくありません!

 ずっとこのメカトピアを、私たちの事を見守っていてほしい!」

 

 敬愛しているシルビアの終わりに、リルルは泣きじゃくりながら死なないでほしいと嘆願する。

 

「終わりは誰にでもあるんですよ。

 以前の戦争が終り共和制を迎えたときから、私は自分の役目を終えたと世界を見ながらその時が来るのをゆっくり待っていました。

 唐突でしたがもう少しだけメカトピアの為に役に立てたことを感謝しています。

 だからありがとうハジメさん。 最後に素敵なお仕事をくれて」

 

 シルビアの言葉に、演説をお願いしなければ死ななかったかもしれないという思いがハジメの頭に過る。

 こうなる可能性を考慮して、船から護衛になる戦力を持ってきていれば違ったかと後悔するが後の祭り。

 シルビアから感謝の言葉を送られても、胸の奥からこみ上げてくるものは深い悲しみだった。

 ゴッドガンダムの中のハジメも、リルルのように自然に涙を流していたことに気づく。

 

 あって数日だというのに、ハジメはこの奥ゆかしいロボットの女性を好ましく思っていた。

 聖女と呼ばれるほどにメカトピアのロボット達を愛し、人間である自分を知りたいと真剣に向き合いその在りようを見ようとした。

 そして最後の瞬間までメカトピアを思い、ハジメにも感謝を告げるシルビアに敬服しかなかった。

 

 これほど敬意を抱いたのはロボットキングダムのエイトム国王に会った時か。

 ハジメの都合で未来に連れ出し、自身が死ぬ運命を伝えても娘に後を託せるならと受け入れて見せた度量。

 そんな立派な人たちに対する尊敬の念がハジメの中に生まれていた。

 

 ハジメは自然に拳を握り締め、決意を固める。

 この人の死を無駄になんか出来ない。

 絶対的に大きな意味のあるものにしなければ納得は出来ないと、そんな強い衝動に駆られていた。

 

「…僕の方こそありがとうございました。

 突然現れて僕の頼みを聞いていただいて。

 短い間でしたがあなたと共に過ごせた事は、僕の人生の中で値千金の価値のある時間でした。

 貴方に出会えたことを心の底から光栄に思っています」

 

「ハジメさん………。

 シルビア様、私もシルビア様に出会えたこと…ううん、シルビア様が導いた今のメカトピアを過ごせることに感謝しています。

 だから絶対シルビア様が作った今のメカトピアを壊させたりしません。

 必ず守り抜いて見せます」

 

 ハジメの送った感謝の言葉に触発されて、リルルも自身の決意を語る。

 シルビアの後を任せるという思いに、決して裏切れないという思いが二人にはあった。

 

「そう、でも無理をしないで。

 メカトピアの未来を導くことは一人で出来ても、作っていく事は皆でないと出来ないの。

 だからみんなでメカトピアの未来を守って。

 人間のハジメさんには言う事じゃないんでしょうけどね」

 

「今更ですよ。 ここまで来たら乗り掛かった舟です。

 貴方への敬意には、僕がメカトピアの為に戦うだけの価値はあります」

 

「ありがとう。 じゃあもう少しだけお願いね。

 私はもう眠るわ」

 

「…お疲れ様です、シルビアさん」

 

「…本当にありがとうございました、シルビア様」

 

「あとはお願いね…」

 

 その言葉を告げるとシルビアの眼のレンズの光がゆっくりと消えていった。

 寿命を告げたリミットサーキットは、最後に自らの意志で自らを終わらせられるようになる。

 シルビアは後を託して、自身の生涯の幕を自分の意志で下ろした。

 リミットサーキットによって電子頭脳は自壊し、再び動くことはない。

 聖女と呼ばれたロボット女性シルビアは、この場で終わりを迎えた。

 

 それを受け入れたとはいえハジメの胸に込み上げる悲しみは留まる事を知らない。

 こんな思いはこの新たな生涯で初めての事だろう。

 今はただこの悲しみにずっと浸っていたかった。

 

 しかし今はメカトピアの未来を決める騒動の真っただ中。

 シルビアの終わりを見守っていたために気づいていなかった仲間からの連絡にようやく気付く。

 通信回線を開くと、宇宙船の艦長席に座っている隊長がモニターに映った。

 

