ドラえもんのいないドラえもん ~超劇場版大戦 地球は何回危機に遭う~ 作:ルルイ
余裕をもって書いていたのに、今日もギリギリで完成。
ゼータが暴走して二番艦を中破させてメカトピアに飛び去って数時間。
実行部隊隊長として戦艦艦隊の艦長をしているハジメはモニター越しに地球のハジメ達と会議に参加していた。
議題は当然ゼータの暴走の原因について。
『ゼータの暴走の原因が分かった。
情報課が戦闘時の映像を再確認して、ゼータが行動不能になったときにその原因を確認した。
これを見てくれ』
オリジナルのハジメがモニターにゼータが行動停止するときの戦闘画像を表示する。
メカトピア軍の上級兵がゼータに体当たりを仕掛けた時に、その腕に原因と思われるものが写っていた。
それはおもちゃのUFOのようなどら焼き型の円盤だった。
『これって確か!』
「ここで奴らが出てくるか」
『確かに奴らなら暴走の原因として納得がいく』
ハジメ達は全員その物体の正体にすぐに気づいた。
同じハジメなので当然ではあるが…
『そう、銀河
この接触した瞬間にゼータはヤドリに乗っ取られたのだろう』
ヤドリは人間やロボットに寄生し操る事の出来る能力を持っている。
なぜメカトピアにいるのかはわからないが、敵はメカトピアのロボットだけとは言えなくなり、事態の急転にみんな緊迫した表情になる。
『○×占いで確認したので間違いない。 ヤドリはメカトピア本星にいる』
『これはちょっと面倒くさくなるかもしれないな。
ゼータを乗っ取られて逃げられたように、このまま戦闘で出てきたらファーストやダブルゼータも乗っ取られかねない』
『そう容易にいくとは思えないが、奪われる可能性があるのはかなり拙い』
『それにゼータもこのままにしておけない。 取り返さないと』
ヤドリにゼータを奪われたという事実に危機感を覚えるハジメ達。
『ヤドリについて改めて詳細を説明しておく。
ヤドリは文字通りに人間に取り付いて操る事の出来る微生物サイズの生命体だが、ロボットなども自在に操ることが出来る事も確認できている。
これはヤドリの操る能力が寄生能力というより超能力の一種らしく、有効範囲は狭いが微弱な電気を自在に操る事の出来る力らしい。
これのお陰で人間ロボット関係なく電気信号を支配下に置いて操る事が出来る』
『なるほど、超能力という括りだったか』
「それで会長、対策は?」
実行部隊で現場にいる隊長はすぐに対策が必要とオリジナルに求める。
『対策である真空ソープの量産は既に始めている。
まずは量を確保する事を専念したが、どう運用するか悩んでいる』
真空ソープとは未来の石鹸で水鉄砲の様な入れ物から発射するようになっている。
ひみつ道具とは言えないが、なぜか四次元ポケットの中に入っていた。
「どう運用するとは? 普通に使えばいいのでは?」
『ヤドリが円盤で真っ直ぐ襲い掛かってくるなら、苦労する事はない』
『確かに、そう単純にはいかないよな』
『真っ先に考え付くのは、ロボットに寄生して襲い掛かってきて、そのロボットを倒したところで倒した方のモビルソルジャーに乗り移ってくることだ』
『それは怖いな。 …って既にヤドリが潜伏してる可能性はないか!?』
『その可能性に気づいて○×占いで確認したがまだ大丈夫だ。
だが今後の戦闘で無数のヤドリが寄生戦術を取ってくるようなことがあれば、今のままでは対処しきれないかもしれない』
「真空ソープが有効でも、ヤドリがどのロボットに寄生しているのか判断できなきゃあっても意味が無いわけだ」
