デート・ア・ライブ 王花ディバイナー   作:メカレン

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5章

私、橘王花が目を覚ましたのは紅蓮の業火に包まれた学校の屋上……ではなく、ベットの上だった。着ているものも霊装ではなく病衣になっており、周りは白いカーテンに覆われていたため、ここがどこなのかはわからなかった

結局あの後はどうなったのか、彼は……五河士道は無事なのか、狂三は、赤い髪の精霊は……などと少しベットから身を起こして考えていたら、白衣を纏った女性がカーテンを開けてこちらに話しかけてきた。

 

 

「ふむ、意識を取り戻したのかね?しかし、急に身を起こしてはいけないぞ……こちらも調べたとはいえ、まだまだ安静にしていなければならないのだから。」

 

「……とすると、あなたが私をここに運んでくれたのかしら?」

 

「正確には私ではないのだが……まぁ、そこらへんは置いておくとしてだ……私は〈ラタトスク〉で解析官を務めている【村雨 令音(むらさめ れいね)】だ。そしてここは、〈フラクシナス〉の医務室。勝手に運んでおいてすまないが緊急事態だったのでな。」

 

 

〈ラタトスク〉……たしか彼もその言葉を口にしていたはず。

それに確か、"精霊を殺さずに解決するのが〈ラタトスク〉"と彼が言っていたはずだ。となると、こちらには危害を加えない……いや、すでに加える気ならやられているはずだ。なにせ、今まで気を失っていたのだからどうにでもできるはず。

その前に自己紹介されたのだからこちらも返さなければ失礼にあたるというものだろう。

 

 

「私の名前は橘王花よ。手当をしてくれたことには感謝をするわ……でも、貴方達はいったい何者で何の目的で動いてるのかを教えてくれると嬉しいのだけど。不躾な質問だと思うけど、何分こちらも事態を把握できていないのよ。」

 

「あぁ、……私たちは――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「"精霊との対話による空間震災害の平和的な解決を目指した秘密組織"ねぇ……」

 

 

どうやら、それが彼ら〈ラタトスク〉の目的であり、同時に精霊の保護を目的とした組織でもあるらしい。前に私が推測したように、精霊が【隣界】からこの世界にやってくるときに空間震が起こるようで、それを対処するのが彼らの役割のようだが……

 

 

「――でも、私の場合は常にこちらの世界にいる……というより、そもそもその【隣界】とやらに行けないから、私の場合は無意識的に空間震が発生する心配はないのよ。」

 

「……それはどういう――」

 

 

令音がこちらに質問しようとした瞬間、突然誰かがこの部屋に現れてこちらへと近づいてきた。

そしてその誰かとは彼……私が一目惚れしてしまった人、五河士道その人だった。正直、心の準備などしていなかった私は完全にパニックに陥ってしまっていた。

 

 

(えっ?……あっ!?き、着替えないと!いま、わたし病衣だし……いえ、その前に髪のセットを……あぁ、彼が来るとわかってれば少しでも身形を整えていたのに~~ッ!)

 

「あ、あの~?「はっ、はいっ!?」……い、いえ、そこまでかしこまらなくても……あの、俺【五河 士道(いつか しどう)】っていいます。昨日は助けてくださって、ありがとうございました!」

 

「い、いえ、あれは私が勝手にやっただけで……私は橘王花といいます。気軽に王花って呼んでください。」

 

「わかりました王花さん。こちらも気軽に士道と呼んでください……ところで、俺たちは――」

 

「あぁ、そのことならさっき彼女(令音)から訊きました。〈ラタトスク〉がどういう組織なのか、なにを目的とした組織なのか。ただ……私の場合は隣界から来るわけではないので空間震は起きないというか………とはいえ、私自身がこの前の狂三みたいに自分の意志で発生できるから必ずしも無関係ではないのだけれども……」

 

(空間震が起きる心配はないって、それはつまり……封印する必要がないってことに――)

 

(いや、シンそういうわけにはいかないぞ……)ボソッ

 

そんなことを考えていた士道に令音からのフォローが入っていた。どうやら士道がどんなことを考えているのかがハッキリと顔に出てたらしい……確かに、空間震に限れば無理に封印する必要もないだろうが……

 

(彼女の言う通りならば、十香達のような無意識的な空間震は発生しないだろう。しかし、さきほど彼女は意識すれば自分で起こせると言っていた。精霊というのは世界を滅ぼすほどの大きな力を持つ存在だ……例え、彼女がその力を振るう気がないとしても存在するだけで脅威になる。)

 

(……会ってまだ少しだけども、彼女がそんなことをする人じゃないっていうのがわかるぐらい優しいのに……世の中っていうのは理不尽ですね。)

 

(しかし、シンが精霊の力を封印すれば、そういった理不尽な扱いを受けなくなるただの女の子になる。とはいえ、彼女が私たちに封印されてくれるかが問題……といいたいんだが)

 

(?……何かあったんですか?)

