俺が綾辻さんの彼氏か   作:杉山杉崎杉田

35 / 43
第35話

 

 

『諏訪隊長緊急脱出!穂苅隊員が逃さずに狙撃した!』

 

『伊佐隊員が笹森を落としたのがデカイですね。完全に力技でしたが』

 

『うっ……ヤなこと思い出した……』

 

解説する東と嫌そうな顔をする緑川。

 

『続いて伊佐隊員対荒船隊長ですが、どちらに分があると思いますか?』

 

『荒船は少し前までバリバリのアタッカーでしたからね。ガンナーの伊佐隊員の方が分は悪いと思います』

 

『けど、笹森先輩の時、普通に近距離戦で勝ってたからね。まだ分からないよ』

 

「………実際、どっちが強いと思う?」

 

チラッと綾辻が出水を見た。

 

「いやーどうだろうな。さっきのは実際、無名のB級相手で笹森が油断してたってのもあるし」

 

「にしても背負い投げはヤバくね?」

 

「それなー。まぁ完全にアタッカーの間合いだし、伊佐が何か仕掛けようにも仕掛ける隙がないよな」

 

一方、穂苅はバッグワームで身を隠しつつ、荒船を援護できる場所に向かった。

 

 

荒船の攻撃を避けて、ズルズルと退がる伊佐。

 

(反撃が来ない……。これだけ落ち着いて捌いてれば、反撃出来ないわけじゃないだろ。となると、誘い込まれてる?)

 

直後、荒船にビュオッとものすごい勢いで迫って来る影があった。ギリギリ孤月でガードする荒船。遊真が伊佐の隣に立った。

 

「悪い、仕留め損ねた」

 

「いや、途中から気付いてたっぽいし、仕方ないよ」

 

「………チッ」

 

二人を見て舌打ちする荒船。直後、パシュッと高台が光った。

 

「エスクード」

 

穂苅の狙撃を伊佐がガードした。

 

「! マジか……!」

 

そして、穂苅の狙撃位置を千佳の砲撃がブッ壊した。

 

「ッ⁉︎」

 

慌てて飛び降りる穂刈。空中で身動きの取れなくなった穂苅を、カメレオンで隠れていた修のアステロイドが撃ち抜いた。

 

『よくやった千佳。後は隠れてろ!』

 

『了解』

 

「さて、後は俺たちの仕事だな」

 

「援護するよ」

 

荒船に斬りかかる遊真。後ろから伊佐がアステロイドで援護する。だが、二人がかりに勝てるはずもなく、程なくして、遊真が荒船を落とした。

 

 

試合と解説が終わり、修、遊真、千佳、伊佐、宇佐美は部屋を出た。すると、米屋、緑川、古寺、国近、綾辻、出水がやって来た。

 

「うぃーす」

 

「おつかれ〜」

 

「ケンくん!お疲れー!」

 

米屋、緑川、綾辻と挨拶した。

 

「おー、ミドリカワ」

 

「米屋先輩」

 

「ハールちゃんっ。見てたの?」

 

「当たり前じゃん。ケンくんの試合のためなら学校の試験でも休むよ」

 

「ごめん、そんな事したら嬉しくても怒る。自分の将来を甘く見るな」

 

「………なんか怒られちゃった」

 

ゲンナリと肩を落とす綾辻。その横で、緑川が遊真に言った。

 

「良い感じだったじゃん、グラスホッパー」

 

「おかげさまで」

 

「勝負する約束忘れないでよ」

 

「OKOK、なんなら今からやるか?」

 

「おっ、いいね〜!」

 

「ちょっと個人ランク戦してくる。オサムたちは先に帰ってていいよ」

 

そのまま空閑と緑川はランク戦の会場に向かった。

 

「じゃ、俺たちも行くぞ」

 

出水が伊佐に声を掛ける。

 

「? 何処にですか?」

 

「お前のお祝いだよ。勝利おめでとうって奴。食いに行くぞ」

 

「マジですか?」

 

「うんうん。だから早く行こ〜」

 

伊佐も綾辻、出水、国近に連れて行かれた。

 

 

焼肉屋。

 

「では、玉狛第二の勝利を祝して!」

 

「「「「かんぱ〜い!」」」」

 

出水の音頭で、四人はグラスをぶつけ、それぞれの飲み物を飲んだ。

プハァーっと男前に息を吐いて、国近が伊佐に聞いた。

 

「いやーそれにしても、すごかったね。あの作戦誰が考えたの?」

 

「三雲くん」

 

「へ?賢介くんじゃないの?」

 

「俺は今回は何も口出してませんよ。全部三雲くんと空閑くんと雨取さんが考えてました」

 

「そういうのは参加した方がいいんじゃないのか?」

 

そう聞いたのは肉を焼いてる出水だ。

 

「しましたよ。三雲くんが頑張りすぎてたので、気分転換に四人でサイクリング行ったり」

 

「へぇ……」

 

「その途中で烏丸さんにお寿司もらいました。美味しかった」

 

「いーなー。てか、意外と仲良くやってるじゃん」

 

綾辻がホッとしたように言った。

 

「おい、焼けたぞ伊佐。食え」

 

「あ、どーも」

 

焼きタレが注がれた小皿に、出水が肉を置く。

 

「あの、お先にいただいても?」

 

「どうぞどうぞ」

 

「歳下なんだから気にしないの」

 

国近、綾辻に言われて、伊佐は肉を一口食べた。

 

「どう?」

 

「めっちゃ美味しいです」

 

「おお!じゃあ俺ももらうわ」

 

自分で焼いた肉を出水は一口食べる。

 

「ほんとだ。美味ぇ」

 

「でも、次はもっと厳しいよ。ケンくん」

 

「厳しい、とは?」

 

「次の2チームは那須隊と鈴鳴第一だったよね?鈴鳴の方にはナンバー4アタッカーの村上さんがいる」

 

「ナンバー4?」

 

「そうそう。あの人はヤバいぞ。特にサイドエフェクトがな」

 

出水が肉を頬張りながら説明した。

 

「調べりゃ分かることだから言うが、あの人のサイドエフェクトは『強化睡眠記憶』。村上さんは、一眠りするだけで学んだことをほぼ100%自分の経験に反映できる」

 

「ふーん……。なるほど。期末試験とか勉強しなくても点取れる人ね」

 

「えらくわかりやすい例えだな」

 

「まぁ俺も勉強しなくても取れますけどね」

 

「………綾辻、伊佐ってそんな頭良いの?」

 

「うん。ムカつくほど」

 

「………羨ましいぜ畜生」

 

伊佐に恨みがましいような視線を送る出水。

 

「まぁ、とにかく村上って人のことは分かりました。那須隊は?」

 

「自分で調べろよ。それも含めてランク戦だろ」

 

「聞き込み調査ってことで」

 

「………仕方ねぇな」

 

「教えちゃうの出水くん⁉︎」

 

そんな事をしながら、四人で楽しく焼肉を食べた。

ちなみに、夜の営みは結局綾辻がチキってやらなかった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。