修は嵐山隊作戦室の前にいた。烏丸に嵐山にアドバイスをもらえるように話をつけてもらったからだ。
緊張気味にノックしようか迷ってると、後ろから足音がした。
「あれ、三雲くん?」
「あれ、伊佐?こんな所で何して……」
「遊びに。失礼しまーす」
呑気に言いながら中に入った。まず目に入ったのは木虎だ。
「あのねぇ、伊佐くん。何度も言うけどここはゲーム部屋じゃないのよ?」
「大丈夫です、A級で忙しくて綺麗でカッコイイ木虎さんに時間は取らせませんから」
「入りなさい」
誰もが「チョロい」と思ったのは言うまでもない。
「こんにちは、時枝さん、嵐山さん」
「やぁ、伊佐くん」
「いらっしゃい」
「ハルちゃん、今暇?モンハンやろうモンハン」
「えー、今忙しいんだけど」
「手伝うから」
「仕方ないなぁ……」
自分の部隊より馴染んでるその様子に、修は軽く引いてると、嵐山が修に気付いた。
「おっ、時間ぴったりだな、三雲くん」
「嵐山さん」
「久しぶり」
「あ、これ宇佐美先輩が持って行けって……」
「おっ、さすが宇佐美。気が利いてるな」
修は紙袋を渡した。中はどら焼きである。
で、話を進める。
「一人でも点が取れる方法か……」
「は、はい」
「でもなんでそんなことを?」
「今までは空閑や伊佐が点を取ってくれました。けど、ガンナーに囲まれれば伊佐は不利になることはわかりましたから、せめて援護できるくらいの実力は欲しいと思ったんです」
「ふむ、なるほど……俺の結論を先に言うと、射手・銃手は一人で点を取る必要はない。というか、点を取るのが難しい」
「………! え、でも、」
修は少しうろたえながら綾辻を手伝ってる伊佐を見た。
「基本的に射手・銃手用のトリガーは攻撃手や狙撃手に比べて威力が低いんだ。伊佐くんのようにピンポイントで弱点を狙えるならまだしも、射手は尚更そういうのには向かない」
「呼びました?」
「呼んでないよ、綾辻とイチャイチャしててくれて構わない」
「い、イチャイチャなんてしてません‼︎」
綾辻の台詞を無視して、嵐山は続けた。
「さて、それじゃあ射撃トリガーの強みはどこだと思う?」
「それは離れた相手を攻撃できる点と、攻撃を集中させやすい点です。前に木虎に教わりました」
「なんだ、そうなのか。その通り、射撃トリガーの優位性はその2点にある。少し引いた位置から全体の動きを捉えて、射程攻撃と戦術で局面をコントロールする。この戦法に関して言えば、君はすでに一定のレベルに達している。下手に攻め手の小技を覚えて、今の感覚が狂ったりしないかが心配だ」
「…………」
やはり、それが正しい判断なのか、そう修が思った直後、「だが、」と嵐山は続けた。
「本人が『学びたい』と思ったなら、そのタイミングを逃すのはもったいない」
「……⁉︎ じゃあ……」
「綾つ……いや、木虎、トレーニングルーム頼む」
「え、なんで私なんですか?」
「あの空間に話し合えられるか?」
嵐山の視線の先には、伊佐の膝の上に綾辻が座ってゲームしていた。
「ちょっ、ハルちゃん。邪魔、画面見えない」
「ゲーマーを名乗るならそれくらいできるようにならないとー♪」
「甘えん坊だね、相変わらず。つーか、歳下に甘えるなよ」
「あ、ケンくん。死にそうだから回復してくる」
「おk。戻って来なくてもいいよ」
「なんでそういうこと言うかなー」
「一人で倒せるし」
「邪魔してやるー!」
「は?誰のための素材集めだと思ってんの?」
「ごめんなさい、真面目にやります」
「…………」
その様子を見て、木虎は諦めたようにため息をついた。
「私がやります」
「悪いな」
「つーか仕事しろよあの二人……」
特訓が始まった。