デート・ア・ライブ 王花ディバイナー   作:メカレン

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今回の王花ライフはなんというか、4巻と5巻の間くらいの小話的なものです。
ちょっとだけ短い日常?を楽しんでいただければ幸いです。


王花ライフ
1章


「――ハァハァ……どうして、どうしてこんなことに。」

 

 

五河士道はそう呟きながら、校内を走り回っていた。

後ろから迫るクラスメート達から聞こえるのは、士道の制止を呼びかける声。そして、男子からは嫉妬、女子からは好奇の視線を浴びながらだ。

 

そして、そんな自分の隣で走っているのは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった――

 

 

「……これが恋の逃避行っ!」

 

「いや、それ意味違うんじゃ……って、うぉ!?人に物を投げるなよ!!」

 

 

「うるせぇー!なんで、お前だけモテるんだ!」「十香ちゃんというものがいながら……」

「士道、詳しい説明を求める」「俺達は校内ベストカップル2位じゃないか!裏切るのかっ!?」

「安心しろ、クラス全員でちゃんと墓穴は掘ってやる」「大丈夫!当たっても少し死ぬだけだ!」

 

 

「いや、だから誤解……って、最後の奴らが不穏すぎるっ!?」

 

「……なんだか、個性的な学校ね?」

 

 

"個性的ってレベルじゃないような……"そんな言葉を胸に秘めながら、士道は今日のことを思い出していた。

少なくとも、登校するまではいつも通りのだったはずだ。朝に朝食を食べ、十香たちと一緒に学校に向かったところまではいつもと同じだったのだ……学校のホームルームが始まるまでは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

そして時間は朝のホームルームへ戻り、教室では出席簿を持ったタマちゃんの挨拶が始まった。

 

 

「はい、みなさんおはよぉございます。では、早速出席を……といいたいところですが、その前にみんなに転校生を紹介したいと思います!」

 

「またうちのクラスに転校生なの?タマちゃん先生。」

 

 

クラスメイトの一人がそんな疑問をタマちゃんにぶつける。それもそうだろう、十香、狂三と続いて再びこのクラスに転校生がくるのは少し不自然に感じるのは当然だろう。そもそも、この時期に転向するなんてそうそうないはず……そう考えてるとタマちゃんがその回答に答えた。

 

 

「私も詳しいことは知らないんですが、とにかくこのクラスへと言われたんですよ。」

 

結局、タマちゃんもあまり詳しいことは知らないようだった。まぁ、気にするほどの事ではないだろう……そして、今度は殿町がタマちゃんへと質問をしていた。

 

 

「はいっ!質問です!転校生は男と女のどっちですか!?」

 

「みんなもやっぱり気になりますか……なんと!転校生は女の子です!」

 

『うぉおおおおおおおおおおお!!?』

 

 

と、クラスの全員……特に男子が大きな歓声を上げる。確かに自分も転校生は気になるが、あまりにも浮かれすぎている気がする。まぁ、確かにうちのクラスはお祭り好きな人間が多いから当然かもしれないが……

 

 

「さ、入ってきてくださぁい――」

 

 

その一言でクラスの全員が一瞬で静まり返り、教室の扉へと注目していた。

そんな静まり返った教室へと入ってきたのは自分が知っている少女だった。その少女は自身が持つ銀色の髪で背中を覆いながら、教卓の前へと歩いてきた。

 

本来なら色めき立つクラスメート達だが、少女の鮮やかな髪、宝石のように紅い瞳、そして整った顔立ちとスタイル抜群な美少女にクラスメート達は言葉を失っていた。かくゆう自分も別の意味で言葉を失っていたのだが、そんな自分をよそに少女は黒板に自分の名前を書き終え、呆けているクラスメート達へと体を向けて静かな声でこう言った。

 

 

「――皆さん、初めまして。私の名前は【橘 王花(たちばな おうか)】といいます。家庭の事情で一人でこの街へと引っ越したばかりなので、わからないことが多々ありますが温かい目で見守ってくだされば嬉しいです。それでは皆さん、これからよろしくお願いします。」

 

 

見惚れるような笑顔で挨拶をし終えた王花に、クラスメート達は拍手を送る。

ただ、王花の笑顔が自分に向けられているのには気になったが、おそらくは気のせいだろう。

そして、王花が挨拶を終えた後、タマちゃんは教室を見回しすように視線を巡らせた。

 

 

