デート・ア・ライブ 王花ディバイナー   作:メカレン

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3章

結局、狂三との会話を終えた後は特に問題も起きずに、私は無事に帰路へとついていた。

ただ、あの会話を終えてから、どうにも狂三のことが頭から離れなかった。

 

「五河士道くん……か、どんな人なのかしら。まぁ、狂三に狙われている時点でただの人間ではなさそうだけど。」

 

とはいえ、彼が何故狂三に狙われているのかは不明だが、とりあえず彼が通っている高校がどこなのかわかったのだ。なら、明日は彼と接触するために来禅高校に行くことにしよう。

とはいえ、彼の後ろ姿しか見たことがないので、接触する前に彼がどんな人物なのか調べる必要はあるだろう。それに、霊装で高校の制服を作って紛れ込むか、【隠者ハーミット】のカードを使って潜入するなどして調べればいい。

 

(それに、彼が2年生だってことはわかっているし、最悪2年生のクラスを探し回ればいつかは彼に辿り着けるはず――)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――と、思ってたのに……まさか、学校に狂三がいるなんて思わないわよ。」

 

昨日、そう考えながら帰路に着いていた私だが、ここまで厄介な事態になっているとは思ってもみなかった。

学校に到着した私はこれからのどう行動しようか迷っていたが、なにやら霊力反応を感じたので調べたところ、どうやら狂三の霊力だということが判明した。これでは制服を着て侵入しても、狂三に見つかれば厄介なことになるのは間違いない。

 

(最悪、狂三に学生全員を人質に取られながら戦う可能性も……となると、【隠者(ハーミット)】のカードで潜入しかないけど……一応精霊である狂三にも効いたとはいえ一度は見せた手札、バレてはいないはずだけど万が一もあるし……ここは、遠回りでもいいから安全に行くべきね。)

 

一応、狂三も学生として過ごしているみたいなので、放課後にはいなくなるだろう。

なので、放課後や夜間などにでも職員室に潜入して、クラス名簿などを確認すれば彼の所属しているクラスぐらいは分かるはずだ。もし、そのまま彼の顔などが確認できれば次の日の放課後にでも接触すればいい。

 

とりあえず、どのみち放課後まで待機しなければならないので、私は学校を見て思い出した遠い昔(前世)の記憶に思いを馳せることにした――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もっとも、それは放課後に()()()()()()()()()により中断せざるをえなくなったが――

 

(広域結界ね、この感じ方から見る結界の中にいる人間を衰弱させる者みたいだけど……これを行ったのは、間違いなく精霊である狂三しかいないはず。幸いにも精霊である私には効かないけど、昨日の今日で何かあったのかしら?まさか、今日行動を起こすなんて……)

 

とにかく今は狂三を探し出すべきだ。最悪もうすでに、五河 士道(メインディッシュ)が襲われているかもしれない。一刻も早く狂三の居場所を見つけ出さなくては……そう考えて、狂三の霊力反応を探していた彼女は現在困惑していた。

 

 

(――っ!?狂三の霊力反応がいくつもある……これはダミーかしら?あまり時間がないっていうのに面倒ね。とはいえ、どれが本物かわからないんだからしらみつぶしに――)

 

 

などと、思考をしている最中に自分の背後から九つの影が現れて、こちらに弾丸を撃ち込んできた。

しかし、背後から現れていたとはいえ、気づいているのなら避けることは造作もなかった。ただ、私は大いに困惑していた……無論それは、背後を取られたことにではなく、私の背後に現れた陰の正体についてだった。

何せそれは、今私が探し当てている狂三に他ならなかったからだ……しかも、九人全員が狂三という異常な光景だった。

 

「困りましたわ……今回ばかりは誰にも邪魔されるわけにはいきませんので。」

 

「……九人に増えるなんてマジシャン顔負けの手品ね。できれば、仕掛けても教えてほしいのだけれど。」

 

「自分から手品の種を教える手品師なんていると思いますか?」

 

「その通りね……なら、力づくでも教えてもらうわよ!!」

 

「「「「「「「「「 できるものならっ――!! 」」」」」」」」」

 

そう、九人の狂三が同時に叫びながらこちらへと向かってきた。ついに戦いの火蓋は切られた――

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

そして、王花と狂三達の戦闘が開始されてから少し経った頃、屋上では王花の探し人である士道がそこに立っていた。

その他にも十香や折紙、それに()()()()()()()()()の【崇宮 真那(たかみや まな)】、そして、いま王花と戦っているはずの狂三がいた……それも()()()()()()()()()()()()()

 

「さぁ――終わりに、いたしましょう。」

 

大量にいる狂三達の中の一人がそう言い終わると同時に、他の狂三達もいっせいに士道たち目掛けて襲い掛かってきた。

真那も襲い掛かってくる狂三達に反撃するべく、纏っているCR-ユニット起動し――

 

「……ッ!舐めんじゃ――ねーです……ッ!」

 

