僕と姉貴の非日常   作:宵闇@ねこまんま

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今は行を一つあけて書くということをしないから、この頃の文を見ると嫌な汗が流れます。


天まで届く羽―前兆―

001

 

学校……

 

そこは勉学に励む所…

 

そこは友情を育む所…

 

そこは社会に慣れる所…

 

学校と呼ばれる場所に通う時、そこには何らかの意志があるはずである。

 

 

それは僕、梛川神音においてもあるはずだった。

 

しかし、当時中学2年の僕にはそのような明確な意志がなく

 

「何の意味があってここにいるんだろう?」

 

と常日頃考えていた。

 

…ような気がする。

 

まぁこれは若気のいたりであり、その次の年の冬のとある一件により僕の考えは百八十度変わった。

 

まさに価値観がひっくり返されたと言うべきか。

 

ようやく普通に戻されたと言うべきか。

 

それは時期が来れば話すとしよう。

 

という訳で、何が言いたいかと言うと―――

 

僕は学校が嫌いなのであった。

 

…いや、友達はいるよ?

 

でも意義がないと思っているんだから、つまらない。

 

例えるなら

 

将来使うことのないであろう、謎の公式を必死こいて覚えるテスト1週間前の心境だ。

 

しかも、それが既に一年以上。

 

青春どころか地獄だろ?

まぁ楽しい事がないでもないので、ギリギリ平常心を保っている状態だ。

 

という訳で、多少憂鬱になりながらも無事学校に到着。

 

校門には風紀委員が『挨拶の習慣を身に付けよう』という、「いや、わざわざ言われなくてもしなきゃいけないときはちゃんとしてるよ?」というツッコミをいれても良さそうなキャンペーンを実施していた。

 

「おはようございます!」

 

「……うん、おはよう」

 

朝からテンション高いな。

 

よくもまぁ何の関わりもない他人にここまで大声が出せるもんだ。

 

こっちからしたら、軽い恐喝だよ。

 

風紀委員の挨拶口撃を滑らかに受け流し(?)下駄箱に進む。

 

そこで愛しの同級生に遭遇。

 

「おはよう、澤田君」

 

「おう、おはよう神音」

 

僕が先程の風紀委員の挨拶を見習うと、その二倍は爽やかな挨拶が返ってきた。

 

やはり挨拶は声より心だと実感した。

 

今時珍しい坊主頭の、まさに野球部な少年。

 

澤田光太

 

二年生になって知り合った。

 

性格はおどけて周りを笑わす、ピエロみたいなやつ。

 

どこのクラスにも最低一人はいるタイプだ。

 

「神音さぁ、数学の課題オワター?」

 

さっきの爽やかな顔は消え去り、ただのアホ面になった。

 

典型的な野球バカなので、おつむはたいへん残念なことになっている。

 

「終わってるよ。見せるかどうかは別として」

 

教室へ向かうまでのいい話題になると考え、少し意地悪をしてみた。

 

「そんなぁ、頼みますよアニキ。俺たちの仲じゃないですかぁ、ね?」

 

さっきまでいかにも対等な感じだったのに、一瞬にしてへりくだった。

 

相変わらずピエロのようだ。

 

「僕には弟はいないんだけど。いたとしてもバカな弟のためには、涙をのんで自分で宿題をやらすよ」

 

「バカはバカでも野球バカだがな」

 

自覚してんのかよ。しかもドヤ顔がうぜぇ。

 

ホントに表情がコロコロ変わるやつである。

 

「まぁ、見せてやってもいいが、条件がある」

 

「なにをすればいいんですか!?」

 

激しく食いついてきた。

 

「好きな人を僕に教える」

 

実に中二っぽい交換条件だ。

 

しかし、男にとって好きな人を教えるというのはなかなか勇気が必要だと思う。

 

まぁ例外もいるが…。

 

「んんん、いいだろう。教えよう。だけど絶対に誰にも言うなよ!?」

 

悩んだ末、課題の方を優先したらしい。

 

つまりは、知り合って1ヶ月でそれなりの信頼関係を気付けたようだ。

 

「実は…俺……天羽さんのことがしゅきなんだ」

 

噛んでしまって、とても締まらなかったがまぁいいだろう。

 

「天羽さんねぇ…」

 

天羽さん

本名、天羽夢亜。

僕たちと同じクラス。

性格は明るく、四字熟語で言うなら天真爛漫。

短所はどじっ子。

しかし、そこが良いのか、男子には結構人気がある。

 

「胸はでかいし、性格良いし、笑顔が可愛い。男子の夢がつまったような女の子だろ!?」

 

自信満々にいってのけた。

 

その男子の夢には僕も含まれてるのか?

 

別に胸は小さくても、僕は許容範囲なのだが?

 

思っても口には出さないけど。

 

信頼関係を崩さないために時には口を閉ざさねばならない。

 

「へぇ、そうなんだ。正直に言ったぽいし、しょうがない。貸してやるよ」

 

どのみち、最終的には貸すことになったであろうが、まぁ得をしたと考えとこう。

 

「あざーす!お世話になります!」

 

ちょうど教室に着いたし、なかなか楽しかった。

 

しかし、ドアを開けたところで、目の前に突如壁が出現した。

 

ように見えた……。

 

とっさのことで反応ができなく、ぶつかってしまった。

 

「………すまない」

 

上からやたら大人びた声が聞こえてきたので、見上げるとそこには、クラスメイトの顔があった。

 

「こっちこそ、ぶつかってごめん。鬼塚君」

 

ぶつかった相手は、クラス1、いや学年1、いやいや学校1背が高く、約1.9ートルの身長とその身長に相応な肩幅を有する我が友人。

 

鬼塚友護の姿があった。

 

「おう、友護。おはよう」

 

とても親しげに挨拶をする澤田君。

 

「おはよう、光太。」

 

対して、渋い声で挨拶をする鬼塚君。

 

大人っぽい低い声が、とても中二とは思えない。

 

とてもミスマッチな鬼塚君と澤田君は、しかし一年から同じクラス。

 

結構仲が良い。

本人達曰く、親友。

 

どうやら鬼塚君は、トイレへ行くようで挨拶もそこそこに行ってしまった。

 

「速く課題みせろよー神音」

 

「わかってるよ」

 

はぁ、今日もまた学校が始まる。

 

003

 

「おはよう、みんな。今日は五十嵐が休みだそうだ。なんか寝込んでるらしい。五月病かもしれんからみんな気をつけろよー」

 

我らが担任、赤城武人先生。

 

武人という名前のわりに数学の先生である。

 

話聞いてて思ったんだが、五月病って気を付けるものなのか?

 

五月病ウイルスがあるわけでもないし。

 

前向きに生きろという担任の深い言葉かも知れないと思った。

 

「ふぁ~~、ねみねみ」

 

なんて呟いてるあの人にはそんなことは高望みなんだと考えた。

 

まぁ、どうでもいいか。

 

「以上、連絡終了。みんな1日がんばれー」

 

赤城先生のいつものやる気のない応援を受け、二年一組は動き出す。

 

いつもどうりの日常だった…

 

 

今日までは…




また来週!

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