『何せたくさんの敵と味方が入り乱れてる』
『…仕方ない。 指揮官機は前線に出さず指揮のみに専念させる。
量産機のモビルソルジャーへの乗っ取りは完全に防ぎきれないと諦める事にする。
指揮官機をこれ以上奪われるわけにはいかない』
「それしかないか。 真空ソープの水鉄砲は量産機すべてに装備させるのか」
『そのつもりだが形状を少し改良して、手甲の様に装着して打ち出す仕込み銃型にしようかと考えている。
本来の形は人間用でモビルソルジャーの手では扱いづらいからな』
『追加装備としてはそれくらいが無難だな。
メカトピア兵に当たっても嫌がらせ程度にしかならないし』
『全く使わない頭部のバルカンに仕込んでみるのはどうだ?』
『頭部を一機一機改造しないといけないから手間がかかりすぎる』
「確かにそれは手間だ。 追加装備型がやはり都合がいいな」
ヤドリ対策は追加装備を取り付ける事で対処すると話が決まる。
『で、今後の行動についてだ。
ヤドリの存在で僕らもあまり悠長に向こうの出方を待っているわけにもいかなくなった。
奪われたゼータを解析されれば、簡単に複製は出来ないだろうが何らかの対処法を見つけてくるはずだ。
何よりヤドリそのものが危険すぎる存在だ。
予定をいろいろ早める事にする』
「と、言うと?」
『まずはゼータの奪還だ。 ヤドリも必ずそこにいる』
『確かに』
『奪われたままなんて許せないよな』
ゼータはモビルソルジャーの主力機の一機だが、ハジメ達が大切に作ったロボットの一体でもある。
奪われたままなど許せないという気持ちがハジメ達の中にあった。
『ゼータの居場所は?』
『信号はメカトピア本星に降りてからそんなに経たないうちに消えている。
どっか隔離された場所に収容されたんだと思う』
『情報課』
『問題ない。 タイムテレビで追尾してどこに行ったのかちゃんと確認している。
ここだ』
モニターにはメカトピアを上空から見た地表が表示され、メカトピアの首都メカポリスの郊外にある都市に準ずるほどの広い建物にマークが表示されていた。
『この建物の中に入っていったらゼータからの信号が途絶えた』
「随分広い建物だけど、軍事施設か何かか?」
『集めたメカトピアに関する資料によると、あそこはメカトピアの聖地メルカディアらしい。
メカトピアの始祖アムとイムが暮らしていた場所と言われているそうだ』
『そんな場所にヤドリがね』
『きな臭いな』
聖地と呼ばれている場所であればメカトピア人が大切にしている場所に違いない。
そんな場所に警備がないなどあり得るはずがなく、ハジメ達は確実にメカトピアの上位その存在が関わっていると当たりをつける。
『いずれにせよ状況を動かす事に変わりはない。
現在展開中の量産機に真空ソープの追加装備を配備したら、メカトピア軍の防衛ラインを突っ切って本星に降下する。
戦力もさらに増員して相手の尻に火を付けに行く。
早くしないと全部燃えてしまうぞってね』
『会長、メカトピアに降りてるリルルたちはどうする?』
『今回の決定の連絡を入れて、そちらも早く動くように言ってくれ。
無理そうなら一応リルルも一緒に帰還するのを許す』
メカトピアに降下した三人の役割、つまり内側からの停戦の誘導だが、それが不可能な場合、より苛烈なメカトピアの壊滅を視野に入れた戦いになる。
リルルは当然受け入れないだろうが、一応こちら側へ来る余地を残すようにハジメは指示を出すのだった。
『ところで会長。 ヤドリは宇宙空間でロボットなんかに寄生しても大丈夫なのか?
