孤高の牡牛と星の灰被り姫 【完結】   作:シエロティエラ

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えー久しぶりにこちらを更新します。
それではどうぞ。





強き者に強き力/Just alive 星のシルエット

 

 

 

 俺の食事も終わり、茶を呑んでいるときに話し合いが始まった。

 門矢士によると、この世界は数年前からアポロガイストによって目をつけられていたらしい。ライダーのいない世界として、自分の目的を邪魔する存在がいないため、本来ならば円滑に計画が進むはずだった。

 しかし計画第一段階として派遣した三人のイマジンは、偶然記憶を取り戻した俺によって倒されてしまった。いきなり最初から躓いてしまったアポロガイストは、その後も慎重に敵戦力を把握するために幾度もイマジンや怪人を送り込んだ。そしてその過程で、この世界のライダーは俺一人と結論付け、計画を練り直して今回行動を起こした。

 その際、俺に違和感を可能な限り持たせないよう鳴滝に変装したのはいいが、本物の目はごまかせなかったようだ。事前にアポロガイストの動きを察知した本物の鳴滝が、自らの目的よりも世界の救済を優先し、ディケイドとディエンドに協力を依頼したらしい。

 

 

「……だいたい分かった。しばらくお前らはこの世界にいるのか?」

 

 

 滞在するのは構わないが、その場合こいつらの拠点はどうするつもりなのだろうか? 流石に俺のこの部屋や実家は難しい。だからと言って路上生活させるわけにもいかない。

 

 

「あ、大丈夫です。私の家があるので。光写真館という建物です」

 

「そうなのか? ならいいのだが」

 

 

 どうやら拠点はあるらしい。そして彼らの話を聞いている限りこの部屋から近い場所にあるらしい依。どうも世界移動をするたびに、建物ごと移動しているみたいだ。ゼロライナーみたいなものか?

 

 

「俺たちとは違ってお前は社会人なんだろう? 昼間の調査は俺たちでやっとく、定期的に連絡はする」

 

「昼間は基本的に俺たちに任せとけ!! これでも俺強いから、クウガだし」

 

「貰ったお宝分の仕事はするさ」

 

 

 どうも彼ら昼間の怪人対処を受け持つことは確定らしい。まぁこちらとしてもこれから一人で対処するとなると、明らかにチケットの数が足りないため、大いに助かる。夜間や休日の警らは彼らに任せよう。

 

 

「……すまない、助かる」

 

「……どこかの欲望の王が言っていたが、『ライダーは助け合い』だそうだ。だから気にするな」

 

 

 門矢のその言葉を締めに、今夜は解散となった。

 

 

 

 

 

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 夜の道、アナスタシアの護衛のために俺は彼女の帰路に同行していた。変質者は言わずもがな、今日以降しばらくはアポロガイストたちの心配もあるため、いつも以上に警戒している。

 その日は杞憂だったのか、変質者や怪人に出くわすことはなかった。だが、だ。なぜここで彼女の両親に出くわすかねぇ。いや、たぶん旅行か何かだとは思うが、予想外にもほどがある。

 

 

「貴方が桜井侑斗さんですか?」

 

「娘がお世話になってます。いつも桜井さんのことを話してて」

 

 

 さて、事情が事情であるとはいえ、告白を保留にしている男と娘が一緒にいる光景を見て、一般的にどうみられるだろうか? 大多数が良い印象を持つことはないだろう。というか最低男というレッテルを張っていてもおかしくはない。

 ならばこの状況は何なのだろうか?

 

 

「この子ったら手紙でもメールでも桜井さんのことばかりで」

 

「私の両親も、これならひ孫の顔も見れると」

 

「ちょっ、папа(お父さん)!! мама(お母さん)!!」

 

 

 両親が余計なことを言い、子供が焦る様子。ああ、よくハナや母が見るようなドラマでもこんな場面があった。自分とは無縁で憧れもしないと、無関心を貫いていたが、まさか自分が体験するとは思わなかった。

 さて、いつまでも黙りこくっているわけにもいかないか。

 

 

「あーその……初めまして、桜井侑斗です。アナスタシアにはお世話になっております」

 

「あら~仲がいいのね~」

 

「あぅ……」

 

 

 む? 俺は何か間違えたのか?

