孤高の牡牛と星の灰被り姫 【完結】   作:シエロティエラ

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今回はこちらを更新しました。
後書きにも書いてますが、前話から結構な時間が経っている設定です。その間に変化した人間関係は、完結後に番外編として書いていく予定です。

ではどうぞ。




誰もが信じている真実それだけが/今も覚えてる心に溶ける星の声

 

 デネブと再会して、俺は24歳の社会人となっていた。最初の心配からは外れ、既に4年の月日が流れている。ライブの日のレオイマジンの出現以来、イマジンの出現頻度は確実に減少し、ここ半年は変身していない。

 

 

「侑斗、そろそろ時間じゃないか?」

 

 

 自宅、つい一年ほど前に一人暮らしを始めたアパート、のソファで寛いでいると、何故か朝から部屋に来ていたデネブから話しかけられた。今日は昼からの出勤のため、部屋で寛いでいたところにデネブが部屋に来て、掃除を始めた。

 元々ものをあまり持つ主義ではなかったため、部屋はさほど散らかったりしていない。せいぜい同年代の男性に比べたら随分と綺麗である程度だ。だからデネブが来てもすることはないはずだが。

 

 

「そういえば侑斗」

 

「どうした?」

 

 

 珍しく、と言えば失礼だろうが、デネブが真剣な声音で話しかけてきた。もしかして、最近成りを潜めたイマジンの行動について分かったことでもあるのだろうか。

 

 

「うむ。最近イマジンの気配はないが、何かしら別の問題があると、デンライナーとゼロライナーのオーナーから連絡があった」

 

「? 異変が起こっていると?」

 

「うむ」

 

 

 重々しく頷くデネブ。一体どんな問題があるというのだろうか。

 

 

「それは…どれほどの規模のだ?」

 

「干渉してきているのは二つ。一つは以前確認した波長と同等のものだったために、気にしなくていいらしい。せいぜいその者と協力することになる程度だそうだ」

 

 

 デネブの口調からして、そいつは俺も知っている存在らしい。ただ俺が知るうえで、時空や世界を超える存在など二人しかいない。あとはせいぜいそいつらと共にいる二人程度だ。

 

 

「ということは、またそいつら関連の騒動が起こるんだな。はぁ、もう一人のために交渉材料用意しておくか」

 

 

 二人のうち一人は『お宝』とやらさえ用意すれば、何とかなる。まぁ奴が気に入ればの話だが。

 もう一人は正直わからん。最初の出会いは覚えていないが、どうやら俺の存在がかかった出来事で手助けしてくれたらしい。次に会った、というか接触したのは3号の事件のときだ。まぁその時もたいして会話はしていないが。

 

 

「それともう一つ、オーナーたちでも物申すことが出来ない存在がいるらしい。過去に一度、その者が俺たちの世界に来たそうだ」

 

「なに? それは元の世界か? それともここか?」

 

「…両方だ」

 

 

 その言葉に衝撃を受けた。俺たちが時に干渉する際には、必ずと言っていいほど許可を取らねばならないオーナー達。そのオーナー達でも逆らうことが御法度な存在が世界には存在するというのか。

 

 

「ユウトさん? いますか?」

 

 

 玄関の外から声が聞こえる。今住んでいるアパートはインターホンが付いていないボロアパート。寧ろ風呂とトイレが個別についてるだけマシなものだ。むしろ1Rの物件で家賃が5万とは、破格すぎる物件である。

 まぁそれはさておき、現在玄関外にいる人物。誰かわからないという惚けは使わない。というより以前使ってガチ泣きされたことがあるため、それ以来使わなくなった。

 

 

「いらっしゃい、侑斗ならいる。でもすぐに出かける」

 

「デネブさん、こんにちわです」

 

 

 こちらに聞くまでもなく勝手に招き入れるデネブ。そしてそれに応じる来訪者。頼むから、一応家主は俺なんだから、俺に許可を得てほしい。

 

 

「あっ!! ユウトさん、こんにちわです!!」

 

「…ああ」

 

 