ヤドリも普通の生物なら死んじゃうんじゃないか?』
『それなんだが、どうやらヤドリは宇宙では何かに寄生する際に宇宙服のようなものを纏っているらしい。
それがあるから宇宙でも直接寄生して操ることが出来るらしい』
『そんな服を纏っていて真空ソープは有効なのか?』
『真空ソープはシャボンの膜でゴミや埃を包み込むから、ヤドリが宇宙服を着ていてもそれごと包み込んで寄生を引き剥がすことが出来る。
宇宙服のお陰で即死はしないが身動きが取れずいずれ死ぬようだ』
『とりあえず真空ソープは何も問題なく効くという事だな』
「以上が先ほどの連絡だ。 あまり悠長にメカトピア観光をしてる暇はなさそうだ」
「そんな…」
人気のない裏路地に入り、会議結果の報告を受けたメカトピアに潜入しているハジメはリルルに内容を伝える。
リルルは様々な事態の進展に困惑した様子で口元を抑える。
「…今のは全部本当なの?」
「僕達にもいろいろ予想外の事態だが、少なくとも仲間の地上への侵攻は事実だろう。
連絡では三日後にはメカトピアの防衛ラインを強引に突っ切って地表へ降下するらしい。
そこまできてメカトピアが降伏しなければ、市街地戦になるのも時間の問題となる」
「そんなことになったら多くの市民が犠牲になるわ!」
「僕もそんなことになってほしくないが、メカトピアが徹底抗戦の構えになったら引き下がることが出来ない。
そうなる前にメカトピア議会側に交渉の席に着く様に仕向けないといけない」
「…わかってるわ。 今必要なのは議会側の対話の意志よ」
「それとリルル。 ヤドリについて何か心当たりはないか?」
「いいえ、聞いたこともないわ。
そもそもそんな物がメカトピアにいるなんて広まったら大騒ぎになってるわ。
まるでジャックバグじゃない」
リルルがハジメには聞きなれない用語を発する。
「ジャックバグ? なんだそれは?」
「戦争末期に現れたメカトピア史上最悪の兵器よ。
昆虫型の機械でロボットの電子頭脳を支配下に置き、使い手の意のままになる操り人形に変えてしまう恐ろしい兵器よ。
これのせいでメカトピアの人口が半分以下になり、双方の犠牲が多すぎて大戦は終結を迎えたわ」
「聞く限り確かにヤドリと似たような兵器だが、メカトピアのロボットは電子頭脳への干渉をシステム的に禁じられてるんじゃなかったのか?」
「ええ、直接的にも間接的にも電子頭脳への干渉は私たちの禁忌に触れるわ。
操ろうなんてもっての外。 実行に移したらリミットサーキットが起動して自死する事になるわ」
リミットサーキットとはメカトピアのロボットの電子頭脳の中にある自壊装置の事。
メカトピアのロボットが電子頭脳への干渉などの神の定めたルールに反し、警告を無視して犯そうとした時に起動し、電子頭脳を自壊させて強制的に止める厳しい処罰機構だ。
ルールに反した時だけでなく電子頭脳が劣化や損傷などで自己修復出来ないエラーが発生した時にもリミットサーキットは起動する。
電子頭脳の稼働限界、すなわち寿命を迎えた時の死を再現する装置でもあり、積み重なったエラーによる暴走を起こさせないようにする為や、記録を読み取ってそのロボットの複製などの悪用をされない為にも存在している。
最もハジメ達がジュドから情報を読み取れたあたり、メカトピアのロボット以外への情報秘匿はあまり芳しくないようだが。
「間接的にもって事は、そのジャックバグを作ること自体ダメなんじゃないの?」
「ええ、普通のメカトピア人には作ろうとすれば警告が来るわ。
だけどジャックバグを作った災厄の科学者ホペアはリミットサーキットの故障、サーキットエラーを起こす事でその禁忌を超えてしまった。
ホペアはジャックバグを使って多くのロボット達を乗っ取って、王制派共和派関係なく見境なしの攻撃を繰り返したわ。
耐えかねた両軍は手を組み、多くの犠牲を払ってホペアを討ち取る事でその災厄を終わらせたそうよ」
「その後被害の大きさに終戦というわけか。
その科学者ホペアはなにがしたかったんだ?」
「サーキットエラーはリミットサーキットの故障であり、電子頭脳の異常であることに変わりないわ。
電子頭脳に異常があれば当然活動に何らかの異常が出てくるし、ホペア自身も多数のエラーを起こして意思疎通も出来ないような暴走状態に陥っていたと倒した人たちが目撃したそうよ。
サーキットエラーを起こしてるから自分で止まる事も出来ずにいたみたい」
