仮面ライダー&プリキュア・オールスターズ~奇跡の出会い、運命の共闘~ 作:風森斗真
雄介がバイクを止めている駐輪場へ向かう道中、その事件は突然起きた。
先ほど自分が出てきた空港のターミナルから、大きな爆発音が響いてきたのだ。
何かの事故か、はたまた、テロ事件か。
あるいは。
雄介の脳裏にある事件が浮かび上がってきた。
だが、同時に、それを無理やりかき消した。
ありえない。
彼らは、自分が、自分と仲間の警察が、多くの犠牲を払って倒したのだから。
だが、それでも雄介は気になって仕方がなかった。
そのため、答えを知るために、再びターミナルへと駆けだした。
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雄介が向かった先では、多くの人が逃げまどい、大混乱が起きていた。
その原因は、人々が逃げてきた場所にあった。
逃げ惑う人々を追いかけるように、蜘蛛のような姿をした怪人が暴れまわっていた。
被害から逃れるため、乗客たちは全員、外へと走っているが、数名は、蜘蛛のような怪人が吐き出した糸で首や胴体を縛られ、身動きが取れずにいた。
怪人が捕えた人間の首をつかんだ。
「……ひっ!!や、やめ……」
「
怪人は、首をつかんでいる手に力を込めると、ごきり、と鈍い音を立てた。
その音が響くと、首を捕まれていた人間の口から、ごぽり、と赤いしずくが滴り、全身から力が抜けたように、腕がだらんと垂れた。
「
蜘蛛怪人はまるで興味を失ったかのように、その人を地面に叩きつけ、再び獲物を求めて人々が逃げていった先へと向かって行った。
が、その進行方向に、四っつの人影があった。
「……って、ゼツボーグじゃない?!」
「な、なにあれ……」
「たとえ、ゼツボーグじゃなくても……」
「えぇ。
その人影は、サングラスの少女とそれを出迎えていた三人の少女――はるかたちだった。
彼女たちの手には、パフュームと鍵が握られていた。
「……
怪人ははるかたちの方へ視線をむけた。
はるかたちは怪人が何を言っているのかわからず、疑問符を浮かべていた。
だが、少女たちがやることは変わらない。
「「「「プリキュア!プリンセスエンゲージ!!」」」」
鍵をパフュームに突き刺し、四人は同時に叫んだ。
その瞬間、空っぽだったパフュームに香水が満ち、ピンク、青、黄、紅の四色に輝いた。
香水を周囲に吹き付ける中で、少女たちの衣装は変わっていき、最後には、まるでおとぎ話や絵本に出てくる"お姫様"のような衣装へと変わっていた。
「咲き誇る、花のプリンセス!キュアフローラ!」
「澄み渡る海のプリンセス!キュアマーメイド!」
「煌めく星のプリンセス!キュアトゥインクル!」
「真紅の炎のプリンセス!キュアスカーレット!」
「強く!」
「優しく!」
「美しく!」
「Go!」
「「「「プリンセス・プリキュア!!」」」」
姿を変えた四人は、名乗ったと同時に、怪人に向かって駆けだした。
四人は、それぞれの方向に分散し、四方向から同時に攻撃を仕掛けた。
だが。
「……えっ?」
「……なっ!」
「……うそっ!」
「……固いっ?!」
渾身の力を込めて、フローラたちは握った拳を怪人に叩きつけた。
しかし、怪人はまったくダメージを受けていないかのように、平然と立っていた。
「
フローラたちの攻撃を受け止めた怪人が腕を振るうと、フローラたちを同時に、簡単に吹き飛ばした。
続けざまに、怪人は正面にいたフローラにむかって、白い糸を吐き出し、フローラを縛った。
だが、彼を相手にしているのはフローラだけではない。
「はぁっ!!」
「たぁっ!!」
マーメイドとトゥインクルが同時に怪人の背に蹴りを加えた。
正面に気を取られていたらしく、怪人はその攻撃で体勢をわずかに崩した。
