どうぞ。
私は夢を見ているのだろうか。目の前で起きていることは映画の撮影と言われても納得してしまう。
私とミナミ、プロデューサーさんの目の前で一人の
「…ミナミ」
「…アーニャちゃん、あの人は」
「恐らくライブに来ていたのでは、しかし彼は一体…」
「それに関しては話せない。フンッ!!」ズドム!!
プロデューサーさんの疑問に、目の前のヒトが攻撃の手を緩めずに応答した。そんな会話をしている間も、彼と怪物たちの攻防は続いている。あんなに大きな剣を持っているとは思えないほど身軽に動き、舞うように剣を振るう。不謹慎にもその姿はすごく。
「
「? アーニャちゃん?」
「な、なんでも、ないです」
口から言葉が出ていたらしい。ただ使い慣れたロシア語だったようで、意味は分かっていないみたいだ。不謹慎だけど安心した。これを聞かれたら、恥ずかしくて明日からミナミやプロデューサーの顔を見ることができない。
「むぅ、このままでは侑斗がまずい」
「えっ?」
真っ黒な人の言葉に反応してふと顔を上げると、目の前の戦況は動いていた。騎士は三人の怪物相手に苦戦していた。黒い人が援護しているとはいえ、攻撃を受けている。本当なら、この黒いヒトも駆けつけたいのだろう。でも私たちがいるために、下手に近寄ることができない。
「……行ってください」
「む?」
「プロデューサー、さん?」
私とミナミの前に立つプロデューサーさんの言葉に、黒いヒトは驚いていた。かくいう私も驚いている。
「ここに我々がいても、邪魔になるだけでしょう。あなたもこのままでは彼の加勢にいけない」
「だが…むぅ…」
「大丈夫です。私たちはできるだけあなたたちから離れます。それより今は彼に」
「……感謝する。侑斗!!」
プロデューサーの説得を聞いた黒いヒトは一言つげ、騎士さんの加勢に向かった。私たちは彼の邪魔にならないよう、怪物たちに気づかれないようその場を離れた。そして少し離れた物陰に隠れたとき。
≪Vega form≫
二度目の笛の音と突風が私たちのもとに届いた。
◆
クソッ。
いくら経験がプラスされているとはいえ、三人相手は少しきつい。だがアイドル達がこの場にいる限り、デネブの加勢は望み薄だろう。
「おおーい、侑斗ー!!」
「デネブ!?」
なんでデネブが? あのアイドルの三人を守っていたのでは?
とりあえず今相手をしているウサギ型イマジンを切り飛ばし、デネブに駆け寄る。
「デネブ!! お前、なんで!!」
「侑斗が心配で。それにあの三人は大丈夫だ、ほら」
デネブの指示した方向をみると、あの三人は近くの物陰に隠れていた。なるほど、それなら一先ずは安心だな。ならば遠慮することはない。
「よし。デネブ、来い!!」
ベルトからカードを引き抜き、再びスイッチを入れなおす。再び笛の音が鳴り響き、デネブが後ろに立つ。そのタイミングで俺はカードを裏返し、ベルトに差しなおす。
≪Vega form≫
デネブと融合し、ゼロノス・ベガフォームとなる。今度はデネブが戦うことになる。
真っ黒なマントを纏い、胸にはデネブの顔があしらわれ、仮面は星のような形になる。
「最初に言っておく!!」
「今度は何だ!!」
「生まれ変わっても、やっぱり胸の顔は飾りだ!!」
「「「はぁ?」」」
お、お前はぁーー!! こんなときに何を言ってるんだ!? あそこのアイドル達も呆れてるぞ!! 敵にまで呆れられているし。
『馬鹿っ!! こんなときに何言ってるんだ!!』
「ええっ? だって勘違いさせたら悪いし…」
『そういうのはいいから!! 早く片づけるぞ』
「うむ、わかった!! そういうわけだから…」
≪Full charge!!≫
エネルギーを充填させたゼロノスカードを引き抜き、大剣状のゼロノスガッシャーに差し込む。高密度のエネルギーを刃が纏い、やがて『V』の字の形をなす。
「いきなり決める!!」
「見せかけだ!!」
「こんの、こけおどしがぁ!!」
デネブの発言に怒り狂った三体のイマジンはそれぞれの武器を構え、こちらに走ってきた。しかしデネブはゆっくりと余裕を持ちながら剣を構える。そして三人のイマジンが一列に立ち並ぶように位置どった。そのまま俺たちに猛スピードで肉薄してきた。
「騎士さん!!」
後方から声が聞こえた気がした。白銀の髪の少女と同じようなトーンの声だったような気がする。。
声に反応するかのように、デネブは剣を一閃する。V字の剣戟は狙いを寸分違わずにイマジンたちを切り裂き、三体を貫通して止めを刺した。黄色に輝くV字が眩い光を放ったとき、三体のイマジンは爆散した。
周囲には誰もいない。イマジンの気配もない。大丈夫と判断した俺たちは変身を解除した。解除した瞬間眩暈が起こり、全身の力が抜けて倒れそうになる。
が、地面に倒れる前にデネブに支えられた。
「ぐっ、これが…今回の代償か」
「…侑斗。出来るだけ変身しないようにするんだ。もしカード使い切ったら…」
デネブが語り掛ける。本当にこいつは…
「気にするなデネブ、これは俺が選んだことだ。それに忘れられないだけマシだ」
「……」
デネブは、しかし表情を暗くしたままだ。本当に昔からこいつは、心配性だな。
物陰から二人のアイドルとスーツの男が出てくる。さて、近寄る三人もそうだが良太郎や母さんたちにはどう説明しようか。
はい、ここまでです。
次はハリポタを更新します。
それではまた。