「真相は闇の中という事か…」
タイムテレビで調べれば解るかもしれない隠された歴史の秘密をハジメは暴いてみたくなるが、今の問題に関係はないし暴く理由もないと忘れる事にする。
「それでそんな存在に似た生物がメカトピアの聖地にいるというなど、どういう事だと思う」
「大問題よ。 メカトピアの聖地メルカディアはアムとイムが暮らしていたとされる神聖な場所。
そんな場所にメカトピアのロボット以外の存在がいるなんてありえない…いえ、あってはならないわ」
「だけど僕たちの調査ではそこに乗っ取られたゼータ…僕たちの主力機が入っていて、そこでヤドリ達が何かやっているのを確認している」
「…聖地の管理は金族とその傘下のロボット達が行っているわ」
「金族か。 鉄人兵団の司令官を思い出すけど、傲慢で無茶苦茶な事ばかり言ってたからあまりいい印象ないんだけど」
ズォーターを捕らえた時とても上から目線の命令口調ばかりで、人の言う事を全然聞かない感じだったのをハジメは思い出す。
「…ズォーター司令は特別問題のある人だったけど、金族の中にも有能な人はちゃんといるわ。
まあそれでも元王族として尊大な性格の人が多いけど…」
「なんにせよそんな聖地にヤドリがいるという事は、金族は乗っ取られてるか協力関係にあるかのどちらかという事になる。
ヤドリを警戒するなら関連して金族の存在にも注意を払わないといけない。
ヤドリに有効な真空ソープも受け取ってるから、お互いに操られてると思ったら迷わず使う様に」
「正直銃は好かぬのでござるが…」
袴の胸元から取り出した真空ソープの銃を見ながらドラ丸は言う。
ドラ丸は袴の胸元が四次元ポケットになっているのだ。
「この際些細なこだわりは諦めてくれ。
ドラ丸や僕がヤドリに体を乗っ取られたら、上の仲間もメカトピアとの戦争よりヤドリ殲滅を優先する事になるはずだ。
そうなればメカトピアへの被害を気にしてる余裕はなくなる」
「大変じゃない!」
ハジメ達の感じている危機感に、リルルはメカトピア側としてかなり切迫した状況にある事に驚く。
「すぐに議会に潜入してアシミー議員に接触を図ろう。
交渉の為の足掛かりにするだけだったが、ヤドリの存在を知らせれば問題はいろいろと大きくなる」
「アシミー様ならヤドリの事を話せば、直ぐに対応してくれるはずよ」
「では、行くでござるか」
ハジメ達はアシミー議員に接触するために、議会場へ向かった。
議会では先の戦闘で敵のロボット―ゼータ―を一時機能停止に陥らせ、その後に敵の船に損傷を与えた後メカトピア本星に侵入して行方をくらませた事について話し合っていた。
原因がオーロウ議長が用意したと言われる特殊武器が原因と推測され、ゼータに何が起こったのか質問が行われていた。
「ではオーロウ議長にも敵のロボットがなぜ味方を攻撃した後、メカトピアに侵入してきたのかわからないのですな」
「その通りだ。 確かにあの武器を使うよう進言したが予想出来るのは機能停止させるまでで、その後の行動は私にも理由はわからん」
「ですが、あれはオーロウ議長が提供した武器なのでしょう?
簡単な仕組みくらい知っていてもおかしくないのではないですかな」
「…部下が自信をもって試してほしいと提出してきた試作機としか聞いていない。
ただ電子回路に干渉する機能があるとしか説明できん」
「電子回路? まさかジャックバグの様な武器なのですかな?」
ジャックバグの名前が出てきたことに議員達がどよめく。
その武器は大戦期に多くの犠牲を出した兵器として、メカトピアのロボットの脳裏に深く刻まれているのだ。
存在していい筈がないという認識を誰もが持っている。
「まさか、あれは神の定めた禁忌に触れるもの。
正常なロボットには作ることが出来ないのは、議員になる者であれば知っていて当然の事だ。
貴様はまさかそれを知らなかったのか?」
「当然知っている!」
オーロウの煽り口調で返された議員は反発するように否定する。
「だったらジャックバグとは違うものであると分かるであろう。
下らぬ質問はやめよ」
「くっ、失礼した…」
反発した議員は悔しそうに謝罪をする。
「…提示された資料から特殊武器がジャックバグと異なる事は形状から明白であろう。
だが電子頭脳へ干渉する武器であれば禁忌に触れる可能性はないか、オーロウ議長」
