いやマジで申し訳ありません
なんかあれ言った一週間後くらいから仕事が終末を迎えまして、具体的にいうと土曜日全出勤な残業時間60(私は色々事情ありでちょくちょく抜けて60、本当は90)な二月と70手前まで残業な三月とかいう地獄を経験したせいでろくに書ける気力すらありませんでした
今やっと無理やり定時にできるぐらいにはなったんですけどいつまで持つか、が問題ですね。だから書けるうちに書こうと思って
本編ちょっと短いので後書きにちょっとした短編書いてみました
では、どうぞ
「いやあ、楽しかったな。特に飛鳥の反応が」
「楽しんでたのそこだけでしょ? 私の反応だけを楽しむお化け屋敷楽しかった? 沙耶と穂香は私いじるの好きだものね」
「悪気があったわけじゃないんだ。純粋に飛鳥の教室で遊びたいと思ったら偶然そこがお化け屋敷だっただけで。そんなに気落ちしないでくれ。君もそう思うだろ? 快君」
「いや、俺もかなりやられた……」
「こっちは違う意味でダメージ食らっていたか」
額に手を当ててやれやれなんてやってるが一番楽しんでる彼女がなんかやらしい。
あれから場所変わって再び校舎裏、途中飲み物と食べ物を購入してベンチに飛鳥を真ん中に三人で座り込んでいる。飛鳥はいつもの笑顔はどこ行ったレベルの乾いた表情をしながら頭をこっちに預けている光景は最近見なかったのだが、久しぶりなのか余計に強烈だったっぽい。その結果が今の彼女な訳だが、これだと去年とその前の二の舞な気がする。
「本当に仲良いな君達、普通なんか恥ずかしがったりするものだろう? まして人前だぞ?」
「慣れてるから、これ」
「今の気分で人前気にしてたら私もう無理よ。もう快がいないと私生きていけない」
「熟年夫婦か。まさか掛け声一つで相手がなに考えてるか分かるとかそんな意味わからんことまでできたりしないだろうな」
「え、普通でしょ?」
「ずいぶん前よそれ、できるようになったの」
確か高校入って間も無くだったか。飛鳥とリビングにいる彼女を呼んではいはいと返されてコーヒーを出されたのが最初だった気がする。
「本物の以心伝心を今初めて知った……」
やれやれの次はため息か。
まあ確かに俺と彼女の関係は周りから見れば異質なのだろうが他の人達でもこの域には来るのではなかろうか、よく白兎から聞かされるゲームの話でも普通にいるし。
「私たちの話はいいわ。それよりも楽しかった?」
「勿論、なかなかのクオリティだった。それに他の模擬店もいい線行ってる。高校生でやるには十二分すぎるくらいだ。熱気も私達のライブに負けず劣らずって感じがいい」
「まだ遊んで行くんでしょ? 次はなに行こうかしら。今年はお化け屋敷私達のクラスしかやってなかったからそれ以外ならなんでもいいわよ、快もいいでしょ?」
「いいよ、なにがいい?」
「うーん、三人で楽しめるものだろ? 射的……は違うか。着ぐるみの撮影会……は飛鳥の変装の問題でなしか。あとは何があるかな……」
パンフレットを手に各々を指でなぞりながら確認していく彼女を待つこと数分、彼女の指がある場所で止まった。
「そういえば快君のクラスには行ってなかったな、君のクラスは?」
「3ー2、メイド&執事喫茶ってあるでしょ、それ」
「ああこれか。ほお、撮影会も出来るのか」
再び指を動かし停止、そこには俺が行った内容が記述されている。
彼女の次の目標はここ、と言いたげな顔だ、だが問題が発生するため釘を刺しておこうと思い口を開く。
「行かないことオススメしたいけどね」
「へえ、理由を聞いても?」
「俺のクラスに一人、猛烈なファンがいるから。君達の」
それを聞いた彼女はがっくりとした表情ーーではなくむしろ挑戦する気満々なやる気溢れる表情に変わる。
あれ、まさか選択肢間違えた?
