孤高の牡牛と星の灰被り姫 【完結】   作:シエロティエラ

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昨日、スーパーショッカーと言われる組織から、総理に直々襲撃開始場所が通達されました。場所は国会議事堂前だそうです。
また、再び全世界の電波がジャックされたのち、自らの戦力を示すかのような映像が流されましたが、防衛省は陸上自衛隊部隊を周辺に配備させ、警戒させております。周辺に居住されている市民は避難を完了させております。
それでは中継です。現場の加藤さん。
はい、私は今ヘリコプターの中から現場を中継しております。果たしてスーパーショッカーは議事堂のどこから出てくるのでしょう……
あれは、一般人!? しかも6人も!?






繰り出すAttack/奇跡を集めて

 

 

 

 俺たちは今国会議事堂敷地内、正面門の近くにいる。何故か俺を真ん中正面に立たせ、両脇を門矢と海東、その更に外に小野寺と光、更に俺たちのわずか後方にエミヤがいる。

 昨晩の内に周辺住人の避難は済んでいるらしいため、多少派手にやっても問題はないだろう。懸念事項があるとすれば、上空を飛んでいるヘリだろう。恐らくどこかの局が中継でもしているのだろう。最近のカメラのズーム倍率や解像度は目を見張るものがあるため――この世界の住人じゃない門矢達は兎も角――俺は下手すると個人が特定される可能性がある。チケットの残数からして今後変身することはないが、平和に暮らすことは難しくなるかもしれない。

 

 

「桜井、大丈夫か?」

 

「僕たちの目的は厭くまでスーパーショッカーの幹部だ」

 

「雑魚は極力俺たちが相手する。余り最初から飛ばさないようにな」

 

 

 分かってはいる。残り二枚のチケットの内、一枚で必ず決着を着けなければならない。だが、許容範囲外ダメージを受けたりエネルギーを使いすぎると変身が解除されてしまうため、慎重に事を運ばなければならない。

 

 

「それにしても、この二日間士たちは何していたんだ?」

 

「なに、もう少ししたらわかるさ」

 

「お楽しみってね」

 

 

 暫く警戒しつつも喋りながらその場に佇んでいると、目の前に大きな灰色のオーロラが広がった。それは門矢達が広げるものよりも遥かに大きく、そして横に広かった。そしてオーロラの中から何人もの、何種類もの怪人たちが出てきた。

 そしてその先頭にいるのは、アポロガイストとジェネラル・シャドウ、ドクトルGの三人がいた。恐らく出張ったのはこの三人、本部にはまだ幹部や人員がいるのだろう。奴らが全員オーロラから出終わると、自然と俺たちも奴らも身構える。

 

 

「久しぶりだなぁ桜井侑斗、そしてコソ泥に破壊者。生きていたのだなぁ」

 

「お陰様でな。しぶとく生き残っているよ」

 

「まぁ、貴様らの命も今日限りだ。時期に悟るだろう、あの時死んでおけばよかったとな」

 

「そんな日は来ねえよ」

 

 

 この会話を皮切りに俺たちはベルトを出現させて腰に巻く。ショッカーはそれぞれの武器を構える。しかしまぁ、まさか三人も幹部が出張ってくるとは思わなかった。ここは真っすぐ三人のうち誰かに突貫すべきだろう。

 

 

「みんな、準備はいいな?」

 

「「「「「「変身!!」」」」」」

 

「――夢幻召喚・弓兵(インストール・アーチャー)、第六天魔王・織田信長!!」

 

 

 それぞれが戦闘準備を終え、武器を構える。ショッカー兵も今にも飛び出さんと身構える。

 と、俺たちの後方からエミヤが一人歩み出てきた。

 

 

「悪いが先達は譲ってもらう。なに、悪いようにはしない」

 

 

 全身に膨大なエネルギーをたぎらせ、黒い軍服と赤い外套に身を包んだエミヤは。俺たちの少し前で立ち止まり、そしてゆっくりと浮き上がった。人一人分の高さまで登ると、今まで以上のエネルギー、それこそ以前槍を投擲した時ほどのエネルギーが場を支配した。

 俺たちは似たような状況を以前見ているため、さして驚かない。しかし敵方はそうもいかないようで、いきなり膨れ上がり、圧迫される空気に動揺を隠せていない。

 

 

「三千世界に屍を晒せ……天魔轟臨!」

 

 

 エミヤが声を張り上げると、エネルギーの爆発と共に彼の周囲の空中に無数の火縄銃が召喚された。その全ての銃口はショッカー側を向いていた。

 

 

「蹂躙せよ!! これが魔王の『三千世界(さんだんうち)』だァ!!」

 

 

 剣を指揮するように振ると、担い手のいない火縄銃の全てから弾丸が発砲された。この絨毯銃撃により、ショッカーの雑兵は軒並み撃滅。残りの怪人たちも決して軽くはないダメージを受けている。

 一斉射撃を終えたエミヤからはカードが排出され、虚空へと消えていった。あの様子からして、もう使えないのだろう。

 

 

「さて、残りの雑兵は俺たちが受け持つ。幹部たちはあんたらでどうにかしてくれ」

 

