「――"
青年が一言叫ぶと、ショッカー戦闘員や怪人どもに刺さった槍や剣が、勢い良く全て爆散した。同時にショッカーの戦闘員は、居る者すべてが爆散し、消滅した。怪人たちも消滅こそはしないものの、種類を問わずおおきくダメージを受けている。
普通なら、それぞれの怪人たちに対応した力をぶつけることが必要である。しかし青年はそのことを無視するかの如く、怪人たちにダメージを与え、重傷を負わせている。
ライダーや怪人の力も異様だが、この青年の使う力は、それ以上に異様だ。まるで言葉一つ一つに生命力が宿り、攻撃的な力として行使されていると感じる。
「ふぅ。あとはこの怪人たちだけだな」
「イマジン…あの鬼のような奴らは俺が相手をする。奴らは俺の専門分野だ」
俺が指し示す先には、モールイマジンが三体、スパイダーイマジンが二体いた。流石にレオイマジンや他の強力なイマジンはいないらしく、デネブが来れば何とかなる数である。先ほどアーニャから連絡が来たが(小型通信機のようなものを耳に入れているため、携帯の着信を手を使わずとることが出来る)、もしもの時を考えてデネブを呼んでくれたらしい。
「了解。じゃあ俺はあっちの番号が書かれてるのと、なんか果物の特徴を持ってるやつ、あとなんか魔力持ってるやつ」
「恐らく、いや、確実に他の奴らも襲ってくるだろう。担当を撃破しつつ、他のも撃破する形で」
「あいよっと!!」
其々目標に向かって走り出す。モールイマジンは連携を組んで俺に襲い掛かり、青年のほうにはミノタウロスとヒドラのファントムが襲い掛かった。が、その進路は複数の銃弾が撃ち込まれたことにより、阻まれた。
「『鳴滝』に言われてきてみれば、早速変なことになってるな」
「確かにね。でも僕はどんなお宝が貰えるか楽しみだな」
そう言いながら俺たちの後方から歩いてくる二人の青年。一人は黒を基調とした蒼と金のラインの入った大型の銃を握っており、一人は腰に大きなバックルをつけ、まるで本のような形の銃を構えている。
”破壊者ディケイド””仮面ライダーディケイド”こと
「…お前たち」
「へ? 誰だ、この二人?」
二人の登場に怪人どもと『鳴滝』は色めき立ち、緊張が走った。しかしそれを意に介さぬかのように、二人は俺たちの隣に立つ。
「『鳴滝』だと? なら奴はなんだ?」
俺は目の前にいる『鳴滝』を指差す。しかし海東と門矢は何事でもないかのように首を振った。ちなみに名も知らぬ青年は、何事かわかっておらず首をかしげていた。
「あいつは偽物さ。『鳴滝』に似たような力が使えるな」
「どうやって彼のような力を持ったか知らないけどね。なぁ、アポロガイスト」
二人が偽『鳴滝』に問いかけると、偽物は灰色のオーロラをくぐり、真の姿を現した。赤の
「よくぞ分かったな、破壊者と泥棒よ」
仰々しく言葉を発するアポロガイスト。流石というべきか、ほかの怪人たちと比べると気迫が違う。
「あー盛り上がってるとこ悪いけど」
今まで黙っていた青年が口を開く。
「あの偉そうな奴って誰だ? 魔術師じゃなさそうだが。あと仮面がダサい」
最後に余計な一言を添えて、青年がアポロガイストについて聞いてくる。軽く青年に奴に関する説明をし、今の状況を門矢たちに伝える。彼らの銃と俺のボウガン、そして青年の二丁の銃、確かキャリコM900とトンプソン・コンテンダーだったか、で牽制をかけつつ、話を進める。
「そう言えばお前誰だ? "ライダー"じゃなさそうだが」
「それに、この世界にそんな力はないはずだけど」
俺も疑問に思っていたことを、二人が青年に聞いた。ちなみに青年の銃弾は特別な力を持っているらしく、燃えたり、風に刻まれたり、全身から鋼の槍を生やしたりしている。
「あー、俺は衛宮・E・剣吾。こことは違う、並行世界の出身で魔術使い。元の世界では育った街を護るために、日々戦っている」
「へぇ、左翔太郎のような人だな」
「それにしても魔術師、そして並行世界とはね。いつか訪れてみたいものだよ」
「だが今は…」
俺たちは全員怪人とアポロガイストと向き合った。奴らも体制を整え、こちらに相対する。牽制攻撃も功を喫したのか怪人の数は減っている。