「えぇっと、それでは橘さんはあそこの空いている席へ――「先生、そのことで少しお話が……」――は、はい、なんでしょうか?」

 

「私がこの街に引っ越したのは家庭の事情だと先ほどお話ししましたが……実は私がこの街へとやってきた理由はある人と会う為なんです。」

 

「ある人……?」「どんな関係?」「というか誰?」

 

 

亜衣、麻衣、美衣が王花に対して質問をする。

いきなりタマちゃん……もとい教師の話を遮ってする話なのだ。このクラスにいる誰もが、彼女がこの街へと引っ越した理由を知りたがっていた。

そんな自分たちの問いに答えるかのように、王花は口を開いた。

 

 

「……その人はこの学校の……このクラスの生徒で、そして何より――()()()()()()()()()()。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『え……えぇーーえええええっ!』

 

 

王花が答え終わった瞬間、クラスメート達からは驚きの声があがっている。

自分も驚いている……というか、精霊である王花に許嫁がいたというのはおかしな話だ。

おそらくは琴里達の仕業だろう。そう考えれば王花が学校へと編入できたのもうなずける。

 

しかし、王花の爆弾発言に驚いているクラスメート達とは別に、士道は何か嫌な予感を感じ取っていた。

まぁ、最近はずっとこんな調子なので、ある意味いつも通りではあるのだが……

 

「というわけでして、できればその方の近くの席に座りたいのですが……」

 

「ま、まぁ、たぶん大丈夫ですけど……」

 

 

「うわぁー、漫画みたい!」「ロマンチックーだね。」

「まさか、俺が彼女の許嫁……親父とお袋はなぜ言ってくれなかったんだっ!」

「「たぶん、お前じゃないっ!!」」 「一体誰なんだ……羨ましい。」「許嫁ってだれー?」

 

 

 

「その、私の許嫁の方の名前は……――」

 

 

『――……名前は?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「【五河 士道】という名前なんです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………えっ?」

 

 

『……はぁーーーぁあああああ!!?』

 

 

 

「正直、美少女が来たからなんとなくそう思ってました。」「くっそ!またあいつか!」

「十香ちゃんだけでは飽き足らずに王花さんまで……」「許すまじ、五河士道!!」

「私、五河君の前の席だから席替えオッケーです。」「三角関係……いや、折紙さんも入れて四各関係っ!?」

 

 

 

「いや!待てって!俺は何も知らないっ――」

 

「なぁ、シドー。許嫁とは一体なんなのだ……?」

 

「――士道。キチンとした説明を求める。場合によっては……」

 

「何するつもりなんだ一体!?……って、王花もなんでこんなことを――」

 

 

そういいながら王花を見るが、こちらに向けてるのは満面の笑みのみ。

そんな笑顔を浮かべながら、王花はどこか悲愴な雰囲気を醸し出している。

一体、何をするつもりなのか……そんな風に考えていると王花は目に涙を滲ませていた。

 

 

「許嫁とはいえ、所詮は親の決めたこと……だけど、少しでも士道君のそばにいたいと思ったんですが……すみませんでした。迷惑をお掛けしてしまって。」ジワッ

 

「いや、そういうことじゃ……(というか、周りからの視線が痛い)――とにかく、すこし落ち着いて話をしよう!というわけで、先生ちょっと席をはずしますっ!!」

(一刻も、早くこの場から立ち去らないとクラスメート達から何されるかわからんし……)

 

「あっ――い、いきなり私の手を取るなんて……少し恥ずかしいわ///」

 

 

 

「あっ!逃げたぞ!追えっ!」「シドー!結局、許嫁とは何なのだ!?」

「いきなり二人きりなんて不潔よっ!」「陸上部から逃げれると思うなよっ!」

 

 

「だから誤解だって!?……くっ、とにかく今は逃げるしかない!」

 

 

そう言いながら、士道は王花の手を取って教室から出ていった。一応、今はホームルーム中だがそれどころではない。いろんな意味で自分の危機なのだ。

そして、そんな二人を追うようにクラスメート達も教室を出ていってしまった。

 

 

「い、いまはホームルーム中……って、みんないないですし……」

 

 

そんなタマちゃんの寂しげな声のみが教室へと響き渡っていった――




今回のお話は、4巻でも5巻のどちらもベースにしてないのですこし時間がかかりました。
ちなみに、今回の王花さんはクラスメート達の前なので言葉遣いが丁寧になってました。
(あれ?こんな話し方じゃなくね?)と思った方はその通りです。

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