と力の限り対応するが、すでに全身から血が流れているせいか、徐々に狂三達の動きに対応できずに押されていった。さらに狂三は、発顕した〈刻々帝(ザフキエル)〉という巨大な時計の形をした天使の前で銃を握り、相手の時間を止める【七の弾(ザイン)】を装填して真那に放つと、真那の身体は停止し、その間に無数の狂三達が真那に群がってきた。

 

「か、数が多すぎるぞ……ッ!」

 

「せめて装備が万全なら――」

 

士道を守りながら、そう声を上げる十香と折紙だったが、十香は精霊の力を十全に発揮できる状態ではなく、また折紙も本人が言うように万全な装備ではない上に、あまりにも多すぎる狂三達の数の暴力に押されて最後はその場に取り押さえられてしまっていた。

 

そして士道も両腕を捕まれ、地面に押さえつけられてしまった。

それに、最後の手段として自分を狙っている狂三に"自分の舌を噛み切る"という脅しを言おうとするも、士道の口の中に細い指を入れて顎と舌を抑えこんできた。

 

「舌を……?どうするんですの?」

 

そう言った狂三は笑いながら、右手を握った。すると周りからは耳障りな高音が響き始めた……おそらくこれは空間震が起こる前触れのようなものだろう。狂三が空間震を起こすと気づいた士道は、指を突っ込まれながらも止める様に懇願するが、狂三はそれを無視して右手を振り下ろしてけたけたと笑った。

 

「あ――ッははははははははははははははははははははははははは――っ!!」

 

そうして彼女が笑っている最中、来禅高校の周囲の空からは大きな耳障りな音と地震のような空気の揺れに包まれていった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ――はァ……?」

 

とはいえ、その笑いも彼女の疑問符によってかき消されたわけだが。

本来彼女の予定道理ならば、ここはもう空間震によって辺り一面が消失しているはずなのだ。しかし、起こったのは耳障りな音と空気が震えただけで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「これは……どういうことですの……?」

 

「――知らなかった?空間震はね、発生と同時に同規模の空間の揺らぎをぶつけると――」

「相殺することができるのよ。今度からはキチンと覚えておくことね。」

 

その疑問に答えたのは二人の少女の声だった。

狂三にとって片方は聞いたことのない声。しかし、もう片方はつい最近聞いた覚えのある声だった。

 

「それに……私を止めるには少なすぎたんじゃないかしら?」

 

「――ッ!貴方は……それにもう一人の方は何者ですの?」

 

狂三が……いや、士道を含む誰もがその光景に驚いていた。

何せ、上を見上げれば空は赤く染められ、そこにはまるで太陽を思わせる様に炎の塊が浮遊していたのだ。

そして、その炎の中には士道達にとって見覚えのある少女がそこにいたのだ。

 

「琴、里……?」

 

そう、そこには()()()()()()()である【五河 琴里(いつか ことり)】がいたからだ。

しかし、その最愛の妹はいま、炎を纏わせながら天女が着る羽衣のような恰好をしており、頭には鬼を思わせる純白の2本の角が生えていたのだ。

 

 

 

 

そしてもう一人の少女を見ると、琴里と同じように宙に浮かんで大胆不敵に笑みを浮かべながら、

琴里が纏っている炎の光を受けて、少女の持つ長い銀色の髪は鮮やかに光を反射していた。

外見年齢は16,7歳ほどだろうか?その少女は紫をベースとしたフード付きのドレスを纏いながら、紅い瞳で狂三を捉えていた。

 

そんな神秘的な姿を見て士道は――

 

「……綺麗だ。」

 

と、素直に思ったことを吐き出してしまうほどに、見惚れていた。

妖しげな雰囲気を漂わせて、どこか大人びた印象を受けながらも触れたら壊れてしまうような繊細さを彼女から感じたからだ。

これまで十香や折紙などの美しい少女を見てきたが、それに負けないぐらいの美しさを彼女は持っていた。

 

そんな見惚れている士道に琴里は少し不機嫌になりながらも、

徐々に高度を下げながら士道へと目線を落として彼にこう言った。

 

「――()()()()()()()()()()()()()()()()

 

その言葉の意味がわからずに困惑している士道だったが、そんな士道を無視しながら琴里は――

いや、二人は自分達にとっての最強の矛たる"天使"を呼び出した――

 

「――焦がせ、〈灼爛殲鬼(カマエル)〉」

 

「――導け、〈神秘創造(ラドゥエリエル)〉」

 

そして、琴里は自分を纏う炎から作った巨大な戦斧を手に取って構えた。

もう一人の少女の周りには光の球がいくつも現れて、その形をカードに変えて少女の周りを飛び回っていた。

 

今ここに最強の矛たる"天使"とその身を護る絶対の盾たる"霊装"の二つがそろったのだ。

ならば、やることはただ一つ――

 

「「さあ――私たちの戦争(デート)を始めましょう」」

 




一応これで3巻までは終わりとなりました

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