僕と姉貴の非日常   作:宵闇@ねこまんま

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天まで届く羽―覚醒―

001

 

午前2時。

 

それは僕にとって忌まわしき時間の始まりだった。

 

昔の話だけど。

 

午前2時は僕が僕じゃなくなる時間。

 

僕は母親から吸血鬼性を30%ほど受け継いでいる。

 

昼間はその吸血鬼性はほとんど出ていない。

 

だから僕は日中でも普通に暮らせる。

 

姉貴は逆に吸血鬼性が強すぎるから、日中は曇りの日や雨の日ぐらいしか外には出れない。

 

しかし、こんな僕にも姉貴と同等並みの吸血鬼性が出るときがある。

 

それが午前2時から午前4時までの二時間。

 

草木も眠る丑三つ時、なんて言うが僕にとっては目覚めの時間だ。

 

まぁ普段は無理矢理寝てるけど。

 

この時間の間に起きてしまうと、大変面倒な事になる。

 

それは次の日に必ず血液を摂取しなければいけなくなるという事だ。

 

吸血鬼性が跳ね上がるのだ。

 

エネルギーも大量に使う。

それに気分も悪くなる。

 

力が溢れ、力を使いたくなる欲求と。

 

それを抑え、理性を保つのは結構苦しい。

 

小学生の時に何度か理性を失った。

 

目が覚めると知らない場所。

 

目の前には知らない人が倒れてる。

 

そんな事が何度もあった。

そのたびにこの力を憎んだ。

 

そういう理由から、僕はこの力を忌避するようになった。

 

しかし、少し前から腐れ生徒会長のせいでこの力を使う事が何度かあり、最近はコントロール出来るようになった。

 

感謝はしていない。

 

ツンデレでもなんでもなく。

 

むしろ迷惑してるくらいさ。

 

コントロール出来るようになったという事で、あいつは調子に乗って更に面倒な厄介事を持ち込む様になったし。

 

さて僕についてはこれぐらいにして、姉貴が偽姉貴を追いかけていったし、そろそろ僕も姉貴を追わないとね。

 

時間がちょうど2時になった。

 

002

 

「さぁて、姉貴はどこ行ったかな」

 

窓から顔を外にだし息を深く吸い込む。

 

「……お、発見」

 

今の嗅覚なら姉貴の場所は匂いでわかる。

 

これは誰でもわかる訳ではない。

 

姉貴だからわかるのだ。

 

いわゆる『愛の力』だ。

 

 

…すいません、調子乗りました。

 

ただいつも近くにいるからわかるだけです。

 

場所さえわかればこっちのもの。

 

「あらよっと!」

 

窓から飛び出し、そのままの勢いで500メートルぐらいを跳んだ。

 

今なら、ボ○トと並走しながら歌を歌える自信がある。

着地後、そのままダッシュ。

 

近所の迷惑にならないようにある程度スピードを抑えて。

 

それでもボ○トより何倍も速いはずだ。

 

 

約5分後、家から5キロほど離れた住宅街に姉貴はいた。

 

「姉貴、どうだった?」

 

「あぁ、神音。この家の中に入ってそれっきりだよ」

 

偽姉貴が入っていった一軒家の表札を見てみると。

 

   《天羽》

 

「……珍しい名字だしなぁ」

 

「ん?心当たりあるの?」

 

「いや、クラスに同じ名字の人がいるんだけど…」

 

でもなぁ、変装にしては上手すぎだし。

 

まぁ、怪異の力ならあり得るけど。

 

「…この家、破壊してみる?」

 

「…姉貴、常識って言葉しってる?」

 

「当たり前だよ。国語は得意なんだもん」

 

「違う、国語がどうとかじゃなくて日本語、母国語について言ってるの」

 

「だって神音、困ってる様な顔してたし」

 

「姉貴は困ってたら、破壊活動に走るのか?」

 

「時と場合に寄るね!」

 

「寄るな!あとテンション上がんな」

 

 

「…そんなことより、やっぱり夜の方がカッコいいね」

 

「ん……、僕はあんまり好きじゃないけど」

 