 何故か俺が挨拶をすると母親の方は面白いものを見る、というか微笑ましいものを見る表情になり、アナスタシアの方は顔を赤くしてうつむいてしまった。どうも俺には少し理解できない事態になってるみたいだ。

 だが両親がいるなら、一先ずは安心だろう。俺は帰って明日の準備でもするか。残りのチケットの枚数確認や仕事の準備もある。

 

 

「では私はここで失礼します。ご両親がいらっしゃるのなら、変質者等の心配はないでしょうし」

 

「あっ、ユウトさん……」

 

 

 背後でアナスタシアが何か言っているのが聞こえたが、残念ながら俺の耳には何を言っているのかわからなかった。それよりも視界の隅に映った、明らか人間社会に不相応なものが気になり、家ではなくそちらに足を向けた。

 暗い夜道のなか、その存在は右へ左へと進路を変更し、時には家々の屋根を飛んだりと俺を撒こうとしていたが、こちらもゼロライナーに乗ってるデネブを経由して場所を把握しているため、見逃すことはない。

 そして数分の追跡の末、ついにそいつを追い詰めた。姿かたちはラビットイマジンなのだが、どうも様子がおかしい。へらへらとした言動、覚束ない足取り、まるで薬でも打ち込んだように言動が一定しない。

 

 

「とりあえず、お前はここで退場してもらったほうがよさそうだ」

 

 

 腰にベルトを巻きチケットを取り出しながら確認する。残り八枚、うちゼロフォームは三枚。本当ならデネブがいたほうがいいのだが、そうもいかないのが現状である。ここは仕方がないが、ゼロフォームのチケットを使う。

 

 

「……変身!!」

 

≪Altair Form!!≫

 

 

 鎧を纏い、すぐさま組み立てたガッシャーでエネルギー弾を数発撃つ。しかしイマジンは飛び跳ねてそれを避けると、また屋根伝いに姿をくらました。ゼロノスになっている間は身体能力も強化されているため、追いかけることは造作もない。

 俺も跳躍し、屋根伝いにイマジンを追いかける。だが奴はやはり普通ではないらしく、通常のラビットイマジンよりも格段に早いスピードで逃げていく。牽制として先ほどから弾を撃ってはいるが、当たっても意に介さないかのように逃げ続ける。あれは恐らく、何らかの影響で感覚が麻痺しているのかもしれない。

 

 

「いい加減、落ちろ!!」

 

 

 全速力で走って奴に追いつき、地面に切り伏せた。しかしいつものような手応えはなく、寧ろ頑丈なものに刃を突き立てた感触がした。

 

 

「アヒャヒャヒャヒャ!! 喰ぅらわねぇよ、そんな鈍らぁ!!」

 

 

 狂った声と共に奴の体がうごめき、いつものラビットイマジンに戻った。しかしその手には、USBメモリのようなものが握られていた。

 

 

「それは……まさかガイアメモリ!?」

 

「俺ェはぁ、最強だぁ!! ヒャヒャッヒャハァ!!」

 

≪Rabbit!!≫

 

 

 大きな音声と共に、メモリが起動する。本来なら接続部に挿入しないと使えないガイアメモリだが、怪人ならばどうであるか分からない。しかし先御どのように元々のスペックから更に強化されることは自明の理なので、奴にメモリを使わせないようにすることが第一である。

 俺はメモリを指そうとする奴の手に弾を撃ち、メモリをはじいた。俺はダブルやアクセルではないので、メモリブレイクは出来ないが、目盛れさえなければイマジンは対処できる。

 

 

≪Full Charge!!≫

 

 

 ベルトのスイッチを押し、カードにエネルギーをためる。普通のイマジンならこの時点で逃走しているが、どうやらメモリの弊害で、正常な思考が出来ていないらしい。オロオロとして周りを見ている。

 カードを差し込み、エネルギーのたまった剣を振りかざしてイマジンに止めを刺す。ラビットイマジンは断末魔の声を上げることなく、爆散して消滅した。

 変身を解除し、撃ち落としたガイアメモリを拾う。恐らく、アポロガイストらへんから受け取ったか強奪したのだろう。メモリは門矢か海東に頼んでメモリブレイクしてもらうしかない。

 帰宅が遅くなるが仕方ないと割り切り、解散する前に教えてもらった光写真館へと足を運ぼうと、その場で法王転換をした。そして俺は悟った、俺にはどうしてこうも運がないのかと。

 

 

「……ユウトさん」

 

「い、いまのは……」

 

「……」

 

 

 どうしてこう、イマジンが関わるところにこの子は居合わせるのか。しかも今度はご両親まで一緒とは、どう説明しよう。

 

 

 

 





本当に久しぶりにこちらを更新しました。こんなペースで年度内に終わるのやら。
まぁ頑張ります。
それではまた次回、いづれかの小説で。



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