「それは面白そうだ。なら一つ試して行こうじゃないか」
「なんで君達はそうなるの」
「私達現にバレないものね。バレたことある?」
「いや、飛鳥みたいに変装した時は特にないけど今みたいな状況でも対人なら100%バレない自信がある」
「その意気込みは?」
「その私達のファンな子に会ってから見せてあげるよ」
紅茶も楽しみだ、と軽いスキップをしながらいざ入室。昼時ということもあって飛鳥と一緒に出された時以上の盛り上がりを見せている教室の端、俺が最後にいた洗い場にいる白兎が真っ先に気づいた。
「お、帰ってきた。後は雪さんと……ん?」
俺の横で腰に手を当てて「彼かな?」なんて口にする彼女に白兎が気づいた。こちらを凝視しながら徐々に近づいてくる白兎は次第に目をキラキラさせていく。ほれみろ、そんな変装って言えるようなものでもない変装でバレないわけが……。
「初めまして! 私雪と一緒の学校の神原佐奈って言います! 雪の彼氏さんからここがオススメって聞いてきました! 撮影とかできるんですよね!? 楽しみだなあ!」
……さっきまでの声どこ行った。
「……まさかの年下キラー持ちか? お前」
「違うから、そんな称号持ってないし欲しくないから」
「そうですよ、先輩には私だけいればいいんです」
「なあに言っていんの!?」
なんだ、アイドルって存在は全員多声類なのか? なんでそんな地声とは程遠い声出せるの、おかしくない? 完全に別人の声なんだけど。飛鳥にしろ彼女にしろおかしい、この調子だと最後の子もこうなのか? ちょっと万能すぎませんかアイドル。
「えと、まずは紅茶でも飲んでいく、でいいんだよな?」
「はい! あとお茶と合いそうなでざーととかあるとありがたいです!」
「私も同じものをお願いします」
「りょーかいしました。 快はその子たちの相手しててくれ。席は……端っこのが空いてるな、案内よろしく」
「はいはい」
白兎と別れて言われた通り教室の隅に置かれたテーブルに二人を案内して腰掛けたのを確認すると俺も座る。
「ほら、言っただろ? 対人じゃバレない自信があるって」
「どういう理論で?」
「簡単な話、第一印象だね。同じように見えても第一印象が違うかったら別人だと思うだろ? ま、それでもわかる人間はいるけど、彼は固執する系のファンじゃかったようだから普通に騙せた、というわけだ」
「沙耶って本当にそういうのだけはすごいわよね」
「変装の師にその口はなんだい?」
「いひゃい、いひゃいわさや」
飛鳥のほっぺを引っ張る沙耶さん。
こんな姿みてたらさっきみたいなこと全然出来そうにないのに普通に出来るなんてやっぱりアイドルって稼業はすごいとしか言いようがない。アイドル業界NO.1となるともってのほかだ。どのスキルも完璧すぎる。今更ながら俺の彼女がすごいというのを目の当たりにする瞬間だった。
「ま、そういう訳で対人だとバレない自信が僕にも飛鳥にも、そして穂花にもある。安心してデートを楽しむといいさ。これまでを取り戻すみたいにね」
「……なんでデートしたことないと?」
「飛鳥が変装してまで来るんだ、君、相当飛鳥の願いを断ってきたろ? なんせ国一のアイドルだ、バレたら危ない、なんて考えであろうことは君の性格含めて考えるのなんて造作もない。となれば必然的にデートなんてしてないと思っただけだ、違うかい?」
「最近だとちょっと前に初めてスーパーで一緒に買い物したぐらいかしら。デートに関しては指で数えれるぐらいしかしてないわ」
「一応してるにはしてるんだ。ま、そういうことで僕達にはバレない術がある。安心しなよ」
「ありがとうございます!」とまた声を変えて相手から受け取った紅茶を口に入れて笑う彼女。どうやらお気に召したらしく、ケーキを挟みつつ再び紅茶に口付ける。
「アイドルにここまで言わせるんだ。親友が落ち込む姿とか見たくないしね。彼女を頼むよ、彼氏君」
以心伝心
暖かい昼上がり、快と飛鳥は二人座るには少し大きなソファの上で互いの背中を預けながら各々の時間を楽しんでいた。
飛鳥は小説を読んで、快は片耳だけイヤホンをつけて曲を聞きいている。互いに干渉し合うこともないが双方ともに至福に感じている最中、快がソファの横に置かれたテーブルの上のコーヒーを手にとって少量口に含んだ。
「ん」
飛鳥はそれだけを発音した。
「ん」
快はそれの意味を理解してマグカップを彼女に後ろ手に差し出す。それを受け取って自分も少量含んで再び元の位置に戻されたマグカップ。置かれた音を確認すると今度は快が「ん」と発言する。次は飛鳥がそれの意味を理解して本に栞を挟んで本をたたんで先ほどのマグカップの横に本を置いて彼から少し距離を取る。それに続くようにして快は転がって飛鳥の膝に快の頭が乗せられた。よくいう膝枕状態である。
「んー」
心地好さそうに目を閉じる快の頭をそっと撫でる飛鳥も楽しそう。
次第に快につられて眠くなったのか欠伸をしてしまう飛鳥、それを感じ取った快は再び「ん」だけを口にする。
「んー……ん」
今日は仕事ないから大丈夫、という意味のそれに満足して快は起き上がって彼女を抱き上げる。恥ずかしい反面嬉しくて彼の胸に顔を埋める飛鳥と共に寝室へと向かい始めるのだった。
以上、特に甘くもない気がしないでもないまじ短い短編でした