普段の僕は普通の髪型に普通の髪の色だが、吸血鬼性が高まると、髪型は少し伸びて肩にかかるようになり、髪の色は神々しい金だ。

 

……こう書くとサ○ヤ人みたいだね。

 

「…昼間もカッコいいけど、夜の方が良いよ」

 

姉貴がうっとりと見つめる。

 

僕はこの姿は好きじゃないが、姉貴が喜んでくれるからプラマイ0だ

 

「…じゃあ、もう帰ろうか」

 

「え?良いの?」

 

「うん、心当たりあるし、明日天羽さんを帰りにつけて確かめてみるよ」

 

「つけるだなんて…弟が犯罪者の道に…」

 

「犯罪じゃない。捜査だよ」

 

「いいや、ストーカーは犯罪だよ。お姉ちゃん悲しい!」

 

姉貴を言いくるめるのは面倒だな。

 

「…なんならいろはさんに頼むけど」

 

「まぁ、捜査なら仕方がないね。良いよ、速く帰ってきてね」

 

あいつの名前を出すのは大変不快だが、姉貴を説得するにはこれが一番楽だ。

 

 

「じゃあ帰ろう。姉貴」

 

「えー、まだ4時まで時間あるしデートしよーよ」

 

デ、デート!?

 

なんて素晴らしい響きだ。

 

「確かに、日曜遊び足りなかったし…良いよ。遊ぼう」

 

どうせ、家に帰っても寝れないだろうし僕姉貴好きだし…。

 

 

あれ?何か言っちゃいけない事言った?

 

まあいいや、遊ぼう!

 

「どうする?どこ行く?富士山?」

 

「いやいや、富士山は遠いよ。街をぶらつこう」

 

そうして、僕と姉貴は夜の街に消えていった…。

 

 

…なんて言うと、変に聞こえるね。うん、普通におしゃべりしながら散歩しました。

 

そして、感想を一言。

 

姉貴、可愛すぎ!

 

003

 

次の日、いつもどうり姉貴を起こして、いつもどうり朝飯を作って食べた。

 

ただ、今日は僕も血液を飲んだ。

 

毎回思うけど、不味い。

 

輸血用の血液だからだろうか?

 

美味しくても、生き血を飲もうとは思わないが…。

 

さて、学校に行こうかなぁ…。

 

「神音、神那。昨日の夜、何やってた」

 

…!? さすが父さん、バレてたか。

 

「なぁに、二人で何かやってたの~?」

 

母さんはそういうの鈍いから気付かなかったか

 

「いやぁ…その…」

 

あ、姉貴。

頼む、何とか誤魔化してくれ。

 

「あれだよ、デートしてたの」

 

…嘘はついてないけど、余計誤解されるんじゃ…。

 

「デートか。なら良いんだ」

 

良いの!? 真夜中だよ!?

 

「…じゃあ、学校行ってくるね」

 

うちの家族には常識がないのかもしれない。

 

そして玄関で外靴を履いていると。

 

「神音。少し良いか?」

 

「…父さん。何?」

 

「神那が嘘ついてるのはわかってる。どうせあのクソ女の厄介事だろ」

 

父さんはやっぱりチートだな。

 

てか、あいつは父さんに相当嫌われてんな、前から知ってたけど。

 

「まぁ、クラスの友達も関わってるし僕だけの問題じゃないからね」

 

「だからと言って家に『怪異』を持ち込んで良いわけじゃないからな」

 

何でもお見通しかよ。

 

「わかってる。すぐに終わらせるよ」

 

「1週間だ」

 

「1週間? 何が?」

 

「1週間以内にお前が終わらせられないなら、『俺』が動く。これは決定事項だ、異論は認めん」

 

どこの大佐だよ、この父親は。

 

「…わかったよ。頑張る」

 

「頑張れよ。あと…」

 

あと?

 

「姉弟の仲が良いのは良いけど、一線は越えるなよ」

 

……常識はあるらしい。




なんで昔の俺情景描写とかほとんどしてないん?
馬鹿だったの? 一応高校生でしょ?(半分黒歴史と化した過去と自分は別物であることを強くアピール)

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