その隙を逃さず、スカーレットは鍵を一本取り出し、手にしているヴァイオリンの弓の先端に突き刺した。
「滾れ、炎よ!プリキュア!スカーレット・フレイム!!」
スカーレットの声とともに、弓から炎が渦を巻き、怪人に向かって飛んでいき、包み込んだ。
「
怪人は突然、炎に包まれたことに驚愕し、苦痛の叫びを上げた。
だが。
「
蜘蛛怪人は愉快そうに笑いながら、炎の中から出てきた。
「なっ?!効いてない?!」
「うそでしょ?!」
「……だったら!」
蜘蛛怪人の様子に驚愕しながらも、マーメイドは鍵を取り出し、杖を手にした。
どうにか意図から抜け出したフローラも鍵を取り出し、手にした杖の先端に指し込んだ。
「リリィ!舞え、百合よ!!プリキュア!リィス・トルビヨン!!」
「アイス!高鳴れ、氷よ!プリキュア!フローズン・リップル!!」
フローラが手にする杖の先端からは百合が、マーメイドが手にする杖の先端からは雪の結晶が現れると、花びらの吹雪と氷のつぶてが同時に蜘蛛怪人に襲い掛かった。
だが、そう簡単に技が決まるわけはない。
怪人は天井に向かって糸を吐き出し、見た目の通りの動きで上空へと非難し、二人の技から逃れた。
だが、怪人は四人のコンビネーションを見くびっていた。
「シューティングスター!キラキラ、流れ星よ!プリキュア!ミーティア・ハミング!!」
上空で待機していたトゥインクルが、大量の流れ星を怪人に向けて発射した。
流れ星の嵐に巻き込まれ、怪人は再び地面へとたたきつけられた。
だが、怪人は立ちあがり、少女たちをにらみつけた。
「……
怪人がまたもわけのわからない言葉をつぶやくと、今度は雄叫びを上げ、空気を震わせた。
その振動と、怪人から放たれている殺気で、フローラたちは身がすくんでしまった。
ディスダークとの戦いを乗り越え、グラン・プリンセスとなった彼女たちだが、「本当の殺気」というものを感じるのは、これが初めてだった。
このままでは殺される。だが、恐怖で体が動かない。
そんな彼女たちの前に、一人の青年が躍り出た。
「あ、あなたは……」
「危険です!逃げてください!!」
「ここは、私たちが……」
フローラたちは青年に向かってそう叫んだ。
いくら身動きができないとはいえ、目の前にいる青年がこのままあの怪人と戦えば、どうなるか、それは火を見るより明らかだ。
だが、青年――雄介は視線をこちらに向け、優しい表情で、大丈夫、と答えた。
「俺は、前にあいつと戦ってるから……」
そういうと、雄介は両手を腰の前にかざした。
その瞬間、まるで体から浮き出るように銀色のベルトが出現した。
「
出現したベルトに、怪人は驚愕の声を上げた。
だが、雄介はそれを気にすることなく、右手を左側につきだし、左手を腰の右側に回した。
ベルトから、何かが回転しているかのような音が響く中、雄介はゆっくりと右手を右に、左手を腰の左側に動かした。
「……変身っ!!」
その声と同時に、怪人に向かって走りだした。
怪人は、向かってきた雄介を殴りつけたが、それを受けとめ、殴り返した。
その瞬間、受け止めた手と怪人を殴った手に紅い手甲が現れた。
同時に、雄介の体にが赤い鎧に包まれ、足も黒く変わり、足首に紅い宝石が埋め込まれた装飾品が現れた。
最後に、雄介の顔に、金色に輝く二本の角と昆虫の複眼のような二つの赤い目がついた仮面に覆われた。
その姿は、古代の遺跡に、こう記されている。
邪悪なる者あらば、希望の霊石を身に付け、炎の如く打ち倒す戦士あり、と。
だが、その姿を知るものは、かつて雄介に協力してくれた警察組織と友人だけだった。
「……あ、あれはっ?!」
「へ、変身した……」
「って、あの人もプリキュアだったの?!」
「……いえ、あれはプリキュアではありませんは……けれど、いったい……」
四人は雄介の変身に驚愕の声を上げた。