「イマジンは任せろ」
「じゃあオルフェノクとグロンギ、ファンガイアは任せろ」
「なら僕はワームとドーパント、グリードだね」
「んじゃあ番号付きと果物、魔力持ちは俺がやろう」
門矢と海東はライドカードを取り出し、青年、衛宮は槍兵の書かれたカードを取り出した。
「…このままでは分が悪いな。体制を立て直そう。お前たち、ここは任せた」
「ッ!? 待て!!」
門矢が向かおうとするが、既にアポロガイストはオーロラの向こうに消えていた。命令された怪人たちは、各々武器や体の一部を撫でまわし、闘志を高めている。
「まぁとりあえず、目の前の敵をかたずけましょうよ。ちょっと奥の手の一つ使うんで、時間稼ぎお願いします。クラスカード」
「奥の手か。面白いものみせてね」
「仕方ないか。行くぞ、お前等」
「「変身!!」」
構えたカードをベルトと銃に差し込む二人。
≪KAMEN Ride≫
≪DECADE!!≫ ≪DIEND!!≫
≪Charge and up!!≫
音声と共に二人の周囲に複数の幻影が形成され、二人に重なる。そして門矢にはマゼンダの、海東には海色の複数のエネルギーの板が頭に刺さり、全身にエネルギーをいきわたらせる。そして俺たちの間に二人の”ライダー”が姿を現す。
マゼンダの仮面ライダーディケイドと、ブルーの仮面ライダーディエンド。
俺自身もゼロフォームへと変わる。デネブはまだ来ていないため、武器はガッシャーのままだ。
「
衛宮の足元に魔法陣のようなものが形成され、衛宮の体を透過する。そして次に瞬間、彼の手には禍々しいほど
「――我求めるは、安息の地なり」
続いて詠唱を始める衛宮。彼の周りには、微弱だが竜巻が発生している。
「それじゃ、彼のために時間を稼ぐか」
「「了解(わかった)」」
各々武器を構え、担当の怪人たちに向かっていく。一人でも取り逃がしてはいけない。何より一番近くにいる同僚たち、そしてアーニャの身が危険である。彼女らのためにも。ここで食い止めねばならない。
「――正義を持たず、光と闇を抱いて我は地に立つ」
竜巻は突風となり新緑の色を纏う。足元には焔の円が走り、風に紛れて鋼の粉が輝く。
≪ATTACK Ride, Blast!!≫
≪ATTACK Ride, Slash!!≫
「彼はまだかい!?」
「知るか!! 俺に聞くな!!」
≪KAMEN Ride, FAIZ!!≫
≪KAMEN Ride, SKULL!!≫
「とりあえず、まずはこいつだ」
「君たちはこれで遊んでいるといい」
「食らえ!!」
銃口が火を噴き、刃が輝き、矢が飛ぶ。怪人の体から火花が吹き、煙が漂い、爆発が起こる。流石にこれ以上は不味い。アーニャにバレるのは兎も角、同僚までも巻き込むわけにはいかない。
怪人たちは減ったが、それでも半数以上が残っている状況。流石に一度に複数の怪人を相手にするのは、いくら戦い慣れているといってもきついものがある。
「…いいぞ!! みんなこっちに来てくれ」
微かに俺たちに聞こえた声、その声に応え、俺たち三人は衛宮のもとに駆け寄る。怪人たちも俺たちを追い、全員近づいてきた。
そして…
「――蒼き星よ、蒼き
詠唱のようなものが終わった瞬間、世界は破壊、再生された。
満天の星、地を覆う色とりどりの花々、地平線の果てに見える大きな蒼き月、そして地に立つ無数の槍。
まるで魔法のように、数秒の詠唱で新たな世界が作られた。
「…ここなら現実世界に被害はない。思いっきり暴れても心配ない」
そう告げる青年の瞳には、見る者を魅了するような輝きを湛えていた。
ここまでです。
あと数話。あと数話でこの作品は完結します。
前回も言いましたが、完結後に空白期間の描写ともしもの結末を番外編で書いていこうと思います。
あと補足ですが、衛宮剣吾というキャラクターは、私の小説に登場するオリキャラです。メインで執筆しているハリポタの小説に登場しております。
彼のモデルは左翔太郎のため、今回こちらにゲスト出演させました。
ではこのへんで。次回はハリポタを更新します。