 

 

そう言いながら令音の方を見ると、令音が少し戸惑っている姿が見えた。いや、戸惑っているのかは分からないが少なくとも驚いているのはたしかだった。

 

 

(シン……驚かないでよく聞いてくれ。いま彼女の……橘王花の好感度を調べたんだが、正直いまシンが彼女にキスをしても封印することができるぐらいに高くなっている。)

 

(……えっ?い、いや自分で言うのもなんですけどまだ会ったばかりだし――)

 

(しかし事実だ。……とはいえ、いきなりキスなんてしたら好感度は下がり、精神状態も不安定になって霊力が逆流する可能性がある。それに、いきなり精霊の力が消えたら彼女は困惑するだろう。最悪、こちらを敵として捉えられかねん。事情を話せればいいが……だからといって士道の封印の力を喋るのも危険であるのも変わりない。)

 

(でも、どのみちキ……封印しないといけないんですよね。だったら最初から事情を話した方がいいんじゃ。)

 

(そこらへんは琴里の判断にゆだねる……と言いたいが、いま琴里はそれどころでじゃないのはわかるだろう。だから、現在私が彼女の対応についての指揮を任されている。)

 

 

令音が言う通り、〈ラタトスク〉の司令【五河 琴里】は現在、頑丈な別室に隔離されていた。

というのも、前回の狂三との戦闘で士道に封印されていた霊力を完全な形で取り戻してしまったために、精霊の状態を維持していたためである。もっとも、隔離されている理由はそれだけではないのだが……

 

 

(――というわけで、シン……説明するかの判断は君に任せよう……実際に彼女とやるのはシンなのだからね。)

 

(そんな無責任な……それに、なんであの人(神無月)が指揮しないんですか?一応、副指令ですよね。)

 

リミッター(琴里)が外れているがそれでも構わないのならいいが……とはいえ、私はあくまで彼女(王花)だけだ……琴里のときの指揮権はそちらが対応する。アレでも琴里から信頼されてる一人だからね。それとだシン……君は今まで十香達と誠心誠意向き合い、そして成し遂げた。だからシンに任せるのだよ。)

 

 

こう言われてしまっては、士道も何も言えなかった。

いや、むしろ覚悟を決めてしまっていた。王花が十香たちの様に世界から理不尽な殺意を向けられないように、いまこの人に何ができるのかをを考えて、士道はハッキリとした口調で王花に話しかけた。

 

 

「王花さん、話したいことがあります――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が……士道さんが私の方を向いている。

真剣な眼差しでこちらを見つめ、緊張を帯びた声色で私へと話しかけてきた……

あぁ、この目だ……この目に私は――

 

 

「……何でしょう士道さん。」

 

「さっき、王花さんも聞いたと思いますが俺たちは精霊の保護を目的として活動しています。俺はそんな中で世界から理不尽に殺意を向けられた精霊(少女)と出会いました……」

 

「…………」

 

「その少女は世界を滅ぼすほどの恐ろしい力を持っていました。……でも彼女は世界を滅ぼそうなんてことは考えていなかった……けれども、精霊の力を持っていたせいで周りからは恐怖と殺意、そして敵意を向けられ続けていました。」

 

「それは、もしかして……十香のことかしら。」

 

「その通りです。……そんな中で俺にはある力が……【精霊の力を封印することができる】力があるというのがわかりました。十香が力を持ったせいで恐れられるなら、力を封印してただの人間として生きれば彼女に敵意や殺意を向ける必要はなくなる……彼女を救えると思って俺は彼女の力を封印しました。」

 

「……だから、私の力も封印すると?……確かに、私たち精霊は人間をはるかに超えた力を持っているわ。そして、それが恐れられているというのも理解できる……でも、それは同時に私たちを守る盾にもなっているということよ。この前の狂三の様に……」

 

「わかっています……救うなんて言葉は傲慢に聞こえるかもしれません、俺が必ず守ると言っても信じてもらえないかもしれません……それでも、あなたが誰かに傷つけられるのは……敵意や殺意に晒されるのは嫌ですから……少しでいいんです、俺を、俺たちを信じてくれないでしょうか。」

 

 

彼が本気で言っていることがわかる。目が、顔が、声が、彼が真剣に私と向き合っているということを教えてくれる。けっして自惚れではなく、私のことを思って言ってくれているのだ……

そして、そんな彼だからこそ私は心を奪われたのだ――

 

 

「……一つ賭けをしましょう。もし、その賭けに勝ったのなら私はあなたに封印されます。」

 

「その賭けの内容って?」

 

「私はあなたにまだ三つの秘密があります……もし、私があなたに三つの秘密を打ち明けたのなら、その時は封印を受け入れます。それと期限は……そうね一年以内にしましょうか。もし、がこの賭けに負けた時は――」

 

「ま、負けた時は……?」

 

 

 

「あなたの一生を私が貰います」

 

 

 

「……えっ?……えぇ!?あ、いや別に賭けに乗らないというわけではなくて――」

 

「ふふっ、冗談ですよ……とはいえ、そのくらいの覚悟はしておいてくださいね。なにせ、乙女の秘密を暴くのですから。それから士道さん……いえ、士道……そういった堅苦しい言葉はお互い止めにしましょう。私のことも呼び捨てで構わないわ。これからは長い付き合いになりそうだし。」

 

「……わかったよ王花、こちらこそよろしくな。」

 

「えぇ、よろしくね士道。」

 

 

そしてこれが、彼……五河士道との初めての会話であり、私にとっての本当の始まりであった――




あやうくプロットが崩壊しそうだった……いや、そんなもの元からなかったような(主人公を見て)
とにかく無事に士道君と会うことができましたね。

それと何故、王花は士道君に対して賭けをしたのか……それはいつか明かされるはずっ!タブンッ!

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