 部屋に入ってきた途端嬉しそうな表情を浮かべる銀髪の美少女。ここ数年で日本語は違和感ないほど上手くなったが、やはり所々つまるしゃべり方をする彼女は、2年前まで世話になっていた事務所に所属するアイドル。

 

 

「で、アーニャ。お前今日は仕事と聞いていたが?」

 

「Да, 今日のお仕事先は特別です」

 

「特別?」

 

「Да!!」

 

 

 より嬉しそうにほほ笑むアーニャことアナスタシア。ああ、このパターンは何回か経験した。この後にくる言葉は…

 

 

「「今日の仕事場は、侑斗さん(俺)の仕事場の天文台です!!」…だと思った」

 

 

 予想通り、俺の仕事場に来るらしい。はぁ、同僚からいじられること間違いなしだな。ただでさえ、二年前俺が346から出ていく際に大勢の前でアーニャから告白された。だが正直当時は連戦で疲弊しており、彼女らをこれ以上巻き込むわけにはいかなかったため、俺は彼女の想いを受け取らなかった。

 だがアーニャは諦めず、何度も俺に接触してきた。仕事の終わり、休日、仕事行く前の朝など、時には母やハナとのコネクションを用いて接触してきた。戦闘後に怪我の治療を受けたり、家に帰るといつの間にか食事を用意してデネブといたりと、離れていくどころかより近づいてくる彼女に俺は諦めた。

 だが正式に付き合っているわけではない。最低な男と思われるだろうが、俺のイマジンとの戦いが終わるまで保留にしてもらっている。それが俺なりのけじめである。生きているうちに終わればいいが。

 

 

「はぁ…なら行くか。どうせそのつもりだったんだろう?」

 

「Да!! ではデネブさん、行ってきます!!」

 

「うむ」

 

 

 特にスーツの類を着る必要はないため、私服のまま仕事場に車で向かう。助手席に座るご機嫌なアーニャの鼻歌を聞きながら思考をめぐらす。

 あの二人が来るということは、近々あいつらを目の敵にしているあの男も接触してくるだろう。幸いなことにこの世界の『ライダー』は俺一人、あの男の言い方をするならば、ここは『ゼロノスの世界』ということになるのだろう。

 例の三人への思考を巡らせていると、いつの間に仕事場についていた。時刻は午後3時、まだ1時間ほど時間がある。

 

 

「ここにいたか、この世界の『ライダー』」

 

 

 後方から声をかけられた。この気配は…

 

 

「…やはりお前か、『鳴滝』」

 

「? ユウトさん?」

 

 

 アーニャが俺の袖をつまむ。顔を向けると、少々不安げな表情を浮かべていた。こういうところは、出会った当初から変わらない。

 

 

「…大丈夫だ。先に行ってろ」

 

「…はい」

 

 

 察してくれたのだろう。途中何度も振り返りながらだったが、集合場所に向かった。見届けた上で、俺は『鳴滝』に向き直った。

 

 

「話は…まぁわかりきっているな」

 

「ならいい。破壊者を始末しr『だが断る』…なんだと?」

 

 

 俺は以前から決めていたことがある。たとえ破壊者が来たとしても、俺自身が奴と接触してから今後の判断をする、と。

 俺の返答に『鳴滝』は顔を歪めた。

 

 

「それは…お前はこの世界が破壊されてもいいというのか!!」

 

「破壊なら既にされている」

 

「何だと?」

 

 

 そうだ、破壊なら既にされている。過去に『ライダー』と呼ばれていた俺がこの世界に生れ落ち、そして生前と同じ力を振るっている時点で、この世界には『ライダー』が生まれ、『破壊』されている。

 この世界には『ライダー』はいない。『始まりの1号』もいないし、今後も『ライダー』が生まれることはないだろう。

 

 

「…そうか。ならばせめてディケイドに破壊される前に、お前を消してやろう」

 

「…やってみろ」

 

 

『鳴滝』の後方に灰色のオーロラが形成される、同時に俺もベルトを巻き、チケットを用意する。バックルを操作していつでも変身できる状態にする。

 

 