『いろいろあったみたいだな』

 

「見ていたのか?」

 

『なかなか通信に出ないから、何かあったと思ってタイムテレビでそちらの様子を確認してもらった』

 

「そうか、わるかった」

 

『いい、お前も僕だ。 その様子から随分入れ込んでしまったのはわかるが、それは直接会って感じ取ったお前にしか今はわからない感情だ。

 ただ同じ僕なら誰がそこにいたとしても同じように感じたと思う。

 敵討ちをしたいか?』

 

 隊長のハジメはこっちにいるハジメの心境を心配していた。

 ゴッドガンダムの戦闘能力なら問題ないだろうが、目的を忘れてやけを起こして暴れまわり死にかねない危険を冒すのはまずい。

 冷静でないなら力づくで連れ戻さなければいけないかと考えていた。

 

「そんなんじゃない。

 確かにシルビアさんを死なせたことは許せないが、そんなことをしたんじゃシルビアさんの思いを侮辱する事になる。

 ならやる事は何も変わらない。

 この騒動を終わらせてメカトピアの平和を取り戻すだけだ」

 

『やる事がわかってるならいい。

 それといろいろあって伝えるのが遅れたが至急の事態だ。

 聖地から数えきれないほどの虫型ロボットが飛び出してメカトピア軍に後方から襲い掛かっている』

 

「ジャックバグだな。 さっきもこっちで操られたロボットが暴れていた。

 シルビアさんが死んだのもそれが原因だ…」

 

『こちらは下手に動くわけにはいかないから静観の構えだ』

 

 停戦交渉も済んでいないのに敵対していたメカトピア軍を助ける訳にもいかず、軍としては動くわけにはいかなかった。

 自分たちは非公式な地球軍とはいえ正式な戦争をしているが為に、これまでの事件より動き辛さをハジメ達は感じていた。

 ひみつ道具の力で好き勝手やっているつもりだが、相手側を気遣うだけでここまで不自由になるとはハジメ達も思っていなかった。

 国家を相手取った正式な戦争など煩わし過ぎると、ハジメ達は今回の一件で学んでいた。

 

『それと軍の方だけでなくメカポリス市内にもジャックバグの群れが入っていった』

 

「目標はこっちだな。 今視認した。」

 

 ジャックバグが市内にと言われたところで、ハジメの目に遠くの方に黒く蠢く霧のようなものが見えた。

 ジャックバグはメカトピアのロボットに憑りついて操る。

 なら人が集まっているシルビアの演説会場を目指してきてもおかしくはない。

 シルビアが襲撃されたことで騒然となったが、いまだ演説を聞くために集まったロボットが大勢いる。

 そこをジャックバグを操っているものは狙ったのだろう。

 

『どうする? ジャックバグはおそらくメカトピアのロボットだけを操るように作られている。

 僕らのロボットには効かないだろうが、かなりの数がそっちに向かったはずだ』

 

「ああ、まるでとんでもない羽虫の群れのように空の色を塗り替えている。

 確実に千は超しているが、今の僕は放っておくわけにもいかない」

 

『モビルソルジャーの応援も、街中じゃ出すわけにはいかない』

 

「何とかするさ。 ゴッドガンダムの装甲強度ならジャックバグでは傷つかないようだし」

 

『まあドラ丸もいるし大丈夫だと思うが気を付けろ』

 

「わかっている」

 

 通信を切り、ハジメはジャックバグの群れを止めるために両手のゴッドフィンガーに熱を通して光らせる。

 

「シルビアさんの為にメカトピアの平和は取り戻すさ。

 だけど目の前でシルビアさんを傷つけた苛立ちも拭い切れない。

 存分に暴れさせてもらうぞ!」

 

 接近してくるジャックバグの大群に向かって飛び出し、ゴッドフィンガーの爆炎を放射状に撃ち放った。

 

 

 

 

 

 




 今回の話はなぜかスムーズに書けました。
 調子のいい時と悪い時があるんですけど、それがわかったら気持ちよくかけるんですけどね。
 調子の悪い時はすごく難産で書くのが辛くなっちゃうんですよ。

 今回はかなりシリアスだったんですけど、そんな話の中でゴッドガンダムがゴッドフィンガーを放ってるのがなんかシュールに感じてしまいました。

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