だが、雄介はそれを気にすることなく、怪人を少女たちから引き離すため、体当たりをしかけ、窓ガラスを突き破って外へ出た。
「……
「……ふっ!!」
窓ガラスを突き破り、滑走路へ出た雄介は、怪人を空港の建物から引き離すため、飛行機や建築物があまりない、広いエリアへ向かって走った。
怪人は雄介を追いかけ、走りだした。
「
怪人は叫びながら、雄介を追いかけた。
雄介はある程度、怪人との距離が離れたことを確認すると、立ち止まり、腰を落とした。
「ふぅぅぅぅぅぅぅ……」
ゆっくりと息を吐き、意識を右足に集中させた。
その瞬間、右足に炎のような光が宿った。
感覚で、炎の力が足に宿ったことを知ると、雄介は怪人に向かって走りだした。
一歩一歩踏み出すごとに、光は小規模の爆発を起しているかのようにはじけた。
怪人との距離が徐々に詰まっていき、雄介は地面をけり、宙に飛び上がった。
空中で一回転し、炎の力が宿る右足を、怪人に向かって突き出した。
「うおりゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
走ってきた怪人の胸に、雄介の飛び蹴りが命中した。
蹴りの勢いで、怪人は吹き飛んでいったが、怪人は諦めることなく、ふらふらと立ちあがった。
だが。
「……ぶっ!!」
怪人は突然、苦しげにうめきだした。
その胸には、雄介の足に宿っていた炎の力が、封印を示す古代の文字となって浮き出ていた。
その炎は、徐々に怪人の腰へと移っていき、腰の装飾品に光が到達した瞬間、装飾品が割れた。
「
断末魔にも似た絶叫とともに、怪人は爆発した。
幸い、周辺になにもなかったため、爆発による二次被害はなかった。
雄介は元の姿に戻りながら、怪人に背を向け、空港へと戻ろうとした。
だが、その足は目の前までやってきた少女たちによって止められた。
「って、もう終わってる?!」
変身を解除したきららが爆発を見つめながら、驚愕の声を上げる一方で、トワとみなみは警戒のまなざしを雄介に向けていた。
「……あなたは、いったい何者なんですの?」
「普通の人じゃ、ありませんよね?」
その問いかけに、雄介は、困った、といいたそうな表情で頭を掻いた。
会話から、目の前にいる少女たちが先ほどグロンギと戦っていたドレスの少女たちということは、だいたい察することが出来た。
変身する場面を見られたことは、まだいい。
以前にも、一度、目の前で変身するところを見られたことがあるし、何より、今回は緊急事態だった。
だが、
どう説明したものか、と悩んでいると、はるかがみなみとトワの前に立った。
「で、でも!この人がいなかったら、私たちも危なかったかもしれないですし!というか、その前にここで話すのもあれだから、どこか落ち着ける場所に……」
その慌てた様子に、雄介は思わず笑みを浮かべた。
その笑顔に、みなみとトワも毒気を抜かれたらしく、威圧する表情から一転、微苦笑を浮かべて、雄介に視線を向けた。
「それもそうね……それに、警察にも知らせないとだし」
そういいながら、みなみは携帯を取りだし、110番を押そうとした。
「あっ!ちょっと待って!110番じゃなくて、この番号に電話して!杉田って刑事さんにつないでほしいって伝えて」
「えぇ、構いませんが……なんて伝えれば?」
警察に知り合いがいて、警視庁の番号を持っているというのもそうだが、なぜそう話すのか、疑問を感じた。
雄介は、少し考えるようなそぶりを見せてから、思いついたかのように、口を開いた。
「……五代雄介が帰ってきた、いま近くにいるって伝えてくれれば、たぶん俺に変わるよう話してくれると思う。そしたら、俺が状況を説明するよ」
「……はぁ……」
いまだに聞きたいことはいろいろあるが、ひとまず、みなみは雄介の指示通りに電話をかけた。