「辞めたほうがいい。それを合わせて、あと変身できるのは十回も満たないだろう?」

 

「ああ、これ入れてあと5回と少しだな。だがこうも考えてみろ。あと確実に5回はお前の妨害を阻めるとな」

 

「強がっちゃあいけないよ。この数を独りでどうにかすると?」

 

 

 そう言う『鳴滝』の後方から、20を超える怪人達が姿を現した。イマジン、ロイミュード、オルフェノク、アンデッド、御叮嚀にショッカーの雑兵まで30人ほどいる。確かに一人ではきついかもな。

 

 

「数で押すのか? 相変わらず自分で戦おうとはしないようだな『鳴滝』」

 

「破壊者を始末するため、私は死ぬわけにはいかんのだ」

 

「それは俺も同じだ、変身」

 

≪Altair form!!≫

 

 

 メタリックグリーンに輝く鎧を纏い、ガッシャーを剣状に組み合わせる。『ライダー』の登場に、怪人たちは一様に闘志を挙げ、威嚇してきた。ついでに言えば、雑兵たちはイーイー五月蠅い。

 

 

「てめぇは死ねないって言ったな。俺もな死ねないんだよ。あの子らを残して、あの子らが生きる世界を守るためにな」

 

 

『ライダー』だからとかなど問題ではない。俺は俺自身のために。

 

 

「オワ!? っととと…いってぇ~」

 

 

 しかし、互いに士気を上げているところに、思いもよらない乱入者が現れた。まるで空間を割るように生じた虹色の裂け目から出てきた少年は、出てきたと同時に尻餅をついていた。

 少年の出で立ちは、ぱっと見どこかの世界の私立探偵に似ている。だが髪は短めであり、何よりも目を引いたのがその髪と目の色。

 髪はまるで雪のような白でありつつも、角度によっては朱色に輝く、朱銀色と定義すべきかと思わせる色。目は血の様で、しかし尊い輝きを内に秘めた紅色をしていた。

 少年はのっそりと起き上がると、俺よりも背が高い、周囲を見渡した。

 

 

「うーん。なぁあんた」

 

「!? …なんだ」

 

「あれって…ほっといたらヤバい感じ?」

 

 

 少年は怪人たちを親指で指しながら問うてきた。

 

 

「あ、ああ。少なくとも、通常は人に被害が出る」

 

「そっか。ったく、移動した先で早速これか。こりゃあのハッチャケ爺さんが機嫌悪くなるのも頷けるな」

 

 

 うんうんと頷く少年。俺や『鳴滝』たちは完全において行かれている。

 

 

「んじゃまとりあえず――投影開始(イミテーション)、――鋼の二重槍(デュアル・ランス)

 

 

 少年はなにか自己完結すると、どこからともなく短槍と長槍を取り出した。俺たち(ライダー)が武器を取り出すのとは違う、一から作り上げるように。そして少年の服装は変化しており、黒のノースリーブのレザーアーマーに黒のベルトで所々縛ったズボン。そしてその首に巻かれている、髪の色とそっくりな色のロングマフラー。一本だけ伸びるマフラーの端は、風にはためいている。

 少年は二本の槍を鳥の広げた翼のように構え、怪人たちと対峙する。そこで俺もようやく自分のリズムを取り戻し、ガッシャーを構えた。『鳴滝』たちも気づいたらしい。こちらに向かって構え直す。

 

 

「…最初に言っておく、俺はかなり強い」

 

「おおっそりゃ頼もしいね。んじゃあそこのおっさん、あんたはあんたで罪を数えな」

 

「その言葉、そっくりそのまま返そう」

 

 

 




久しぶりに更新しました。
そして思いっきり時系列が飛んでしまいました。でも後悔はしていません。
さて、今回最後に出てきたキャラクター。わかる人は分かるのではないでしょうか?
それから鳴滝とライダーには『』をつけさせていただきました。理由としましては、ライダーを名乗るには資格が必要なのではと思ったこと。
またライダーも鳴滝も、その言葉だけで一つの概念になると思っているためです。

では、次回はハリポタを更新します。


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