 

 長槍と短槍を構えたエミヤはそう言うと、残ったショッカーの構成員に向かって飛びだした。それに合わせるように、小野寺の変身したクウガDF(ドラゴンフォーム)と光が変身したキバーラも飛び出し、怪人に向かっていく。

 しかし奴らの後方にまたオーロラが形成されると、新たに構成員や怪人が補充された。これでは(きり)がない。アポロガイストたちに向かいつつ、立ち塞がる怪人や構成員を撃破していると、俺たちの後方にオーロラが生成された。

 まさか、後ろに回られたか。

 そう感じた俺は、後方に意識を向けた。しかしショッカー構成員達も慌てている。ということはまさか第三勢力だろうか。仮に出てくるのが敵だった場合は、今回の戦いで死ぬことを覚悟しないといけない。

 襲ってくる敵を薙ぎ払いつつ何が出てくるか警戒していると、全く以て予想外のものが出てきた。ディエンドとディケイドは何が来るか分かっていたらしく、淡々とオーロラを見つめていた。

 

 

「よう、待たせたな。ディケイド」

 

「先輩ライダーの頼みとなりゃ、俺たちは駆けつけるぜ。並行世界人ともダチになりたいしな」

 

「人の未来を護る闘い。そのために力をかそう」

 

 

 緑と黒の戦士が、ロケットのような頭をしたものが、まるで神のように神々しい輝きを放つ戦士が。

 

 

「ライダーは助け合いだから。先輩を手伝います」

 

「結構多いな。まっ、鍛えてるから問題ないね」

 

「この世界の未来を護った先に多くの夢があるなら、俺も戦おう」

 

 

 赤黄緑の三色をした欲望の王が、極限まで己を鍛えた鬼が、闇夜に輝く黄色い双眼と赤い模様を張り廻らす戦士が。

 

 

「あんたがこの世界の希望なら、俺はあんたの最後の希望になろう」

 

「仮令地を這ってでも……子供たちの夢を護り、希望の光を照らし続ける」

 

「仮令孤独でも命ある限り戦う」

 

 

 ルビーの輝きを纏った魔法使いが、何物にも染まらない漆黒を纏う戦士が、右腕が機会となっている蒼い仮面の戦士が。

 そして最後に出てきたのは。

 

 

「我らは何度でも、どの世界でもお前たちの前に立ちふさがる!!」

 

「人々の自由を守るために、何度倒されても立ち上がる!!」

 

「それが俺たち、『仮面ライダー』だ!!」

 

 

 最後に一際圧倒するようなオーラを発する参人の戦士。トンボを模した戦士と、二人のバッタを模した戦士が出てきた。

 見間違えようもない。見違えるはずがない。彼らは歴戦の勇士たち、『仮面ライダー』の名を冠する戦士たち。一号から名も知らないゲーム機のような戦士まで。総勢32人のライダーが並んでいた。

 そして俺の周りの怪人を跳ね飛ばすように空間から電車が出現した。停車した電車からは赤、青、黄、紫、白、そして緑のイマジンが降りてきた。

 

 

「やぁ、待たせたね」

 

「ようやく、オーナーの許可が下りた」

 

「ねぇねぇ、暴れていいんでしょ?」

 

「下々の未来を護るのも私の務め」

 

 

 モモタロスとデネブ以外は、それぞれすでに変身を済ませている。デンライナーは全員を下すと、再び消えた。

 

 

「侑斗、大丈夫か? 俺が変わらなくてもいいか?」

 

「大丈夫だ、心配いらない」

 

 

 相変わらずデネブは心配性だ。俺も伊達に戦い続けているわけではない。

 

 

「なら問題ねぇな。そんじゃあ、ここから先は超クライマックスだぜ!!」

 

≪Sword Form!!≫

 

 

 モモタロスの変身が完了すると、自然と俺たちは一列に並んだ。デネブはデネビックバスターになり、俺もゼロフォームに変わる。と、俺の隣に来たとダイブが口を開いた。どうやら彼は、泊進ノ介本人らしい。

 

 

「久しぶりだな。今度はこっちが助ける番だ」

 

「ああ、頼む」

 

 

 言葉少なく、皆各々武器や拳を構える。ショッカーも危険を感じたのか、更に敵を増やした。先ほどの何倍もの敵が前方で蠢いている。下手すれば、この議事堂の敷地全てを埋め尽くし、溢れださんばかりの人数がいる。

 だが関係ない。今の俺たちは負ける気がしない。人数が少なくても、それが敗因に直結するわけではない。

 何故なら。

 

 

「最初に言っておく俺たちはかーなーりッ強い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 






事務所のロビーにある大画面テレビに映る。
愛しい人が仲間と共に戦うのを見つめる。
アナウンサーの声は耳に入らない、ただただ手を組み、今はもう動かなくなった銀の懐中時計を握りしめて祈る。
両隣りに座る親友たちも、同僚も後輩も、一心に画面を見つめる。
どうか神様がいるのだとしたら、彼らを、彼を守ってください。
そう願いながら時計を両手で握る。
一つ、歯車が回る音が響いた。



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