禁忌に触れる事を危惧するアシミーは、その点をオーロウに問う。
「問題あるまい。 我々の神が定めた電子頭脳への干渉の禁忌は、我々の始祖の系譜に限る。
先日技術開発部が調べた地球人側のロボットは、我々とは異なる電子頭脳を持った始祖の系譜ではないと報告があったではないか。
我々とは違う人間を守るようなロボットに配慮など必要ないという事だ。
あのロボット達が人間に従うというなら、ともに奴隷にしてしまえばいいだけの話だ」
「オーロウ議長。 既に人間を奴隷にするなどという問題ではなく、メカトピアの存亡をかけた戦争になっているのですぞ。
勝算もないのになぜそのような世迷言が言えるのですかな」
「私の提供した武器で敵の指揮官を倒す事に成功したではないか」
「多くの兵の犠牲があっての成果です。
それにその敵指揮官もメカトピアに侵入して行方知れず。
もしかしたらメカポリスを強襲する可能性もあるやもしれん」
ここに攻撃を仕掛けてくる可能性をアシミーが指摘し、他の議員達も無くはないと危惧する。
オーロウはそれはない事を知っているが、それを説明できないが故に黙り込むしかない。
沈黙する議会に議員の一人が質問をする。
「オーロウ議長、その特殊武器を新たに提供していただく事は出来ないのですか。
非常に扱いづらいようですが、敵指揮官を行動不能に出来た事は事実ですからな」
「…そうだな。 どれほど用意できるか次の会議までに確認しておこう」
「ですがその指揮官がメカトピアに侵入して行方知れずなのは無視できません。
同じことになって懸念材料を増やすのは良くない事かと」
「そもそもその敵指揮官はどこに消えたというのだ。 目的は?」
「幸い、先の騒動で地球軍の攻撃は止まっています。
何時攻撃を再開するかわかりませんが、わずかに余裕が出来たと思えば」
様々な問題が上がるが、この会議では話が纏まらず次回までに情報を整理しておくようにとして終了した。
オーロウが自分の執務室に戻って協力者―連絡役のヤドリ―に文句を言っていた。
「随分勝手な事をしてくれたな。
議会への説明にどれほど苦労したと思っている!」
「まあいいではないか。 当初の予定通り敵のロボットを手に入れる事に成功したのだから」
「やり方に問題があると言ったのだ。
あのように堂々と星に降りてこられたのでは我々も混乱する。
幸い聖地に入ったことは気づかれてないようだが、気づかれていたらどうなっていたことか」
「だが敵のロボットをこちらで手に入れるにはこうするほかないだろう。
軍にワザと捕まらせるとなると、敵のロボットを捕まえた我々の同胞も一緒に捕まる事になるぞ。
それこそ我々と協力関係にある貴様の立場が危うくなるのではないか?」
「グッ………まあいい。 どうせ今の立場も直ぐに不要のモノとなる。
私が再びメカトピアの王に返り咲く事になれば、議長の座など何の意味もなのだからな。
それで手に入れた敵の指揮官は調査したのか」
「少なくとも戦闘能力ではこの星のロボットと比べ物にならない力を秘めている。
生体でないのは残念だが、いいロボットが手に入ったと乗っ取った仲間が言っていたぞ」
「そうか…」
ヤドリは人間もロボットも操ることが出来るが、ヤドリ自身も生き物なのでロボットではなく人間の様な生き物でないと生きるためのエネルギーを同時に得ることが出来ない。
オーロウはヤドリが改めてロボットを乗っ取ったという話を聞いて気を悪くする。
乗っ取られたロボットを憐れんでという意味でなく、自分も油断すれば乗っ取られる事を危惧してだ。
何せ聖地にいる自分の部下のロボットも一部乗っ取られているのだから。
故にオーロウはヤドリに乗っ取られないよう、常に一定の距離を置くように警戒をしていた。
「お前たちの円盤を武器として表向きに処理したが、議会で更に提供出来ないか聞かれた。
更に派遣する事は出来るか?」
「上に相談してみるがおそらく可能だろう。
だが我々としては生きた人間の体の方が望ましい。
早く約束を果たせ」
「わかっている。 私が真にメカトピアの王となれば地球人のロボットなど敵ではない。
もう間もなく、私は宇宙の支配者として君臨する日が来るのだ。
フハ、フハハハハハハ!」
自身の野望が成就する日が間近に迫っている事に、オーロウは高笑いを上げる。
それをヤドリの連絡役は円盤のままではわからないが、面白可笑しく見ていた。